「あれは…子供の頃の僕…?」

家から軽い足取りで飛び出してきた少年を見て、僕はハッと息を飲んだ。
これはメタルファントモンが見せている悪夢。
そうだとは分かっているけれど、母さんと僕の幼少時を立て続けに見せられてはたまったものではない。
僕は夏祭りの時に起こる悪夢のような惨劇をおもいうかべてかぶりを振った。
この小さな子供はそんな事を想像もしていないのか、無邪気に笑っては道路にチョークで丸を描いている。
玄関先から顔を出した母さんが小さな僕を見て言った。

「トーマ、遊ぶのは家の前でだけよ?母さんの知らないところにいかないでね」

「わかってるよぉ」

小さな僕は唇を尖らせて甘えた声を出した。
本当に、この時の僕は無邪気で甘えん坊だ。
何につけても母さんがいなけりゃ嫌だった。
いつでも母さんと同じ場所で寝ていたし、母さんが買い物に行くといえば着いて行った。
本当に母親っ子だったんだ。
僕は自然と、かつての自宅の前に歩いていった。
どうせ、向こうは僕の事なんて見えないし触れない。
そう確信していたのだが、小さな僕は不意に顔を上げて僕を見た。
透きとおったようなアイスブルーの瞳をまんまるに見開いてまじまじと見上げている。
僕が何か言おうとすると、彼はおもむろに立ち上がって口を開いた。

「おにいちゃん、だぁれ?」

小さい僕はチョークで白くなった指を自分の口元に当てて首をかしげた。
まさか僕が見えるのか?
僕が口を噤んでいると、君はゆっくりと僕の足元までやってきて僕のジャケットを掴む。

「ぼくね、ぼくね、トーマ。トーマ・H・ノルシュタインっていうんだよ。よろしくね、おにいちゃん」

もしかすると、同じ髪の色と目をしていることに何か近しいものを感じたのかもしれない。
君は僕を見上げて笑った。
僕は少しだけ躊躇ったあと、そっと君の頭を撫でる。
柔らかなはちみつ色の髪が可愛いとおもった。

「…教えてくれてありがとう、宜しく…トーマくん」

「おにいちゃんの名前は?」

少年、トーマは無邪気な笑顔で尋ねてきた。
参ったな…答えるわけにもいかない。
全く同じ名前なんだから。

「ええと…」

僕が言いよどむと、トーマは何かを見つけたのかすぐに駆け出していった。
チョークを道路にほおって飛ぶように駆けてしまう。
僕はおもわずトーマを追った。

「トーマくん、家から離れちゃだめだってさっき母さんが…」

「へーきへーき!」

トーマは本当にやんちゃな子供だ。
僕が止める間もなく、霧がかった公園へと入っていく。
その時、脳裏にノイズが走った。
メタルファントモンの声がする。

『お前はこの悪夢に耐えられるかな』

「…どういう意味だ?」

おもわず声に出す。
それでも返事は返ってこない。
いやな予感がして、すぐさまトーマの後を追った。
そこだけ別次元のように霧で覆われた公園へ入っていくと、既にトーマの姿は無い。
いや、だが何か微かに濡れたような音が聞こえる。
これは…一体なんだ?

「んんっ…むぐぅ…はふ…」

子供のくぐもった喘ぎ声が僕の耳に入る。
ゆっくりと、僕の目の前で霧が開けていった。
そこには柄の悪そうな大人が数人、小さな子供に無理やり奉仕をさせている。
僕は、そのありえない光景を前にして吐きそうになった。

「トーマ…!!」

どうして、どうしてこんな事に。
そうおもったとき、僕はおもわず彼の名前を叫んでいた。
トーマは顔をぐっしょりと白濁したもので濡らしながら、四方から向けられている肉棒に奉仕をさせられている。
目は生気がなく、どんよりと曇っていた。
サーッと僕の中から血の気が引いていく。
男の1人が振り返った。
顔は霧のせいでよく見えない。
うっすらと晴れたように見えた霧の中にいた男たちは、全員能面。
つまり、顔がないのだ。

「…くッ、ガオモン、リア…ラ…!?」

デジヴァイスを取り出してパートナーを呼び出そうとした僕は息を飲んだ。
ない、いつも持っているはずのデジヴァイスが見つからない。
僕は慌てて顔を上げた。
とにかく、トーマを助けなければいけない。
僕はおもむろに男たちの前に立った。

「幼児強姦、暴行、これが何を意味するのか分かっているんですか!?警察を呼びますよ!」

霧の中に僕の声が吸い込まれていく。
男はトーマの幼い体を地面に転がした。
慌てて駆け寄ると、トーマは口から白濁した液体を零して何度もむせながらよろよろと両手を上げる。

「おかあ、さん…おかあさん、どこ…?こわいよ…くるしいよ…」

「トーマ…!」

僕はトーマを強く抱きしめて男たちを睨み上げた。
だが同時に男たちの肉棒が僕の鼻先に突き出される。
遠目で見ただけだったからよく分からなかったが、かなりの大きさだ。
息ができないくらい肉棒を寄せた男はニタニタと笑って僕の前髪を掴んだ。

「いたっ…何をするんですかっ!?」

トーマを庇うようにして手を払うと、同時に咥内に何か硬くて熱いものがねじ込まれる。
それが男のものだと理解するのに、たっぷり5秒はかかった。
腕の中のトーマは無理やり僕から引き離されて赤黒い肉棒を突きつけられる。

「う…ひっく、ひっく…おかあさぁん…たすけて…」

トーマは肩を震わせると、大きくしゃくり上げて座り込んでしまった。
そうして目を擦りながら母さんの事を呼んでいる。
僕は見ていられなかった。
おもむろに口から肉棒が離されたのを良い事に、僕は大きく息を吸う。

「頼む、彼を解放してくれ!この子が何歳か分かっているのか!?まだ年端もいかない子供なんだぞっ…!」

僕の言葉を聞いても、男は微動だにしない。
そうして、今まで口を開かなかった男がトーマの綺麗な金髪を掴んで言った。

「坊ちゃん、さっきみたいに小さいお口でチュパチュパ舐めてくれよ。ママのおっぱいだとおもえば良いだろ?」

「いやだよぉ…僕、もうおっぱいなんか飲まないよぉ…ひっく…」

トーマは男の手から逃げて僕に抱きついた。
小さいなりに、自分の身に危険が起こっていることに気付いているようだ。
ガタガタと震えながら僕の体にしがみついて離れない。
そう、それでいいんだ。僕が君をまもってみせる。

「…こんなに嫌がってるのに気付かないんですか?これは立派な犯罪ですッ!!」

僕が声を張り上げると、トーマがびくりと震えた。
彼を怖がらせたいわけじゃない。
そういう意味を込めて、僕はトーマを強く抱きしめた。
トーマは僕を見て、泣き腫らした目を向ける。

「お、おにいちゃぁん…ぼくたち、どうなっちゃうの…?またおちんちん舐めないとゆるしてもらえない…?」

ぽろぽろと涙を零しながらトーマが言う。
だが、非情な男の手がトーマに伸びた。
先ほどのように髪を掴んでグロテスクなものを小さな口に押し付ける。
あんな小さな口でくわえたら、息ができないだろう。
予想通りに、トーマは手をバタバタさせながら必死に抵抗をしている。
男は一旦肉棒を引き抜いてケラケラと笑った。

「ほら、お兄ちゃんに見せてやんな。坊ちゃんのフェラをよォ…」

そうして肉棒を僕に見せるように突き出すと、トーマは虚ろな目で僕を見てから小さな穢れない口で男のものの先端を含んだ。
顎が苦しいのか、時折顔を引きながらぺろぺろとアイスを舐めるような舌使いでうっとりとそれを舐める。
どうして?さっきまであんなに泣いていたじゃないか。
僕は自分の膝が震えるのを感じた。
トーマの目が妖しい光を帯びて僕を見る。
先走りの液を口から滴らせたトーマが男を見上げてごくんと喉を鳴らした。

「おじちゃんのおちんちん…おいしいよぅ…おにいひゃんにも…舐めひゃれへ…」

その声と共に、男の手が僕のジャケットを掴んだ。
タイツの上からねっとりとした手つきで自身が撫でられる。
僕は抵抗するべく立ち上がろうとしたが、何故か体が動かない。
金縛りにでも合ってしまったように、ただ自分が脱がされるのを見つめていた。
目の前で男のものを舐めているトーマがうっとりと目を瞑っていやらしい事を懇願している。
僕はかぶりを振った。

「うっ、うそだ!僕はそんな事言わない!僕はそんな事しない…!夢ならっ…早く覚めてくれっ!!」

悲痛の叫びも、霧に飲み込まれる。
僕は素肌を曝け出された格好で男たちの肉棒を腹や性器に擦り付けられていた。
いやだ、やめろ、だめだ。
何かを叫ぼうとしたとき、口の中に大きなものが突っ込まれる。
トーマが舐めていた男のものだった。
小さなサンダルの音を響かせてトーマが僕に近寄る。

「おにいちゃんも、せーえきいっぱい飲んで?ぼく、おにいちゃんのいやらしい顔見たいよぉ…」

「なっ…」

トーマは口の端から白濁したものを垂らしながらにっこりと笑った。
そうして、別の男から無理やり脚を開かされて僕の肩にしがみついたままピクンと震える。
立ったまま尻を突き出したような格好にさせられたトーマは、とろんとした目を僕に向けた。

「…おにいちゃあん…ぼく、ぼく…変になっちゃう…」

トーマの声が止んだとき、水っぽい音が聞こえた。丁度トーマの後ろからだ。
小さな吐息が詰まる。
僕の肩に触れた手は爪を立てて、トーマはきつく目を瞑っていた。
まさか。

「あ、あああぁっ…ふあ…あん!」

がくんとトーマが肩を落としたとき、腰を打ちつけている男がにやりと笑った。
僕はあまりの恐怖と嫌悪にかぶりを振ることしかできない。
咥内のものが大きく膨れ上がるのを感じた。

「んっ、んむ…くは、ああ…」

頭の奥がビリビリと痺れる。
同時に、メタルファントモンの声が聞こえた。

『お前の精気、たっぷりと吸い尽くしてやろうぞ』

せいき?
精気…?
僕はハッとした。
慌てて抵抗をしようとするけど、トーマがしがみついてきて上手く動けない。
トーマは、いやいやとかぶりを振りながら太いものを受け入れていた。

「ふあっ、すご…硬いのいっぱい当たるのぉ!ぼくのなか…あうっ…あついよぉ…」

「んんっ…ふぐ…うっ…」

僕らは男たちに犯されながら声を上げ続けた。
なんてことだろう。
過去の僕と現在の僕がこんな目に合わされているなんて。
メタルファントモンは…本当に悪趣味だ。
くわえさせられた肉棒の温かさが妙にリアルで、僕はえずきながらそれを舐めた。
抵抗すればいいものを、僕の舌は勝手に男のものを舐める。

「んっ、んんっ…んちゅ、くふぅ…やっ…」

自分の声じゃないくらいの甘ったるい声を上げて僕が男のものを舐め上げる。
くるしい。
たすけて、たすけて、かあさん。
僕はトーマと同じ言葉を頭の中で繰り返しては涙を零した。
体中が弄り回されて、全身が性感帯のようになってしまっている。
僕はかぶりを振りながらそれをくわえていた。

「んはぁ、んっ…んっ…んふ…ちゅぽ、んむう…はぁ…」

僕の声が濡れきっているのが何故なのか分からない。
すぐ傍にいるトーマは男に狭い箇所を突かれながら甘ったるい声を上げた。
ガクガクと揺さぶられながら白い肌を真っ赤に染めて、汚らわしい事などとは無縁な幼い肢体が犯されていく。
僕にもっと力があったら…。

「んんっ…む、はぁ、出して…僕の顔に、かけて…」

僕はとんでもないことを言って顔を離した。
そうして肉棒を顔の前に掲げると、勢いよく白濁液のシャワーが降り注ぐ。
それを飲みながら、僕は未知の快感に震えていた。
苦い。濃い。
それなのに吐き出そうとはおもえなかった。
何てリアルな夢だろう。

「ちゅむぅ…んん、ふぁ…むぅ…」

残りも吸い尽くすように、僕は肉棒に顔を寄せた。
トーマの喘ぎ声が頭の片隅で聞こえている。
体いっぱいに精液を浴びた僕は、そのまま…ゆっくりと倒れた。
そうして、ようやく現実と夢の区別が付き始めた頃、僕はそれが完全な夢であることを知ったのだ。

「…あれ…」

「よう、起きたか」

僕の目の前に、背中を向けている大がいる。
改めて自分の状況を見直すと、僕は大きな葉っぱの毛布をかけて眠っていた。
淑乃もガオモンたちも眠っている。
起きているのは僕と…この男のみ、か?

「マサル、僕は…」

「っえ、何だ!?」

大は妙に上擦った声を上げて僕に振り返った。
その顔が赤い。
同時に、咥内にねっとりしたものを感じた。

「え…あ、マサル?まさか…」

咥内でその味を確かめながら、僕は次第に理解する。
やけにリアルだった肉棒の味。
精液の流れ込んでくる感覚。
それはすべて現実で行われていたのか。
この男の手によって。

「さ、先に言っとくけど、俺じゃねえ!お前がしてきたんだからな」

大はズボンの前を締めながら僕をたしなめるように睨んだ。
どうやら僕は眠ったまま大の寝床に忍び込んで口淫をしたらしい。
それを知った時、僕は恥ずかしくて死にそうだった。
逃げるように布団をかぶると、その手が押し留められる。
大が僕を見下ろしていた。

「…あのさ、何か怖い夢…見たのか?」

「え?」

「震えてる」

大の言葉とともに、僕の身体は抱きしめられていた。
僕は震えていたのか?
一体、何に怯えていたというんだろう。
そうおもいながらも、自然と大の背へと腕が伸びる。
僕は大を強く抱きしめた。

「こわ、かった」

僕がそれだけ言うと、君は優しく僕の頭を撫でて頷く。
ぞわぞわと這い上がってくる夢の恐ろしさが僕の胸をいっぱいにした。
そうして、メタルファントモンに見せられた夢をゆっくりと脳裏に描いていく。
ぐしゃぐしゃになったトラック。
切れた鼻緒。
そして、赤く染まった母さんの浴衣。
その全部が僕の心をいっぱいに支配した。

「…こわかった」

僕はもう一度、確かめるように言う。
大の手は優しく僕を撫でてくれていた。
理由なんか関係ないと言った風に、僕を強く抱きしめてくれる。
とちらかともなく一緒の布団に入った僕たちは、ようやく通った視線を合わせて口付けた。
触れた部分から冷え切った恐怖が少しずつ和らいでいく。
僕は大の体を強く抱きしめた。
言葉はなかった。
それでも君の腕はとても優しい。
僕は強く目を伏せて大の体を確かめるように抱きしめる。強く強く。

「…寝ろよ、傍にいるから」

耳元に口付けた大は、そう言って僕の首筋に顔を埋めた。
次第に静かな寝息が聞こえてくる。
甘えてもいいのかな?
君の腕の中で眠ってもいいんだろうか。
また、勝手にみだらな事をしてしまうかもしれないのに。

「…マサル、ありがとう…」

僕は掠れた声で言うと、ゆっくりと大の髪に口付けた。
体に触れる温かな体温が、僕の不安を少しずつ溶かしていくのを感じる。
心地の良い肩に顔を乗せて目を瞑ると、大好きな匂いがした。
僕は大の背を手でなぞって当分眠れそうにない自分にため息をつきながらも、気持ち良さそうに眠る君を見てこっそり笑った。

















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メタルファントモン×トーマとか色々妄想していたりしつつ、15話後の話ですー。