指についたジャンクフードのカスを軽く舐めながら顔を寄せた年上の男は、いたずらな笑みを浮かべながらマサルの顎を掴んだ。
おもわずマサルが後ずさると、男は舌を出して挑発するように声を上げて笑った。
「ハハッ、見れば見るほど間抜けな顔したガキだよな…オマエ」
「なッ…ンだと!?おまえいくつだよ!俺は14歳だぞ!?」
「俺は17だけど?」
勝ち誇ったように笑った男は、マサルの隣にいるトーマへと視線を移してニヤニヤとしまりのない笑みを見せた。
トーマはと言えば、敵の男が馴れ馴れしくマサルの体を触るものだから時折口の端をピクピクさせながら言葉も発さずに黙っていた。
「ヘーェ?…結構綺麗じゃん。俺サマの自伝にオマエのこと書いてやンよ、"金髪碧眼の美少女は翼聖に釘付けである"ってな」
「びしょ…誰が少女だっ!!僕は…」
おもわずトーマが声を荒げて怒鳴りつけると、その唇がそっとコウキの指で塞がれた。
マサルの肩を抱いたまま、コウキはトーマの唇を易々と奪う。
唇のピアスが触れる感触に、トーマはきつく目を瞑っていやいやとかぶりを振った。
案外あっさりと離れたコウキは自らの唇をペロリと舐めてみせてからトーマの耳元に勢いよく吐息を吹きかけた。
「やっ!…何て事をするんだ…っ…」
唇を犯されたトーマは、怒りや羞恥ですっかり顔を真っ赤にしている。
貴族の家柄であるトーマにとって、男から口付けを受けるなど侮辱に近い行為だろう。
そんなトーマの様子にも惚れ惚れした様子のコウキはわざとらしく目を丸めて言った。
「そんな怒ンなよォ、外国じゃ挨拶がわりじゃねェの?…オマエはもう俺サマのモンだぜェ。…で、こっちのナマイキなガキも俺のモン」
そう言ったコウキは、呆気に取られているマサルの唇さえも塞いできつく体を抱き寄せた。
唇を重ねられたマサルは、つり目がちの瞳を大きく見開くとすぐに目を瞑った。
喧嘩番長を自称しているくらいなのだからすぐにでもコウキを殴り飛ばす事ができたはずだが、咥内に侵入したコウキの舌がそれを許さなかった。
上顎をねっとりと舐めあげながら、マサルを快楽へと導いていく。
「ん、んんっ…はぁ…っ、あっ!」
腰を引くように後ずさるマサルの腰を抱いて、コウキが口付けを続ける。
と、そこにおもいきりアグモンのベビーフレイムが飛んでくる。
デジモンと融合しているせいなのか、コウキは片手でその炎をもみ消した。
すっかり体中の力を抜かれたようにマサルがコウキにもたれかかる。
そんなパートナーを見てアグモンが言う。
「うう…あにきにエッチな事しやがってぇ…ぜったい許さねー!おまえは俺がぶっとばすっ」
まるでマサルのようなことを言ったアグモンは半泣きになりながら口の中で炎を揺らめかせた。
そんなアグモンを見て口笛を吹いたコウキは、挑発するようにマサルの額へ口付ける。
「へへ…障害が大きいほど愛は燃え上がるんだよッ!…また来るからな、マサル、トーマ」
わざとらしく投げキッスをしてみせたコウキはそのまま時空振動爆弾でデジタルゲートを開くとその中に飛び込んでいった。
その場にへたりこんでしまったマサルは、唇を拭いながら大きくため息をつく。
「…俺のファーストキス…」
「僕も…ファーストキスだった…」
マサルとトーマがそれぞれにため息をつくと、そんなパートナーを見てアグモンとガオモンは言い表せない嫉妬で胸をモヤモヤさせながら打倒コウキを誓った。
ただの敵ならまだマシなのにこうしてマサルとトーマに干渉して来るなんて許せない。
アグモンはマサルの背中を擦りながら口を開いた。
「あにき、おれが後で消毒してやるから安心しろよ」
「いらねーよっ!デジモンにキスされて嬉しい男がどこにいるーっ!」
ぎゃあぎゃあと喚きあうマサルとアグモンを見て、トーマとガオモンは同時にため息をついた。
それでも今後、再びコウキが自分達を狙ってくるのだとしたらパートナーも危ない目に合う。
トーマはちらりとガオモンを見てから、策を練るように小さく唸った。
数日後、またもコウキの襲来があるだろうと予測しながら。
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コウキ攻…メジャーすぎるとおもいつつやってしまった…(爆)