「あんまり言う事を聞けないなら僕、怒るから」 

まずはじめに言っておく。 
子供に言い聞かせるみたいに。 
――というかどうみてもこいつの思考は幼児並だけど。 
それからゆっくりと、首輪と手枷を外してやった。 
とび色の帽子を被った紫目の少年に向き直る。 
きみは平衡感覚がないとでも言うように足もとをフラフラさせながら僕を見ていたけど、帽子の鍔をキュッと掴んで僕に顔を寄せた。 
小馬鹿にしたような紫の目。 
ひどく不愉快だ。 

「良いんだぁ、首輪取っちゃって」 

きみは手枷の外された部分を見て笑みを深めてから手首をぺろぺろと舐める。 
僕の顔でそういう不愉快な表情をするのはやめてほしい。 
手枷も外してやったのは甘やかしすぎだろうか。 
そうおもっている僕を見て、紫目のきみは口の端をぐいっと上げて僕の首に手をかける。 
鼻が触れ合うほどに顔を近づけたきみは大きく見開いたままの、いわゆる「イッちゃってる」瞳で僕を見つめた。 

「ボク、痛かったの。ずーっと、重い首輪で絞められてぇ…」 

ニィ、と残忍に笑うきみはそれを言ってから指先に力を込めた。 
僕が本気を出しても、この男には敵うわけがない。 
他のイマジンにだって勝てないよ。 
だって僕は弱いもの。 
それは自分がよくわかってる。 
だから少し細工をした。 
殺されない程度の細工を。 

「あれ。なんか体がシビれてきた。おまえの仕業?」 

つまらなそうに手を離して、掌を見つめるきみは目を細めて尋ねた。 
効いて来たみたいでよかった。 
僕は返事をせず、トレードマークとも言える少年の帽子を手で払った。 
帽子が床に落ちたのを見て、きみは髪を押さえながら僕を軽く睨む。 

「あー…何すん…っん…!」 

間延びしたその声を唇で塞いでやる。 
きみは駄々っ子みたいに腕を振るって僕の胸を強く押す。 
しかもご丁寧にも唇に歯を立ててくれる。 
僕は反射的に唇を離してから鏡のように瓜二つの容姿をしたきみを殴った。 
薬で体の抵抗がないきみはそのまま膝を折ってへたりこむ。 
彼の腹を足で蹴って仰向けに寝かせてから圧し掛かる僕を、体の下にいる男は忌々しそうに見つめていた。 

「僕ねぇ…良太郎嫌いなの」 

きみは据わった紫目をギラギラと光らせながら僕を睨んでいる。 
本当にかわいくないやつだ。 
僕は鼻で笑ってから柔らかな紫のメッシュを指にからめた。 

「ふーん?」 

「だから嫌いな人に触って欲しくないの」

低い声で言ったきみが指を鳴らそうとする。 
人を操ることができる特殊能力で僕を強引に引き剥がすつもりだろう。 
だが、きみは僕を押しのける事なんてできるはずがない。 

「…あれ、ホントに体が動かないや。命拾いしたね、良太郎」 

指を鳴らそうとしたきみの腕は震えながら地に落ちる。 
それを見て目を丸くしたきみは、僕の立場でいるつもりなのか余裕の表情で笑む。 
命拾いしたのはきみのほうなのに。 
僕は指に絡めた紫のメッシュを強く引っ張って少年の上着を捲り上げる。 
抵抗する力がないきみは体の力を抜いたまま眠そうに僕を見つめている。

「痛いのきらい。キモチワルイのはもっときらい。良太郎はいちばんきらい」 

「そう?光栄だよ」 

「なんできらいなのにコーエーなの」 

上着を捲り上げられた姿のまま、きみが不思議そうに言う。 
僕は服の中に手を突っ込んで乳首をキュッと摘む。 
彼に盛った痺れ薬は媚薬効果もある。 
だからさっさと乱れてよ。 
余計な台詞は必要ない。 
BGMはきみのいやらしい声で十分。 

「くぅ…ん…あふ、あ…やぁ…っ…おまえ、変態じゃん」 

「乳首弄られて女みたいな声上げてるきみに言われたくないんだけど」 

僕は指先に力を込めた。 
そんな僕を見上げているきみは膝を立てて荒い息をつきながら手を伸ばした。 
きみの手が僕の肩を掴む。 
まだそんな力があるんだ? 
さすが、他のイマジンとは比べ物にならない戦闘力を持っているだけはある。かも。 
だからと言っても結局きみも他の奴らとおなじだよ。 
僕に貫かれれば嫌でも声を上げて達するんだ。 

「…っうう…僕ばっかりいじめて楽しい?良太郎はしてもらわないの?モモとか亀の人にいじめてもらわないの?」 

きみは指先を震わせながら僕の上着に手をかけた。 
いつも冷徹な顔をしている彼の額にはうっすらと汗が浮かんでいる。 
きっと薬に抗うのが辛いのかな。 
僕は好きにさせておきながら上着を完全に捲り上げた。 
お次は下だ。ズボンのジッパーをゆっくり下ろしながら耳朶に顔を寄せてやる。 

「リュウタロス、僕はきみをいじめたくてたまらないんだよ」 

「…そう言って他の奴にもおなじことしてるの、ボク知ってるよ。良太郎は変態だって、みんな言ってる」 

息を荒げたまま、リュウタロスは幼い声で言った。 
ズボンの中に手を入れて、見つけたそれを指先で押してやると低く押し殺したような声が聞こえる。 
冷めたような瞳がどんどん濡れていく様子がたまらない。 
時折、鼻から抜ける甘ったるい吐息をもらすきみは僅かに身を捩った。 
紫の瞳にじんわりと涙が浮かぶ。 

「泣いてるの?ほんとに手のかかる子供だね、リュウタロスは」 

僕がそう言った時、リュウタロスの目尻から涙が伝う。 
どこかすがるような紫の瞳が僕をじっと見つめていた。 
睨んでいるのか、ただ見つめているだけなのか、それは解らない。 

「んぁ…っふ、や…こんなの、面白くないよ。良太郎…」 

リュウタロスの唇が僕を呼ぶ。 
震える腕が僕の背中に回された。 
口付けを求めるように顔を寄せて、きみがギュッと目を瞑る。 
快感に慣れていないせいもあるんだろうか。 
その表情には戸惑いが見られる。 
僕はリュウタロスの頬に手を当てて柔らかな唇に口付けた。 
歯列をなぞって咥内へ舌を差し入れるとリュウタロスのくぐもった声が聞こえる。 
僕は小さな舌を舐め上げながら口付けを繰り返した。 
遠慮がちに応え始めていたきみは甘ったるい声を上げて僕を呼ぶ。 

「…んっ、んん…りょ、たろ…噛んでも、いい?」 

「…うん?」 

「答えは…はふっ…聞いてな、い…」 

そう言ったのを合図にするように、リュウタロスの歯が僕の舌に押し当てられた。 
じわ。 
互いの咥内に鉄の味が広がる。 
たぶん、薬を使っていなかったら噛み千切られていたかもしれない。 
僕はリュウタロスを殴ってから、鉄の味がする唇を袖で拭った。


















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ドS×ドSが書きたかったのですー…(フェードアウト)