溢れるほどの愛を。


 「・・・休みや」
 「・・・休みやなぁ」
最近、めっきり休みが無かった。前まで休みになると、決まって劇場の近くの方へ、ノブと
でかけていた。どっと人気が出て、チケットもよう売れるようになって。ぐっと寂しくなって。
 「・・・出かける、か」
昨日、ノブの家に行ったのは夜の十一時。沢山セックスして、一緒に風呂入って。まだ、服は
着ていない。すっぽんぽんのまま、ノブと身体をくっつけて、布団を被ってじゃれている。
 「何処行く?」
 「・・・難波?」
ノブを上から見下ろす。腰に手を回される。
 「ええよ・・・・・・でも、その前に・・・」
分かっとるよ。下の反応、見ればな。顔を縦に振る。
 「・・・頂きます」

大悟の足の付け根を持って、身体を曲げさせ、身体を挿入する。・・・ほんっま、いい身体、して
るなぁ・・・。哲夫さん曰く、俺が色々やった結果、こうなったらしいけど。そうなんかなぁ。
 「はぁ、はぁっ、はぁ、・・・あぁっ、・・・あっ、ああっっ・・・!」
ぎゅうぎゅう締め付ける感じが、たまらない。大きな快感に、飲まれていく。

寝起きに一発やった後、すっかり性欲は冷め、二人で出かける用意をする事にした。
 「・・・もうええの?ほんまに」
やってもいいけど。
 「ん〜・・・萎えてもうて。服着よ?」
大悟は、つまらなそうだ。布団の近くに転がっている、大悟のジーンズを渡す。
 「上も昨日のでええの?」
 「おん」
Tシャツも渡す。大悟はまだぶつぶつ言いながら、下着と服を着た。俺も服を着る。
抱きついてくる。温かい感触。
 「何これ?」
 「・・・いや、ホモっぽいかなって」
笑う。考えてみれば、一緒に出かける事と、セックス以外、ホモらしい事はしていない。
飲みに行くのは哲夫さんや川島みたいな他の芸人とも行くから二人だけって事はまずないし、
遊びに行くんも同じ。でも、好きだっていう感情だけは、本物なんだと思う。
 「・・・飯、どこで食う?」
 「そうやなぁ・・・」
結局、どこでもいいんだと思う。そこに、大悟がいるなら。
 「・・・芸人がおらんとこなら、何処でも」
 「・・・せやな」

そう。芸人がいない所なら、何処でもよかった。何処でも。
 「・・・・・・」
アメ村から、そのまま堀江の方へ歩いていったところ、NON STYLEの二人と会った。
 「・・・うわー」
一番最初に口を開いたのは、井上。石田と井上の両手には、近くの店名が書かれた袋。
石田の袋の方が、でかくて、井上の方が小さい。石田が、二人分持っているんだろう。
 「・・・何で、・・・最悪」
ノブと一緒におる所を、見られた。別に、見られてもよかった。
石田も井上も自分らが冷やかされんのは嫌やから、俺等も冷やかさんやろうし。
ただ、気まずかった。何を話したらいいのか。いや、話す気にもならないが。
 「こっちの台詞や」
石田は、特に気にしていないらしい。でも、井上の微妙な気持ちは分かっているらしい。
 「・・・井上、早よ行こ」
そう言って井上の手を掴んで、大通りの方へ引っ張った。
 「・・・うん」
井上はちらっとこっちを見て、特に何もしないで、石田と大通りの方へ歩いていった。
 「がっちり繋いでたな、手」
平日で人もおらんからって、あんながっちり・・・。もろホモやん、あれ。
気にしないんか、二人とも。いや、気にしていても、別に気づかれてもいいのか。
 「・・・繋ぐ?」
ノブが苦笑しながら、手を出した。
 「・・・いや、止めとくわ」
苦笑してるのに、繋ぎたいなんて、言える訳ない。
石田は劇場の楽屋でも、井上とじゃれあう事に対して別段、他の目を気にしたりしない。
この前も、抱き合って気持ちよさそうにキスをしていた。石田と、目が合った。
向こうはストリートで活動している時に知り合って、俺とノブは高校で。
確実に仲がいいのは、こっちなのに。どうしてあんなに自然に、じゃれあえるのか。
 「・・・大悟?」
ノブが、心配そうにこっちを見ている。
 「ん・・・や、何でもない」
きっとキスをしている所を見なかったら、ここまで気にもせんかった。あんなに気持ちよさ
そうに、じっくり。石田は俺と目が合っても、特に気にもしていなかったみたいだった。
 『んっ・・・ぁ、ん、んんっっ・・・』
あの後、井上はがっつり喰われていたらしい。誰も、小楽屋に近づいていなかった。
 「大悟。やっぱ変やで、お前。・・・・・・ほら、手ぇ、繋ぎたいんやろ?」
目の前に出された手を、握ってしまうのか。
 「・・・ほら」
手が、出ない。ノブが、自分から俺の手を握った。
 「ノブ・・・」
 「・・・別にええんよ?気にしなくても」
嗚呼、好きだ。・・・本当に、好きだ。
 「・・・でも、仲ええよなぁ、井上と石田」
何時もはそこまで仲のいい所は見せないが、二人きりになると違う。井上も石田も、お互い
の側を離れようとしない。一見井上が上に立っている様に見えるが、二人になると違う。
 「・・・仲ええなぁ」
俺とノブやって、仲悪い訳と違うけど。でも、やっぱり、羨ましく思う。
 「・・・負けたくないなぁ」
・・・ノブ。
 「・・・負けたくないな」
負ける訳には、いかない。格好悪い意地だとは分かっているが、負けたくない。






END