「いま、面白い事をおもいついた。貴様に絶望を与えてやる」

父さんの姿をしたそれが言った。
父さんの目をしたそれが言った。
でも、目の前にいる男は父さんであって父さんじゃない。
本当の父さんは…

「イグドラシル、やめろ!マサルに触れたら俺が許さん…父である俺がな」

俺の前に立ちふさがったのはバンチョーレオモン。
俺の父さんと精神を同じくするデジモンだ。
大きな体躯。
それから少し懐かしいような、草のにおい。
俺の目の前にはふたりの父さんがいた。
ひとりは、10年前と何も変わらない俺の大好きな父さん…の姿をしたイグドラシル。倒すべき相手。
もうひとりは、俺や仲間たちにデジソウルとは何なのかを教えてくれたバンチョーレオモン。
…だけど、バンチョーレオモンの中にはふたつの精神が宿っている。
ひとつはバンチョーレオモンの精神。もうひとつが、俺の父さん…大門英の精神だ。

「父さん…危ねェよ、下がってろッ!」

もしも父さんが怪我したら。
もしも父さんが、やられてしまったら俺はどうすればいいのか解らない。
バンチョーレオモンの腕にしがみついて言うと、奴はつり目がちの目で俺をギロリと見やった。

「俺を誰だとおもっている?息子が狙われていると言うのに黙って引き下がれるかッ!!」

牙を剥いてそう言ったバンチョーレオモンは、イグドラシルを威嚇するように見つめている。
けど、イグドラシルはそれでも不敵な笑みを崩さない。
小馬鹿にするような笑みが俺とバンチョーレオモンに向けられた。

「…愛という感情は醜く邪悪で愚かだな。今から貴様たちにも教えてやろう、愛の愚かさを…」

そう言ったとき、イグドラシルの体がぐらりとゆらぐ。
父さんの姿をしたソレから、白い光がふんわりと浮き出てきた。
あれがイグドラシルの本体なのか?
そうおもったと同時に父さんの体が地面にぐしゃりと倒れる。
抵抗もなく倒れた父さんの姿は、それが生きた人間の姿でない事を俺に見せ付けているようで、自然と涙が溢れた。
そんな俺を見て、バンチョーレオモンが言う。

「…マサル、英はここにいる。男なら簡単に泣くな」

「…っ、うん…」

その声は父さんのものではなかったけどひどく安心感を覚える。
そんな俺たちを嘲笑うかのように、白い霧のような姿になったイグドラシルはふわふわと風に乗って俺たちに近付いた。
けど、それは俺の頭上を通り過ぎてトーマや淑乃たちのいるほうへと飛んでいく。

「まさか…!やめろ、イグドラシルッ!!」

バンチョーレオモンがそう言った時白い光はくるくると円を描きながら俺の大好きな恋人の体の中へと吸い込まれていった。
恋人の、アイスブルーの瞳がグッと見開かれる。
優しくて、格好よくて…最初はやたらとイヤミっぽかったけど今ではかけがえのない恋人。
恋人のはちみつ色の髪が風になびくようにふわりと揺れる。

「…っ、トーマ…?」

俺は言葉尻を震わせながらトーマを呼んだ。
はちみつ色の髪をした男は、力なく俯いていたけどやがて肩を持ち上げるようにして顔を上げた。
アイスブルーの目は、今まで見たことがないくらいに冷たい。
薄い唇が残酷なくらいに微笑んでいた。

「やあ、マサル…」

それは普段のトーマと変わりない、声。
だから余計にゾッとした。
冷え切ったような瞳が俺を射抜く。
違う。違う。トーマじゃない。
こいつはトーマじゃない。

「…トーマに…トーマに何したんだよッ!!!」

俺は勢いに任せて、目の前の男の胸ぐらを掴んでいた。
それが奴の作戦だったのかもしれない。







「まさか…!やめろ、イグドラシル!!」

バンチョーレオモンが叫んだと同時に僕の口の中にひんやりとした冷気が流れ込んできた。
同時に感じる激しい頭痛。
気の遠くなるような耳鳴りがしておもわずキツく目を瞑る。
平衡感覚がおかしくなるくらいにギュッとギュッと目を閉じていた僕の耳元で誰かが言った。

「やあ…マサル」

それは僕の声だ。
慌てて目を開けると、目の前にマサルがいる。
困惑したような顔で僕を見ていた。
マサルの名を呼ぼうとしても、声が出ない。
口が動かない。
手が動かない。
足が動かない。
僕はただ目に入ってくるものを眺めて、誰かに合わせて口を動かすことしかできない。
…まさか、イグドラシルなのか?

『ソウダ』

どこかで無機質な声がした。
男なのか女なのか分からないくらいにノイズがひどい。
僕は唇を噛んだ。
実際に唇を噛む事はできなかったけど。

『貴様ノ体ハ…コノ、イグドラシル、ガ、預カッタ』

イグドラシルはノイズに混じったような声で言う。
こいつは同じ手口でマサルの父親の体も乗っ取ったのか。
卑怯な…。

『…黙ッテ見テイロ。貴様ガ出来ナイ事ヲ私ガ、シテヤロウ』

こいつは何を言っているんだろう。
そうおもった時、マサルが僕に飛び掛っていた。
そんなマサルの体を抱きとめて僕が笑う。
いや、正確にはイグドラシルが…だ。

「実の父親に犯されるより、この体に犯されたほうがいいだろう?貴様はこの男の手で滅茶苦茶にされるのが好きなのだろうからな…」

僕の手は、マサルの腰を引き寄せてゆっくりとズボン越しの尻を撫でる。
よりによってバンチョーレオモンの…マサルの父親の前で。
やめろ、やめろ、やめろ!!
どんなに祈っても、願っても僕の手はマサルの衣服を撫で擦っている。
指先に感じるマサルの体温がやけにリアルだった。

「…ひッ…やめろッ…トーマは…そんなことしねェッ!!!」

「だが、貴様はそれを望んでいた。…そうだろう?」

僕の声はびっくりするくらいに低い。
わざわざマサルの耳元で、一文字一文字ゆっくりと言ってのけるとマサルの肩がビクリと震えた。
恋人の身体は小さく震えている。
怒りか羞恥か、僕にはわからない。
だが、きっと僕と同じきもちだ。
マサル、逃げろ。
この体を殴り倒してでも逃げてくれ。

「…トーマ…トーマを返しやがれッ!!」

僕の願いとは裏腹に、マサルが叫んだ。
同時に、恋人の体を熱いオレンジ色の光が覆う。
デジソウルだ。
イグドラシルが小さく舌打ちをした。
マサルの黒いシャツを捲り上げて、有無を言わさず小さな突起をキュッと摘む。
デジソウルが揺らいだ。

「…んんっ…やっ…め…!」

突起を摘まれたマサルは悔しそうに唇を噛んで僕を睨む。
僅かに息が上がっていた。
慣れた手つきのイグドラシルがマサルの乳首を乱暴に指の腹で擦り上げていく。

「…どうだ、貴様は父親の目の前で恋人に犯されるのだ。…たまらない快感だろう?」

言いながらもイグドラシルの指は巧みにマサルの乳首を擦っていく。
完全にシャツを捲り上げて、まるで僕やみんなに見せびらかすように行為を続けていた。
マサルの手が、遠慮がちに僕の腕を掴む。

「…っ、はな…しやがれ…っ、はぁっ…んん…く…ぅ…」

イグドラシルの手から逃れようとマサルがもがくけど、その力は本気じゃない。
いつものマサルならここで敵を殴り飛ばすくらいはするのに。
浅葱色の瞳には遠慮の色が見えた。
どこか欲するように、それでも余計な感情を打ち払おうとする複雑な瞳が僕をじっと見つめている。
マサル、早く逃げろ。逃げてくれ。マサル、マサル。
酷い目に会うのはキミなんだ。だから早く、早く逃げてくれ…マサル!!
僕は声にならない叫びを繰り返しながらマサルを呼んだ。
その間にも、イグドラシルの愛撫はどんどん熱を帯びていく。
逃げてくれと願っている僕の思考を溶かすように、僕自身の体にも変化が訪れ始めた。

「…恋人のここが反応しているぞ?貴様は恋人が勃起しても知らん顔をしているのか?冷酷な奴だ…」

「…っ…ち…が…」

上着を脱がされてシャツを捲り上げられているマサルは肩で息をしながら僕の腕を掴んでいた。
マサルの下腹部に僕のものが当てられる。
堅く勃起した僕自身は痛いくらいに張り詰めていた。
僕の手がマサルの髪を乱暴に引っ張る。

「…舐めろ。恋人ならそれが出来て当然だろう?」

僕の声をしたそれはゾッとするくらい冷ややかな声で言った。
当然、マサルがかぶりを振る。
当たり前だ。
僕はマサルにそんな行為を強制したことなんて一度もない。
マサルの嫌がる事はしたくなかったから、考えた事もいなかった行為なのに。

「…ふ、ざけんなッ!どこまでトーマの体を弄べば気が済むんだよッ!?今すぐトーマから出て行けッ…!俺がぶっ飛ばしてやるッ!!」

マサルは僕の胸ぐらを苦しいくらいに掴んで怒鳴りつけた。
浅葱色の瞳は怒りで揺れていた。
そんなマサルを見ても、イグドラシルはビクともしない。
それどころか、つまらなそうに笑っている。

「…ほう?ならばこの体を破壊するしかないな」

「…ッ…やめろォッ!!」

マサルの叫び声が響いた。
きつく僕の胸ぐらを掴んだまま、唇を噛んでいる。
そんなマサルを試すかのようにイグドラシルが言うのだ。

「ならば舐めてみせろ…出来ないとは言わせない」

イグドラシルは心底可笑しそうに言った。
マサルの瞳にじわりと涙が浮かぶ。
小さな声で「ちくしょう、トーマ…」と呟いている。
悔しかった。
涙も出ない自分が。
指一本さえ動かせない自分が。
マサル、マサル、マサル。
僕は、僕は、僕は…。

『恋人ヲ、コウシテ屈服サセルノガ貴様ノ夢ダッタ…違ウカ?』

イグドラシルの声がする。
僕はかぶりを振った。

「違うッ!もうやめてくれ…ッ!!」

僕は声に出して叫んだ。
声が、出たのだ。
目の前のマサルは、泣きはらした目を僕に向けている。
情けなく鼻水の出ている鼻をすすって、僕を見つめていた。

「トーマ…なのか?」

マサルの両手が僕の頬を包む。
笑みを返すと、涙の零れた浅葱色の瞳が安心したように笑った。
だけど同時に酷い耳鳴りと、暗闇に突き落とされたような感覚に陥ったとき、再び僕は僕でなくなっていた。

「舐めろと言ったのが聞こえなかったか?」

底冷えするような声でそう言ったイグドラシルは、マサルの手を乱暴に振り払う。
いつも撫でていた大好きな髪を掴んで、その場に跪かせた。
僕の大好きなマサルは、きつく歯を食いしばって頬を涙で濡らす。
震えた手が、僕のズボンを掴む。
イグドラシルはそれを黙って見ているだけだった。
震えた手が、ズボンのベルトに絡んだ。
カチャ。カチャ。
なかなか外れないベルトをいじっているマサルの指先は見ていられないくらい震えている。
イグドラシルが舌打ちした。

「時間稼ぎのつもりか?」

「…っ、ち…ちが…っ!外れねェだけで…」

ビクリと身を竦めてマサルが反論した時、僕の右手が大好きな頬を叩いた。
マサルの瞳からボロボロと涙が零れる。
それでも、声を上げて泣いたりはしない。
喉奥で声を堪えるようにしゃくりあげていた。
イグドラシルの手が乱暴に僕のベルトを解く。
取り出されたそれは空を向いていた。
マサルの喉が一瞬だけ動く。

「どうだ…ずっと欲しかったものだろう?恋人のこれを口に入れて、奉仕したかったのだろう…?」

イグドラシルが猫撫で声で言った。
言いながらもマサルの後頭部を乱暴に掴んで顔を肉棒に押し当てる。
くぐもった声が聞こえた。
頬に僕のものを擦り付けられながら、マサルが目を見開く。

「…いっ、いやだ…トーマっ…俺は、トーマが…トーマっ!」

ぎこちなくかぶりを振って僕の名を呼ぶマサルを見下ろして、イグドラシルがつまらなそうに鼻を鳴らす。
嗚咽混じりの泣き声を上げて、すっかり萎縮してしまったようなマサルを見ていると胸が締め付けられる。
すぐに助けたい。抱きしめたい。
それなのに僕の口は残忍に動いた。

「…マサルは僕の事を愛しているんだろう…?舐められないのかい?これが…」

わざとらしく僕の口調を真似て言ったイグドラシルは、マサルの髪を優しく撫でて笑う。
ゆっくり降りた手がマサルの肌をなぞった。

「…っ、ん…はぁ…っ!」

吐息に乱れを混じらせてマサルが何かを欲するように僕を見上げる。
視線を落とすと、マサルの下腹部もふっくらと盛り上がっていた。
イグドラシルが笑う。

「私の言葉で感じていたのか。淫乱め…」

イグドラシルの言葉にマサルがギュッと目を瞑る。
そっと目を開けたマサルは唇を噛んで僕のものの先端を口に含んだ。
ズキン。
全身に甘い快感が広がっていく。
眉が寄せられたマサルの表情は苦しそうだったけど、色っぽくも見える。
先端だけを口に含んで、遠慮がちに舌でチロチロと舐められるとそれだけで僕の口からは吐息が漏れた。
ざらついた舌が、心地いい。

「…っ、んく…ちゅぱ…はぁ、ふ…んん…」

イグドラシルに頭を撫でられたまま、マサルが舌を上下させていく。
きつく細められた浅葱色の瞳からは一筋の涙が零れていた。
マサルの液で濡れた僕のものは先端を光らせていて、それがエロチックにも見える。
後頭部に添えられたイグドラシルの手が乱暴にマサルの頭を押さえつけた。

「貴様の奉仕はこの程度か?もっとしっかり舐められるだろう」

乱暴に頭を押さえつけると僕のものはマサルの狭い咥内にするりと侵入した。
マサルの瞳が大きく見開かれる。
絶望と苦しさを表すように。

「んんっ…ぐ、ぶ…っ…うぇ…むり…やめ…むぐ…うっ…!!」

マサルは声にならない抗議をしてかぶりを振る。
そんなマサルの髪を掴んで、イグドラシルは一気に咥内から肉棒を引き抜いた。
マサルが大きくむせる。
だがすぐにまた僕のものがマサルの咥内に押し込まれた。

「げぶ…うぅ…ぐっ…あぐ…ひ、ぃ…っ、ぐむ…」

マサルがむせるたびに引き抜いて、それからまた挿入する。
乱暴なその行為に、誰もが唇を噛んでいた。
バンチョーレオモンの拳が震えている。

「イグドラシル…もうやめろッ!!これ以上息子に惨い事をするようならば、俺は…ッ!!」

「この体に傷をつけるつもりか?大門英」

イグドラシルはマサルに肉棒をしゃぶらせたままバンチョーレオモンを見つめた。
ひどく余裕に満ちた笑みを浮かべている。
僕のものをしゃぶっているマサルが喉奥で小さく喘いだ。
ちらりと表情を盗み見ると瞳が濡れている。
乱暴な行為に感じたのか、マサルはイグドラシルに強要される前に自分で頭を動かしていた。

「…んんっ、ふぁ…トーマの…熱くて…んむっ…ちゅ…る…っぷは…」

背筋に甘い快感が走った。
マサルの濡れた声に反応して、僕のものはどんどん堅くなっていく。
バンチョーレオモンを見つめたままのイグドラシルが笑った。

「大門マサルは自分から舌を動かしているぞ、大門英…父として情けなくはないか?こんなふしだらな子供に育って…」

「貴様が無理やりさせているだけだろうッ…!!」

バンチョーレオモンは今にも噛み付きそうな勢いで怒鳴りつけた。
イグドラシルは、そんなバンチョーレオモンを見ても鼻で笑うだけだ。
この場にはマサルの濡れた声と水音が響くだけ。
そんな空気を打ち破るかのように、イグドラシルが言った。

「大門英…立っているだけでも疲れるだろう?大門マサルのアナルをほぐせ。私が挿入しやすいようにな…」

イグドラシルが口の端を上げて笑った。
その言葉を聞いて、バンチョーレオモンが目を大きく見開く。
きつく握られた拳が震えていた。

「貴様…ッ…!!」

「息子の命が大事なのだろう?出来ぬならこの体を破壊してくれようか?息子が愛した男の体を…」

「や…やめろッ!!」

バンチョーレオモンの声が響く。
マサルはその間にも頭を上下させて僕のものを舐めしゃぶっていた。
突き出された桃色の舌が竿を下から上へと舐め上げて、時折鼻にかかった声を上げている。
アイスをしゃぶるように先端を口に銜えたマサルは、とろんとした目で僕を見た。
周りが見えていないんだろう。

「んぅ…くふ…トーマぁ…きもちいいか…?ん…はぁ…トーマの…苦くて美味ぇ…。ずっと欲しかった…」

マサルの口の端からゆっくりと僕の先走り液が零れていく。
じゅるじゅる、と淫らな音を立ててマサルの口が濡れる。
その時、ゆっくりとバンチョーレオモンが近付いた。
視線を感じたのか、マサルが振り返って我に返ったような気まずそうな表情をする。
バンチョーレオモンはマサルのすぐ後ろに近付くとそのまま膝をついた。
大きな獣の手が、マサルのズボンの中へ入り込む。

「ひッ…!?な…なにやってんだよッ、父さん…!」

「英ではない」

バンチョーレオモンが眉間に皺を寄せて呟いた。
英ではない、ということはバンチョーレオモンの意思がマサルを犯しているのか。
バンチョーレオモンはゆっくりとマサルのズボンの前を開けさせて前触れもなくマサル自身に触れた。
僕のものを愛撫していたマサルは身を強張らせたままゆるゆるとかぶりを振っている。

「…や…ふぁっ…バンチョーレオモンっ…あっ…やめやがれ…っ!!」

マサルは僕のものにしがみつくようにして声を上げた。
どんどん紅潮していくマサルの頬を見て、イグドラシルが笑う。
バンチョーレオモンがきつく唇を噛んだ。
乱暴に、それでもマサルを気遣うかのように手を上下に動かしていく。
マサルの声が裏返った。

「ひ、あぅっ…やめ…んぁ…んんっ…くぷ…」

「貴様は舐めているだけでいい。余計な言葉は発するな」

イグドラシルが、マサルの頭を押さえつける。
苦しそうなマサルの姿を見て、バンチョーレオモンが辛そうに眉を寄せた。
大きな獣の手は、マサルのものをゆっくり愛撫していく。
視界の端に映ったマサルのものは既に先端から透明なものを零している。

「は…っ、ぐむぅ…父さん…あっ…ひ…ぐ…父さん…トーマ…っ、んん…」

マサルが小さく腰を揺らすと、イグドラシルが馬鹿にしたような笑みを見せた。
僕は目を背けたかった。
僕の口が命令しているんだ。
マサルは僕に従っているんだ。
バンチョーレオモンも。マサルの父さんも。
僕は何もできない。
イグドラシルに体を支配されたまま、酷い言葉を吐いて、大好きな頬を殴っている。

「…マサル、力を抜け…」

マサルの先走りで濡れたバンチョーレオモンの指がゆっくりとちいさなつぼみに寄せられた。
大きな指がちいさなつぼみへ挿入される。
その行為から逃れるように、マサルはかぶりを振って肉棒にしがみつく。
浅葱色の瞳が涙で濡れていた。

「もっ…やだぁ!痛いぃっ…!やめてくれよ…父さんっ!…トーマ…っ!!」

「マサル…」

マサルの悲鳴に、バンチョーレオモンが手を引っ込めようとした。
だけどイグドラシルがそれを許すはずがない。
大好きな髪を乱暴に引っ張り上げて言うのだ。

「貴様は大人しくしていろ。大門英、手を休めるとこの体も、貴様自身の体も破壊するぞ?」

言いながらイグドラシルはマサルの体を地面に押し付けて四つんばいの格好にした。
奉仕ができるように顔を上げて、更に尻をバンチョーレオモンへと向けている卑猥な格好だ。
再びマサルの口の中に僕のものが挿入される。
イグドラシルに逆らえないバンチョーレオモンは、深く眉間に皺を刻んでマサルのつぼみへ指を差し入れていく。
僕のものを銜えたまま泣いていたマサルがしゃくりあげるような声を出して身を捩る。

「ひ…ぎっ、いたぁ…っ!痛ェよ…いやだぁあっ…!!」

「黙っていろという言葉が聞こえなかったのか?」

イグドラシルの手が、マサルの頬を殴る。
何とか痛みを和らげようとしているバンチョーレオモンの手は、マサルのものも同時に擦り始めた。
だけどマサルはまだ泣きじゃくっている。
苦しそうだ。よほどバンチョーレオモンの指が大きいのだろう。

「…ふ、ぐ…ひっく…トーマ…トーマ…俺、もうやだ…むりだよぉ…」

僕を見上げるマサルの目からはぼろぼろと涙が零れている。
それでも、イグドラシルがマサルを睨みつけると君は泣きながら僕のものを口に銜える。
頭を上下させて、苦しそうに喘ぎながらも次第に腰をゆるく動かしていた。

「…ふん…淫乱な体だな…命じてもいないのに腰が動いているぞ…?」

「ち…が…ふぁっ…はふ…く、むぅ…」

マサルは傍目から見ても分かるくらいに腰を揺らして甘い吐息を漏らしている。
僕は喉を鳴らした。
腹につきそうなくらい勃ち上がっているマサルのものがヒクヒクと震えていた。
イグドラシルが笑う。
乱暴にマサルの髪を掴んで、僕のものに押し付けた。

「出るぞ…すべて飲み込め」

イグドラシルがそう言うと、観念したのかマサルは涙を溜めた目をギュッと細めて僕のものを喉奥まで銜えこんだ。
同時に僕のものから快感が競りあがってくる。
だめだ。だめだ。出したらいけない。
必死に念じるけど、イグドラシルは僕の願いを残酷に裏切った。
どくん。
マサルの喉を叩く音が聞こえる。
大好きな恋人の口の中で、僕は達した。
大きく見開かれた浅葱色の瞳がギュッと細まる。
だけどほんの少し陶酔した色が宿っているのを、僕は見てしまった。

「あ…んんぐっ…!!ぷはっ…げほっ…トーマの…セーエキ…飲んだ…」

マサルの声に甘いものが混じっている。
正気に戻ってくれ、マサル。
声にならない声で叫ぶけど、伝わるはずがない。
聞こえるはずがない。
イグドラシルはバンチョーレオモンを指して言った。

「さあ、大門マサル。父親のものも舐めてやるといい」

「…うん…」

「な…ッ!!」

イグドラシルに言われるがまま、マサルはゆっくりと顔を上げてバンチョーレオモンへと振り返った。
その手が、バンチョーレオモンのズボンを掴む。
体毛に覆われたそれを取り出したマサルは、バンチョーレオモンを見上げてだらしなく笑った。

「…父さん…今、舐めるから…」

「や、やめろ…マサル…」

バンチョーレオモンの言葉も聞こえていないのか、マサルは単調な声で言う。
小さな唇がバンチョーレオモンのものを口に含んだ。
頭を上下させて、イグドラシルに言われた時のように丹念に舌を使っている。

「…んぁ…ふ…バンチョー…ふ…んく…きもちいい、だろ…?」

猫撫で声でそう言ったマサルは、じれったそうに腰を揺らした。
丁度僕の目の前にマサルの尻がある。
イグドラシルの手が彼の腰を掴む。
秘肉を押し上げて、小さな入口を見つけた。
そこへ僕のものを前触れもなくねじ込んでいく。
当然、マサルの体が強張った。
だがゆっくりと振り返ったマサルの顔はうっとりと僕を見つめている。

「…こい、よォ…俺、トーマにめちゃくちゃにされたかったんだ…ずっと…」

マサルは娼婦みたいな事を言って笑った。
嘘だ。マサルはこんな事言わない。
こんな事、おもうはずがない。
だがそうおもいこむきもちの中で、マサルのおもいを肯定している部分がある。
マサルは…淫乱だ。
それは知っていた。
顔には出さないけど、手を繋いだり、一緒のベッドで寝るときに物欲しそうな顔をするのだ。
マサルは僕に嫌われまいと、そんな感情を押し殺していたみたいだけど。
薄々感づいていた。

「…はぁ…あっ!トーマのが…俺ン中に入ってくるよォ…ふぁ、あぐ…!」

マサルは両手でバンチョーレオモンのものを扱きながら甘ったるい、それでも苦しそうな声を上げた。
可愛い声だ。
僕だって本当は、マサルが欲しかった。乱暴に犯してみたかった。
マサルの泣く顔が見たかった。
だけど、それはマサルの恋人としてしてはいけない事だとおもっていたから、ずっと心の奥底に封印していたんだ。
こんな、いやらしくて下品なきもちを抱いているのは僕だけなんだとおもっていたから。
だってマサルはいつでも明るくて、僕に元気をくれる。
犯しがたい雰囲気もあったし、マサルはそういう行為を好むような奴じゃないっておもってた。
それなのに…。

「んんっ…あ…きもちいい…っ…はぁっ、ん…トーマァ…奥、突けよ…もっとォッ!!」

マサルが僕を呼ぶ。甘ったるくていやらしい声で僕を呼ぶ。
これは本当にマサルなのかと疑いたくなるくらいに淫猥で、快楽を貪るように腰を振っている。
バンチョーレオモンへの愛撫も忘れていないのか、両手はしっかりと大きな肉棒を掴んでいる。
マサルの舌が肉棒に触れた。
ぴちゃ、ぴちゃ。
湿った水音を立ててマサルが腰を振る。
僕のものはマサルの体内でキツく締め付けられて、痛いくらいの快感が押し寄せてきた。
腰を使うたびにマサルの体が跳ねる。

『ドウダ…貴様ガ望ンデイタ行為ダロウ…?』

頭の中で、イグドラシルが僕に囁く。
僕は歯を食いしばった。
否定、できない。
目の前で僕を求めて喘ぐマサルを見ていたら、本当にめちゃくちゃにしてしまいそうで…。

「…ぐっ…どうだ、マサル…僕のものが、キミの奥を突いているぞ…?」

僕はマサルを犯しながら言った。
声が、出たのだ。
イグドラシルが僕を試しているんだろうか?
けれどそんなこと、もうどうでもいい。
マサルのものをきつく掴んで腰を打ち付けていく。
恋人の喘ぎ声が僕の行為をさらに激しいものへと変える。
いや、それは言い訳だ。
僕はずっとマサルを乱暴に抱いてみたかった。

「…はぁっ、あっ…嬉し…いっ…トーマっ…あふっ…ぁああっ…!!」

マサルの腰がガクガクと震える。
僕が突き上げるたび、マサルのそこはキュキュッときつく締め付けてきた。
水音を響かせながら恋人がバンチョーレオモンのものを舐め上げる。
顔を背けてはいたけど、バンチョーレオモンのものはすっかり張り詰めていた。
きっと絶頂も近いだろう。もちろん、僕たちも。

「ふぁ…あうっ…出せよ…ふたりのセーエキ…はぁ…んくっ…あう…っ!」

淫らに腰を振りながらマサルが言う。
そんな…そんな声で言われたら。

『自制ガデキナイ?』

イグドラシルが小馬鹿にしたように言った。
うるさい、そうだ。自制ができない。
こんなに乱れているマサルを目の前にしたら僕は…。

「ぐ、う…マサル、すまん…ッ!!」

バンチョーレオモンの手がマサルの頭を押さえつける。
同時に、僕を銜え込んでいる部分がきつく収縮した。
無理やり言い訳や綺麗事を並べ立てようとしても本能には勝てない。
僕はきつく目を瞑った。

「出すぞ…マサル…!!」

「あふ…んぁっ…ぁあああああァ…ッ!!!」

我慢しきれずに達した僕に応えるように、マサルが口の端からバンチョーレオモンの精液を垂らしながら身を強張らせた。
体を弓なりに逸らして絶頂の声を上げるマサルはとても綺麗で、色っぽい。
僕は絶頂の余韻のせいか、マサルをぼーっと見つめていた。
ゆっくりとマサルが僕へと振り返る。
浅葱色の瞳を涙で滲ませながらも少しだけ目を細めて、笑っていた。

「トーマ…ありがと…な…」

そう言ったマサルの頬は赤く染まっている。
僕は手を伸ばしてマサルの頬へ触れようとした。
だが、そこで意識が遠くなるくらいの耳鳴りを覚える。
おもわず両耳を塞いだとき、再び僕は、僕でなくなっていた。
僕であって僕でない目が、マサルを映す。

「…まだ終わらんぞ」

僕の口がそう言った。
ああ、僕はまた、恋人を犯すのだ。
恋人はそれを喜んで受け入れるんだ。
僕は逆らえない体の動きに身を任せて、マサルの唇を奪った。

















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一度でいいから書いてみたかった3Pです(笑)
でもイグドラシルも絡んでるから4Pになるの…か?(笑)
色々可笑しいところはあるとおもいますが笑って流してやって下さいー^^;