うさぎを飼い始めて一日が経った。
親に何も言わず、勢いで飼ってしまったその生き物は俺の隣で毛繕いをしている。
時折鼻や耳を動かしながら俺の部屋を警戒するように見つめた。
うさぎってなにげに可愛いよな。
そんな事を考えながら、俺はうさぎへ目をやる。
ふくよかな頬と、はちみつ色の髪。
おっとりした様子のたれ目はアイスブルー。
珍しいうさぎもいるもんだ。
クリーム色の垂れた耳をピクピクさせて、そいつは俺を見た。

「…すりすり」

いきなりすりすり攻撃かよ。
小さな手で俺の足にしがみついたうさぎは、猫みたいに顔を俺の足に擦りつけている。
二本の足でちょこんと立ちながら懸命にすりすりしているうさぎ。
一見するとうさ耳の生えた人間の子供だ。
でも人間とは違う。
大きさは本当にうさぎサイズだし言葉もあまりうまくないのだ。
近年、人と動物の配合が成功したことによりいろんな動物人間がペットショップで売られている。
俺のうさぎ…トーマも動物人間だ。
年齢はたぶん5歳くらいだろうと店長が教えてくれた。
ま、どう見てもまだまだ赤ん坊だ。
だから俺が色々教えてやらないとな。

「トーマ、どうした?遊んでほしいのか?」

「…みぃ?」

俺が首を傾げるとうさぎも真似をして首を傾げた。
か、可愛いヤツめ。
小さな体を抱き上げてそっと膝の上に乗せてみる。
するとうさぎは俺の膝にしがみついてじゃれるように再びすりすりを始めた。
膝の上はバランスがとれないのか、あたふたしながらしっかりと両手で膝にしがみついて。

「おなかが減った…たんぽぽが食べたい」

拗ねるような声でそう言ったトーマに、俺はビニール袋を取り出した。
待ってましたと言わんばかりに取り出したこの袋には、店長が持たせてくれたうさぎの餌が入っている。
どれも近所の土手で取れるような草ばかりだ。

「ほーら、たんぽぽだぞ」

「あむ…」

俺がたんぽぽを差し出すと、トーマは両手でそれを受け取って口に入れた。
たんぽぽなんかがうまいのか?
もぐもぐと口を動かしながら黄色い花を食べていく。

「もっと」

「ほらよ」

「あむ…もっと…」

「どんどん食え」

「あむあむ…」

何度もたんぽぽを要求してくるトーマは、腹がいっぱいにならないんだろうか。
俺は最後の一本を手にしたまま悩んでいた。

「まだ食うのか?」

「…たんぽぽ」

トーマは甘えたような声で俺の足にしがみつく。
俺を見上げるアイスブルーの瞳は心臓を鷲掴みにされるくらい可愛い。
でも、うさぎってあんまり餌を食べさせたら腹を壊すんじゃなかったか?
トーマは可愛いが腹を壊されたらたまらない。
俺はたんぽぽを袋に仕舞ってトーマを抱き上げた。
それを見てトーマがつまらなそうな声を上げる。

「みぃ!」

「みーじゃねェよ、腹壊したらどうすんだ?」

膝を叩きながら抗議の声を上げるペットに言うと、トーマは不機嫌そうに顔を背けてしまった。
初日から嫌われちまうなんて情けねえ。
俺はトーマの頭を撫でながら何度もなだめたり、謝ったりしてみた。
もちろん反応はない。
それなのにちゃんと膝にしがみついて顔を寄せているトーマは完全に俺を嫌っているわけじゃないようだ。
そうおもったら少しだけ嬉しくなった。

















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マサル「どのうさぎ飼おうかなー」
うさトマ「……みぃ?」
マサル「お、こいつ、でっかい耳してるなァ」
うさトマ「触るな!」
マサル「いた!いてーじゃんか、この馬鹿うさぎッ」
うさトマ「僕はうさぎじゃない。トーマ様と呼べ」
マサル「ちっ、可愛くねーうさぎだぜッ!」
うさトマ「……みぃ…。すりすり…」
マサル「………」
うさトマ「……すりすり…」
マサル「………」
うさトマ「…すり…」
マサル「〜〜〜っ…!店長ォ!このトーマってヤツくれ!今すぐくれ!」
うさトマ「びくっ!」
マサル「何だよ〜、超可愛いじゃねーかコイツ!」
うさトマ「…さっきはかわいくないって言ったじゃないか……」
マサル「何だ、気にしてンのか?」
うさトマ「…すりすり…」
マサル「うわ、やわらかー…」
という妄想から生まれたうさトマ物語(笑)