ビールとセックスとシケモクと


例えば、海岸近くのテトラポットの上。
 「うーちゃぁん」
車で海岸まで連れて行ってやり、年を気にせず靴を脱ぎ、はしゃぎ、遊び、くたびれ、相手を
抱っこしたまま歩き回り、ごつごつした、白いテトラポットの上に押し倒し、セックス・・・
 「わっ」
菅ちゃんが、乗っかってくる。赤い顔。・・・麒麟生絞り。
 「・・・そんな難しい顔、しちゃ嫌だぁ」
俺の相方・・・
 「にゃっ」
兼、恋人。抱き上げ、頬にキスをしてやる。首筋にも。チュウチュウ吸うと、キスマークがつく。
菅ちゃんはニコニコ笑って、抱きついてくる。本当に無邪気な、子供みたいな顔をしてる。
 「んっ、・・・ふふっ」
菅ちゃんが、俺の顔をじっと覗き込み、ぷっと吹き出す。
 「・・・何?」
菅ちゃんが純粋で綺麗な、子供みたいな大人なら、俺は大人ぶる事を好む、不純な子供。
 「・・・うーちゃん、Hな顔、してたぁ」
そう言って、キスしてくる菅ちゃん。・・・ふんわり、潮の匂い。・・・商店街の催し物で、菅ちゃ
んが当てた温泉旅行。住んでいるところから遠くもなく近くもなく、静かな海岸沿い。
 「・・・Hな事、考えてたもん」
菅ちゃんと、Hする事。
 「・・・んっ・・・」
潮の匂いと、ビール独特の苦い味と、アルコールの匂い。
 「・・・ねぇ、うーちゃぁん」
菅ちゃんは俺の身体に寄りかかり、俺は肘をついてバランスを取る。菅ちゃんは俺の身体に
跨り、じっと俺の顔を見ている。クリクリした、可愛い黒目がちの目。バンビちゃんやね。
 「・・・H、したぁい」
そんな風に甘えられたら、我慢できるもんも我慢できなくなります。
 「・・・しようか」
 「うんっ」
あー、美味しそうな乳首が見え隠れしてる。今すぐしゃぶりつきたい。口に、唾液が充満して
いく。菅ちゃんはよろよろよろよろ、内股で歩きながら、俺の身体に擦り寄る。嗚呼、胸が腕
に当たる。・・・二組の、ベット。菅ちゃんはたたたっと走っていき、布団をくっつけた。
 「・・・にゃっ」
ごろん、と布団の上に大の字になった菅ちゃんに、のっかかる。
 「・・・うーちゃん、・・・」
しゅるしゅると浴衣の紐を剥ぎ取り、ばっと中心をはだけさせる。俺もさっと脱ぐ。
 「・・・怖い?」
完全に勃起した、陰茎。菅ちゃんのやらしくて柔らかい、アナルを強く求めている。
 「・・・うん」
もうすぐ、入れてあげるからね。
 「怖がらんで、ええよ・・・」
菅ちゃんの身体にぐっと顔を近づけ、乳首を舐め上げた。
 「んっ・・・」
甘い声。柔らかい感触。
 「・・・宇治原ぁ、・・・・・・灯り・・・消して?」
・・・まぁ、いいか。
 「・・・うん」
大きな電気を消して、灯篭みたいな形をした、スタンドだけを点けた。菅ちゃんは手持ち無
沙汰なのか、足を曲げて、だらしなく寝転んでる。・・・浴衣が、更に身体から離れている。
 「・・・宇治原、怖ぁい。亡霊みたい、何か」
・・・本当に。子供って素直で残酷って言うけど、全くだ。
 「・・・ほんまにっ」
無理やり羽交い絞めにして、キスをした。
 「んっ・・・むうぅっ・・・・・・」
柔らかいなぁ、ほんまに。
 「・・・は、はぁ、はぁ・・・・・・。・・・何か・・・エロいね、今日」
確かに・・・自分でも可笑しいと思う。何か、自分が二つに分裂してる。真面目に俺を見てる自
分と、何かよう分からんけど、性欲が異常に強い自分。・・・まぁね。今から思えば、小っちゃい
頃からずっと、家族に束縛(とは思ってないけど、菅ちゃん曰く、世間一般から見れば、そうみ
たい)されとったから、菅ちゃんと友達になって、大学入って、吉本入ってからは、あんまり束
縛も無い訳やしね。これが・・・元々の自我なんかもしれん。男やしね。動物やし、元々は。
 「うんっ・・・んっ、んぅうんっ・・・」
・・・自我の解放、か。セックスっていうと俗物っぽいけど、こういうと哲学用語みたいや。

暗闇。・・・すでに見慣れた灯篭の灯りが、布団周りから部屋全体を、ぼんやりと明るくしてる。
午前三時五十分。今から寝なおす・・・かぁ。めんどぉ。・・・でも、明日も引っ張り回されるしや
なぁ・・・あーあ、可愛い顔しちゃって。さっきまで上気して赤くなってた頬が、綺麗な肌色。
 「・・・宇治原ぁ・・・・・・ん・・・」
可愛い声。・・・美味いタバコ。静かな、均等に聞こえる波の音。最高やね。・・・菅ちゃん、起きへ
んかなぁ・・・じーっと見てて、視線を感じて、眠たそうにごしごし目を擦りながら、起き上が
ってくれたら嬉しい。・・・で、抱きついてくれたら。・・・・・・よぉし、試してみよ・・・。
 「・・・・・・・・・」
・・・起きてー。
 「・・・・・・・・・」
・・・起きてくれたら何でもしてあげるから、起きてー。
 「・・・・・・・・・」
・・・菅ちゃーん。
 「・・・・・・・・・」
・・・広文くーん。
 「・・・・・・・・・」
・・・起きんかぁ。・・・眠。・・・そろそろ、寝なおすかな。
 「・・・おやすみ」



END