僕は常人離れした力でシャツを引きちぎられた後、頭の上で両手首を縛られていた。
もちろん、ズタボロになったシャツで。
ミラージュガオガモンが、僕がされている仕打ちに気付いたのか慌てて飛んでくる。

「うッ…シャイングレイモン…?」

シャイングレイモンの纏っているオーラのせいか、ミラージュガオガモンが一瞬たじろぐ。
それでも彼は鋭い瞳を細めて、シャイングレイモンをなぎ払おうとする。
シャイングレイモンが一瞬、笑ったように見えた。
次の瞬間、黒い光が輝いたと同時にミラージュガオガモンが海に叩き落される。

「ミラージュガオガモンッ!!ミラージュ…」

「おまえの相手はこの俺だぜ…トンマ」

おもわず海に近付こうとした僕を、マサルの手が遮る。
こうしている間にも、水中に落とされたミラージュガオガモンは苦しんでいるに違いない。
あんな禍々しい光を放つシャイングレイモンに怯まないほうがどうかしてるんだ。
僕はマサルを睨みつけて身を捩る。
マサルは僕の腹に座り込んで小馬鹿にしたように笑った。
胸が圧迫されて苦しい。

「うっ、ぐ…げほっ…げほ…」

「おまえがおっさんキラーだとはおもわなかったぜ。もしかして隊長とも寝てたんじゃねェのか?淫乱」

マサルは僕の前髪を乱暴に掴んで罵った。
酷い物言いに胸が詰まりそうになったが、僕はきつく眉を寄せて口を開く。

「…君と話しても無駄だということが解らないのか?そうおもいたいなら勝手におもって…ぐっ!!」

バキ、と鈍い音が聞こえて僕の頬が殴られた。
無防備な腹じゃなかっただけマシだ。
僕は痛みに歯を食いしばる。
そんな僕が気に入らないのか、マサルは目を細めて笑うんだ。

「じゃあ貴族サマの味をたっぷり頂くとするか…。みんなの前で犯してやるよ」

「…っ、な…にを言って…ぁあうっ…」

伸ばされた指が僕の乳首を乱暴に擦った。
それだけなのに、僕の口からはだらしなく甘ったるい声がもれる。
何故だ?倉田と寝たときにはこんなに感じなかったはず。
こんな屈辱を受けて感じるだなんて事は、あってはならないのに。
マサルは僕に顔を寄せると親指と人差し指で乳首を転がし始める。
やけにゆっくりとした動作は焦らされているように感じた。

「…やめろ…こんな事を…」

自分でも何を言おうとしていたのか解らない。
けれど最後まで言う前にマサルが声を上げた。

「おい、淑乃。バイブ買ってこい。滅茶苦茶太いやつをな」

マサルの言葉に、淑乃さんは顔を青くしてかぶりを振る。
淑乃さんの様子を心配そうに伺っているイクトはマサルの豹変に困惑しているようだった。
無茶な注文を受けた淑乃さんは当然反論をするけど、その声は弱くて小さい。

「な…何言ってんのよあんた…!?大体、トーマに何てことを…」

「まさる、こわい…らんぼう、よくない」

イクトは弱気に呟くけどその目はじっとマサルを見つめている。
そうだ…誰か助けて。この壊れかけた男を…僕から引き剥がしてくれ。
そう祈っていた僕の上で、マサルが低く笑った。
今までのマサルとは比べ物にならないくらい…邪悪な笑み。
マサルは淑乃さんたちを睨み上げて言った。

「淑乃…まずはおまえから犯されてェのか?コイツは敵なんだぜ…ブチのめしてやるのが漢ってモンだろうが」

マサルの言葉はひどく乱暴だ。
辛辣な言葉に、淑乃さんは涙目でかぶりを振った。
パートナーが責められていることが耐えられなかったのか、上空で待機していたロゼモンがふわりと舞い降りる。

「…マサル、あなた…自分が何をしているか分かってるの?」

「レイプだろ?」

仲間の豹変に怯えてしゃくりあげてしまった淑乃さんを抱き寄せてロゼモンが気丈に応戦するけど、マサルの冷え切った声に強張ったような表情を見せた。
マサルは今にも噛み付きそうな表情で淑乃さんたちを見つめている。

「おら、買いに行くのか?行かねェのか?」

「…っ、行き…ます…」

淑乃さんは弱々しい声で言った。ロゼモンに連れられてよろよろとその場を去ってしまう。
その姿を満足そうに見つめた後、マサルはイクトを手招きして笑みを浮かべる。

「…来いよ、イクト。イイモノ見せてやるから」

マサルの言葉に、イクトがびくりと身を竦める。
それでもゆっくりとした足取りで近付くイクトの表情は暗かった。
僕をちらりと見て、泣きそうな顔をしている彼は酷く痛々しい。
そんなイクトの様子にも気付かない振りをして、マサルが口を開いた。

「この淫乱をイかせる手伝いをしろ」

マサルの口から漏れたのはとんでもない言葉。
おもわず反論しようとすると、乳首を強く抓られた。
腰を浮かせて逃げようとするけど、逃げられるわけがない。
意外にも僕の体は恐怖を感じているらしく、足がまったく立たないんだ。
どうしてこんな事に…。
倉田博士は別の場所で僕の様子を伺っているはず。
ならどうして助けてくれないんだ?
僕には、もうあの人しかいない。
倉田博士しかいないのに…。

「…イクト、コイツのチンポをおもいっきり踏みつけろ」

マサルはイクトを見つめて言った。
僕はもちろん、イクトだって怯えている。
逆らえば何をされるかわからない。
それは分かっているだろう。
一向に動こうとしないイクトを見て、マサルが口を開いた。

「倉田と手を組んでるんだぞ?おまえの仇の倉田と。こんな奴、生かしておいたほうが毒だぜ」

「…う、あ…」

イクトはマサルの言葉に冷汗を垂らしながら肩を震わせる。
それでも僕を見つめると、意を決したように近付いてきた。
まさかイクトは、本当に僕のことを…。

「…ぐ…あぁあああッ!!」

イクトの足が僕の下肢に下ろされた。
押し潰されるような痛みと、やっぱり痛みだけ。
僕はイクトの足を押しのけようと手を払うけど、マサルに押しとどめられた。
マサルは楽しそうに笑っている。
怖い。怖い…。

「ぎっ…い…ぐあぅ…あぐ…やめ…てくれッ!痛いッ…イクト…!」

助けて、誰か。
僕は必死に身を捩って抵抗するけど、するだけ無駄だ。
僕の身体はマサルがしっかりと押さえつけている。
逃げるほうが無理だ。無理だ。逃げられない。

「…イイ声で鳴くじゃねェか。もういいぜ、イクト…次はコイツの服を全部脱がせるんだ」

「…う…」

イクトは僕を見てきつく目を細めた。
ズボンのベルトに手がかかる。
嫌だ、もう嫌だ。
声にならない声で抗議をしても、それはふたりの耳に入っていないようだった。
脱がされたズボンが地面にほおられる。
下着は片足に引っ掛けられた状態だった。
僕は大きく息をつきながらふたりから顔を背ける。
今の状況を目に入れたくなかった。
犯されているのは僕じゃない。
トーマ・H・ノルシュタインという誰かだ。

「へェ、これが貴族のチンポかよ。ずいぶん腫れてるじゃねェか」

マサルの手が、乱暴に僕のものを弾いた。
痛い。それだけでひどい激痛が下肢に響く。
僕は下唇を必死に噛んで唸った。
黙っていれば行為はすぐに終わるんだ。
だから耐えて、僕が黙っていれば…。

「マサル…っ…く…」

目の前の男は、大門マサルとは程遠いオーラを纏っている。
優しくて、太陽みたいで、馬鹿みたいに底抜けの明るさを持っている大門マサルとは違う。
彼はマサルじゃない。
僕を"好き"だと言ったマサルじゃない。

「…きみ、は…本当に僕を…」

きらいになってしまったのか?
目だけでそう言うと、マサルは僕に顔を寄せてニヤリと笑った。
ゾッとするような微笑みだ。
その笑みだけがすべてを物語っている。
彼は本気だ。本気で僕を…。

「イクト、こいつにションベンかけろよ」

「えっ…」

マサルの声に、イクトは竦みあがって小さくかぶりを振る。
その姿はとっくに怯えきっている。
ズボンをおさえているイクトが気に入らないのか、マサルは乱暴にイクトのズボンを下ろさせた。
発育途中のペニスが僕の目に晒される。
既にイクトは涙ぐんでいた。

「…うっ…おれ…やだ…できない…まさる、おれ…」

「コイツとおなじ目に合いたいのか?」

イクトの言葉を遮ってマサルが問いただす。
大きな瞳から涙がこぼれた。
何度もかぶりを振るイクトを見て笑ったマサルは、イクトの後ろに回って小さなペニスを掴む。
尿意を促すように下腹部を撫でたり押したりを繰り返していた。

「や…だぁ…おれ、こんなことしたくない。トーマ…かわいそう…うっく…」

しゃくりあげながら、次第に両足を擦り合わせるような仕草をしたイクトを見て、マサルが笑う。
イクトのペニスが僕へと向けられた。
僕は体を衣服で拘束されたまま身を捩る。
何度もかぶりを振って抗議の声を上げようとするけど、それは声にならなかった。

「や…やめ…」

「ほら、出せよ…」

マサルの声と共に、イクトのものから液体が飛んでくる。
精液とは違うそれは僕の腹から足をぐっしょりと濡らした。
尿を放出してしまったイクトは放心したように膝をついてしゃくり上げている。
マサルが近付いてきた。

「へへ…ずいぶん濡れたじゃねェか。ここは俺も参加してやらなきゃつまんねーよなァ?」

そう言ったマサルはズボンの前を開けて、大きなものを取り出した。
嫌でも目に入ってくるそれは、ゆっくりと僕の口へ近付いた。
身じろぎする僕を見下ろしたマサルが残酷に笑う。

「口、開けろよ」

僕の口元に向けられたペニスはビクンと震えて静止した。
何をするつもりなのか解らない。
僕は息を荒げながらかぶりを振る。
マサルが舌打ちをした。

「チッ…手間かけさせやがって…」

「むぐっ…ううぅっ!」

マサルの手が僕の口を強引にこじ開ける。
大きく口を開かされた僕は、しゃくりあげながらマサルを見上げることしかできない。
夜の暗がりのせいで、マサルの顔は別人に見えた。
マサルの姿をした誰かは、僕の口を開けさせたまま片手でペニスを掴む。

「ちゃんと飲むんだぞ?飲めなかったらぶん殴る」

低い声でそう言ったマサルの手には黒いデジソウルが揺らめいた。
僕は口を開けたまま肩を震わせる。
嫌だ、嫌。そんなことしないでくれ。
僕は…僕は貴族なのに。
そんなことできない。

「いや…やめてくれ…」

僕が涙声で呟くと、マサルはペニスを口元に向けたまま残忍に笑った。
その口が「イヤダ」とゆっくり動く。
同時に、ペニスから精液とは違った液体が僕の口の中へ注ぎ込まれた。
じょろじょろと嫌な音を立ててそれが流れ込んでくる。

「…っぐ、うぇ…っ…げふ、う…うぅ…っ!!」

おもわずむせこむと、マサルが僕の鼻を摘んでから無理やり口を閉じさせた。
何度もかぶりを振って抵抗するけど、逆に首が引きちぎられそうな痛みに襲われる。
僕の顎は上を向かされて、それを飲ませられた。
熱い液体が喉を通っていく。

「うぶっ…ぐ…かはっ…げほっ…」

すべて飲み込んだのを確認したのか、マサルの手が離れる。
僕は背中を丸めて何度もむせた。
そんな僕の体を靴のままで踏みつけたマサルは、ぐりぐりと腹をかかとで刺激しながら顔を寄せる。
僕は何度もしゃくり上げながら身を捩った。
もうこれ以上乱暴にしないでほしい。
ゆるしてほしい。
そうおもいながらかぶりを振るけど、マサルは全く動じない表情で呟いた。

「トンマ…おまえさ、淑乃がバイブ買ってくるまでオナニーしながら俺のチンポしゃぶれよ」

マサルの言葉に、僕は反論の声さえ出ない。
喉がヒクヒクと震えるだけで、何も言い返せなかった。
僕の髪を乱暴に掴んで、乱暴に露出されたものへ押し付ける。
声にならない悲鳴を上げた僕を楽しむようにぐりぐりと頭を押さえる君は、もう大門マサルじゃない。
僕を好きだと言って、僕がおもいを寄せた大門マサルじゃないんだ。
なら、僕は…。

「…ごふ…んむ…ちゅる…が…ふぅ…んっ、んん…」

僕は震える頭を上下させてマサルのペニスを吸い上げる。
いやらしい水音が夜の闇に響いていく。
目を上げるとマサルのつり目とぶつかった。
無心に口を使いながら大きなものを吸い上げる僕を見下ろしたマサルの口から馬鹿にしたような笑みが漏れる。

「ずいぶん慣れてるじゃねェか…倉田のチンポしゃぶりまくったのか?その汚ェ口で」

マサルは僕の口から自身を取り出すと、不意に腕を振り上げた。
また殴られる。
おもわず身を竦める僕に、いつまで経っても拳は振り下ろされない。
恐る恐る目を開くと、マサルは僕を睨みつけたまま腕を振り上げていた。
その目が僅かに揺らぐ。マサルは僕を殴ることを躊躇っているんだろうか?
僕はゆっくりと身を起こしてマサルの胸に顔を寄せた。

「…トーマ…?何すんだよ…」

「すまない…すまない、マサル…」

僕はしゃくり上げながら自由のきかない両腕を動かそうとする。
けど君を抱きしめる事はできない。
悪魔に魂を売った僕は、君を抱きしめることなんて許されないんだ。
僕を大好きだと言ってくれたマサル。
僕だって本当は、本当は君のことが。

「…マサル…僕は、マサルが…」

今更何を言っても言い訳だと捉えられてしまうだろう。
けど本当のきもちを話したいんだ。
僕は…。

「あっ!ぐ…マサルッ…」

不意にマサルが僕の体を押さえつけた。
首筋に熱い口付けが何度も何度も与えられる。
僕は目を瞑ってマサルの背中へ腕を回した。

「はぁ…っ、ふ…マサル、んぁ…」 _

甘ったるい声を上げる僕を見て、マサルはもう何も言わない。
ただ、熱っぽい愛撫を繰り返すだけだ。
首筋から胸元に降りた口付けが僕の体を震わせた。
マサルの手は、既に僕の下腹部に降りている。

「…ここを触られたのか?倉田に…。どんな顔して鳴いた?どんな顔して"イかせてください"って言ったんだよ、こら」

マサルは僕の耳元で囁きながら手を上下に動かしていく。
倉田にされたことを、今マサルにされている。
おなじ行為だと言うのに、今朝は何の反応も示さなかった僕の心は熱く揺らいでいた。
マサルのものを飲まされ、しゃぶらされて精神が参っていたのかもしれない。
きっと、ずっと欲しかったものだから。

「ふぁ…うぅ…やめ…てくれっ!僕は…僕は…高貴な、ノルシュタイン家の…」

「男と簡単に寝ちまう淫乱のトーマ、だろ?」

「違うっ…」

僕は息を弾ませながら否定した。
自分でも嘘にしか聞こえない。
マサルの愛撫に熱がこもるたび、僕は甘ったるい声を上げて身を捩る。
ふと、マサルが僕の耳元へ顔を寄せた。

「…倉田に何て言われた?」

マサルの声は相変わらず低かったけれど、その目は真剣そのものだった。
意味が分からなくて口を開こうとする僕の唇にマサルのものが重なる。
ねっとりと唇を奪うような口付けに、僕は目を瞑って応えた。
淫乱と呼ばれてもいい。
裏切り者の刻印を押されて、マサルに殺されても構わないから…今だけ、夢を見させて欲しい。

「んっ…ふ、はぁ…ちゅるっ、むくぅ…あっ…」

口付けがゆっくりと解かれていく。
もっと繋がっていたい。マサルのキスが欲しい。
そう願って舌を伸ばす僕を見て、マサルが一言呟いた。

「…脅されてんだろ、あの男に」

その言葉はさっきと変わらない低い声。
僕は口を開きかけておもい留まった。
ここで僕の作戦をすべて話してしまうと…作戦は失敗する。
妹リリーナの首にしかけられていた爆弾装置…あれを解除するためには、僕が倉田に協力するしかなかった。
本当は、君を裏切るつもりなんて鼻から無い。
マサルから乱暴をされて気付いたんだ。
僕は、ずっとマサルが好きだったって。

「…っ、う…っく…ちが、う…そんなこと…」

否定しようとする僕の目に、マサルの真剣な瞳が映る。
僕は言葉の先をつっかえてしまって、小さくむせび泣いた。
そんな僕を見つめていたマサルはゆっくりと顔を離して僕の足を広げさせる。
冷たいアスファルトの地面を強く掴んだ僕は、マサルを見つめてしゃくりあげた。
怖かったわけじゃない。怯えてるわけじゃない。
むしろ、ずっと望んでいたことだ。
憎まれようが、僕は君に抱かれたい。

「…よーく分かった、もう裏切り者と話す事は何もねェな…」

マサルの指が僕のつぼみをほぐしていく。
涙で地面を濡らしながらマサルを見上げる僕は、もう何も言い返さなかった。
それどころか、マサルに協力するように体の力を抜いてきつく目を瞑る。
同時に感じた熱いものが僕のつぼみに突きたてられた。
口から漏れた喘ぎ声は裏切り者の淫乱に相応しいくらいにふしだらで、みだらな声だ。

「はぁっ…ああっ、あ!うぁ…マサル…んぅ…ふ…ぁあっ…」

僕はマサルと繋がってる。犯されている。
夜の闇に響くぬれた音が僕らの中の獣の本能を呼び覚ましていく。
マサルは、乱暴に僕の手を拘束するシャツを解いた。
手首がじんじんと痺れる。
拘束を解かれた僕はそのままマサルに腕を伸ばして強く強く抱き寄せた。
いつのまにか、奴の腰に足を絡めて甘ったるい声を出している僕はマサルの名前を連呼しながらその快楽に酔う。
束の間の幸福だ。

「マサル…んんっ、あ…あうっ!あ…あぁっ!ん、んっ…」

僕は自分でもびっくりするくらいの甘ったるい声を上げながらマサルの体にしがみつく。
揺さぶられてかんじているんだ、この淫乱な貴族は。
おもいを寄せていた友に犯されて、殴られて、飲尿することを強要させられて。
それなのに僕は嬉しかった。
マサルと繋がることができて…。

「もっと、奥にきて平気だ…っ…んぁっ!はァ…あうっ!マサル、マサル…っ!」

すぐ近くにある体をきつく抱きしめて、僕はみだらなことを懇願する。
誰が見ていたってもう構わない。
僕は裏切り者なんだから。

「お、淑乃とロゼモンじゃねーか…遅かったな」

不意にマサルが顔を上げた。
淑乃さんは、ロゼモンに付き添われながら泣きはらした目を伏せている。
手には黒い袋を持っていた。
きっと中身は、マサルが指示したものだ。
僕はこれからもっと犯される。

「へェ…いいバイブじゃん。トーマ、くわえてろよ」

マサルは乱暴な手でバイブを取り出すと、嫌な機械音を響かせたそれを僕の口元へ近づけた。
僕に抵抗する権利はない。
ただ黙って口を開けて、バイブと呼ばれた大きなものを口に含むだけだ。

「…くぅ…むふ…んんっ…ぐ、ふ…っく…」

舌が痺れるような振動を与えるそれは僕の口の中でいやらしい音を立てながらうねり始めた。
マサルの手がバイブを引いては、僕の口の中へ再び挿入する。
喉奥まで突っ込まれるたび、僕はむせながらそれをしゃぶった。

「貴族が上の口も下の口も弄ばれて…やらしいモンだよなァ。バイブでイキてェか?それとも…」

マサルの言葉に、僕はゆるくかぶりを振った。
できるだけ腰を動かして、くぐもった声のまま口を開く。

「いや、だ…マサルの、が…いい…っく、む…マサルの、で…イカせてほし…んんっ…」

「よく言った。それでこそ俺の元・子分だぜェ」

元、というところにアクセントをつけて言ったマサルを見て、ああ…やっぱり僕は裏切り者なんだなと再認識する。
このままマサルに壊されてしまいたい。
そうおもいながら目を伏せると、体内を貫いていたものが熱を増して大きくなってきた。
体を揺さぶられる力が早まっていく。
僕はアスファルトという名のベッドに寝かされて、好きだった人間に犯されている。
涙が止まらない。
好きな人間に犯されて本望じゃないか…何を悲しむ必要があるんだろう?

「…は、うっ…んあ…あっ、あ…っ!マサルっ…もうだめだ…僕はっ…」

もうだめだ。
僕は。
これ以上、自分に嘘をつくことができない。
そう言おうとした時、不意に唇が塞がれた。
マサルの唇が熱烈に僕の唇を奪う。
言葉をかきけされて、それでも僕はマサルの口付けに合わせて唇を貪った。

「んぁっ…マサ、ル…んむぅ…っ、んっ、く…ふ…」

夜の闇に淫らな音が響く。
マサルは力強く僕の体を押さえつけると、乱暴に腰を使い始めた。
徐々に射精感がこみ上げていく。
背中が擦れて、痛い。
きっと血も出ているだろう。
それなのに、痛みさえ心地良いとおもってしまう僕は既に心が壊れてしまったんだろうか。

「ひっ…い…いっ、く…いくっ…マサル…あぐ…っ…あぁあああァ…っ…!!!」

僕は尾を引く叫び声を上げて耐えていたものを吐き出した。
同時に、体内へ叩きつけられた熱い液体が僕の中をいっぱいに犯す。
僕は口を開けたまま、舌を突き出してビクビクと震えていた。

「…ッ、くそ…」

頭の上ではマサルが荒い息をつきながら僕を見下ろしている。
その顔が、少しばかり苦しそうに歪められた。
憎らしいものを見るような瞳が僕を睨んだ。
その時だ。

「マスターッ!!」

激しい水音が辺りに響く。
何者かにふわりと抱き上げられた僕の身体は空を飛んでいた。
隙をついて、ミラージュガオガモンが助けてくれたんだ。
僕はミラージュガオガモンの肩に顔を寄せて、マサルたちがいるであろう場所に目をやった。
既に暗くて何も見えない。
マサルが僕を見つめているのかさえも解らない。

「…マサル…僕は、君のおもいを…裏切ったんだ…」

ミラージュガオガモンに寄り添いながらそう呟くと、金属質の腕がそっと僕の体を吹きすさぶ風からかばう。
僕の顔を見ずに、パートナーは黙って前方を見つめていた。
パートナーの、金属で覆われた体はつめたいはずなのに、僕にはそれが暖かく感じられる。
よほど、僕の体は冷えていたんだろうか。

「ミラージュガオガモン…すまない…少し、眠らせてくれ」

「イエス、マスター」

パートナーは短い返事だけを返した。
それでも、ミラージュガオガモンの腕はあたたかい。
僕はゆっくりと目を瞑りながら先ほどまでの情事をおもいおこす。
乱暴にされたこと、それでもマサルと繋がることができて嬉しかったこと。
全部、真実だ。

「…マサル、好きだよ…」

僕は薄れゆく意識の中で呟いた。
きっと、次に目が覚めたときはまたベッドの上だ。
あの煙草くさいベッドの上。
目覚めればそこにはあの男がいて…僕の起床を待っている。
そんな現実、辛すぎる。
けれど…あと少し、あと少しで僕の目的は達成されるんだ。
妹を助ければあんな奴とは関わりを持たない。持つはずがない。
けれど、その後は?
僕はマサルの元へ戻ることができるんだろうか。
マサルにおもいを伝えることができるんだろうか。

「…マサル…苦しいよ…」

声に涙が混じる。
僕はパートナーにしがみついたまま、今はここにいない想い人へ囁いた。
それは本音の吐露。
妹を助けることと、想い人の傍にいること。
どちらも僕にとっては大切なことだ。

「…っ、…リリーナもマサルも、僕には大事だ。だから…」

今は、まだ嘘つきの仮面を被っていよう。
自分を殺すんだ。
どんなに罵られたって構わない。
あれ以上に酷い事をされたって構わない。
傍に、いられるなら。
そう誓ったとき、僕を抱きしめる腕が、僕のきもちに呼応するようにきつく寄せられた。

















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長い話になってしまいましたが一応マサ←トマですー。
葛藤するトーマがすごく好きだったりします(笑)