自動恋愛機 ・・・high speedデ僕ハ
君の顔を見ているだけで、歯痒い気持ちで一杯になる。
「・・・山田?・・・聞いてるん?」
baseよしもとの大楽屋。吉本と二人で、談話中。皆思い思いに、それぞれの相手と話したり、
タバコを吸ったり寝たり飯を食ったり。ミニサイズの缶コーヒー。残り少なくなっている。
「・・・ごめん、聞いてへんかった」
ふぅっと大きな息を吐く吉本。少しつまらなそうな顔。自分の分のコーヒーを飲む。
「・・・ほんまに。最近変やで?ずっとぼーっとして」
・・・ナゼ可笑シクナルノカ。君に全てを話したら、君はどんな顔をするんだろう。君はきっと
顔を真っ赤にして鼻から息を酷く吐いて、俺を殴ってここから逃げ出すだろう。そして俺を
無視し始め、最悪の場合、俺と二度と会わなくなるだろう。君は知らない。君は幸せで残酷。
「・・・別にぃ。お前の気のせいやろ」
嗚呼。・・・頭が可笑しくなりそうだ。というかすでに俺は可笑しくなってる。君に狂ってる。
「・・・そうやろか・・・」
ウタダヒカルが謳っていた、『Automatic』。今の俺の感情に似ているのは、只の偶然か?
「・・・熱とかないよな?」
綺麗な顔。君は知らない、俺が君の厭らしくなってる所を想像して、自粛しているなんて。
「・・・ないよ」
君の手を振り払う。
「・・・自分じゃ分からんやろっ。ほらっ、大人しくしぃっ」
ああ、お願いだから君の可愛い顔をそれ以上近付けないで。勃起してしまいそうだから。
「・・・ん、よし。熱はないみたいやね」
綺麗な目。君は知らない、俺がどんな君を想像しているかなんて。君は俺と俺の家に居る。君
の身体は酷く火照っていて、縄で両手と両足を動けないようにされていて、俺が乳首を弄り
陰唇を愛撫してやると、酷く淫乱に善がる。そして、前に差し出された俺のペニスを大人し
く咥える。それだけじゃない、何処で学んだのか、俺のペニスを上手に嘗め回したり、出し入
れしたりする。そして調子に乗った俺が君のアナルに黒くて太いバイブを挿入すると、快感
に身を震わせながらフェラに勤しむんだ。・・・少なくとも、少し前までは只の相方だった。
「山田?・・・どうかしたん?・・・俺の顔、何かついてる?」
俺を可笑しくしたのは俺自身。俺が俺を可笑しくさせたのは君を好きになった所為。
「・・・山田??」
君の両手首を掴む。嗚呼、柔らかそうな唇。むしゃぶりつきたい。
「・・・吉本っ・・・!」
「んむっっ・・・・・・!?・・・はぁっ、はぁ・・・・・・!!?」
嗚呼、嗚呼。
「・・・っ・・・!!」
君は僕の手を無理やり振り解いて、泣いて逃げていった。・・・嗚呼、嗚呼・・・!!
「・・・ちょっ、山田さぁん!?何処行くんですか!もうすぐ出番・・・
劇場のスタッフの声。気にせず階段を駆け上がっていく。小さく見える君の背中。劇場を完
全に出る。商店街へ、商店街を走る、道頓堀へ、人を掻き分けながら、君を追いかけていく。
『なぁ、あれ・・・』
『・・・ストリークちゃうん?』
女子高生の声。でも俺には君しか見えない。
「はぁ、はぁっ・・・!」
キスした瞬間、君は多くを理解したんだろう。俺が君にどんな気持ちを抱いているかを。そ
して嫌悪して、とにかく俺を自分の目に映したくなくて、君は逃げてる。可哀想な君。残酷な
俺。でもどうしようもないんだ、それにもう少し遅かったら、君を犯していたかもしれない。
「・・・吉本ぉ、待てやおい、待てぇっっ!」
人が見たら、俺と君はどう見えているだろう。何かの番組のロケに見えるだろうか。鬼ごっ
こをするコーナーだろうか。何て幼稚なコーナーだろう。君への行為も酷く幼稚だけど。
「嫌や、嫌やっ・・・!」
君は疲れてきたのか、ゆっくり、早く、足のテンポが悪くなってる。俺はまだ余裕だ。
「・・・はぁ、はぁ・・・!!」
君の右腕を掴んだ。君は前につんのめりそうになりながら、何とか足をつけて立った。
「離せ、変態!」
どう罵倒してもいい、ただ、少しでいいから俺を許してくれ。
「・・・すまん。でも、絶対離さん」
離したら、君は此処から逃げるからだ。
「アホ、離せ、離せっ!!」
・・・君が好きなんだ。許してくれ。
「何であかんねん!!」
「あかんとか、そんなんちゃうやろ!!・・・可笑しいやろ、気持ち悪いやろ!」
俺だって我慢した。でももう限界だ。君にキスしたい君を好きなだけ抱きしめたいセックス
がしたい好きだと言いたい、君に好きだと言われたい。その望みは叶うか分からない。でも
好きなんだ。ああもう許してくれなんていわない、でもせめて認めて欲しい、この感情を。
「好きなんじゃ!!もう、我慢できへんねん!!」
格好悪い台詞。気持ちの悪い俺。もう最悪だ。
「・・・アホっ」
君の反応は、言ってる事と行動が全然正反対だった。君の柔らかい唇の感触。
「・・・吉本・・・」
「・・・でかい声で、言わんでも分かるよ」
END