「はぁー…体が重いなぁ…」 

僕は自転車を立ちこぎしながら大きなため息をついた。 
姉さんの経営するお店、ミルクディッパーへ向かう途中のことだ。 
時折、石みたいにかたくなったふくらはぎをパンパンと何度か叩いて僕は自転車をこいでいる。 
腕を上げるのも痛いし、今日は一日中ずっと眠い。 
目がシバシバするし…。 
だからさっきから何度も目を擦っていた。 
疲労と睡魔のせいで何度も自転車ごと電柱にぶつかったし、トラックと正面衝突しそうになったし…今日は僕の中でワースト10位に入るくらいの不幸日だ。 
理由は…目覚めたときから知っている。 

『良太郎、大丈夫かい?可哀相に…そんなに体を酷使して…』 

声を詰まらせて心配そうな声を上げたのは、ウラタロス…水色のイマジンだ。 
モモタロスには亀って呼ばれてるけど。 
僕は彼の言動の裏には何があるのかちゃんと分かっている。 
だからあえてわざとらしく弱音を吐いてみた。 

「…うん…ちょっと無理っぽい、かも…。でも、僕…姉さんの所に行かなきゃ…」 

おもったより僕の体は限界を突破しているらしくて、膝がガクガクと震えていた。 
自転車にもたれかかるようにして倒れこむとウラタロスの慌てたような、気遣う声が聞こえる。 
路上で気を失ってしまいそうなくらいふらふらしている僕に、ウラタロスが言う。 

『ねえ、良太郎…よければ…その、僕が代わりにお姉さんの所へ行ってあげるよ?』 

その声は僕を心配しきっている。 
何の悪意も感じない純粋な声だ。 
ウラタロスの透きとおったその声は好きだから、僕は少しだけ癒された。 
立ち上がる力もない僕は、苦笑ぎみに言う。 

「でも…ウラタロスじゃ姉さんにバレちゃう、から…」 

『大丈夫、上手にやってみせるよ。…約束する』 

ウラタロスは不意に真面目な声を出して言った。 
心の中で乾いた笑いを漏らした僕は、それを悟られないようにゆるゆると頷いてみせる。 
了承の合図と同時に、ウラタロスが体の中に入ってきた。 
同時に、僕の意識はふんわりと浮いていく。 
浮いていくというか抜けていく、って感じ。 
丁度、幽体離脱みたいな気分なんだ。 

「ふう…」 

ゆっくりと立ち上がったスーツ姿のウラタロスは、黒縁眼鏡をかけて困ったように笑った。 
正面から見て左側の髪に水色のメッシュが入っている。 
見た感じ、真面目そうな大人の男って感じかな。僕、まだ18歳なんだけど…。 

「いつもいつも騙されてくれてありがとう、良太郎。きみの身体は僕が有効に使ってあげる」 

ウラタロスは大人っぽい声で低く笑った。 
…きみの企みを僕が見抜けないとでもおもったんだろうか。 
イマジンのくせに人間を舐めるのも大概にしてほしいもんだ。 
眠気のせいか、僕はイライラしながらそんな事を考えていた。 
イマジンのくせに…だなんてハナさんみたいなセリフだよね。 

「さァてと…誰に電話しようかな〜…マミちゃん、アヤカちゃん、メグミちゃん…うーん、モテるっていうのは罪だよねぇ」 

ウラタロスは、さっそくズボンのポケットから携帯を取り出してポチポチとアドレス帳を開いている。 
そんな事より姉さんの所に行ってほしいな。 
…どうせ行くわけないんだろうけど。 
そう確信していたんだけど、ウラタロスは何をおもったか携帯をポケットにしまって自転車を転がしながら歩き始めた。 
行く先は…ミルクディッパー。 
一体全体どういうつもりだろう。 

「…ま、あんまり嘘つくのも悪いし…行くだけ行ってあげないとね」 

そんな独り言を言いながら、ウラタロスはまっすぐミルクディッパーへ向かった。 
入口に自転車を止めて店を開けるとすぐにコーヒー豆の優しい香りが鼻をくすぐる。 
丁度、姉さんがのんびりとカウンターでコーヒーを作っているところだった。 
三浦さんや尾崎さんも相変わらずいつもの席で姉さんを眺めては悩ましげにため息をついている。 
本当、飽きない人たちだなぁ。 

「あら?良ちゃん…どうしたの、その格好…サラリーマンみたい」 

コーヒーを注いでいた姉さんがおもむろに顔を上げて僕を…いや、ウラタロスを見た。 
ピシッとした清潔感溢れる黒スーツと黒縁眼鏡。どうみても普段の頼りない僕には見えないだろう。 
僕を知っている人なら絶対、「どうしたの、その格好」と姉さんとおなじように言うはずだ。 
そんな問いをどう切り抜けるんだろうか、なんてみまもっていると、ウラタロスはおもむろに眼鏡を外して胸ポケットにしまってから妖艶に笑った。 

「ふふふっ…今、就職活動中なんだ。格好いいでしょう?」 

待て。僕はそんな色っぽい声出して笑わないよ。 
現に姉さんはきょとんとした顔をしていたけど、すぐにのほほんと笑って頷いた。 

「あらあら、そうなの…がんばってね、良ちゃん。すっごく格好いいわよ」 

「愛理さんこそ素敵ですよ」 

おい。 
ウラタロスは口を滑らせたのか、姉さんを熱っぽく見つめて言った。 
姉さんが顔を上げて目を瞬かせる。 
実の姉を口説く弟がどこにいるんだよ。 
そりゃあ、姉さんは綺麗だけど…。 
こんな事ならモモタロスのほうがまだ上手くやってくれるよ…。 
僕は内心で大きなため息をつく。 

「良ちゃん、コーヒー飲む?たった今出来たばかりのコーヒーだから…ねっ?」 

姉さんはウラタロスの言葉をスルーしてコーヒーを出した。 
さすがは姉さんだ。 
まぁ…取巻きたちから一斉に見つめられても総スルーできるような神経の持ち主なんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。 
ウラタロスは優雅という言葉以外に何ていう言葉で表現したらいいのか解らないくらい上品な仕草でコーヒーカップを受け取ると、目を伏せてそれを一口飲んだ。 
唇から細い吐息がもれる。 

「とってもおいしいです…」 

モロにお前の素じゃないか。 
僕はツッコミたいきもちを抑えてため息をついた。 
ウラタロスは僕が眠っているとおもっている。 
だから、今声をかけたりしたら気付かれてしまう。 
…今日は僕がウラタロスに仕返ししてやる番なんだ。 
もう少し気配を殺していよう。 

「良太郎く〜ん…ちょっとちょっと、その格好すっごいねぇ…まるで別人だよ?」 

コーヒーを飲んでいるウラタロスに近付いてきたのは尾崎さんだった。 
ウラタロスは近付いてきた尾崎さんを見て不愉快そうに目を細めていたけど、すぐ気を取り直すように色っぽく笑った。 
コーヒーカップをソーサーにそっと置いてからおもむろに尾崎さんへと向き直る。 
その表情は、男さえ釣り上げる気満々の艶っぽい笑みだ。 

「そりゃあそうでしょうね…別人ですから」 

「ってことは…悪霊!?」 

ウラタロスの言葉に反応したのは三浦さんだ。 
ああ、もう…やっかいな人ばっかり集まってくる…。 
僕の心情を表すみたいに、尾崎さんがやれやれと言わんばかりに肩を竦めた。 

「ったく…悪霊なんかいるわけないから。物の例え、っていうの知らないのかなァ?これだからオカルトマニアは…」 

「な、なにぃーっ!?」 

ウラタロスの目の前でふたりは口論を始めてしまった。 
本当に平和ボケすぎるくらい見飽きた光景だ。 
ウラタロスはコーヒーカップを取って一口飲みながら口論を観戦している。 
多分頭の中は女の事でいっぱいなんだろうけど。 
ふと、ボーッとしているウラタロスに、口論しているふたりの体がぶつかった。 

「あっ…!」 

ウラタロスのスーツにコーヒーが零れていく。 
じわっと広がった黒いシミは、腹から太ももにかけて清潔なスーツを汚した。 
しばし店内が沈黙する。 
のんびりとコーヒーを作っている姉さん以外はみんな、ウラタロスの汚れてしまったスーツを見て言葉を失った。 

「え、え、え、ええと…良太郎くん、ごめん!大丈夫かな?すぐ拭くから…」 

たっぷり10秒くらい経った後に尾崎さんが慌てながらウラタロスの太ももをハンカチで拭き取ろうとする。 
その動作に、ウラタロスの肩が小さく震えた。 

「あ…うっ…」 

ちょっとエッチなか細い吐息。 
その声を聞いてガバッと顔を上げた尾崎さんは口をパクパクさせている。 
ウラタロスは我に返ったように苦笑した。 

「あ、はは…僕は大丈夫ですよ。気にしなくていいですから…」 

遠慮がちに声を弱めてウラタロスが言う。 
へえ、こいつは太ももを触られるのが弱いんだ。 
ウラタロスの弱みを知ったような気がして微笑んだ僕は自分の手に意識を集中させた。 
できるかどうかわからなかったけど、試してみたかったから。 
イマジンに体を取られているときでも自分の体を操れるのかどうか…。 
ふと眉間が少し熱くなったような気がした時、右手がピクリと動いた。 
僕が動かしたんだ。ということは…。 
僕は尾崎さんの手を掴んでウラタロスのふとももの付け根に触れさせる。 
…尾崎さんには悪いとおもうけど。 
ふとももの付け根を撫でさせると、突然の出来事にびっくりした様子のウラタロスが身を強張らせた。 

「…っ、ひっ…な、何をするんですかっ!?」 

「ぎゃー!!いやいやいや誤解だって!良太郎くんからしたんだよ!?」 

「いいから…離してくださいっ!」 

ふとももの付け根を触られたウラタロスは、息を飲むような小さい悲鳴を上げて尾崎さんを押しのける。 
荒くなった息を殺して、ウラタロスがきつく目を閉じた。 
このナンパ亀は、びっくりするくらい敏感らしい。 
そんなウラタロスを見ていたら僕の中で、ドス黒いものがむくむくと沸きあがってきた。 
いつもいつも人の体を使って夜遊びをしているんだから、このくらいの仕置きは当然だろう。 
僕はウラタロスに声をかけてみた。 

『ウラタロス…』 

「…っ、良太郎…!?お、起きたんだ…?」 

ウラタロスは下を向いて小さな声で言った。 
起きた、っていうか起きてたんだけど。 
笑みを堪えながら、僕は続ける。 

『ウラタロスって男にそんなことされて感じるんだね…変態?』 

わざと声を低めて言うと、ウラタロスは黙り込んでしまった。 
さーて、どうやってこの頭を引っ込めてしまった亀をいじめてやろうか。 
僕はウラタロスを観察しながら考えていた。 
するとその時、姉さんが背中から声をかけてくる。 

「ねーえ良ちゃん、お姉ちゃんちょっと夕飯の材料買って来るから店番頼める?」 

「え…あ…はい」 

「あら、もう…相変わらず顔色悪いじゃない。良ちゃんには精力付くもの食べてもらいたいから…今夜は焼肉にしようかな?じゃあ、行って来ます」 

「…行ってらっしゃい…」 

ウラタロスの声には覇気がない。 
それでも愛想笑いみたいに口の端を上げた。 
本来の僕がするような微笑みだ。 
そのお陰で姉さんはいつもの様子で店を出て行った。 
姉さんが出かけて、すぐさま静かになったミルクディッパー。 
コーヒーの匂いが微かに鼻腔をくすぐる。 
僕は黙りこくったウラタロスに声をかけた。 

『ねえ、ウラタロス…尾崎さんを誘ってごらん?きみに絡んでくる女の人たちがするみたいに…』 

僕の囁きに、ウラタロスがぴくんと肩を跳ね上げた。 
胸のポケットに入れたままの眼鏡を取り出してかけたウラタロスは、眉を寄せてため息をつく。 

「…僕を脅してるわけだ?」 

『そう。嫌?』 

「いやだよ。男を誘えだなんて…そんな趣味、僕にはないんだ…」 

コーヒーのせいで濡れたふとももを見つめながら、声を落として言った。 
悲しそうな、戸惑った表情に同情しそうになるけれど、でも僕は折れてやらない。 
リュウタロスじゃないけど…「答えは聞いてない」ってやつだ。 
そんな事を考えていると、僕の体の奥でリュウタロスが笑いながら言った。 

『あははは!良太郎っていじわるだったんだぁ…意外だね〜』 

そう。僕はいじわる。 
でもウラタロスが悪いんだからしょうがない。 
今日はとことんいじめてやろう。 

『ねえねえ、僕もお姉ちゃんとお話したいよ〜。亀ばっかりずるい〜!』 

リュウタロスの甘えたような声に、僕は「今度ね」と返してから今自分の体を支配しているウラタロスを見やった。 
そわそわと辺りを見回しているウラタロスは、どうにか僕を誤魔化そうとするみたいに口を開く。 

「そ、そろそろ体を返すよ…良太郎。何だか疲れてきちゃったし」 

『だめ』 

僕は低い声で言った。 
簡単に逃がしてやるもんか。 
きみは今日、自分の立場をおもい知るんだ。 
イマジンならイマジンらしく、僕の言う事を聞くようにって理解させるため。 
モモタロスやキンタロスはいい子なのに、どうにもこの亀は主人に逆らう悪い子みたいだ。 
まぁ、リュウタロスも僕に逆らうけど…この子は子供だから許してやる。 
問題はウラタロスだ。 
どうやっていじめてやるか、もう僕の頭の中に作戦は組み立てられていた。 

『逃げるような真似をしたら…きみとパスの共用なんかしないよ?』 

僕の声に、ウラタロスがきつく唇を噛む。 
ナンパしか出来ない馬鹿な亀でもちゃんと日本語は分かるみたいだ。 
僕とウラタロスがパスの共用をやめたら…想像するだけでも楽しい。 
笑いがこみ上げてくる。 
僕の低い笑い声に、ウラタロスがきつく眉を寄せた。 

「…っ…悪趣味なんだね…良太郎は」 

『嘘つきのウラタロスよりマシだとおもうな…』 

僕は普段の間延びした声で言うと、店内を見回した。 
ここにいるのは僕らを含め尾崎さん、三浦さん、その他4〜5人ってところだ。 
全員を相手にしてもらうのも面白いかもしれない。 
僕は口を開いた。 

『パスの共用をやめたらどうなるか、わかるよね…。きみはデンライナーから降ろされて、永遠に時間の中を彷徨うんでしょ?』 

僕の質問に、返事は返ってこない。 
可愛くない亀だ。 
僕は意識を集中させて、ウラタロスの手を尾崎さんの肩に移動させた。 
尾崎さんには悪いけど…これもウラタロスを調教するため。 
申し訳ないけど協力してもらおう。 

「…な、良太郎…っ!?」 

ウラタロスは小声で抗議をする。 
引っ張られるようにして身を起こしたウラタロスを、そのまま尾崎さんにしがみつかせてやる。 
傍から見れば、急に"野上良太郎"が尾崎さんに抱きついたようにしか見えないだろう。 
尾崎さんは口をぱくぱくさせながら両手を上げた。 

「りょ、りょ…良太郎くん!?」 

「り…良太郎くんは邪悪な悪霊にとりつかれてるんだ…絶対」 

「そ、そうなの!?」 

三浦さんの言葉に尾崎さんがひっくり返った声を上げる。 
都合のいい解釈をしてくれた三浦さんは敬意に値するってものだ。 
ウラタロスは、尾崎さんにしがみついたままの格好できつく目を瞑った。 
肌が赤く染まっていて、僕が言うのもなんだけど結構かわいい顔だ。 

『デンライナーから追い出されたくなかったら早く尾崎さんを誘いなよ。…どうすればいいか分かるよね?』 

僕は急かすように言った。 
ウラタロスの頬はますます悔しそうに歪む。 
その間にも三浦さんは独自のオカルト思考で現在の状況を分析していた。 
その分析を熱心に聞いている尾崎さんに、ウラタロスがおずおずと声をかける。 

「あの…僕を…」 

ウラタロスは途中まで口にして顔を伏せた。 
ぎゅっと尾崎さんの体にしがみついて、肩口に顔を埋めながら次の言葉を考えるように眉を寄せている。 
その悩ましげなウラタロスの姿を見て尾崎さんはもちろん三浦さんたちもポーっとしていて。 
…一応ウラタロスの体は僕のものだからそんな目で見られるのはちょっと…いや、かなり微妙な気分だ。 

「や、やっぱりあの愛理さんの弟だ…。う、美しすぎる…」 

姉さんの取巻きたちは何やら小声で話しながらウラタロスを見つめていた。 
そんなウラタロスに見惚れていた内のひとりである三浦さんは、いきなりハッと顔を上げて懐から怪しげな本を取り出してページをめくりだした。 
乱暴に指でページをめくっていた三浦さんの手がピタリと止まる。 

「わ、わかったぞ!良太郎くんに憑いている悪霊の正体が!」 

三浦さんの裏返った声に、尾崎さんや取巻きたち、ウラタロスまでも顔を上げて目をぱちくりさせた。 
みんなの注目を集めた三浦さんは眼鏡をかけ直して本のページをみんなに見せる。 
本に映っていたのは男を誘っている女の人の絵だった。 

「な、なにそれ…」 

「サキュバスだよ、サキュバスっ!男の、せ、精液を貪る淫魔のことだ!」 

尾崎さんの質問に、三浦さんは息も荒く返事をした。 
っていうかウラタロスが淫魔って…。 
僕は笑いをこらえながらウラタロスの様子をみまもっていた。 
体の奥では、リュウタロスが「サキュバスっておいしーの?」と無邪気な質問をしている。 
さて、ウラタロスはどんな反応をするんだろう。 

「…ちょ、ちょっと待って下さい。僕は淫魔なんかじゃ…っ…んん…!」 

ウラタロスの上擦った声は唇によってふさがれた。 
もちろん、僕は何もしていない。 
唇を塞いだのは、尾崎さんだ。 
突然の出来事に、僕も少し驚いた。 
キスを受けたウラタロスはコバルトブルーの目を大きく見開いて、現状を理解できていないといったふうに瞬きを繰り返している。 
尾崎さんの口付けがおもむろに離れた。

「へェ…淫魔ねえ?そりゃ好都合だ。愛理さんを落とすならまずは弟くんから…ってね」 

尾崎さんはネクタイをゆるめながら笑った。 
同時に、取巻きたちから口笛と下卑た笑い声が聞こえる。 
三浦さんもパタンと本を閉じて、尾崎さんの言葉に納得したように口の端を上げる。 

「なるほど…みんなで良太郎くんをマワすってことか。サキュバスに精液を搾り取られないようにするんだぞ」 

どこまで本気で言っているのかわからないけど、三浦さんはゆっくりとウラタロスのそばに近付いてジャラジャラとした自分の首にたくさん引っ掛けているアクセサリーのひとつを取り外した。 
やたら長いそのアクセサリーを手に、ウラタロスの腕を掴むと、そのまま後ろ手に縛り上げようとする。 
すぐにウラタロスが手を払おうとするけど、そうはさせない。 

『抵抗したら、パスの共用はしないって言ったよね…?』 

「…っ…」 

僕の言葉に、ウラタロスがきつく唇を噛む。 
抵抗しない彼を見つめながら、三浦さんはさっさとウラタロスの両腕を縛り上げてしまった。 
同時に尾崎さんがウラタロスのスーツの前を開く。 
黒いスーツの前を開けると清潔そうなシャツが露になった。 
わざとじらすように、シャツの上からゆっくりと指でウラタロスの体のラインをなぞった後からゆっくりとボタンを外していく。 
ひとつ、またひとつボタンが外されるたびに、ウラタロスはコバルトブルーの瞳を細めて唇の端から小さく吐息を吐く。 
シャツのボタンを3つ外したところで健康そうな鎖骨が尾崎さんたちの目の前に晒された。 
そんな彼らを見て、ウラタロスが声を震わせながら言う。 

「…男の体なんて眺めても、面白くありませんよ?僕…姉とは違って汚い男ですし」 

ウラタロスはどうにかして彼らの性欲を打ち消したいらしい。 
尾崎さんたちがその気にならなければウラタロスが抱かれる必要もない。 
そう企んだんだろう。 
もしかしたら怯えた振りをしているのも演技かもしれない。 
僕はあえて黙ったまま現状をみまもっていた。 
ウラタロスのおびえたような問いかけに、尾崎さんが笑う。 
わざとらしくゆっくりとウラタロスの腰を抱いた尾崎さんは、顔を近づけて言った。 

「良太郎くん、きみから誘っておいてつれないなァ…。汚いか汚くないかは僕らが決めることだよ」 

そう言ってウラタロスの腰を強めに抱き寄せると、丁度ふたりが下腹部を押し当てるような格好になる。 
男のものを下腹部に当てられたウラタロスは、顔を伏せて僅かに眉根を寄せた。 

「…僕は男に抱かれる趣味なんか持ち合わせてないんだっての…勘弁してよ、良太郎」 

尾崎さんたちに聞こえないくらい微かな声で舌打ちをしたウラタロスは、身を堅くして口を噤む。 
同時に、ボタンを3つ開けられたシャツに手を忍び込ませた尾崎さんがウラタロスの体を撫で始めた。 
姉さんが帰ってくるまでまだ時間はたっぷりある。 
この人たちはどうやってウラタロスを調教してくれるんだろうか。 

「…っあ…は、っ…やめ…」 

尾崎さんが慣れた手つきでウラタロスの乳首を摘んでくにくにと擦り始める。 
乳首を刺激されるたびに、内腿を震わせているウラタロスは艶めいた吐息をつきながら快感に耐えるべく唇を噛む。 
清潔感溢れるスーツを乱して、シャツの中に手を突っ込まれている生真面目そうな青年の姿に欲情したのか、辺りからは荒い息が聞こえてくる。 
ウラタロスはそれに不快感を覚えたのか肩を震わせて目を瞑った。 
そんなイケナイ亀には追い討ちをかけてやることにする。 

『ウラタロス、きみはみんなを誘ってるんだよ…?淫魔らしく腰を押し付けておねだりしてごらん…』 

声を細めて言ってやった。 
ウラタロスは苦々しく笑って顔を上げると、口を震わせながら僕の命じた通りに言ってみせた。 
きっと彼らがもっとも求めているであろう言葉を。 

「…焦らされるのは嫌…です。もっと激しくして…?」 

吐息混じりにその言葉を言い終えた後のウラタロスは、ひどく冷めたような顔をして目を逸らす。 
ウラタロスからは嫌悪感がたっぷりと滲み出ている。 
もちろん、尾崎さんたちには気付かれない程度のものだ。 
彼らからは、ウラタロスが恥らっているようにしか見えないんだろう。 
ウラタロスの誘うような言葉に、男たちは満足そうに笑っている。 
僕は小さく笑った。 

『…演技派だね、ウラタロス。本当は触られるのも嫌なくせに』 

「…別に?抱かれてやってもいいかなっておもっただけだよ」 

ウラタロスはコバルトブルーの瞳を細めて笑った。 
嘘だ。 
口では強がっているみたいだけど、ウラタロスの体は小さく震えている。 
これからの行為に期待しているんじゃない。嫌悪と恐怖でいっぱいなんだ。 
こんな状態でも嘘がつけるってことは、相当強がりなんだろう。 

「良太郎く〜ん…乳首、勃っちゃってない?好きなのかなァ…ここを触られるの」 

尾崎さんの指が、強めにウラタロスの突起をつまみあげる。 
細い悲鳴が耳に入った。 
きつく目を瞑って、肩を震わせながら愛撫に応えているウラタロスは、悩ましげに吐息を吐いて顔を背ける。 
それだけで十分、男たちの情欲をかきたてるんだろう。 
尾崎さんがウラタロスの髪を撫でながら言った。 

「良太郎くんが触られてばっかりって言うのも不公平だよねェ…。どうせならここにいる人全員を満足させてみてよ」 

その言葉に、ウラタロスがぎょっとしたような表情をする。 
すぐに何かを言いかけようとしていたけど、ゆっくりと口を閉じた。 
完全にシャツの前を開かれたウラタロスは、やや強引にテーブルの上に座らせられる。 
同時に男たちが、自分のズボンのベルトを解き始めた。 
男たちの様子をテーブルの上から見つめているウラタロスは肩で息をしながらゆるく唇を噛む。 
自分が何をされるのか察したんだろう。 
嫌悪感を顔に表しながら僅かに身を捩った。 
そんなウラタロスを尾崎さんが制する。 

「おーっと…逃げるのはよくないよ、良太郎くん」 

「…に、逃げてなんかいませんよ。こんなに大人数を相手にするのが始めてなので少し怖くて…。これ、解いてもらえませんか?縛りプレイなんて品がないですし…」 

ウラタロスは苦笑しながら言った。 
その言葉をまんまと信じて、尾崎さんに指示された三浦さんが腕の拘束を外す。 
ウラタロスは、腕に残った拘束の痕を見ながら軽く舌を打った。 
もちろん、尾崎さんたちに聞こえない程度の音だ。 

「…ま、抱かれるだけで許してもらえるならいっか」 

強がりにも似たウラタロスの独り言は、僕の耳にちゃんと届いた。 
足の震えを止めて、いつもの流し目を男たちへ向ける。 
スーツをテーブルの上に置いた後、シャツの前を完全に開いてウラタロスが言った。 

「言葉の裏には針千本…千の偽り、万の嘘。それでもいいなら…お前ら全員、僕に釣られてみる?」 

その頬はやや上気している。 
艶かしい笑みに見えるけど、僕にはそれが切羽詰ったものだと感じられる。 
すぐさま男たちがウラタロスに詰め寄った。 
ズボンのジッパーを下ろして、成人したものを取り出した尾崎さんが笑う。 

「お言葉に甘えて釣られちゃおうかなァ…これ、舐めてくれるよねェ…?」 

尾崎さんの言葉に、ウラタロスは若干眉を寄せてから強気に頷いた。 
テーブルから降りて床に膝をつく。 
さすがに男のものを目の前にして触るのをためらうような仕草をしたけれど。 
俯き加減に笑って。 

「…すぐ終わらせてあげるよ、変態」 

「へっ?」 

「いいえ…僕が最上級の快感をあなたに捧げます、って言ったんですよ」 

ウラタロスは相変わらず色っぽい表情で嘘をつく。 
何だか、本当に嘘が好きなんだな。僕にはバレバレだけど。 
だってほら、指先が小さく震えてる。 
本当は逃げたくてたまらないくせに。 

「…っ…ん、う…」 

普段はきみが女の人に同じ事をさせてるんじゃないの?僕の体を使って。 
いい身分だよね。イマジンのくせに。 
ウラタロスは、細い指を尾崎さんのものに絡めて先端を舌先で舐めた。 
嫌悪感をあらわすようにウラタロスが小さく唸る。 
背中を震わせて、吐き気を覚えたかのように眉を寄せながら口を離した。 

『ちゃんと口に入れて舐めなよ。どうせ慣れてるんでしょ?きみは夜遊び大好きな発情亀なんだから…』 

僕は言葉でウラタロスをいじめた。 
背中を震わせているウラタロスがきつく唇を噛んで僕の言葉に耐えている。 
抱かれる趣味はない、なんて言いつつ万年発情してるんだもの。 
そっちの快感を教えてやったってバチは当たらない。 
むしろ感謝してほしいくらいだ。 
僕の言葉に煽られたせいか、ウラタロスはやや強引に肉棒を口の中にねじこんだ。 
歯を立てないようにゆっくりと、ゆっくりと肉棒を喉奥へ導いていく。 
時折、えづくような声を上げていたけど口を離したりはしない。 
嘘つき亀のクセになかなか根性あるじゃないか。 

「良太郎くん…良いよ、たァくさん舐めてお兄さんをイカせてごらん?」 

「ふぁい…んんっ…ぷは…」 

尾崎さんの熱い声に、ウラタロスは忌々しそうに眉を寄せたもののすぐにくぐもった吐息を漏らして肉棒をしゃぶり始めた。 
頭を上下させながら奉仕をするその姿に興奮しているのか、周りの男たちは自慰を始めながらニヤニヤしている。 
ウラタロスはそんな男たちを視界に入れないように目を瞑っていた。 
小さな口に肉棒が出し入れされるたび、ウラタロスの口から鼻にかかった声が漏れる。 
目尻を赤く染めて奉仕を続けるウラタロスを、尾崎さんが恍惚とした表情で見つめていた。 

「良いねェ、その顔。今まで何人としたのかなァ?愛理さんには黙っててあげるから教えてよ」 

尾崎さんの声に、ウラタロスがゆっくりと口を離した。 
ほんのりと色づいた唇から、先走りか唾液かよく分からないものが糸を引く。 
尾崎さんのものは先端をテラテラと光らせていてちょっとグロテスクだ。 
さすが大人ってかんじかな。僕より立派だし…。 
ウラタロスは、尾崎さんの問いかけに対して困ったように笑って見せた。 

「それは…言ったらきっと軽蔑しますよ?僕がどんなに汚い男か…知ってしまうから」 

細い指が肉棒をなぞってから、その下の睾丸を転がす。 
そこが良いのか、尾崎さんは荒い息をつきながらウラタロスの髪を撫でた。 
そんな尾崎さんを涼しい顔で見つめているウラタロスは、ほんの少し淋しそうな笑顔を作ってから再び舌で尾崎さんのものものを奉仕し始めた。 

「んふ…ちゅ、ぷ…んんっ…ん…ぐっ…ふぁ…」 

「いいよ、いいよ…ああ…もう出ちゃいそうだ…!」 

ウラタロスの、表向きは熱心な愛撫に尾崎さんが息を荒げる。 
乱暴に髪を掴んで頭を動かしながら更なる快感を求めるように腰を振っていた。 
きつく眉を寄せたままのウラタロスが物欲しそうに尾崎さんを見上げたとき、細い喉が熱い液体で叩かれる。 
口いっぱいに白濁液を溢れさせたウラタロスは目尻に涙を溜めながら口を離す。 
たっぷりと溢れたそれはウラタロスの綺麗なズボンをぐしょぐしょに濡らした。 

「さあ、良太郎くん…口の中に入れたものは全部ごっくんしないとねェ…?」 

尾崎さんは、ウラタロスの膨らんだ頬を見つめてにやにやと笑みを浮かべている。 
苦しそうに口の端から白濁液を滴らせていたウラタロスは、吐き気をこらえるように視線をあちこちに向けていたが不意に顔を上げて目を見開いた。 

「…っ!?」 

ウラタロスがびっくりしたような顔をして店の入口を指す。 
もう姉さんが帰ってきたんだろうか。 
尾崎さん含む男の人たちが一斉に店の入口を見やった。 
その隙に、ウラタロスは尾崎さんが飲んでいたのであろうテーブルのコーヒーカップに口の中のものを吐き出す。 
小さくむせながら、それでも新鮮な空気を口に入れてホッとしたような表情でウラタロスが店の入口を見つめる。 
…本当、根っからの嘘つき亀だね。調教しがいがあるけど。 

「あれっ…おかしいな。さっき、姉が立っていたような気がしたのに…幻覚かな」 

「もう〜、良太郎くんってば驚かさないでほしいなァ。せっかくいい所だったのにィ…」

調子よく首を傾げているウラタロスに向かって尾崎さんが困ったように笑った。 
そのまま、シャツの前を開けている彼の首筋にしゃぶりついて強めに吸い上げる。 
ウラタロスは嫌悪感を顔に表していたけど、音高く首筋を吸われると鼻にかかった声を上げて身を捩った。 
尾崎さんの腰が強くウラタロスのものに押し当てられる。 
腰をゆっくり動かしながら、ウラタロスの快感を呼び起こすように尾崎さんが言う。 

「…良太郎くん…きみがこんなに淫乱だとはおもわなかったなァ…。顔、真っ赤だよ」 

尾崎さんが指摘をすると、ウラタロスは首まで赤く染めて唇を噛んだ。 
それでも、あんな大見えをきったんだから抵抗できるはずもない。 
ウラタロスは唇を震わせながら笑った。 

「…僕がどれだけ淫乱か…確かめてみます?」 

艶っぽい吐息混じりの声を聞いて尾崎さんの情欲に火がついたらしい。 
尾崎さんはウラタロスの体を床に押し倒してシャツを完全に押し開いた。 
細身の体が露になる。 
だけど最近はモモタロスやキンタロスが僕の体を酷使するせいか、ほんの少し筋肉がついているようだった。 
それでも、まだまだ細いと自分でもおもう。 
もう少し鍛えないとなぁ…。 

「はぁ…っ、ん…んうっ!そんなにがっつかなくても…僕は逃げません…から…あっ…」 

ウラタロスはコバルトブルーの瞳を潤ませて囁く。 
胸元や首筋に赤い花びらを散らされていくたびに悔しげな表情をするものの、わざとらしく作った笑顔を向ける。 
そんなウラタロスを愛撫する尾崎さんは、さすがそれなりに経験がある男…と言うべきか手馴れた様子でウラタロスの体から快感を引き出していく。 
ズボンの前を開けられておもむろに取り出されたウラタロスのものは僅かに半勃ちしている。 
ウラタロスは眼鏡越しの瞳に涙を潤ませて息を荒げた。 

「…んく…っ…あんま、り…意地悪しないでくださ、いっ…。壊れちゃう…」 

その声は少し鼻にかかっていて、尾崎さんを刺激するには十分だ。 
尾崎さんは、ウラタロスの姿を見て自慰をしている男たちを呼び集めた。 
荒い息をついているウラタロスに向かって、尾崎さんは僕が喜ぶことを言ってくれるのだ。 

「良太郎くんにかけてやれ。もったいないだろ?」 

「…っ、え…?ちょっと…冗談は…」 

尾崎さんの言葉に、ウラタロスは警戒するように上体を起こしかける。 
けれど、そんなウラタロスの口へ強引に太い肉棒が押し込まれた。 
もう誰の精液も欲しくないだろうに、これからまた汚い精液を受け入れるのか…この亀は。 
イイザマだ。 
そうおもって見つめている僕に、体の奥にひそんでいるリュウタロスが言った。 

『ねえねえ…今度は亀、ちゃんとごっくんするの?』 

リュウタロスの無邪気な言葉で僕は口元に笑みを浮かべる。 
最初の咥内射精で、ウラタロスは尾崎さんのものを飲まずに吐き捨てたんだ。 
今回はそんな事をさせたりしない。 
僕はウラタロスの両手に意識を集中させた。 

「え…!?や…やめっ…んんんっ!」 

ウラタロスの両手をゆっくり持ち上げて男の肉棒をしっかり掴むと、僕はそのままウラタロスの喉奥に肉棒を押し込ませた。 
これで吐くことはできないだろう。 
両手の自由がきかず、突然喉を支配されたウラタロスは目を見開いて何度もうめき声を上げている。 

「…ぐぷ…っ、んんっ!むりぃ…りょ、た…ろ…んんぐ…やめ…うぐっ…うえっ…」 

僕はウラタロスの両手を上下させて何度も喉奥を突いた。 
その度にウラタロスが苦しそうな声を上げる。 
頭を上下させるたびに、コバルトブルーの瞳からはきらきらした涙が零れた。 
苦しそうな顔を見られて満足だ。ゾクゾクする。 
ウラタロスに奉仕を強要させていると、別の男がウラタロスの頬に肉棒の先端を押し付けて息を上げ始めた。 
そんな男をギロリと見やってウラタロスが口を開く。 

「おまえ…っ、むぐ…僕の顔に…っ…んん!ごほっ、ぐ…うっ…そんな、汚いものをっ…!」 

そろそろ本音が出てきたようだ。 
さて、尾崎さんたちはどうやってウラタロスを叩きのめしてくれるのかな。 
僕は笑みをこらえながらウラタロスに強引な奉仕を続けさせた。 
口の端から唾液と、男の先走りが伝っていく。 
そんなウラタロスを見て尾崎さんが愉快そうに肩を揺らした。 

「アハハ…良太郎く〜ん、これはやばいよ…お兄さんたち、我慢できなくなっちゃうよ?」 

「…っぐ…誰が誰のお兄さんだって!?」 

コバルトブルーの目が尾崎さんを睨む。 
口調がガラリと変わったウラタロスに誰も不信感を抱く者はいないらしい。 
誰もがすっかり興奮しきっているせいだろうか。 
尾崎さんは、ウラタロスのズボンを膝まで脱がせて下腹部を乱暴に扱き始めた。 

「お兄さんにそんなこと言っていいのかなァ?ほーら…良太郎くんのチンポもイカせてあげるからねェ…くくッ…」 

尾崎さんの下卑た言い方に、ウラタロスはますます不愉快そうに目を細めた。 
頬には幾筋も涙の痕が残っている。 
ウラタロスは、肉棒をしゃぶりながら言った。 

「勘違い…すんな。僕は…んんっ…こんな汚い事、好きでもないし…した事もないんだよッ!!」 

ウラタロスの語尾はかすれている。 
喉に先走りが絡まったのか、何度かむせ込みながらも舌を使うウラタロスの姿はとてもセックスが嫌いとはおもえない。 
ウラタロスは、ぜぇぜぇと息を荒げて肉棒の根元をチロチロと舌でくすぐった。 
そうして亀頭まで唇を移動させると眉根を寄せたまま音を立てて吸い上げる。 
店内に濡れた音が広がっていった。 
むくむくと勃起していくそれを見て、ウラタロスが憎々しげに笑う。 

「…っ、は…男に舐められて感じてるんだ?変態だよね…僕は臭いイチモツをしゃぶる趣味なんてないのにさ…」 

忌々しげに吐き捨てたきみは、ふたたび肉棒を口にして頭を上下に動かしながら苦しそうな声を上げた。 
その間にも尾崎さんの手がウラタロスのものを扱いていく。 
きもちいいのか、きみは時折内股を震わせながら尾崎さんの愛撫に応えていた。 
悪態をつきながらも奉仕を続けるウラタロスの姿を見て尾崎さんが笑う。 

「おやおや…本当は大好きなんだろう?良太郎くん…。僕らとシたくて誘ったくせに…」 

「それは…っ…僕の本意じゃない…!」 

くぐもった声でウラタロスが抗議をする。 
もちろん、そんな言葉なんか誰も聞いてない。 
膝までおろされたままのズボンを完全に取り去った尾崎さんは、ウラタロスの足をおもむろに開かせて言った。 

「きみの本意なんてカンケーないよ。僕たちはきもちよければいいのさ」 

仰向けの姿勢のまま足を開かされたウラタロスは息を飲んでかぶり振る。 
体を堅くしているウラタロスを見て、尾崎さんが三浦さんへ何かを耳打ちする。 
すると、おもむろに三浦さんはテーブルの上にあった苺ジャムの蓋を取った。 
中には姉さんの作った特製ジャムが入っている。 
それを指でたっぷり取った三浦さんは、ニヤニヤしながらウラタロスの足の付け根のもっと奥…つぼみへとぬりたくり始めた。 
ぬちゃぬちゃとした淫猥な響きに、ウラタロスがきつく目を瞑って声を上げる。 

「…ふぁ…っ…この…変態!そんな所に…ジャムなんてぇ…あぐ…うぅっ…!!」 

ジャムを塗りたくられたその部分はヒクヒクと震えながら更なる快感を求めるように動いている。 
いや、もしかしたら怖いだけかな? 
そうおもっていると、三浦さんがウラタロスのつぼみに中指を差し込ませた。 
ジャムのせいか、ぬるりと吸い込まれていくその指の感覚に不快感を覚えたのか、ウラタロスは歯を食いしばって身を捩る。 

「やめ…ああぁっ…!変態っ…へんたい…っ!やめろ…もう…この体が辱められるのは…嫌だっ!!」 

身を捩って声を上げたウラタロスをじっと見つめていた尾崎さんは、やにわにウラタロスの頬を叩いた。 
叩かれたウラタロスの頬がじんわりと赤く染まっていく。 
ウラタロスはぼろぼろと涙を零しながら店の天井を見上げていた。 
そんなウラタロスを見下ろして尾崎さんが言う。 

「わがまま言うなよ。きみがしたいって言った事だろ。…男なら最後まで責任取りなよ」 

「…僕、したくて言ったんじゃな…っ…うっく…」 

ウラタロスは、肩を震わせながらかぶりを振った。 
その間にも三浦さんの指はウラタロスの中を探っていく。 
くちゅ、くちゅ。 
ジャムのせいで水音はどんどん激しくなっていった。 
その音がウラタロスの耳に届くたび、きみはしゃくりあげて唇を噛んでいる。 

「…っだめぇ…りょ、たろ…の、体に…これいじょっ…あうっ…!やめろぉ…っ…!」 

足を広げさせられた格好のまま、ウラタロスは悲痛な声を上げる。 
別に僕は自分の体がどうなろうと関係ない。 
僕が今したいのは、ウラタロスを教育すること。 
ウソをついて僕を騙したり、勝手に体を使って夜遊びしたり出来ないよう教え込むことだ。 
それなのにこの嘘つき亀は、僕の体を心配しているらしい。 
どこまでウソをついているんだか。 

「あっ…ふぁ、う…りょうたろ…んんっ…もうゆるしてぇ…!今なら、僕ぅ…逃げられる、からっ…きみの体、まもれるからぁ…っ!」 

『何言ってるの?僕はきみを教育しているんだ。嘘をついてる余裕があったら、自分のプライドをまもる事でも考えてなよ』 

「嘘じゃな…っ、あああぁ…っ!いた、いぃ…っ…」 

ウラタロスの悲痛な声に、僕はアッサリと返してやった。 
僕の体を逃がせたいという口実を使ってこの行為から逃げようという魂胆なんだろうけどそうはいかない。 
奴の両手に意識を集中させると、再び両手は僕の自由に動かせるようになった。 
片手で一本ずつ男のものを握らせて、それを上下に扱いていく。 
ウラタロスは切羽詰った様子で大きく喘いだ。 

「良太郎っ…あぐ…っ…ごめんなさ…ごめ…うっく…ああぁ…っ…!きみの、体なのにっ…ひっ、ぐ…僕の、せ…で…」 

口の端から唾液を零しながらウラタロスが言う。 
そんなエッチな顔で言われても説得力なんかない。 
僕はウラタロスの手を操作して男のものを乱暴に扱いた。 
彼の体内に挿入された指は鍵状に曲げられて、音を立てながら陵辱されていく。 
三浦さんが笑いながら言った。 

「良太郎くんが自分で自分の名前呼んでる…。本当に悪霊がついておかしくなっちゃったんじゃないのか?そろそろ終わりにしてやるとしよう」 

三浦さんの言葉に、尾崎さんが口角を上げた。 
言い返す気力もなさそうなウラタロスの足を抱え上げて、おもむろに腰を寄せる。 
ジャムで解れたそこに尾崎さんのものが当たって。ウラタロスの体がびくりと震えた。 
慣らしたと言っても、さすがに女の人の体とは違うからウラタロスは苦しそうな表情で僕の名を呼んだ。 

「りょ、たろ…いやだぁ…っ…!」 

悲痛な声は、鈍い音と共に飲み込まれる。 
肌と肌の擦れあういやらしい音が店内に響く。 
そう、これだ。僕の求めていたシチュエーションは。 
集団で無理やり組み敷かれて、奉仕を強要させられながら徐々に堕ちていく嘘つきで女タラシなきみをずっと見物してみたかった。 
今がその状況なんだ。 
ウラタロスは、喉から掠れた悲鳴を漏らして苦しそうに目を瞑る。 

「あぐっ…ん…ひぃ…!奥っ…くるな…ぁ…!あっ、あ…突かないで…そこ、うぁ…っ!」 

余裕のない、濡れた声。 
乱暴にされて体を揺すられるのがそんなにも良いのか、ウラタロスの声はだんだん甘いものが混じっていく。 
ウラタロスはコバルトブルーの瞳から涙を零して苦しそうな息をついた。 
パン、パン、と肌のぶつかりあう音が店内に聞こえる。 
別の男たちはウラタロスの胸や下腹部に舌を這わせながらいやらしい笑みを浮かべていた。 
好き勝手に体を弄ばれて、ウラタロスは息も絶え絶えになっている。 
時折、苦しそうに悲鳴を上げたりするものの徐々にプライドの壁も崩れてきたのか、遠慮がちに腰をもぞつかせ始めた。 
そんなウラタロスを見て尾崎さんがいやらしく笑う。 

「おやぁ?良太郎くん…腰が動いてるよ。僕のチンポをきつく締め付けて離そうとしないねェ、きみのケツマンコは」 

尾崎さんの下品な言い方に、ウラタロスが顔を赤らめる。 
快感に溺れ始めたといってもまだ理性は残っているようだ。 
コバルトブルーの瞳は潤んだままきつく細められていた。 
探るように腰を突かれて、ウラタロスが苦しそうな吐息を漏らす。 
本当はもっと奥に欲しいくせに。 

『ウラタロス…言ってごらん。"僕の淫乱なケツマンコに尾崎さんの精液を注いでください"…ってね』 

僕はわざと囁くように言った。 
もうウラタロスは反抗するつもりがないらしい。 
震える舌を突き出して、甘ったるい声で僕の望んだ通りのセリフを口にした。 

「…っぐ…僕のぉ…いんら、ん…な…けつまんこ、にぃ…っあぐ…!尾崎さんの、せーえき…注いでくださぁ…いっ…!!」 

しゃくり上げながらそう言ったウラタロスを見て尾崎さんがゴクリと息を飲む。 
突き出されたままの舌がヒクンと震えた。 
誘うかのように動いている舌に導かれるように尾崎さんがウラタロスの唇を奪う。 
ウラタロスは息を詰まらせて声を上げたけど、おもむろに目を伏せて腰を動かし始めた。 
恥ずかしそうに、それでもどこか陶酔したようにうっとりと口付けに酔いしれながらウラタロスは行為に没頭していた。 
これがあの嘘つき亀の姿だとはねぇ。 
僕は笑いながらウラタロスに言った。 

『気分はどう?ウラタロス…』 

「んっ、ぐ…さい、こうっ…っんあ…はぁ…うぁ、あうっ…もっと、激しくして…!」 

ウラタロスは僕の望んだままのセリフを返してくれる。 
こりゃ完全に堕ちてくれたかな。 
そんな事を考えながら、僕は店内で起きている情事を見物していた。 
体の中を男のもので突かれながら体中男の先走りでべたべたにされて、それでもきみは悦んでいる。 
コバルトブルーの綺麗な瞳から涙の雫を光らせながら。 

「もうイクよ…良太郎くんっ!きみたちも早く、良太郎くんにたっぷりぶちまけてやるんだ…!」 

尾崎さんの合図に、三浦さんたちが自身を扱き始めた。 
ウラタロスの髪の毛に自身を絡めたり、頬に肉棒を擦りつけている変態もいる。 
びくびくと背筋を震わせていたウラタロスがきつく目を瞑って尾崎さんの背に爪を立てた。 
絶頂が近いらしい。 

「ここかなァ…?良太郎くんが一番感じるところは…」 

尾崎さんのねっとりとした声色に、ウラタロスが大きくかぶりを振る。 
けど顔を真っ赤にしながら否定されても説得力はない。 
尾崎さんもそれが分かるんだろう。 
腰の突き上げは一層激しくなった。 
揺さぶられるだけになったウラタロスは店の外にまで響きそうなみだらな声を上げている。 

「あっ…ぐっ…ああぁっ!ひ、あぅっ…んあ…きもちっ、いいよぉ…!ぼ、くが…壊れちゃったらぁ…どうすんのっ…!」 

ウラタロスは揺さぶられながら甘ったるい声を上げて絶頂に近付き始めていた。 
ふとももをしっかりと掴んで腰を打ち付けている尾崎さんの動きが切羽詰ったものになっていく。 
その時、ウラタロスの頬に自身を擦り付けていた男が呻き声を上げた。 
ウラタロスの頬から髪にかけて、一気に白濁したものが飛び出す。 

「…ひっ…い…んっ…あああぁァ…っ!!…うぁあああ…っ…」 

男が達したのが合図になったのか、ウラタロスの体が弓なりに反り返った。 
ウラタロスのものから飛び出した濁った液体は尾崎さんの腹やウラタロス自身の胸から腹をべっとりと濡らす。 
同時に尾崎さんもウラタロスの体内に勢いよく射精をした。 
熱い迸りがウラタロスの中に注がれていく。 
行為の前に、ウラタロスが嫌っていたものだ。 

「…っあ、あふ、う…僕の中ぁ…すごい、よぉ…どろどろ、いっぱ…い…」 

「中だけじゃないよ、良太郎くん」 

放心状態のウラタロスに、尾崎さんが指を鳴らした。 
残りの男たちが一斉にウラタロスの顔目掛けて白濁液をぶちまける。 
ウラタロスはうっとりとした顔をして口を開いた。 
じょろじょろと嫌な音を立てて、精液がウラタロスの咥内に注がれていく。 
ウラタロスは喉を鳴らしながらそれを飲み下していった。 
口の端や頬、額から白いものを垂らしてウラタロスが笑う。 

「んぶ…んぐっ…臭いよ…あんたらのセーエキ…。でも…さいこー…」 

ふらりと身を揺らしながら上体を起こしたウラタロスは、手や顔についた精液をぺろぺろと舐めながら物足りなそうな艶っぽい吐息を漏らす。 
満足だ。ここまで堕ちてくれるとはおもわなかった。 
自分から望んで白濁まみれになったんだからね。 
僕はウラタロスに声をかけた。 

『よくやったね、かわいかったよ…ウラタロス』 

僕が声をかけるとウラタロスはぼんやりとした顔をしていたけど、おもむろに口元を緩めて笑った。 
どこか悲しそうな、だけど照れくさそうな…真意が汲み取れない笑み。 
ウラタロスは精液で濡れた指をぺろりと舐めてから呟いた。 

「…かわいかった、なら…僕を好きになってくれるの…?モモタロスより、も…」 

掠れたその声は、何かを乞うような様子だった。 
どうしてそこでモモタロスが出てくるんだろう。 
僕は少しだけ苦笑した。 
しばしの沈黙のあと、ウラタロスはゆっくりと目を閉じて笑う。 

「…僕の嘘、良太郎に見破ってほしい…な…」 

自嘲気味に笑ったウラタロスはゆっくりと床に寝転がった。 
再び、男たちがウラタロスの体に覆いかぶさっていく。 
体内に男のものを受け入れて揺さぶられ始めたきみは、嬉しそうに声を上げて仰け反る。 
コバルトブルーの瞳を閉じた目尻からは一滴の光が零れていた。 
その涙が何を意味するのか、僕にはわからない。 
ウラタロスが何の嘘を見破って欲しいのか、それさえもわからなかった。


















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とってもドマイナーCP失礼しました。
亀のかたおもい、というオチです。