「あの人たちは、何をしてるの?」

俺の手を繋いだまま少女が言った。
黒服の葬列を見つめながらぼんやりと。
俺は無感情に、その葬列を見つめながら「お葬式をしてるんだよ」と言う。
けれど、彼女にはよくわからないらしい。
葬式独自の空気が嫌なのか、時折鼻をすすって俺の腕に顔を寄せていた。

「人間って、葬式をしたらどこに行くのか知ってる」

唐突に彼女が言った。
きゅっと俺の腕を掴んで。

「天国に行くんだって絵本に書いてあった。誰も見たことがないのに天国に行けるなんて書いた人は変だよね」

葬列を見つめながら、君は言った。
暗く低い空の下で葬列は続く。

「小島も、死んだら天国に行くの?」

君は子供のような目をして俺を見る。
俺はただ微笑みだけを返して君の手を強く握った。
ゆっくりと葬列に向き直った君は、不思議そうに空を仰ぎながら口を開く。

「私も、死んだら天国に行けるのかな」

そう言って空を見つめた彼女は間もなくして死ぬことを、知っている。
俺にはきっと涙を流す時間もないのだ。
だから今、強く君を抱きしめる。
普段なら嫌がる猫みたいに俺の手から逃げ出す彼女は、俺の腕の中で大人しく黙っていた。
細い肩も、小さな手も、無邪気な笑顔もぜんぶ、消えてなくなるのか。
俺は彼女の首筋に顔を埋めて、泣き声も上げずに涙を流した。
小さく、「痛い」と聞こえた気がする。
苦しいほどの愛しさと、押しつぶされそうな恐怖が、今の俺の胸をいっぱい締め付けていた。
まだ春も遠い、雪の降る日のことだった。

















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航咲良ひとつめ。シリアス。