見慣れない着流しが視界の端にちらりと映った気がした。 
デンライナーが音を立てて揺れる。 
その心地いい揺れが眠気を誘った。 
壁にもたれるようにしてうとうとしながら、僕は目の前の気配を感じていた。 
リュウタロスかともおもったけど敵意みたいなものは感じられない。 
モモタロスでもないし、ウラタロスでもない。 
じゃあ目の前にいるこの着流しの男は…。 

「…何?キンタロス…」 

僕は寝ぼけたような声で言って目を瞬いた。 
壁に背を預けて座り込んでいる僕をじっと見つめているきみは、慌てたように身を離す。 
何をしようとしていたのか察しはつくが、顔が真っ赤になっていた。 

「な、な、なんや…起きとったんかい!俺、てっきり…」 

きみは慌てたように後ずさると、その場に膝をついて言った。 
何でキンタロスがこんなところにいるんだろう。 
ここは食堂車からずいぶん離れた車両なのに。 
僕が問いかける前にキンタロスが口を開いた。 

「…言われたとおり…ひとりで来たで。…するんやろ?」 

遠慮がちに着流しをはだいてキンタロスが言った。 
金色の瞳が小さく揺れる。 
僕はキンタロスを手招いて膝の上に座らせた。 
乱れた胸元を掴んで引き寄せると、抵抗なく唇が重なる。 
乾いた音が水っぽいものに変わるまで、そう時間はかからなかった。 

「…ん、はぁ…あ、んん…」 

大人しく体の力を抜いてくぐもった声を上げるきみは大人の色気がある。 
僕は僅かに膝を立ててキンタロスのものを軽く刺激してやった。 
突然の快感にびっくりしたのか、きみはひっくり返ったような声を上げて僕のすぐ隣にある椅子に手をかけた。 
よろめく体を支えるように。 

「ひっ…!な、なんやいきなり…」 

キンタロスの声には戸惑いのようなものが混じっている。 
それを敢えて無視した僕は膝頭でキンタロスの下肢を刺激してやった。 
もちろん逃げられないように強く腰を抱き寄せて。 
膝でいじめてやっただけでキンタロスはしゃくりあげるような声を出した。 
相変わらず敏感だ。 
そういう風に開発したのは他でもない僕なんだけど。 

「どうかな、キンタロス…此処をぐりぐりされて…きもちいい?」 

すぐ目の前の顔に問いかけると、きみは金色の瞳を細めて唇をまっすぐ結んだ。 
口の端から漏れている掠れた声は時折しゃくりあげるみたいに震えている。 
僕は、キンタロスの腰に腕を回して微笑みかけてみせる。 
もちろんその間でも膝での愛撫は忘れない。 
キンタロスは腰を僅かにもぞつかせて呟いた。 

「俺は…3バカトリオみたいに軟弱な男やない。……慣らさなくてエエから…良太郎の好きにせェ…」 

彼が言う3バカトリオというのはモモタロスとウラタロスとリュウタロス…の事かな? 
確かにキンタロスの体はあの3人に比べて頑丈だ。 
多少酷い事をしても失神したりしないだろう。 
僕は口の端を上げてキンタロスの腰を撫でた。 
ビクリと肩を震わせたきみと目が合う。 
もう一度、僕はキンタロスに口付けた。 

「……わかった。酷くする」 

「…う、あっ…」 

キンタロスの声が一瞬だけ艶のこもった声になる。 
不思議だね、僕らは男同士なのにこんなことをしてるなんて。 
まあ…僕は電王として、取り憑いたイマジンたちをちゃんと従えさせる義務がある。だから特に何ともおもっていない。 
言う事を聞かないイマジンには実力行使が一番だとハナさんも言っていた。 
だから僕はこうしてイマジンたちを調教している。 
時代劇の本を見ても、よく主人公が敵を屈服させるために無理やりセックスをする描写があるけど、今の状況と似てる気がする。 
きみもそうおもうでしょ? 

「キンタロス…入れるよ…」 

僕は膝の上に乗ったキンタロスを見つめて言った。 
着流しの中に手を差し入れて、股ぐらを指でなぞってやる。 
これから与えられる快楽に期待しているのか、キンタロスはか細い吐息を漏らして小さく頷いた。 
きみの肩を抱いて、さっそく挿入を開始する僕。 
こっそりくすねたナオミさん特製ジャムをキンタロスのつぼみにたっぷりと塗りたくってからの挿入だ。 
キンタロスは一瞬息を飲んで、もたれかかった椅子の背中をきつく握りながら歯を食いしばる。 

「…やらしい顔だ。お仕置きしないとね」 

きつく目を閉じて羞恥に耐えるキンタロスは、従順だし淫乱だし…十分僕の性玩具として役立ってくれている。 
けど、それだけては足らない。 
むしろつまらないくらいだ。 
モモタロスみたいに抵抗されたほうがいい。 
ウラタロスみたいにプライドを落としてやったりしたい。 
リュウタロスみたいに泣き喚いてもらったほうがそそられる。 
きみは?キンタロス。 
イマジンの中で唯一従順で扱いやすくて、淫乱な奴ってだけが取り柄。 

「それじゃあつまらないんだよ」 

「ひっ、ぎ…くぅっ…ああぁっ…!」 

僕はキンタロスの腰を両手で掴んで自分のものを無理やりねじこんだ。 
掠れた悲鳴がデンライナーに響いたのは一瞬だけ。 
キンタロスは右手で自分の口を押さえながら、圧迫感に耐えるように左手で椅子のシートをきつく握った。 
ジャムのおかげか、僕のものは多少の抵抗はあったもののすんなり受け入れられる。 
着流しから覗いたふとももがピクピクと震えている。 
それを隠す余裕さえないのか、きみは口を押さえた手の端から何度も喘ぎ声を漏らしてかぶりを振った。 
何となくそれがムカついたから、僕は強引にキンタロスの右手を引き剥がして唇へ口付けた。 
キンタロスはくぐもった声を上げながら、僕の口付けにびっくりしたように身を捩らせる。 

「んん…っ、ふ…!ぁぐ…はぁ、あっ…!」 

口の端から漏れる吐息がいちいちいやらしく僕の脳を刺激する。 
きみが声を出すたびに僕のものはどんどん堅くなるんだ。 
僕は少しだけ乱暴にきみの中を突き上げた。 
背を弓なりに逸らせたキンタロスは、首まで真っ赤に染めて僕に揺さぶられるままの人形になる。 
人形。 
きみは人形。 
僕の性玩具。 
だけど抵抗くらいしてよ。 
つまらなすぎる。 

「期待外れだよ…。嘘でも"やめて"とか言えないの?」 

僕の問いかけに、キンタロスがキュッと目を細めた。 
何を言っているのかわからないと言う表情にも見えるし、どこか悲しげにも感じられた。 
僕はジャム瓶に指を突っ込んでぐちゃぐちゃとかき回すと、キンタロスの咥内へ指ごとプレゼントしてやる。 
少しえづきそうに肩を震わせたキンタロスはすぐに僕の指を舐めながら熱っぽい吐息を漏らした。 
くちゅくちゅとキンタロスの口がいやらしい音を立てる。 

「…っ、あ…ひ…んく、んん…甘ぁ…りょたろ…」 

言いながら、キンタロスはぎこちなく腰を動かした。 
どうにかして僕に気に入られたいらしい。 
そんなことしても僕の心はきみなんか見てないよ。 
僕はキンタロスの腰を片手で支えたまま突き上げを早めた。 
掠れた声が次第に上擦っていく。 
同時に、布の破けるような音と金属が折れるような音がした。 
ジャムを舐めていたきみがおもむろに視線を泳がせる、と。 

「あ…わあぁッ!!何で壊れたんや!?」 

キンタロスがずっと握りしめていた座席のシートは椅子ごと砕け散っている。 
どれだけ強い力で握りしめていたんだか。 
僕は小さくため息をついてジャムまみれの唇に口付けた。 

「あーあ、きみのせいで僕までオーナーに怒られる」 

「す、すまん…俺、力の加減が出来んくて…つい…」 

キンタロスは見ているこっちが申し訳ないくらいに肩を落として謝罪した。 
とんだハプニングのせいで僕のものも萎えてしまった。 
キンタロスのせいだ。 
この怪力バカ。 
僕はキンタロスの頬を手で撫でてから一気に引っ張り上げた。 

「…っあう!」 

「すまんの一言で済ませるほど僕はお人好しじゃない。動いてよ」 

頬を指で引っ張りながら言ってやるときみは救いを求めるように僕を見つめて、ぎこちなく腰を使い始めた。 
椅子を掴んでいた手は震えながらキンタロス自身の下肢へ伸びる。 
…そう、わかってるじゃないか。 

「いい子だよ、キンタロス…」 

いい子すぎていじめたくなるくらいにね。


















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「何で壊れたんや!?」が書きたかっただけのエロです(笑)
金受好き仲間を切実に探してますー!