翌日、気持ちいい目覚めを迎えた俺はトーマを起こすべくベッドから身を乗り出した。
だが、トーマの布団がない。
ガオモンもそこにはいなかった。
子供って本当に早起きだよな…。
俺は頭をかきながらリビングへと向かう。
何やら母さんが誰かと電話をしているみたいだった。
そうして食卓の席にはトーマがパジャマ姿の上に母さんのカーディガンをかけてガオモンをいじっている。
俺は何となしにトーマの肩を軽く叩いた。
「よう、どした?」
軽い調子で挨拶をすると、トーマは耳を両手で押さえてぐずるように泣き出してしまった。
いきなり拒絶されたような気がする…。
内心ものすごくショックを受けた俺の後ろから、知香が呆れたように言った。
「トーマくんはおたふくになっちゃったんだよ」
「おたふくぅ?」
俺は慌ててトーマを見やった。
トーマの白い頬は赤くなっていて、熱が出たみたいになっている。
そこでようやく、母さんが電話で話しているのは病院だとわかった。
電話を終えた母さんは、困った顔をしてトーマの頭を撫でる。
「病院、休みみたいで…おくすりもらいに行けないの…ごめんね、トーマくん」
「うええぇん…いたいよぉ…お耳がいたいよぉ…」
トーマは母さんにしがみつくようにしてびぃびぃと泣きじゃくる。
大門家は健康な家族が揃ってるから薬なんて置いてない。
だからトーマに飲ませてやれる薬がないってことだ。
俺はパジャマ姿のまま腕を組んだ。
「おたふくかぜって…専用の薬で治んのか?」
俺の言葉に知香がかぶりを振る。
こいつは小学校に上がりたての頃おたふくにかかったから覚えているんだろう。
頬を押さえるようにして口を開いた。
「私の時は湿布貼ったよ、あと氷水で冷やしてもらったの。おたふくかぜを治す薬っていうのはないらしいから症状に合わせた対処が必要よね」
「へーっ、全然知らなかったぜ…」
俺は知香の言葉に感心しながら、びぃびぃと泣くトーマのために麦茶を注いでやった。
熱が出たときは水分を取ればいいって言うし、喉も渇くだろう。
俺が麦茶の入ったコップを差し出すと、トーマは涙目で俺を見つめてから唇を震わせた。
「麦茶なんかいらないよぉ…うぁああん…いたいよぉ、小百合お母さぁん…」
トーマは俺より母さんにしがみついてわんわん泣いている。
くっ…痛みのせいで余裕がないのは分かるが嫌われたような気がしなくもない。
けどトーマは俺が風邪を引いたとき、ケナゲに看病してくれたんだ。
だから今度は俺がトーマを看病したっていいはず。
「よーし、俺はやるぞっ!!」
「何をよ」
「トーマの看病だよ」
知香の容赦ないツッコミに何とか返す俺。
俺はすぐに着替えると薬局に飛び出していった。
母さんが使ってるピンクのママチャリを全力でこいで薬屋に入ると、早速辺りを見回す。
感じの良さそうな店員が声をかけてきた。
俺は慌ててかしこまる。
「えっとー、あの…痛みにきく薬ってありますか?腹とか頭の…」
俺の問いかけに店員が出してくれたのは緑のカプセルが入った薬箱ともうひとつは座薬だ。
何か毒々しい色してるけど、薬ってある意味毒みてーなモンだしな…。
それに、粉薬じゃトーマみたいな子供は嫌がるだろうし、カプセルと座薬で正解、かな。
そうして薬を購入した俺は、自転車をこぎながらカプセルのほうをちらりと見た。
そのカプセルにはデカデカと「生理痛に効く」と書いてある。
……トーマって実は女…なわけねーよな。
「あの店員ッ!何を勘違いしてやがるッ!!」
俺はカプセルの薬箱を袋にしまってから座薬の箱を取り出した。
これは発熱などに効く…って書いてあるから正解だろう。
俺は家に戻ると、駆け込むように母さんへ薬を押し付けた。
母さんは生理痛の薬箱と俺を交互に見て首を傾げていたけど、座薬を取り出すとすぐに分かってくれたようだ。
さっそくトーマに座薬を向ける。
「さぁトーマくん…おしり出して?」
母さんが言うと、トーマは目を瞬いて母さんの手の中にある薬を見上げる。
白くて、ボーリングのピンみたいな形をした座薬だ。
風邪知らずの俺は入れたことねぇからわかんねーけど…痛いんだろうな。
トーマはみるみるうちに涙をためるとおおきくかぶりを振ってその場で足踏みをする。
「やだ…やだぁ!おしりなんか出したくないもん!やだぁー!」
それだけ叫んだトーマは、バタバタと俺の部屋に走っていってしまった。
…おもいっきり逃げたな…あいつ。
俺は母さんの手から座薬を取った。
「俺が行って来る。男同士だし平気だ…たぶん」
「そう…?任せたわよ」
不安そうな母さんを安心させるべく頷いた俺は、真っ直ぐに自分の部屋へ走った。
扉を開けて部屋に入ると、トーマはいない。
ガタガタとタンスの中から音が聞こえた。
衣装タンスの戸を掴んで開けると、中からトーマが転げ落ちてくる。
俺と目が合うと、トーマは頭に俺の下着やら靴下をかぶって瞬きを繰り返した。
「あ…あう…おにいちゃんの顔こわいっ!」
「な、なんだとてめっ…」
トーマは勢い良く言ってのけるとバタバタと俺のベッドの中に逃げてしまった。
布団を頭からすっぽりとかぶって意地でも出てこない様子だ。
俺はベッドの端に腰掛けてトーマがいるであろうふくらみをポンポンと手探りに叩いた。
「なぁ、そんなに薬が嫌なのかよ?尻に入れるだけじゃねーか…へーきだって」
「やだっ!」
息が苦しくなったのか、トーマは顔だけ出して俺を睨んだ。
アイスブルーの目は真っ赤になっている。
右の頬が若干腫れているように見えた。
トーマは俺の腰を強く押していやいやとかぶりを振る。
「ぼくはノルシュタイン家のこどもだもん…おしりなんかみせないもん!」
完全に子供のわがままだった。
貴族の意地と言うのもあるんだろう、おもえばトーマは俺と風呂に入ったりするのを嫌がっていたように感じる。
それはやっぱり、ノルシュタイン家の息子だから一般人と風呂に入って肌を見せるのは恥だ、と言うことなんだろうか。
貴族も一般人も俺から見れば変わらないのに。
「男はなぁ!」
俺はトーマの胸ぐらを掴んで強く揺する。
強くゆさぶり過ぎたのか、小さな頭がガクンと揺れた。
「男には、意地張るより先にやんなきゃなんねーもんがあるんだよ…!だから尻出せ」
強引な言い方をしてトーマのズボンを下ろす。
まるでここの家は虐待でもしてるんじゃないかって言うほどにトーマの泣き声が響いた。
じたばたと暴れて抵抗するのを押さえつけて、脱がしたズボンでトーマの両足を縛ってやる。
上に着ていたカーディガンは両腕を縛った。
ベッドに転がされたトーマは泣きじゃくりながら自由のきかない手足を動かそうとする。
「やだぁ!やだやだ…やだよぉ!たすけてぇ…ぼく、やだよ…おしりなんか見せたくないよぉ!」
トーマの体をうつ伏せにして腰を引き寄せると、丁度よつんばいのような格好になる。
皺のないピンク色の秘肉がピクンと震えた。
俺のものとは比べ物にならないくらいに小さい桜色のものがちらりと見える。
触ってみたい衝動に駆られながら、俺は秘肉の周りをマッサージするようになぞった。
いきなり入れたら、やっぱり痛いだろう。
抵抗できないトーマはうつ伏せで枕に顔を埋めたまま泣いている。
「は、恥ずかしい…やだ、やだぁ…んっく…そこ、やだよぉ!」
トーマはぐすぐすと泣きながら俺から逃れようとする。
俺は悪戦苦闘しながら、そっと座薬を濡らすために舐めるとトーマの秘肉へ座薬の先端を入れた。
丁度、ロケットの先端部分だ。あんまり触ってると座薬が溶けるから気をつけなくてはいけない。
気がつくと小さな尻が、押さえつけたせいで真っ赤に染まっている。
トーマの泣き声が呻き声に近いものへと変わった。
「んっ…んんっ…痛い、痛い…やだぁ、抜いてよぉ…おにいちゃんっ!」
「馬鹿言うな、せっかく入ったんだ…大人しくしろ」
俺はトーマの腰を抱き寄せて、ゆっくりと座薬を挿しいれた。
トーマは俺に拘束されて抵抗できないと悟ったのか、涙をいっぱいに溜めて強く目を瞑っている。
それでも本能的に逃げようとする体を、俺は何とか抱き寄せた。
じわじわと、座薬がトーマの中へ入っていく。
トーマが俺に振り返った。
「痛い、よぉ…そんなの、おしりに入らないっ…ふ、あ…んん…」
俺はトーマを見ずに行為を続ける。
今のトーマを見たらあんまりにも可哀想でやめてしまいそうだから。
俺がようやく座薬を入れ終わったときには、トーマはぐったりして口の中だけで「こわい、いたい」と呟いていた。
頃合を見てやってきた母さんがトーマを抱き上げる。
母さんは俺を見ると、唇に指を当てて言った。
「今ね、オーストリアのほうから電話があって…トーマくんはお家に帰ることになったの」
「は!?」
俺は素っ頓狂な返事を返した。
何だって?
何が何だか分からない俺に、母さんが説明をする。
どうやら、トーマの実家が風邪っ引き息子を家に戻すと決断したらしい。
まだ俺の家に来て一週間程度しか経ってないのに。
せっかくホームステイしにきたトーマに、何も教えてやれてねえのに。
もうお別れなのか。
俺は母さんの腕の中にいるトーマを見つめた。
トーマは、俺と格闘したせいかぐったりしてしまっている。
真っ赤になった頬が、体温の上昇を知らせていた。
俺が余計な事しなきゃ、こんなに苦しくさせなかったのかな。
コイツは、俺が風邪引いたときあんなに頑張ってくれたのに俺は無理やり看病しようとして、酷いこと、した。
「…トーマ…」
俺はトーマに触ろうとして、やめた。
手首と足を縛った痕が残って赤くなっている。
俺は、トーマに乱暴しちまったんだ。
そうおもうと、とてもトーマを抱きしめてやる気になれない。
「今日…お迎えが来るみたいだから」
母さんはそう言うと、俺の部屋を出て行った。
さっきまで俺とトーマが格闘していたベッドにおもわず横たわると、布団の中に妙な感触がある。
そっと取り出してみると、それはガオモンだった。
俺はガオモンの垂れた耳をいじりながらぽつりと呟く。
「ごめんな、お前のご主人さまに酷いことしちまった…」
口に出すと、余計に自分のしたことがリアルに感じられて、俺は深く布団をかぶった。
早く…オーストリアに帰っちまえ。
そんで、俺の事なんか早く忘れればいいんだ。
俺も、お前がいた数日間を夢だったんだっておもうから。
「…トーマ…」
俺はきつく目を瞑ると、無理やり夢の中へと自分を引きずり込んだ。
夢と現実の合間の中で、トーマの声がしたようにおもうのは気のせいだろうか。
トーマはその日の夜、俺がぐっすりと眠っている間に1人でオーストリアへと帰っていった。
今の俺にとってはどうでもいいことだ。
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「男は意地張るより先にやらなきゃならないことが〜」は、
アニメでDWに突入した後の怪我したトーマに肩を貸す兄貴の名台詞からです(笑)
萌え
(GPO5個、デジモン5個/良ければ押してやってください。管理人の活力源になります)
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