「兄さん、最近石田さんばっかり構いすぎ」
そう言って後ろから抱きしめてやると、俺に背を向けた兄はみつあみを揺らしながら不思議そうに振り返った。
その目は無邪気ともとれる目で、つい俺はたしなめる事を諦めてしまいそうになる。
でもそれは出来ない。
兄はしばらく俺の顔を見ていたけど、すぐに子供を見るような目で笑った。
「なあんだ、弟…お前妬いてるのか?」
「…今更気付くなんて鈍すぎだよ」
口の中で言いながら兄さんの腰を強く抱くと、ぽんぽんと俺の頭を叩きながら兄さんは笑う。
幸い、今は誰もいない車両格納庫で俺は兄さんを抱きしめたまま疲労しきったため息をついた。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、兄さんは言うんだ。
「ははは、子供をふたりも持つ親の気持ちが分かった気がするぞ…今」
「俺は子供じゃない!」
自分で弟であることを認めるのも少し寂しいものがあるが、少しムキになったようにそう言うと
兄さんは眉を寄せて困ったような顔を見せた。
「どうした…弟。さっきからピリピリしてないか?」
あなたのせいだと言う言葉を飲み込んで、俺はかぶりを振ってみせる。
この人は鈍いのか鈍くないのか分からない。
弟が恋焦がれてる気持ちだってのんびりスルーしてしまうんだから。
「兄さん、もしも…もしもの話だけど、もしも兄さんが告白されたらどうする?」
「何でそんなにもしもが付くんだ。俺はそんなにモテんのか?こう見えても学生時代は…」
「あー、いいから答えてよ」
不満そうな兄を叱咤して少しキツめに言うと、兄は困ったような顔をして目を瞑った。
どうやら考えているらしい。
考え込むように、んー…なんて声を上げていた。
でもやがて目を開くと、珍しく真面目な顔で言うんだ。
「どういう答えが欲しいんだ?俺はお前が好きだと言えば満足か」
兄さんの声は優しかったけど、目は真剣そのもの。
俺は、その気迫に押されないように見つめ返してやる。
そうだと頷いてみせると、兄さんはようやく笑って俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
「うわっ…何するんだよ」
「よしよし、子供はそれくらい素直じゃなきゃな」
「だから子供じゃないんだって!」
わからずや、と付け足して兄の手を払うと、兄さんは肩を竦めて首を傾げた。
分かってるくせに。そんな態度が可愛くて、憎らしい。
俺は少しだけ背伸びをすると兄の肩に垂れているみつあみを引っ張った。
いたた、と眉を寄せる兄の顔が近付く。
目の前で、男にしては綺麗な形の唇が俺をたしなめるべく動いた。
けどそんなの聞こえない。
「んっ…」
顔を上げて兄さんの唇に自分のものを重ねると、小さな呻き声が聞こえたような気がした。
抵抗の色は見られない。
キスだけなんて甘すぎるかな?
そう思いながら咥内へと舌を伸ばしてやると、兄さんの舌がびっくりしたように引っ込む。
おいおい、とたしなめるようにも感じた。
俺は少しだけ深く、舌で兄さんの咥内を撫でてやる。
すぐ傍にある体がぴくりと反応を返した。
感じてる?
「ん、っく…んぅ…」
いつの間にか兄さんの舌が俺に応えるように吸い上げてくれた。
俺は唇ごと食らうような荒々しいキスをして、兄さんの理性をどんどん吸い取ってやる。
息が続かなくて頭がぼうっとしてくるけど、甘いキスに病みつきになってしまって、どうにもやめられない。
先にギブアップしたのは兄のほうだった。
「ぷはぁっ、はぁ…はぁっ…お、弟…お前は激しいのが好きだな…あはは」
兄さんは恥ずかしそうに笑うと、立っていられないとばかりに膝をついた。
この人は元々感じやすい。
でも、感じやすいのは兄さんだけじゃないみたい。
俺は自分の上唇を舐めると兄さんの頭をゆっくり撫でて言ってやった。
「そうだよ、俺は激しいのが好きなんだ。…兄さんのせいで勃っちゃった」
「ひっく…」
兄さんは座り込んだまま、目の前にある弟の変わり果てたものを見て変な声を上げた。
俺は兄さんの髪を撫でたまま、片手でズボンのバックルを外していく。
その様子を兄さんがまじまじと見つめていた。
「…俺にしろって言うのか?」
取り出された俺のものを見て、兄さんが困りきった顔を向ける。
しょうがない奴だなと口の中で呟いているのが何だか可笑しくて、俺は兄さんの手を取ってそれに触れさせた。
兄さんは特に抵抗せず、俺のものを両手で持つと形を確かめるように指で撫でている。
でもその顔は見てるほうが恥ずかしいくらい朱色に染まっていて、もっと虐めてやりたいな、なんて思ってしまう。
兄は躊躇いがちに口を寄せると、そのまま赤い舌を見せて俺のものを口に含んだ。
「…っんう…」
先端を銜えただけだと言うのに兄は苦しそうに唸って、それから焦らすように舌でちろちろと舐め始める。
目尻の染まった可愛らしい顔がたまらなかった。
ゆるく編まれたみつあみを指で弄りながら、俺は兄さんの表情に釘付けになっている。
影を落とした睫毛が、赤い舌が、時折漏れる吐息が全部、俺を刺激する。
「くぷ…っ…あ、むぅ…」
内容量が増えてしまったせいか、兄は少し苦しそうに唸りながら俺のものを咥内いっぱいに含む。
頬に俺のものの形がくっきり浮かぶくらいそれは兄の口を支配していた。
暗い格納庫にいやらしい音と、鼻にかかった声が響く。
兄さんの声は女みたいに聞こえて、僕はそれだけでドキドキした。
もっとこの人を辱めてやりたい。
そんな風にさえ思う。
俺は腰を緩く使いながら兄の喉の奥まで支配した。
飲み込みきれないのか、口の端から俺の先走りを垂らす兄が泣きそうな顔をして俺を見つめる。
その目がもっと見たいんだよ。
俺は笑って兄の後頭部を押さえつけてやった。
「ぐぷ…んんっ、んっ…んん…ぐっ!」
「…兄さん、すごくいやらしいよ。俺のが欲しくてむしゃぶりついてるみたいだ」
俺は勝手な事を言いながら兄の口を陵辱する。
苦しそうな声も艶めかしい表情も何もかも俺のものだと、そう思った。
他の誰かにこんな顔見せる事は絶対に許せない。
俺だって嫉妬深いんだから。
「…兄さん、出すよ?」
肯定とも否定とも取れない呻き声が聞こえた。
喉がごくりと震えた動きが伝わってきて俺の絶頂を促す。
勢いよく溢れた欲望が、兄の喉奥へと注ぎ込まれていく。
兄はごくごくと喉を鳴らして、それから苦しそうにむせこんだ。
「げほっ、げほっ…ははは、濃いな…」
喉の奥から白い液体を垂らしながら兄がすっかりトロンとした顔で苦笑する。
俺は兄の頬を撫でて、それから笑った。
弄りすぎたせいかチャームポイントのみつあみが解けかけている。
俺はそれを解いて、兄の髪をゆっくり梳いていった。
こうしていれば女の人みたいなのに兄は男で、俺も男。
優しい顔のあの人は俺の兄さん。
俺の気持ちは届きませんか?
「兄さん、へバってないで次…いくよ」
俺は兄の後頭部に手を添えると、渦巻いて止まらない気持ちを誤魔化すようにその唇を強く吸った。
俺の気持ちは伝わっているのか、とぼけているのか、お見通しなのかサッパリ分からない。
それがもどかしくて悔しくて、体一杯で声にはならない好きを伝えた。
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ヘタレ航空。いつも航空航空言ってますが航空をアップしたのは初めてになります。
歪んだ性癖になりそうだなぁ、航くん。