「お前は人間だろ」
そう言われたとき、体に電気のようなものが走った。
手の中のブーメランをいっぱいに振ってそいつへと振り上げる。
そいつはいともたやすく武器を避けて、おれのことを組み敷いた。
悔しい。
体格差の問題もあるけれど、それ以前に人間なんかに組み敷かれる屈辱さ。
俺はきつく唇を噛んだ。
「はなせッ!おれはデジモン!人間じゃない!」
必死の抗議も無視されて、おれは後ろ手に縛られた。
ファルコモンもいっしょに縛られたようで、しゅんと肩を落としながらうずくまっている。
「ごめんねイクト…」
ほんとうに申し訳なさそうに謝るから、おれはかぶりを振った。
人間たちは3人揃って何か話し合っている。
おれたちを料理するつもりなんだろうか。
おれは身を捩って、体を縛る縄を解こうと試みた。
おもいの外頑丈に縛られていてなかなか抜ける事はない。
そうこうしているうちに、人間の1人がおれの襟首を掴んだ。
「うっ、く…」
おれが顔をゆがめると、そいつは少しだけ眉を寄せて俺に顔を近づける。
ファルコモンが何かを言っていたがよく聞こえなかった。
人間の声がすぐ近くから聞こえる。
「一晩はその格好でいてもらうからな」
「うるさい、解け!戦え!」
おれがありったけの力で叫んでも、人間は聞いていなかった。
3人の人間と3体のデジモンは、おれとファルコモンを洞窟へと連れて行くと焚き火の傍に座らせてのんびりと寛いでいた。
今は夜だ。少し寒い。
おれは後ろ手に縛られたままうずくまった。
それぞれの人間はおれたちの事なんか気にしないふうで眠っている。
それでも、おれたちに毛布をかけにきたのは何故なんだろう。
毛布の心地よい感触に母親をおもいだしながら、おれは身を捩った。
あと少しで解けそうなんだ。
「くー…くー…」
ファルコモンは安らかな寝顔で眠っている。
おれはねむれないのに、どうしてファルコモンは眠れるんだろう。
こんな人間くさい場所で落ち着いてねむれるなんて変だ。
新鮮な空気が吸いたい。
おれは膝立ちで歩きながらゆっくりと洞窟の外に出た。
ひんやりとした夜風が頬をくすぐる。
ちゃっかり掴んできた毛布を体に巻いて、洞窟の外に座り込んだ。
寒い、けどきもちいい。
「…にんげん、きらい…」
おれは小さく呟いて毛布に顔を埋めた。
その時、不意に頭を柔らかなものに撫でられる。
不快感を覚えて頭を起こすと、人間の仲間が立っていた。
赤い服を身に纏った男だ。
おれはその手を振り払おうとしてから、手は縛られていることに気付いて頭突きをかました。
「いでっ…」
「離せ!」
頭突きが効いたのか、人間は顎を押さえてから小憎らしそうにおれを睨んでいる。
おれは数歩下がって縄を解くべく身を捩らせた。
そんなおれを見て、人間がため息をつく。
「夜くらい静かにねむれよ、イクト」
人間の口からおれの名前が飛び出した。
おれよりもずっと大きな、けれどメルクリモンより小さな手がおれの頬に添えられる。
もう一度頭突きをかましてやろうかと身構えると、しっかりと体を抱きしめられた。
「うわ…」
おもわず口から声が出てしまう。
あったかい。
毛布なんかよりずっとあったかい人間の体。
おれは人間の体から離れる事も忘れてしばしぼうっとしていた。
人間の手がおれの頭をポンポンと撫でる。
「何だ、お前も大人しくなるんだな。借りてきた猫みてーな奴だとおもってたのに」
人間の言っている事はよくわからなかった。
けれど何だか恥ずかしくなってしまって、もう一度頭突きを食らわせる。
ガツンと音がして、人間がまた顎を押さえていた。
おれは人間の手から逃れると、足の自由がきかないためその場に座り込む。
そうして口を開いた。
「ぬくもりなんて必要ない!感情なんかいらない!おれはデジモンの戦士、イクトだ!」
それだけを息継ぎせずに言ってのけると、人間はおれをじっと見てからやや強引に顎を掴んだ。
気の強そうな瞳がおれの事をじっと見つめている。
だからおれも負けじと睨み返した。
にんげん、ゆるさない。
いつかファルコモンが言っていた人間のあそび"にらめっこ"のようだとおもいながら、おれは人間を睨み続けた。
動物だって目を逸らしたほうが食われる運命なんだ。
だからおれは目を逸らさない。
ぜったい、負けないんだ。
「…デジモン、ってさ」
不意に人間が口を開いた。
目を逸らしちゃだめだ。
おれは自分に言い聞かせて人間を睨み続ける。
人間はおれを見つめたまま言った。
「性欲がないらしいけど…お前はどうなんだ?」
人間の言葉はよく分からなかった。
そもそも、おれには性欲の意味さえ分からない。
おれは返事もせずにその言葉を復唱した。
せいよく、せいよく…せいよく。
そんなおれを見て、人間が続ける。
「お前もさ、人間なんだよ。性欲があってもおかしくねぇ。デジモンだらけの世界じゃ…性欲なんか必要ないかもしんねーけど」
人間はそう言いながらおれのまぶたを手で塞いだ。
視界が閉ざされて何も見えなくなる。
おれはファルコモンを呼ぼうとして口を開いた。
その時、口の中に何か硬い木の実のようなものがほおりこまれる。
大きく口を開けていたおれはそれを飲み込んでしまった。
くすり?喉を通っていくそれがきもちわるい。
おれはむせながら怒鳴った。
「ぐっ、う…何を飲ませた!?」
「先に飲んでおいたほうがもっと気持ちよくなれんだろってトーマが言ってた。俺はこういうの好きじゃねェけど…」
人間はそれだけ言うと、おれの唇に何か柔らかなものを押し当てた。
今度は何のくすりだ?
そうおもっていたのだが、その柔らかいものはおれの唇を舐めるように動きながら軽く吸い上げてきた。
唇に触れるそれが、ねとねとしていて嫌だ。
「ふっ、く…んん…!?あっ…」
おれの視界を開放した人間は、おれの体を強く抱きしめると顔を寄せてまた柔らかなものを押し当てる。
それは…人間の唇?
ゆっくりとおれの口いっぱいにねっとりとしたものが絡み付いてくる。
ぞくぞくとした、変な感覚がおれの体を支配した。
何でだ?
「ひっ、い…やめろ、人間!!」
「俺は"人間"って名前じゃねえ、マサルだ」
まさると名乗った人間は、おれの上着をまくりあげて胸の先端に指を這わせる。
ぴりぴりと痺れるような感覚が邪魔で、おれはきつく眉を寄せた。
やけに息が荒い。
おもいっきり走ったあとでもこんなふうにならないのに。
「あっ…ふう…離せ!痛い!」
人間の手が執拗に胸の突起を擦り上げる。
縛られているから抵抗ができない。
殺されるわけではないのだろうけど、おれには人間に触られたくなかった。
人間のにおいが移ってしまうのが嫌だから。
「んぁ…ふ、ひう…ああっ…」
おれは何度もかぶりを振って、痺れるような感覚に抗う。
人間の乾いた指が突起を擦りあげていくたびにそれはどんどん堅くなっていく。
どうしてそうなるのか分からないおれは、何度もかぶりを振ってしゃくりあげた。
「ふ、ファルコモン…ファルコモン、起き…んんっ…」
声を上げてファルコモンを呼ぼうとしたおれに、再び人間の唇が重ねられる。
ズボンの間から差し入れられる手がおれの下腹部を掴む。
頭の中がまっ白になりそうだった。
口の中に伸ばされる舌がおれの舌を強く吸い上げる。
おれは強く目を瞑った。
「んんっ…あぐ…やめろぉ…おれ、壊れる…壊れるっ…!」
ちゅ、と唇を吸い上げるような音が耳につく。
いつの間にか自分から口吸いを求めるように、人間へ顔を寄せると奴は満足そうに笑った。
「…言えよ…イきたい、って。人間にしてやる」
「やだぁ!…おれ、デジモンっ…人間じゃな…あふっ…」
おれは何度もかぶりを振って抗議をする。
人間の手はおれの恥ずかしいものを掴んだまま無理やり上下に擦った。
痛いくらいにたくさん擦られて、変になりそうだった。
イくという感覚が何なのか分からないけどこのままじゃあ死んでしまう。
おれは舌を出してしゃくりあげた。
「ひっく、うう…うっく…い、いきた…」
口が、おれの意思とは無関係に形を作り始める。
人間が顔を寄せた。
同時に胸をきゅっと強くつままれる。
おれは口の端からぽたぽたと雫をたらした。
「い、いきたいぃ…うぁ…いきたいっ…いきたい…」
そう叫ぶたび、どんどん顔が熱くなってくる。
人間は笑みを浮かべて、おれの胸の突起を口に含んだ。
ちゅっと甲高い音を立てて胸を吸うから、おれは何度もかぶりを振って喘いだ。
苦しい、いきたい。楽になりたい。
僅かに下肢をもぞつかせながら目だけで懇願をする。
せりあがってくる熱いものがおれの体いっぱいに広がり始めた。
「あっ、あ…ひあ…ああっ、う…まさるぅ…!!」
人間の名前を叫んだとき、頭の中に白い光がパッと弾けた。
びくびくと全身が震える。
短時間の間に体中の汗がたくさん溢れたような気がした。
縛られた部分が痛い。
おれは大きく喘ぎながらゆっくりと目を瞑る。
脱力感とはじめての感覚に混乱しながらも、心地良い快感に包まれて意識を手放した。
「マサル、どうだったんだ?」
不意に背中から声がした。
俺が振り返って親指を立てると、そいつは腰に手を当てて頷く。
腕の中でぐったりしている子供の衣服をきちんと直している俺を見ながらトーマが言った。
「これで彼も人間としての感情に気付いてくれたらいいんだが」
「気付くのかぁ?」
「何を言う…性欲は人間として当たり前の感情だろう。デジモンだらけの世界にいて性欲も発散しないようでは…この子は病気になるとおもったから君に頼んだんだ」
トーマはそれらしい事を言ってイクトの頬を撫でる。
俺の腕の中で達したイクトは、射精さえしなかったがしっかりと感じているようだった。
トーマから預かった薬が効きすぎたってのもあるだろうけど。
こういう方法で性欲発散させなくてもいいんじゃねえかな…。
そんな事を考えていたのがバレたのか、トーマは腕を組んでため息をつく。
「君だって男なんだから一人でするだろう?」
「ぶっ…あのなぁ、そういう事言うか?普通」
「ああ」
即答するトーマに大きくため息をつきつつ、俺はイクトの体を毛布に包んだ。
安らかな寝顔を見せるそいつが先ほどまではあんなに可愛い顔してたんだな、とか想像すると俺も何だか変な気分になってくる。
俺はトーマに気付かれないように、反応している下腹部を隠すとイクトを連れて洞窟の中へと入っていった。
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わあもうイクト受…!何だかDATS隊員が変態の集まりみたいだぞ!(爆)
シリアスの場合鬼畜なマサル×イクトが好きみたいです。