「ったく、なんなんだよッ…DATSってのはこんな事もすんのかよ」
イライラムカムカ。
既に冷えきった街中を歩きながら、俺はため息をついた。
手には五千円札一枚。
そして傍らには…。
「僕を見るな、ただでさえ気分が悪いのに」
ツンとした表情で俺の視線をはねのける男の姿がある。
薩摩から任務と言う名の使いっぱしリにされた俺たちは、こうして夜の街を歩いているわけなんだけど…何でわざわざこんな奴と。
俺は思わず怒鳴りたくなる声を飲み込んで目当ての場所へと歩みを進める。
任務は、コンビニで夜食買って来いってこと。
自分で買って来いよと文句をつけたけど、なんやかんやで上手く丸め込まれて、なぜか、よりにもよって、この男と一緒にコンビニまで行くハメになった。
トーマ・H・ノルシュタイン。もう一度なんとなく隣の人物を見やると、奴はパーカーを羽織った格好で小さくため息をついている。
金の髪に青い瞳、俺の周りではあんまりハーフなんて見ねえからつい目がいってしまう。
おまけに貴族で、美形の天才少年ときた。
同性に憎まれるタイプだよな、いや絶対。
すらりと通った鼻筋と、華奢な体躯、俺と同世代には見えない大人びた顔立ちが少しだけ夜の闇のせいで影を落としている。
こう…さ、コイツは偉そうだけどどこか影を纏ったような雰囲気があると言うか…あー、わかんねぇ。
「さっきから一体何なんだ?言いたいことがあったら言え、10文字以内で」
「10文字とかいちいち文字数数えてられっかよ!うっせバーカ」
「ば、バカとは…」
「バカじゃねーならやっぱトンマ?」
「…トンマでもない!…ふう、君といると温厚な僕でも我慢ができないよ。ほら、さっさと行って来い…僕を怒らせた罰だ、君が買って来るんだな」
トンマ、もといトーマは腕を組んで淡々と言い放つとコンビニを指差してそっぽを向いた。
相当イラついているのは目に見えて分かったが俺は五千円札をズボンのポケットに入れると舌打ちをしてコンビニへと向かう。
ちらりと奴を見やると、俺の視線をわざとらしく無視しているようだ。
だから俺はわざと大声で言ってやった。
「ナンパされんなよォ、トンマちゃん!」
「されるわけがないだろう!さっさと行け!近所迷惑だ」
トーマの大声も十分近所迷惑なものだったが、俺は舌を出してコンビニへ向かった。
店内に客はいない。
適当な弁当でも買ってやろうかな、なんて弁当コーナーを見ると"超絶激辛!失神寸前、キムチ丼"の文字。
…これでいいや。
俺はキムチ丼を手にして、それから自分の分の飯を探し始めた。
ツナマヨの握り飯を1つ取ってから、トーマの分も買うべきだろうかと思案する。
しばらく考えた結果、俺はツナマヨをもうひとつ取った。
それからコーヒー牛乳をひとつと、ミルクティー、緑茶のペットボトルを手にする。
会計を終えて店を出ると、トーマの姿はなかった。
「は?あのトンマ…帰りやがったんじゃねーだろうな…」
せっかく人が飯買ってやったのに、と思いながら辺りを見回すとどこからか人の気配を感じた。
まさか本当にナンパに合ってんじゃないだろうな…。
コンビニの袋を手に暗い道を歩き始めると、灯りのともった公園からトーマの声がする。
公園の入り口に入るとベンチのほうにトーマが座っていた。
「ああ、やっと来たのか」
トーマは顔を上げると、さっきまで機嫌が悪そうだったのが嘘のように少しだけ笑った。
暗闇の中でもその笑顔は可愛い、と言うか綺麗というか。
ついつい見惚れちまうものがある。
俺は大股でベンチに近付くと、コンビニ袋を突き出した。
「ほら、テメーの飯も買ってやったんだからありがたく思えよ」
「君が僕の弁当を買うのは当然だ、人の気分を最低最悪にしたんだから」
「可愛くねえなっ!突っかかってくんじゃねーよトンマ」
「可愛くもないしトンマでもない。バカでもいい加減覚えたらどうだ?」
トーマはひったくるようにコンビニ袋を俺の手から奪い取ると、その中からツナマヨを取り出した。
一瞬だけキムチ丼を見て、その赤さに眉を寄せていたけど。
「このキムチ丼、お前が食べるのか?」
「いや、薩摩用」
「…ひどいな。いただきます」
トーマがそう言うと同時に足元から猫の鳴き声が聞こえた。
気がつかなかったが、俺が来る前からずっとトーマの足元にいたらしい。
ちょんと座り込んで鳴き声を上げている。まだ子猫だ。
「どわっ、黒猫っ!?」
「騒ぐな、近所迷惑になるだろう」
行儀よく両手で握り飯を持っているトーマは至ってクールに呟いた。
黒猫は、ふみゃあと鳴いてからトコトコと俺の足に擦り寄ってくる。
俺が抱き上げるとふかふかした体毛が肌をくすぐった。
飼い猫、ではないらしいが人懐っこい奴だとおもう。
ぺロリと指を舐められてくすぐったかった。
「ごちそうさま」
いつのまに平らげていたのか、トーマは握り飯の包んであった袋をベンチの隣のゴミ箱に捨てている。
俺は、ひとつ残ったツナマヨを取って、それから握り飯を半分にした。
猫に与えると、腹が減っていたのかガツガツと食べている。
トーマは、袋の中にあったミルクティーを飲みながら猫を見て笑った。
「ふ…どこかの誰かみたいに野蛮な食い方をするんだな」
「それって俺の事かよッ!?」
「いや、誰とは言ってないが…思い当たるならそうなんじゃないか?」
「性格悪ィー…」
俺は猫と同じようにガツガツと握り飯を頬張ると、猫の頭をぽんぽんと叩いて笑った。
頭を叩かれた猫が少し嫌そうな顔をしていた気がする。
俺は握り飯を口にしたまま袋の中からコーヒー牛乳を取った。
ストローもささずに豪快にパックを開けて飲んでいく。
そんな俺の様子を見て、トーマがゆっくりと腰を上げた。
「腹もふくれたし戻ろう」
そう言って俺の目の前を通り過ぎようとしたとき、その体がピタリと静止した。
猫がトーマの袖を爪で掴んでいる。
トーマは猫を見下ろすと、なんともいえない顔をして俺を睨んだ。
「猫の礼儀作法くらいしつけておけ、飼い主」
「俺の猫じゃねー!猫に喧嘩売られてんじゃねえのか?トンマさんよ」
「まさか。とにかくどうにかしてくれ」
尊大に言うトーマにちょっとムカついたが、俺は言われたとおり猫からトーマを引き離してやろうと試みた。
きゅっと丸められた猫の手をちょいちょいと叩くが、猫はそれを離さない。
いっそトーマの袖を引きちぎってやろうかと布を両手で掴んだが、同時にトーマに遮られた。
「分かってるか?もしも僕の服を破ろうなんてしたら金払えよ、300万円。ま、一般人には無理かもしれないけど」
「300万円…なわけねーだろ!!…大体お前が屈まなきゃ上手くやれねーよ!」
俺は、トーマの腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。
貴族様と言われる小奇麗な顔が間近に迫る。
うわ、と声がして目の前の体が前のめりにくずおれた。
あと数センチ、で多分俺のファーストキスはなくなっていたと思う。
俺は、くずおれたトーマを抱きかかえるようにして奴と向かい合った。
「あ…」
小さな声に、ゴクリと喉が鳴る。
間近に奴の唇があるのだ。
同時に、なんか香水みてぇな匂いが鼻をくすぐる。
こいつ男のくせに香水なんか使ってやがんのか?色気づいてんなァとか思いながら観察していると、アイスブルーの瞳が瞬いた。
何が起こったのか理解してないらしい。
気付けば、猫はトーマの腕からするりと離れてベンチの上で毛づくろいなんかしている。
妙に、すぐ近くで向き合っている時間が長く感じた。
夜のせいだろうか、やけにムラムラすんのは。
これを"欲情"とか言うのだろうか。
汚いものなんか一切知りませんと言うような顔をした王子サマのその顔が、汚いもので汚れたらこいつはどんな顔をするんだろう。
俺は自然と、腕を掴んでいるほうとは逆の手でトーマの後頭部を強く掴んだ。
「…っ!?」
そうしてぶつかるように唇同士を合わせると、ようやく気がついたのかトーマのくぐもったような声がした。
唇が重なり合ったときにぶつかる歯が痛くて痛くて、でも上手いキスの仕方なんか分からなくて、俺はただ強く唇だけを触れ合わせた。
「んっ…んぐっ…やめっ…んっ…」
トーマの苦しそうな吐息が聞こえる。
今更口付けを解いたってもったいないだけだ。
俺はキスをしている間に新たなキスを覚えた。
僅かに開いた唇の間に舌を割り込ませてやると、咥内の壁をすべる舌がめちゃくちゃ気持ちいいのだ。
まあ、舌を噛み切られたらおしまいだとおもうけど。
トーマの舌を絡め取ると舌のざらざらした部分が何か、頭の中の奥の奥を強く刺激した。
控えめに逃げる舌が何となく憎らしくて強く吸い上げてやる。
「んんっ…んふ…く、息がっ…でき…んぁ…」
酸素不足になってきたのか、トーマが俺の肩を突き放すように押した。
苦しいのは俺も一緒だ。
だから一旦口付けを中断しようと唇を離すと鈍い音が夜の公園に響いた。
荒い息をついて、拳を下ろしたトーマが俺を見やる。
口の中に鉄の味が広がった。
そうして視線を上げると、案の定俺を睨んでいるトーマの綺麗な顔。
俺はトーマの胸ぐらを強く掴んだ。
「いてーじゃねえか!何すんだよッ!?」
「それはこっちの台詞だ。なぜこんなことをした?」
トーマは、底冷えするような声で言うと俺の手に爪を食い込ませた。
皮膚を裂きそうなほど爪を食い込ませてトーマがそうつぶやく。
俺は胸ぐらから手を離さずに口を開いた。
「なんとなくだよッ!文句あんのか!?お前がやらしい顔してんのが悪ィんだろ!!」
言ってから、春の夜風が寂しく俺たちの間をすり抜けていくのを感じた。
トーマは眉を寄せて俺を睨むとゆっくり手を離して顔を逸らす。
相手にするのもバカらしいということなんだろうか、目を伏せて鼻で笑った。
「その顔が気にいらねえ。口調も、態度も、なんもかんも!」
「同じ台詞を君に返すよ。君はどれだけ野蛮なんだ?」
「るっせえ!!」
もう一度。
もう一度だけその唇がほしいと思った。
怒り任せにトーマの胸ぐらを強く引き寄せると、同時に唇が塞がれる。
トーマの掌が俺の唇を塞いでいた。
俺の唇を塞いでいるトーマは、酷く深く眉を寄せて俺を睨んだ。
いつのまにか、トーマの頬が赤く染まっているのをようやく理解する。
「野獣め…」
「もが…お前が誘うのが悪ィんだろ」
「僕は…。そんなの君の勝手な妄想だ」
「どうだか」
一向に緊張を解こうとしないトーマの下腹部に手を当てると、奴はぎょっとしたように俺から手を離した。
服の上からでも分かるふくらみをゆっくり揉みしだいてやりながら反応を伺うと、小さな唸り声が聞こえる。
それでも大声で助けを求めようとしないのは、大事になるのがいやなんだろうな。
少しだけ強く握ると、どこか甲高い声が聞こえた。
一瞬、どこの女かと勘違いしてしまったがそれは紛れもなくこの男の声。
トーマは眉を上げて怒ったような顔をしながら俺から俺を逸らしていた。
「やめろ…そんなところ触って、僕に恥をかかせようとしてるのか?排泄しか用のない不浄の場所を…っく!」
トーマの言葉とは裏腹に、そこは徐々に硬くなりつつある。
感じやすい体なんだろうか、白い肌にはうっすらと赤みが差していた。
アイスブルーの瞳が僅かに揺れているのが綺麗で、ついつい目がいってしまう。
「何だ何だ?こっちは結構慣れてるみたいじゃねーか」
「う、嘘だ…っあァ!」
俺はいつのまにか乾いていた上唇を舐めてから先端であろう部分を強く擦り上げた。
ガクンとトーマの体が大きく震えて、それから脱力してしまったように膝を折る。
俺は、その体を支えるようにして乱暴にベンチに座らせた。
ほとんど強姦に近いような気もしたが、トーマはぼんやりと背もたれによりかかってぜぇぜぇと喘いでいる。
小さく内腿が震えているのを見て、俺は下腹部のそれを指で弾いてやった。
「300万の大事な服が汚れちまうぜェ?こりゃ脱がさなきゃいけないよな」
「よ…よせ…」
先ほどの言葉を思い出しつつ、わざとらしくそう言ってズボンのベルトに手をかけると、トーマが身を捩る。
それでも俺が奴のパーカーで両手首を縛ってやれば抵抗はされなかった。
ゆっくりズボンのジッパーを下ろして、汚さないようにズボンと下着をベンチに置いてやると引き締まった足が露になる。
上の服だけ着ていて下腹部はハダカってのがいやらしいよな。
14歳とは言っても生えているモンなのか、トーマのそこは金色の毛で覆われている。
俺は直接、素手でトーマのものに触った。
トーマは、身を捩って艶っぽい表情をしている。
もちろん本人にそんなつもりはないんだろうけど。
「んっ…それ以上したら蹴るぞ…」
「んな事されたら周りにバレるように大声出してやっても良いぜ?」
「君は…どれだけ下衆なんだ…んあっ!」
トーマは、白人特有の白い肌を上気させながら苦しそうに喘いでいる。
こんなの、絶対普段じゃ見られねぇ。
耳につく熱い吐息も、可愛らしい表情も。
さほど大きくないものを手にして、俺は片手でぐりぐりと扱いた。
「あ、あぁっ!!」
引きつれた声で言うトーマが慌てて自分の口を押さえている。
そんな様子も可愛いしもっと虐めたくなる。
俺は舌先を出して笑った。
「…お前さ、その年で大学卒業できるほど頭良いんだろ?…知らないなんて言わせねェぜ」
俺がトーマのものの先端を指の腹で擦り上げるとうめくような声と、艶めいた表情が拝める。
トーマは目を見開くと、小さくかぶりを振って口を塞いでいる手を震わせた。
下の部分は気持ち良さそうにもう先走りを流し始めている。
高貴な貴族様とやらがこんなとこ弄られてよがってるサマをもっと見たい。
俺って意外とSなのかも?なんて思いながら、俺はそれを強く上下に扱いた。
「あっ…ぐぅっ…ひ、い…やめ…こんなの大学で習うわ、け…ないっ…馬鹿…はぁっ…」
「まだンな事言ってられんのかよ…とんだおぼっちゃまだな」
相変わらずのトーマの毒舌に、俺は無感情な声で手の中のものを根元から強く握った。
ビクンと細身の体が跳ね上がる。
ふとももがピンク色に染まっているのがやらしくて、俺はそこを舐めてやる。
すべすべした肌だ。
「ひぎっ…うぁ…ひあ…やめっ、く…嫌だ…やめろッ…」
触り心地のいいふとももを撫でながら、片手はじわじわとそれを揉みほぐしてやる。
すっかり堅くなったものから溢れる先走りの音で、妙に興奮した。
くちゅ、にちゅ、と音を立てて擦り上げながら俺は、早くイかねーかな…とか、綺麗な顔してるよな、とか観察する。
トーマはもう俺を嘲る余裕もないのか、強く目を瞑って必死に声を押し殺していた。
眉間に深く皺が寄っていて、目尻にはうっすらと涙が滲んでいる。
俺が泣かせてるんだ。
そう思うとたまらない征服感と、ズキンと痛む胸の奥を感じる。
けれど俺は前者の感情を優先させた。
「こういう事教えてもらわねーんだァ…オナニーとかもやったことねェとか?」
俺の問いに、ただただ首を縦に振るトーマが可愛らしかった。
切れ切れに喘ぐ声が掠れていて艶っぽい。
だがそう思ったのは一瞬の出来事で。
不意にトーマが目を開いて乱暴に足を蹴り上げた。
思わずその場から後ずさると、ゆっくり足を閉じながら肩を怒らせているトーマと目が合う。
「ん…くっ…今すぐ殴ってやる…歯を食いしばっておけ」
トーマはそう言うとベンチの背もたれに寄りかかりながら立ち上がろうと腰を上げた。
同時に奴の体が再びベンチに落ちる。
俺が見ていると、トーマは不思議そうな顔をしてから勃ち上がった下腹部を睨んだ。
どうやら腰が立たないらしい。
「はははは、貴族様も腰が立たねーんじゃ喧嘩も出来ねぇよなァ?ほらほら、殴ってみろよ」
「…ぐッ…君は…ッ…」
俺の言葉に反論しないのを良い事に、そのままもう一度握っていたものを指で弾いた。
足で蹴られそうになるが、なんとか押さえる。
やっぱりギロリと睨まれた。
「あのよ、せめて腰が立つようになってから喧嘩仕掛けてこいよ…いつでも相手になってやるから」
「僕を馬鹿にしているのか!?こんな事されてるだけで屈辱なのにッ…あ!」
トーマの怒鳴った声が聞こえた途端にそれを掴むと、奴の痙攣が大きく伝わった。
どうやら散々弄られていて限界だったらしい。
俺はわざとらしく笑ってやった。
「あっれ…もうイきてぇの?トンマちゃんて淫乱?」
亀頭の部分を執拗に擦ってやると、再び口を押さえるトーマが見られる。
しかも、今度は両手で塞いでいた。
よほど我慢ができないらしい。
「ふぐっ…んーっ!んっ、んぐ…んんっ…トンマじゃな…ひぁあッ!」
きつく押さえつけられた指の間から息を吸おうとしたのだろうが、トーマの声は公園中に響き渡っていた。
それを感じたのか、真っ赤というよりも真っ青な顔をしてトーマが辺りに視線を泳がせる。
俺は少しだけ声を低めた。
「近所迷惑トカ、さっき言ってなかったか?…お前って実は露出狂なんじゃねェの?変態…」
そう言いながら愛撫の手はやめずに乱暴に扱いていくと、トーマは自分の指を強く噛んで声を押し殺していた。
指の間からいやらしい吐息が響いてるが、本人は抑えているつもりらしい。
必死にかぶりを振って何事かを呟いていた。
既に普段の高みから見下したような男の姿はない。
いつの間にか足をだらしなく下ろして俺の行為を受け入れているように見えた。
「んんっ、ひっ、いい…やっ、ぐ…あ…僕は…僕はっ…変態なんかじゃっ…っあ、あ…」
何かがくる、と吐息混じりに言って、トーマが苦しそうにうめいた。
アイスブルーの瞳が俺を真っ直ぐに見ている。
怒りよりも困惑の色が見えた。
ビクビクと内腿を震わせながら、トーマ自身のものも精液を吐露し始めている。
俺はトーマに近付くと、柔らかな金色の髪を掴んで抱き寄せた。
苦しそうな息が聞こえる。だが抵抗はされなかった。
「っあ…あ、ああっ…うぐっ、ぎ、ひ…ああァっ…乱暴にしないでくれッ!」
いつの間に両手首を拘束する服が解けたのか、背中に回されていたトーマの腕が俺を抱き寄せてくる。
乱暴にしないで、と言う台詞が妙にエロチックで、俺は乱暴にトーマの唇を吸い上げてやる。
息を飲む声が聞こえたが、すぐに押し付けるようなキスが俺を待っていた。
俺の愛撫を追うように、ディープなキスを返してくれる。
たどたどしいキスだったけど。
さっきは殴られたと言うのに、どういう心の変化だ…なんて考えながら下手くそなりに舌を吸うと手の中のものがビクビクと震え始めている。
「んっ…んーっ…ぐぅ…んぁ、あっ…あ…ひぃっ…も、いやだ…なにか、が…ああぁァっ!!」
俺の唇を必死に吸い上げながら、快楽に耐えていたトーマだったが、不意に口付けを解くと俺の肩口を強く噛んで大きく震えた。
同時に手の中のものから熱い液体が勢いよく噴出す。
ぴんと上を向いたまま射精されたそれは弧を描いてトーマの顔を汚した。
「あ…ぐ、あふ…うあぁ…熱い…」
先ほどまでは想像もしていなかった淫らな表情。
自分の白濁で顔を汚して、ぽやーっとした快感そのものの瞳。
口の端から、だらしなく銀の液体をこぼしていた。
喉を鳴らしてベンチに背を預けると、トーマはそのまま目を細めた。
アイスブルーの瞳から、大粒の涙がぼろぼろと零れていく。
「ちょっ、おい…泣くかよ普通!?」
俺の中で、サーッと全身の血が引いていった。
肩に触れようとして、それから一旦やめる。
俺は目を逸らすとトーマのズボンからちらりと見えたハンカチを抜き取ってその場から離れた。
水飲み場は意外と近くにあったから、それでハンカチを濡らしてトーマの体を拭いてやろうと思う。
水に濡らして堅く絞ったハンカチを持って行くと、トーマはまださっきと変わらない表情で泣いていた。
それでも羞恥はあるのか両足を閉じて膝を立てている。
俺はトーマの顎を掴んだ。
「…っ…」
思わず息を飲んでしまう。
宝石みたいに綺麗なアイスブルーの瞳が涙のせいできらきらと輝いている。
頬は暗闇の中でも分かるくらい赤く染まっていて、中性的だった。
キスしてしまいたくなる顔ってのはこういうことを言うんだろう。
俺は欲望を抑えると、トーマの目元にかかった白濁を拭った。
トーマは今にも俺に殴りかかってきそうな顔で悔しそうに泣いていたけど抵抗はしない。
俺は、とめどなくあふれる涙も一緒に拭った。
顔を拭き終えると下腹部の無残な状態もなんとかしてやるために再度ハンカチを濡らしにいく。
トーマはうなだれてベンチに座っていた。
感情のない顔をして、ぼうっとどこか虚空を見つめている。
その頬が赤く染まっていることから、奴も少なからず興奮していたのだと感じた。
俺はトーマのふとももに手を当ててゆっくりとハンカチを滑らせていく。
濡れたものを拭き取っていくと、トーマの肩がぴくりと反応した。
さっき脱がせたばかりのズボンと下着を不器用ながらに履かせてやると、トーマはぼんやりと俺を見つめている。
それでもゆっくりと立ち上がってふらふらと歩き出した。
「…っおい?どこ行くんだよ」
トーマは俺の問いにも振り返らない。
地に足がついていないのかおぼつかない足取りだった。
俺が駆け寄って肩を掴むと、ぴたりとトーマの歩みが止む。
トーマはゆっくり振り返ってただ一言。
「…帰る」
それだけ言って俺の手を弱々しい力で払った。
同時に罪悪感と後悔が一気に押し寄せる。
普段は存在感のあるトーマの後姿がやけに小さく頼りないものに見えて、俺はしばらくそこから動けないままだった。
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これは連載かもしれない(笑)スキなバンドさんの歌からタイトル取りました。
相変わらずマサトマで申し訳な…(汗)