初めてそれを受けたのは、僕が肉欲と言う言葉を知らなかった至って純粋で罪深い時だった。
いつものように任務を終えてさて自宅へ帰ろうとガオモンの背を軽く叩くと、同時に上官の声がした。
低く重い、けど優しい声だ。
「トーマ、もう少し時間はあるか?」
「あ…はい。平気です」
僕は即答して言うと、隊長の机へと向かう。
ガオモンは制して、そこに待っていろと伝えておいた。
隊長の手が書類をまとめていく。
そうしてゆっくり立ち上がると、そっとクダモンを机の上へと放して僕へ目を向ける。
クダモンが不思議そうに隊長を見上げているけど、隊長の目は僕に向いたままだ。
「仕事の件で、少々計算が合わない部分があるから二人で確認したい。来てくれ」
隊長は「二人で」という言葉を妙に強調してそれだけ言うと、すたすたと室内を退出した。
クダモンを見やると、彼は隊長の後姿を見つめていたが僕を見て短く「行って来い」とだけ言った。
二人で、と言う事はガオモンは連れてきてはいけないと言うことなのだろう。
僕はガオモンに目配せをした。こくんと頷いたガオモンは帰り支度を整えて扉の傍まで一緒についてきてくれた。
「玄関で待っています」
「ああ」
短く挨拶を交わして、僕は隊長の向かった医務室へと向かう。
医務室にはコーヒーを入れられる機械があったりベッドがあったり、何かと便利な部屋なのだ。
僕も眠気覚ましにコーヒーを飲むときはよく使用している。
そこに、隊長はいるのだ。
僕は医務室の厚い扉を叩いた。
「隊長、トーマです」
「入ってくれ」
隊長の合図とともに、僕は医務室へと入っていく。
彼は、患者を診る医者が座っていそうな椅子に腰掛けて机に書類を広げていたところだった。
僕が隊長の傍へと近付くと、隊長は眼鏡をかけなおしてから書類を指した。
「ここの計算がおかしい。この書類は君がまとめたものだったな?」
「…はい」
「よく見てみなさい」
隊長が指し示す場所を読み返すと、確かにおかしい。
これを作っているとき、僕は寝不足でうとうとしながらキーを叩いていた気がする。
僕ともあろうものが計算間違いをするなんて…。
「トーマ」
僕の気持ちを汲み取るかのようにして隊長が口を開いた。
だが、それを言われるよりも先に僕は大きく頭を下げる。
「申し訳ありませんでした!!隊長の手を煩わせるような真似を…」
「ふむ…」
隊長は小さく唸ると、ちらりと僕を見てから書類に目を戻した。
これでは謝罪のしようがない。完璧に僕が悪いのだから。
僕は頭を下げたまま、喉から搾り出すような声で言った。
「…僕はッ…日本に来てから、きっと気持ちが弛んでいるのだとおもいます。だからこんな醜態を…」
隊長は黙っていた。
それでも、無言の圧力が僕を急かす。
責任を取れと急かす。
「…どうか…僕に罰を与えては下さらないでしょうか?どんな罰でもお受けします…僕はそれだけのことをしました。そうして、きちんと書類を直してからまた…隊長の元へお届けします!」
僕は深々と頭を下げた。
重い静寂が僕たちの間を塗り潰していく。
隊長はしばらく唸っていたが、ちらりと僕を見て言った。
「そんなに覚悟を決めているのか。ならば話は早い。服を脱げ…脱いだらそこのベッドに座って待っているんだ」
「…はい!」
隊長の低い声が室内を震わせた。
だから、それに負けないくらいのしっかりした声で僕は返事をする。
震えずに言えただろうか。
僕は制服の上着を脱ぎ捨てると、中に着ていた服も脱いだ。
ちらりと隊長を見やったら、全部脱げと彼の目が言っていたからだ。
制服の下に、僕は何も身につけていない。
だから少し肌寒かった。
同時に羞恥も感じて、ベッドに腰掛けたらすぐにシーツを掴んで体を隠そうとするけど隊長はそれを制した。
「…そのままでいろ」
「…っ、はい…」
隊長は医務室専用の棚から薬の瓶を何本か選んでいた。
何の薬なのか分からない。僕の見たことないものだとはおもった。
ブーツの音を響かせて隊長が僕の隣へ座る。
ぎしりとベッドが揺れた。
彼の手の中には小瓶がある。
それを使って僕にどんな罰を与えるというのだろうか。
僕が息を飲んで見守っていると、隊長が口を開いた。
「私がこれから行う事は他言無用だ。良いな?」
「はい」
眼鏡の奥の瞳が鈍い光を放っている。
僕は小さく、でもしっかりとした声で言った。
小瓶を持ち直してから隊長が言う。
「はるか昔、外国では拷問と言う言葉があったのを知っているか?罪人を捕らえて、自分が犯した罪を認めるまで肉体的に苛んだという。私は今からそれを君に行う」
「…はい」
空気が重かった。
でも、それは自分のしたことを考えれば仕方のないことなのだとおもう。
きっと他の仲間たちも何か失敗があるとこうして隊長から罰を受けるのだろうか。
人々の安全を守る僕たちの仕事に失敗は許されない。
隊長はそう言いたいんだとおもった。
だから大きく息を吐いて、ただ隊長の言葉を待った。
隊長が口を開く。
「…君も大学を出ているのだから、セックスの仕方は知っているとおもう」
ぎしり。
隊長が僕に身を寄せる。
同時に、ふかふかとしたシーツに寝かされた。
僕の頭の中で色んな言葉がぐるぐると渦を巻く。
隊長が僕に行おうとしていることは、セックスだと言う。
それは、僕とて少なからず理解している行為だ。
けど…まだ子供なのだからそんな経験あるはずはない。
「…隊長…、隊長はそれを僕に?」
「そうだ。本来、セックスは拷問…精神的に人を罰するために使う行為でもある」
隊長はそう言った。
この辺りから、だんだん僕の頭の中は命令違反をし始める。
セックスは男女が行う子作りの行為ではなかったかと反論してしまうのだ。
そんな僕の心情が伝わったのか、隊長は小瓶を僕の手に握らせた。
「…薬の中身を君のここから体内までしっかりと塗りなさい」
「んっ!」
隊長のかさついた指が僕の秘部に触れた。
脚の付け根のもっと奥、用を足すところだった。
腸壁に薬を塗りたくれというのか…確かに、これは精神的に人を屈服させる行為かもしれないな。
僕は口元だけで笑った。
「…やり、ます」
きゅぽんと小瓶についていたコルクの栓を抜くと、甘い香りが鼻についた。
指を2本ほど差し入れて中を探ってみる。
冷たい粘り気のあるものだった。
成分は、分からない。
琥珀色の小瓶に入ったそれは、僕にとって未知の液体だった。
「さあ、塗りなさい」
隊長は低い声でそう言う。
塗らなければいけない。
僕が自分で塗らなければ罰にはならないんだ。
己にそう言い聞かせながら、僕は濡れた指をそこに当てた。
触ったことなんてない。
そんなところ、弄ったこともない。
それなのに僕はこれから…そこを弄ろうとしているのか?
頭では理解できるけど、それが怖くて、恐ろしくて、手が氷のように冷たくなっていくのが分かった。
隊長の目から見ても分かるくらい、僕の指は震えている。
でも自分でやらなきゃ隊長は罪を償ったと認めてくれない。
だから、僕は。僕は。
「…っ…」
ゆっくりと冷たいそれを患部に塗るように指を動かしていく。
表面のみをなぞるように塗っては小瓶に指を入れて、恥部をなぞっていった。
隊長の目から見て僕はどういう風に映ってるんだろう。
罪を犯した僕は…この人の信頼を失った?
「はぁ…うあ…あぐ…うっ?」
だんだんと秘部を指でなぞっていると、妙な感覚が沸上がってきた。
体の中が熱いような、不思議な感覚だ。
僕は息をゆっくりと吐きながら指を一本、秘部の中へと入れていった。
体の中にも薬を入れなくてはいけないからどんなに不浄の場所でも僕は隊長の命令を聞かなくてはいけない。
僕は秘部に指を一本入れたまま大きく肩で息をした。
「はぁっ…ああっ…うあ…薩摩隊長…もうお許しを…」
「だめだ、その薬がなくなるまで続けなさい」
隊長の声は冷酷だった。
彼の手が僕から薬の瓶を抜き取る。
そうして、秘部に指を入れたままの僕の手にどろどろと垂らしていった。
僕の動きを加速させるかのように、隊長は半ば勃ち上がった僕のそれを片手で掴んだ。
まだ成長途中の僕のペニスを隊長の手が扱いていく。
「やっ、あっ…何をッ!?やめてくださっ…あっ、ふあ…ひっ、い…」
「手を休めるんじゃない」
「うっく…は、はい…」
にゅる、にゅる、と僕が手を動かすたびに薬のせいで水っぽい音が聞こえる。
それがどうにも変な感覚を呼び起こしてしまって、僕はすごくいやらしい気分になった。
仮にもここはDATS本部の医務室で、僕は隊長から罰を受けているのに何だかすごく恥ずかしくて、ぞくぞくして、逃げ出したくなる。
僕は腰を浮かせて、指を二本挿入した。
指が腸壁で擦れて、痛い。気持ち悪い。ぞくぞくする。
僕はいつの間にかだらしなく口を開けて大きく喘いでいた。
「…っああ…やあ…ぐ…んっ、んん…ひぐ…あうっ…」
隊長の目がじっと僕のことを見ているのが分かる。
焼くように熱い視線だった。
頬が火照ってくる。見られたくなくて、でもこれは罰で。
僕は抵抗の言葉もあげられなかった。
ただ腸壁に薬を塗りつけることだけを考えて恥ずかしいところに指をいれたままぎこちなく指を動かしていく。
口の端を生温いものが伝った。
空いた手でシーツを掴んで、僕は身を捩る。
自然と足を開くようにして行為を受け続ける僕に隊長がくすりと笑う。
そこを扱く手はますます早くなっていった。
「…これが君の罪だ。分かるか?」
「んああっ…はいっ…分かりま…ふあっ…や、うあっ…」
とうとう指が三本も入った。
僕は息をするのがやっとの状態で隊長を見上げる。
ふと、隊長の影が近付いた。
同時に唇にかさついたものが触れる。
信じられなかった。
「んっ、んんんっ…んふっ…たいちょ…ふあ…」
ぞくりと背筋に強い痺れがやってくる。
僕は片手を伸ばして隊長の体を抱き寄せた。
僕は何をしてるんだ?
隊長にこんな事をして、いいのだろうか。
「んん…んちゅ、ふ…ぁ」
口から水っぽい音が漏れた。
隊長と触れ合った唇から何度も何度も水に濡れた音が聞こえる。
僕は手の中のものを体の中に塗りつけながら隊長の口付けに応えた。
食い尽くすように唇を吸うと、たしなめるように口付けが解かれる。
隊長は僕を見て口元だけで笑った。
「私が見込んだ通り淫乱な子だな…お前は」
隊長の言葉に体が反応する。
同時に、下肢に触れていた手を掴まれて強くベッドに押さえつけられた。
ぎしりとベッドが小さくうなる。
隊長は僕の足を高く持ち上げると硬くて熱いものを秘部に擦り付けてくる。
ぞくんと体中の細胞が震えた。
「あぁあっ…うあっ…たいちょ…ひぐ…あふっ…」
体内に大きな異物を感じた。
苦しい。熱い。
僕は体の力を抜く事を覚えながら隊長の体を強く抱きしめる。
ぐちゅ、ぐちゅ、と僕の体内に塗られた薬が音を立てて隊長のものに絡みついているのが分かった。
熱くてもっと欲しくなってしまう。
これは罰なのに。
「…私の精液が欲しいと言ってみなさい、ここを自分の指で広げながら言うんだ」
ぐちゅ。
隊長のものが僕の中で動いた。
僕は全身で呼吸を繰り返しながら、言われた通りに自分の指で入口を広げていく。
痛い。
ビリビリと痛みが走った。
それでも口を開けて僕は言う。
「ああぐ…隊長の、セーエキ…下さいっ…んんっ…セーエキが欲しいです…」
僕はもう一度隊長の唇が欲しくなって首筋に吸い付くけど、隊長はそれを許さない。
だってこれは僕にとって罰だから、僕のおもうとおりにいくわけがないのだ。
ぐりぐりと無理やり侵入するように隊長のものが入ってくる。
僕は片手でシーツを掴んだり隊長にしがみついたりと落ち着きなかったが隊長が僕の額に口付けてくれると体の緊張が解けていった。
だんだん揺さぶられる事に快感を覚えてくる。
ああ、僕は罰を受けてるんだ。
「んあ…はあっ、ひぐ…ああ…ん…」
声が上擦って、まるで女みたいな声が僕の口から漏れてしまう。
隊長のものが僕の中を擦り上げた。
そんなにされたら、僕はどうにかなってしまいそうだ。
頭の中に白い光が見えた。
同時に、体内にある隊長のものがビクンと跳ねる。
腸壁を強く擦られて、僕はもう我慢ができなかった。
「…っあ…あぐ…ふ、あああぁっ!!」
精液の飛び出した反動で隊長のものが僕の中からずるりと出てくる。
ぞくんと体内が震えた。
そうして、隊長の白いものが僕の顔目掛けて射精される。
口に向けて出されたそれを見て、僕はしゃくりあげながら口を開いた。
「うっ、うぐ…うう…あぐぅ…」
ごくごくと喉を鳴らして、僕は隊長のものを飲み込んでいく。
口の端から垂らしながらもきちんと総て口に収めると隊長は僕の頭を撫でて笑った。
その顔は僕が知ってる隊長だ。
隊長は僕の頭を撫でながら「これで君の罪は去った」と言う。
その言葉におもわずホッとして笑うと、隊長はしばらく僕の顔を見てから自分の衣服を正して言った。
「そういえば…明日からしばらく会えなくなるな」
「…はい、仰るとおりです」
僕は身を起こして、何事もなかったように言った。
頬に伝う白いものを指ですくって口にくわえると、苦いけど隊長の味がした。
隊長は僕を見下ろして小さくため息をつく。
大きな手が僕の頭を撫でた。
「君がまたここに戻ってきたその時にはこんな失敗はせんように。この書類は私が直しておく。君はシャワーを浴びて服を替えてから帰りなさい」
隊長はそれだけ言うと、机の上の書類を軽くまとめて部屋を出るように身を翻した。
僕は、明日から数ヶ月日本を去る。
またここに戻ってこれるのだろうが、僕はどことなくそわそわしていた。
背を向けたままの隊長に、僕は声をかける。
「隊長、僕は…」
そこまで言って僕は言葉を止めた。
隊長も続きを急かしたりはしない。
少しだけ振り返った彼は口元だけで笑うとすぐに部屋から出て行った。
僕はどんな顔をしていただろう。
きっと…僕はあの人が好きなのだとおもう。
尊敬にも似た気持ちが僕の中で膨らんでいくような気がして身を震わせると、僕は衣服を整えながら目を伏せた。
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サツトマです。セイバーズの数ヶ月前?
数ヶ月前は日本にいたーみたいな事言ってた気がしたので妄想しつつ書きました。
罪と罰(マサトマ)のほうはすっかり性奴隷と化したトーマさんな話ですよー。