夢の中で水の音がする。
ひんやり、して、きもちいい。
ぴちゃん、ぴちゃん。
僕は大きく息を吐き出しながら身を捩ろうとした。
シーツがむきだしの腕に触れてすぅっとした冷たい感覚が広がる。
まだもう少し眠っていたかったのだけど…。
「んん…ぐっ…」
くぐもった小さな悲鳴が耳に入る。
喉に何かがからまったような、苦しげな声だ。
僕の声じゃない。
でもその声で目が冴えてしまった。
ゆっくりと目を開けると、そこには僕の下肢に顔を埋めているイマジンがいる。
息が止まりそうになった。
「キンタロス…どうしたの…」
寝ぼけてろれつの回らない声で言うと、きみはおもむろに顔を上げて苦笑した。
ゾクッとするくらい色っぽい顔で、きみが僕のものを舐め上げる。
くちゅ。
ああ、この音だったのか。
キンタロスが僕のものを舐めている音。
卑猥で、いやらしくて、背徳的な行為を繰り返している音。
「…見てわからんか?夜這いに決まっとるやろ。んくっ、はぁ…ん…」
キンタロスは僕のものの先端を指で押さえてからゆっくり離した。
先走りの糸が引いていく。
金色の瞳がキュッと細められる。
普段は、モモタロスが言うように置物みたいに眠ってばかりのキンタロスだけどずいぶん床上手だ。
慣れてなんかいないだろうに、舌で僕のものを舐め上げて鈴口に吸い付く。
眉間にしわを寄せながら何度も、何度も。
「亀の奴が…良太郎が最近疲れてるから、労ってやろうって言うたんや。労ると言っても俺は不器用やから、こんな形でしか良太郎を労ってやれん。…すまんなぁ」
キンタロスはすまなそうに苦笑すると、僕のものを口いっぱいに含んで頭を動かし始めた。
口をすぼめてくぐもった声を上げるキンタロスは時折金色の目を僕に向ける。
欲するような、すがるような瞳。
そんな目をされたらたまらない。
僕はキンタロスの髪を掴んで上下に動かした。
つり目がちの瞳がギュッと閉じられる。
僕はそんなキンタロスを見下ろしながら言った。
「舐めろ、最後までしてやる」
僕が声色を変えて言うと、きみは喉をひくつかせて小さく頷く。
はだけられた着流しの合間から手を滑らせたり、靴のつま先できみの下腹部をつついてやる。
そんな行為に耐えているきみは、喘ぎながら腰帯に手をかけた。
腰帯を解くとキンタロスの引き締まった体が露わになっていく。
僕は押し倒してやりたいのをこらえて彼の奉仕を見つめていた。
うっとりした表情で時折僕のものに口付けて、巧みに舌を動かして。
まるで娼婦みたいだ。
「慣れてるんだね。そんなにいやらしい顔で舐めるんだもん…今まで何人としたの?」
僕はキンタロスの髪を撫でながら問いかけた。
10人や20人がキンタロスを開発したなんて聞いたら腹が立つな。
でも…たった一人がキンタロスを開発したのだとしたらもっと腹が立つ。
僕のそんな問いかけに、キンタロスはかぶりを振って言った。
もちろん手は動かしたまま。
「んー…質問の意味がよう分からんけど…俺は良太郎が教えてくれたようにやっとるだけや」
キンタロスは普段と変わらない声で言うと再び僕のものを口に含んだ。
そんな顔をされると、とても乱暴なことをしてやりたくなっちゃうよ。
ねえ、キンタロス。
「ひっ…うぁ、良太郎っ…まだ終わってな…」
「静かにしろ」
僕は声をひそめた。キンタロスの体を強引に押し倒して、床に寝かせる。
キンタロスも興奮していたのか、半勃ちしている下肢が目に入った。
引き締まったふとももを持ち上げた僕は、そのままキンタロスを見下ろす。
恥ずかしい場所をさらけ出しているきみは小さく喘ぎながら僕に片手を差し出して言うんだ。
「りょ…たろ…。焦らさんでエエよ…っ…」
掠れた声で笑うキンタロスの健気さに、僕は頷きを返してやる。
馬鹿みたいにまっすぐで、純粋で、疑うことを知らないキンタロス。
綺麗なきみだからこそ滅茶苦茶にしたくなるんだよ。
どこまでも純粋に僕を信じる姿は少しだけ哀れにも見える。
僕はきみを汚しているのに。
「…っ、あぅ…や…くぅ…!」
吐息混じりに喘ぎながら、キンタロスが身を捩った。
首筋を舐めて、片手で彼自身のものをしごいて刺激を与えてやる。
少しでも負担を減らすために。
僕の手の動きに合わせて、キンタロスが肩を揺らす。
キュッと眉根を寄せて苦しそうに、でも艶っぽく喘ぐきみは甘ったるい声で僕の名を呼ぶ。
「ふぁ、あっ!ぐ…良太郎ォ…」
「感度がいいね…キンタロスは」
僕が言うと、キンタロスが足を閉じるような仕草をした。
それでも僕に逆らおうとしないきみの真意が理解不能だ。
次第に息の上がり始めた様子を見計らって、僕はキンタロスのつぼみに指を押し当てる。
まずは一本。キンタロスの中をぐるりと一周させて。
僕は指の動きを早めながら問いかけた。
「…どうされたい?ただセックスするんじゃ芸がないし…きみの好きなように犯してあげる。…良い子だしね、キンタロスは」
僕の問いかけにキンタロスが目を丸くする。
その頬に赤みが差したのを僕は見逃さなかった。
答えを求めるように顔を寄せると、きみは恥ずかしそうに目を瞑って僕の袖をゆるく掴む。
力強く掴んだら服が破れてしまう事をちゃんと理解しているらしい。
キンタロスは唇を震わせながら僕の耳に顔を近づける。
本人の声とはおもえないくらい小さな小さな声で、きみは言った。
「…俺のこと、突いて…滅茶苦茶にしてくれ」
せっかく好きなように犯してやると言ってやったのに、きみは普段と変わらない事を口にする。
どこまでもつまらない奴だ。
僕は軽くキンタロスを睨んでから、おもむろに床へ寝そべった。
いきなり床に寝ころんだ僕を見て、キンタロスは目を瞬かせながら首を傾げている。
丸くなった金の瞳がカワイイ。
「上に乗って」
キンタロスの頬をつついて言うときみは遠慮がちに頷いてから上体を起こした。
僕の腰を跨いで腰掛けたキンタロスが次の指示を煽るように僕を見つめる。
恥ずかしそうな金の瞳に見つめられてくすぐったい。
僕はあえて黙っていた。
その代わり、僅かに腰を突き出して彼のつぼみに押し当ててやる。
きみは背筋をピンと伸ばしてからきつく目を瞑って頷いた。
…性格はアレだが、なかなか頭がいい。
「…っあ…あ、りょ、たろぉ…意地悪、すんなや…」
キンタロスは大きく息をついて手を後ろに回した。
僕のものに手を添えながらゆっくりと腰を上げる。
その様子を、僕はじっくりと観察していた。
キンタロスは必死に僕から目を逸らして恥ずかしそうに唇を噛んでいる。
「見んな…っ、あ…あぁァッ!!」
先端部分が飲み込まれていく。
キンタロスの熱い場所は僕のものを苦しそうに迎え入れてくれた。
彼の意志の強さを表すみたいにそこはきつく、狭い。
いくらキンタロスでも僕を受け入れた部分だけは鍛えていないらしく、時折眉を寄せながら内股を震わせた。
ゆっくりと時間をかけて挿入されていく様子を、僕はじっくりと見つめている。
半分くらい埋まった所でキンタロスが僕を見つめて呟いた。
「…うまく、出来ん…」
言葉はたったそれだけだったけど、困りきっているのはすぐに分かる。
僕はキンタロスのふとももを撫でながら笑う。
ここで優しく慰めてやるのも飼い主としてのつとめ、かな?
だけど僕はそれをしなかった。
「根元まで入れられたら…ご褒美をあげるよ」
「そんなん…無理や…っあう…!」
少しだけ腰を突き出すと、キンタロスは苦しげに眉を寄せて息を吐いた。
目尻に涙を浮かばせて羞恥に耐えながら腰を落としていくキンタロスの姿はかわいらしいものがある。
いつも眠ってばかりのきみが、今は自分で僕の上に乗っている。僕のことを感じている。
少し優越感みたいなものを覚えた。
「…っ、ん…あふ…っ、デカ…い…入りきらんわ…」
キンタロスは恥ずかしげに呟いて床に手をつく。
僕に顔を寄せて腰を低めながら挿入を続けるきみは時折、僕の唇をじっと見つめて喉を鳴らす。
キスがしたくても言えないんだろう。
こいつはそういうイマジンだ。
僕はキンタロスの後頭部に手を当てて、そのまま口付けた。
柔らかな唇が僕のものに触れる。
触れ合うだけの口付けを、喰らうような口付けに変えて僕はキンタロスを抱き寄せる。
「んっ…あ、ううぅ…!りょ、たぁ…んぅっ、ふ…」
深い口付けと同時に僕のものはキンタロスの最奥へ飲み込まれていく。
そろそろ動いてやらないとかわいそうかな。
僕は腰を突き出すようにしてキンタロスの中を犯した。
突然動き始めた僕のものを感じて、きみが掠れた悲鳴を上げる。
…やめる気はない。
「どう…?きみが待ち望んでいたものだよ…」
言いながら突き上げてやると、キンタロスはきつく目を閉じて僕にしがみつく。
ついでに、勃起しているものを上下にしごいて感度を高めてやった。
キンタロスの声が上擦る。
「やっ…あ!うぅ…っあん…そこはアカンっ…よせぇ…!」
よせと言いながらもキンタロスのつぼみは僕のものを締め付けて離そうとしない。
それどころか、食いちぎるようにくわえこんでくる。
彼は気付いていないのだろうけれど、腰がみだらに揺れているのも事実だった。
僕はキンタロスのものの先端を指の腹で擦って微笑んでやる。
「あかん?じゃあ何で動いてるわけ?…乳首もコッチもカチカチだよ」
「言う…なっ!俺っ…あかん、ぐぅ…やっ…飛びそ…」
キンタロスは苦しそうに肩で息をしながら僕に口付けを返した。
すがるように、求めるように。
互いの舌が絡まるたびにいやらしい水音がこぼれる。
きみはうっとりしたように舌を差し出した。
「りょ、たろっ…良太郎…もっと、んぐ…キス…あはぁ…あぐっ!」
キスの合間にも腰を動かしてやるときみは掠れた喘ぎ声を漏らして僕にしがみついた。
…そろそろ仕上げかな。
腰の動きを早めながらキンタロスのものを擦り上げて絶頂を促しつつ、僕自身の快感も高めていく。
キンタロスは舌をだらしなく突き出したまま快感に溺れている。
何だか新鮮だ。
「キンタロス…そろそろ、出すよ…っ!」
僕が声をかけるときみは覚悟を決めたかのように頷きを返した。
突き上げを繰り返しながら体内の熱さに酔っていると、キンタロスの体内がビクビクと痙攣し始める。
僕は荒い息をつきながら勢いに任せて熱を放出した。
「…っふぁ…ああああァッ…!りょ、たろ…ッ!」
精液の熱さを感じたのか、キンタロスは背を弓なりに反らせて絶叫を上げる。
同時に彼のものからも白濁した液体が溢れ出した。
濃くて熱い精液だ。ずいぶん溜まっていたんだろう。
濡れた金色の瞳が僕を見つめた。
口の橋からだらしなく唾液をたらして赤く染まった顔を向けている。
すると、不意にキンタロスが僕の頬を撫でて笑った。
普段と変わらない、爽やかな笑顔。
とても今の行為に相応しくないような顔だった。
ぼんやりしている僕を見てキンタロスが言う。
「あの馬鹿に譲るって決めて夜這いに来たンに…アカンなぁ、辛抱できん。…はは…情けないわ…」
そう言って僕に口付けるキンタロスの真意はわからない。
たぶん、独り言なんだろう。
僕はキンタロスの舌を吸い上げながらぼんやりとそんなことを考える。
その日、いつも以上に乱れたきみはやたらすっきりした顔で眠っていた。
心から満足したような、微笑ましい寝顔で。
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金VS桃を近々書きたかったのでこんな話を作ってみました(笑)