慣らしてもいない。
もちろん、きっと君も初めてなんだ。
こんな背徳的な行為は。
「っぐ…ああああ…!!」
喉を裂くような悲鳴が冷たい部屋に響き渡った。
もちろん君を助けてくれる人なんていない。
この部屋には僕と君だけ。
無機質な音を立てて僕は君の体に赤い花を散らしてく。
結合部に鋭い痛みが走った。
君は勉強する為に上げた髪を後ろで縛って、目が悪いからという理由で眼鏡をかけたままの格好をしてる。
いつもとちょっと違って燃えるかな、なんておもった。
服装は制服姿のままだ。
ただの勉強会がこんなことになるなんて…想像した?
「あれ、ずいぶん気持ち良さそうな顔をするじゃないか。やっぱり小島くんほどの美少年だと上官がほおっておかないのかな?慣れてるんだねぇ」
僕はわざとらしく笑った。
ベッドに組み敷いたままの君は翡翠の瞳を大きく見開いて、短い息を吐いている。
その顔からは、羞恥と一緒に恐怖しか読み取れない。
それでも僕にはその顔が男をそそるいやらしいものだと知っていた。
全部君が悪いんだ、君が。
「あ、ぐ…ひ、あ…あふ…岩崎…ひぃ!」
細い喉から悲鳴が聞こえた。
逃げる事もできない哀れな君は、僕に犯されるがまま惨めな声を上げ続ける。
可笑しいなぁ、それでも今日出世した身かい?
僕は、彼の口の端に伝う銀の雫を指ですくった。
よほど苦しいのか、舌を出して全身で息をしている。
うつろな目がいやらしい。
「…小島くん、今日…誰に笑った?誰に話しかけた?誰の体を触った?誰に体を触られた?言ってごらん」
乱暴に腰を使いながら言うと、君はいやらしい声を上げてかぶりを振るばかり。
身に覚えがない。知りませんと言うように。
知らないわけないじゃないか。
だって君は小島航、本人だろう?
「あう…ううっ…やめて、頼むから…痛い…千切れるように痛いんだ…岩崎くん、岩崎くん岩崎くん!」
「あはは、やめない。やめるもんか。君が自白するまで問いただすよ」
僕は自分でも薄気味悪いとおもう笑みを浮かべた。
明日は学校があるから無茶をさせてはいけないとか、そんなことどうでもよかった。
隊員虐待で訴えられるとか、そんなこともどうでもいい。
彼が大事なコイビトであるとか、そんなこと…もうどうだっていい。
「ん、い…あっ、あ…はふ…あうっ…」
航の縛った髪が乱れたのか、シーツに散らばっていく。
僕はそれを冷え切った目で見つめていた。
君が。
僕の君が学校で、街で、誰かと触れ合うたびに胸の奥が汚いもので満たされる。
僕のコイビトに触らないでくれ。
これは僕のものなんだ。
そう言って怒鳴ってみたい。
でも…僕は隊長で、そんな軽はずみな事出来る訳がなくて。
それでも嫌だった。
僕のコイビトが誰かに笑いかけたり、誰かに触れたりするのが。
たとえ君と同じ顔をした兄が君を軽い用で呼び止めても僕はきっと許せないとおもう。
貼り付けておいた予備の笑顔で何とかやり過ごすけど、家に帰ると僕は爆発してしまいそうになるんだ。
今日、君が僕の家に泊まりに来たのは間違いだったかもね?
なんて笑いながら、僕は君を犯した。
「…どうしてそんな気持ち良さそうな声が出せるんだい?強姦されてるのに。…ああ、小島くんてこうやって乱暴にされるほうが感じるんだっけ…」
「ひ…き、もちよくなんてな…お願いだからやめっ…」
僕には何も聞こえなかった。
気付けば視界を塞いでいた涙で頬をいっぱいに濡らして、君を犯す。
今日の僕が可笑しいのはきっと月のせいだ。
月の魔力が僕を狂わせてるんだ。
そんなことを勝手におもった。
「あぐ…んあっ!…あ…もう…壊れ、るっ!俺が俺じゃなくなりそ…で…嫌…っく!」
君はしゃくりあげながらぜぇぜぇとした荒い呼吸を繰り返した。
もしも、君が別の人の所に泊まりにいってこんなことされたら、やっぱり同じ声で喘ぐの?
可愛い顔を他の奴にも見せるのかなぁ。
だとしたら…いやだなぁ、なんて。
壊してやりたい、僕だけの玩具にしたいのにそれができなくて、非情になりきれない僕は最悪だとおもった。
「好きだよ、航…」
僕は力強く君の体をベッドに叩きつけて、犯した。
子供みたいだ。
僕は、乱暴だった。
スプリングのせいでゆらゆらと航の体が揺れる。
人形みたいにぼんやりした顔をして、でもきゅっと目が細まった。
なんて綺麗なんだろう。
なんて罪深いんんだろう。
僕は航の唇に口付けた。
「…ふあ、んん…岩崎くん…俺は誰のものにも…ならないからッ…」
航が、ふと僕の肩に手を回して強く抱き寄せた。
相変わらず荒い息をして、一文字一文字丁寧に言ってくれる。
「…俺と同じくらい人一倍嫉妬心が強い君がッ…俺が他の人と話しているのを見て何もおもわないはずないって…分かってた」
航はそれだけ言うと、僕の首筋に赤い痕をつけた。
わざわざ他の人からも見えるような位置に。
「…欲しいな…岩崎くんの印。…俺は君のものだから」
妖しい光が翡翠の瞳に宿った。
歯を立てて、君が僕の首筋に何度も痕をつけていく。
しゃぶるように痕をつけて、優等生の君は艶めいたため息を吐いた。
嫉妬心強いのはどっちなんだろうね…。
僕は少しだけ救われたような可笑しい気持ちになると、迷わずに航の首筋に口付けた。
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日記で書いた岩航。航をめちゃくちゃにしたい病らしいです(笑)