ふたりでたべるとおいしいね
2007年3月15日の絵。
即席ホワイトデーマサトマです。こんなのでもフリー絵。
拍手のホワイトデーマサトマとすこしかぶらせてます。
下記は小話。
「おこって、ねーのか?」
「なんでおこらなきゃいけないの?」
肩に頬を寄せながらアイスをしゃぶっている金髪の少年へ、申し訳なさそうに呟いたマサルは掌であめ玉を転がした。
部屋中に甘ったるい菓子のにおいが充満している。
菓子を買い込んだ袋の中には、色とりどりの菓子がずらり。
板チョコ、モナカ、七色のあめ玉、グミ、煎餅、アイス…。
それらをひとつひとつ口に入れながら、ぼんやりと寄り添っていた。
「…だって、おれ…ほわいとでーのおかえし…もってこられなくて…」
マサルは、ピンクのあめ玉を口の中で転がしながら呟いた。
幼いマサルには自己嫌悪という言葉がまだよくわからない。
けれど胸の中がモヤモヤした。
先月の14日、小さな恋人は母と作ったのだというチョコクッキーをマサルにプレゼントしてくれた。
きっと、ほとんど恋人の母…美雪が作ったものなのだろうけれど、マサルはたまらなく嬉しかった。
甘ったるいクッキーが口の中でじんわりと広がっていく感覚をたっぷり味わいながら食べたものだ。
お返しをする日は絶対にとびきりのものを作ってやろう。そうおもっていた。
だけれど、3月14日…ホワイトデー当日にマサルは頭を抱えた。
マサルは子供だ。菓子はもちろん、料理が作れるはずない。
母親から小遣いをもらって一目散に家を飛び出すと、駄菓子屋に直行して菓子を買いまくってしまったのだ。
息を切らせながら恋人の家へ着くと、小さな金髪の少年はアイスブルーの目を丸くしてマサルと菓子袋を見やった。
「すごいねぇ…まさる」
能天気な恋人の言葉。それが、3月14日に聞いた第一声だ。
そうして恋人の家に上がりこむと、平謝りをして菓子を差し出したマサルだったが…。
マサルの横で菓子を食べている恋人はそれっきり口を聞いてくれない。
きっと怒っているのだ。
マサルはそうおもいこんでいた。
だが…「おこってない」の一言を聞いて目を瞬かせる。
「…おこってねーって…どーゆーことだよ、とーま?」
マサルは口の中のあめ玉をごくんと飲み込んだ。
恋人の…トーマのはちみつ色の髪がマサルの肩口で揺れる。
トーマは目を瞬きながら笑った。
「だって、まさるとおかしがたべられてしあわせなんだもん…ぼく」
にっこりと笑いかけたトーマは、アイスを舐めながら言った。
バレンタインにもらったクッキーより、ずっとずっと甘い微笑みで。