「んっ、く…むうぅ…そんなことできません…」
ありえねえ。だって…。
だって、の先から言葉が出てこない。
俺は息を飲み込むことすらできずに事の重大さに気付き始めていた。
ただ忘れ物を取りにきただけで狙ったわけじゃねえ。
それなのに…。
「く、ふ…たいちょ…もうゆるしてください」
うちのメンバーの頭脳派が、その部屋にいた。
いや、いるのだろう。
俺は扉の前で、扉を開けることもできずに固まっている。
1人なのか、それは分からない。
ぎしりと椅子の音がした。
自動の扉が俺のために開く。
そこに映っていた光景は、隊長のよく使っている椅子に座って自慰をしているトーマの姿だった。
行為に熱中しているのか、俺に気付いていない。
俺はすぐさま気配を消して、机の下に忍び込んだ。
小さな吐息と濡れた声が室内に響く。
「…っあ…んん、隊長の…大きいです」
目の前に隊長がいるわけでもないのに、奴はうわ言みたいにして隊長隊長と繰り返した。
何かをすする音と、舐める音が聞こえる。
ここからじゃよく見えない。
大きな機械音も同時に聞こえる。
俺は体を移動させて、トーマがよく見える位置に移動した。
鈍い音と共に、椅子が軋む音が聞こえる。
「あああっ!!!」
耳を裂くような悲鳴が俺の耳に入ってきた。
思わず反応しそうになってしまうが、何とか抑える。
机の下から様子を伺うと、トーマが脚を震わせながら何か細長いものを秘部…つまり用を足すところにねじ込んでいるところだった。
うわ、あんなデカイのが入んのかよ?とおもって見ていると、トーマは手馴れた様子でゆっくりとそれを飲み込んでいく。
もちろん体に負担はかかっているらしく、荒い吐息が室内に響いた。
「…っはー…っはー…ううう…ああ、きもちいいです…隊長…」
トーマは泣いているような声を上げながらしゃくり上げた。
ブィー、ブィーと鈍い機械音が俺の耳に入る。
俺はひとつ大きく息を吐くと、ゆっくり立ち上がった。
トーマの目がこちらに向く。
その瞳はすっかり濡れて濁っていた。
俺の知ってるトーマじゃない。
制服の前ははだけていて、ズボンなんかズタズタに破れていた。
むき出しになったトーマのものには、根元を強く紐のようなもので縛ってある。
こいつは1人しかいないのに。
自分でやったのか?
「トーマ、お前…」
俺が声をかけようとすると、トーマは苦しそうにかぶりを振った。
肩を震わせながら秘部にねじこまれたそれをさらに奥へと押しやる。
「おい、やめろよ!!」
おもわず駆け寄ると、トーマは制するように片手を俺に向けた。
その瞳は俺の知っている気が強いトーマのものだ。
ぜぇぜぇと肩を荒げながら口元だけで笑ってみせた。
小さくその口が動く。
口パクだった。
それを読み取ろうとおもって目を細める俺。
注意深くトーマの口を見ると、
ぼ く の こ と は き に し な く て い い
そう言っているように見えた。
どうしてわざわざ口パクで言うのかと俺が目を細めると、トーマは耳についた通信機に手を当てて愛しそうに喘ぎ声を上げた。
「…っああ…ぐ…隊長…了解しました、出します…そうすれば僕の罪は…ゆるされますか?」
罪?罪とは一体なんだろう。
俺は恐る恐るトーマの傍へ歩み寄った。
トーマが眉を寄せて俺を目だけで叱責する。
それ以上来るなと言っているようだった。
けれど、俺はトーマの肩をしっかりと掴んで口を開いた。
もちろん、口パクで。
な に が あ っ た
きっとこれで伝わるはずだ。
トーマは自分の胸の突起を擦りながら少し眉を寄せて口を開く。
けど、それは俺に向けられたものじゃなかった。
「…や、やっぱりだめです…隊長のじゃないと、僕…うう…イけない体になってしまったみたいです」
トーマは自分の唇を舌で舐めて甘えたような声で言うと、不意に机の上にあったボールペンとメモ帳を取り出した。
もちろん自分を愛撫することも忘れずに、何かを紙に書いていく。
そして、それを俺に見せた。
【僕は罰を受けなければならない。
ゆえに隊長から指示を仰いでいる。
隊長は別室で僕に通信機から指示を送っている。
これもすべて僕が望んだ罰なんだ】
俺は思わず叫びだしそうになった。
ふざけんな!!と。
だがその前に、トーマの唇が俺の唇を塞いだ。
初めて、こんなに傍にトーマの顔があって、俺は男とキスなんかしてる。
だってこいつは仲間で、友達で、そういうことは…。
「んんっ、ふ…隊長…んっ、く…」
トーマはキスの合間、巧みに舌を使いながら隊長のことを呼んだ。
隊長は音しか聞こえないわけだから、トーマが俺に伝えたことも知らないはず。
そうおもったとき、トーマはボールペンを乱暴に掴んで文字の上から言葉を書きなぐった。
【隊長は君に気付いている。
やりとりの内容までは気付いてないだろうけど。
…だから声を出すな。僕が全部終わらせる。
乱暴な真似をしてすまない】
トーマはそう書くと、俺のキスを解いてから秘部にささったもののスイッチのひとつを押した。
カチリ、と音がする。
途端に、それの振動が速くなる。びくんと大きくトーマの体が震えた。
反射的に俺に抱きついてくる。
それでもすまなそうに離れようとするから、俺は強く強くトーマのことを抱きしめた。
何だかよくわかんねーが、こんな体罰ってアリなのかよ?
隊長だからって…こんな、人のプライドをぐちゃぐちゃにするような真似してもいいってのか!?
「あああっ…ぐっ、うああっ…隊長っ…隊長!ひぎ…ふ、早すぎて…もう、僕っ…いやだぁ!」
トーマの手が強く俺を抱きしめる。
俺は、こいつに恋愛感情なんて全く持っていないけど、どうしてもキスをしてやりたくなった。
隊長の言いつけ通りに罰を受けて、1人でこんな真似して。
俺みたいな奴にバレるところだったのに。
きっと隊長は俺が扉に立っていることに気付いてたから、トーマにこんなことまでさせたんだろう。
そうおもうとふつふつと怒りが沸いてくる。
トーマには、愛に似た感情さえ感じた。
「…」
「んっ!?…んんう…くむぅ…」
有無を言わさずにトーマの唇に口付けると、トーマはびっくりしたように俺の肩を掴んで、それから貪るように唇を吸った。
もう限界だったんだろう。
俺は、トーマのものを戒める紐も解いてやった。
赤く充血してしまったそこが痛々しい。
「んあ…あぐっ、ひ…んんっ…あ、もう…いくっ…聞いていてくださいっ…僕のいくところを…っ…僕のいやらしい姿っ…」
トーマは俺にしがみついたままそう言った。
隊長に当てたものなのか、俺に当てたものなのかは分からない。
それでも、興奮する気持ちは止められなかった。
びくびくと、細い体が大きく震える。
「…っひ…あああァっ!!!」
トーマは大きくのけぞると、秘部に手を当ててそれを抜こうとした。
奴のものから精液がとめどなく溢れてくる。
俺はそっと、トーマの秘部からグロテスクな機械を取り去ってやった。
か細い声を上げて、トーマが俺にしなだれかかる。
その肩は震えていた。
「…っあ…も…お許しを頂けるんです、か…?あり…ありがと…ございま…す…たいちょ…」
トーマは、ガタガタと震えたまま通信機の回線を切った。
細い身体は相変わらず震えている。
俺はようやく、その震えが快感の余韻ではないらしいことに気付いた。
慌ててトーマの顔を見ると、奴の顔は壊れた人形みたいにうつろな表情をしていた。
「…ッ、おい!しっかりしろよトーマ!!待ってろよ、今…病院に電話してやるからッ…」
ようやく出た俺の声は酷くかすれていた。
トーマはゆるゆるとかぶりを振って、俺の頬に手をやる。
放心したような顔をしていたが、その顔は俺の知っているトーマだった。
「…僕は平気、だから…シャワー室に行かないか?僕の不注意で君まで汚してしまったから」
トーマは、俺の服に手をやって苦笑した。
俺はその笑みに胸が抉られるような気持ちになる。
慰めの言葉も労わりの言葉も見つからない。
結局俺はトーマが受ける罰を傍観していただけなんだ。
大門大様ともあろうものが、こんくらいでビビってどうするんだよ。
そう叱咤しても何も言えなくて、俺はただ頷く事しかできなかった。
トーマの手を強く握って、できるだけ優しく導いてやる。
そうすることで、多少なりとも救いになってやれてる気がした。
いや…俺がそうすることで落ち着きたかっただけなのかもしんないけど。
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サツトマのマサトマです…ごめんなさ(汗)