第五話 『In tHe moRnIng』

やけに眩しい朝の光で、目が覚める。隣には、すっぽんぽんで、アホの子供みたいに口を半開
きにした石田が、ぐーすか寝ている。昨日の記憶が、綺麗に無い。最近、こういう事ばかりだ。
石田と、やっていた事だけは確かだろう。歳だろうか。・・・もう、七時か。そろそろ、起きるか。
 「いっ・・・」
腰に激痛が走り、床にへたれ込んでしまう。石田は布団がめくれて目が覚めたのか、むくっ
と起き上がる。目に涙を浮かべながらじっと見つめると、心配になったのか、抱き上げる。
 「・・・大丈夫?」
 「大丈夫ちゃう・・・、めっちゃ痛い・・・」
嘘や・・・昔は、一晩中やっても次の日はぴんぴんしてたのに。
 「・・・昨日、激しかったからな。起き上がれん程痛い?」
腰を、優しく擦る石田。こくん、と頷く。
 「お前は大丈夫なん?」
 「いや・・・・・・俺もヤバイ。さっき、トイレ行った時死ぬかと思った」
石田は昔から骨が弱くて、調子にのってめっちゃ激しいセックスをして、骨を折った事もあ
る。あの時は最悪だった。挿入したまま折ったから、どう石田の身体を抜いたらいいか、かな
りの時間悩んでいた。その時から、激しくなりそうな時は、できるだけ俺が上に乗るように。
 「・・・会社、休もか」
石田も、相当辛そうだ。・・・こうなったらしょうがないか。

 「・・・休んでもうたなぁ」
何とか電話をし川島に連絡し、休む事になった。セックスをやりすぎて、という事は伏せて
おいた。腰を痛めたと言ったから、まさか・・・とは思われているとは思うが。
ベッドの上で、石田といちゃいちゃする。キスをする。ぬるくて、柔らかい舌の感触。いい。
 「・・・ん、ふっ・・・んっ、
石田の両手が、俺の尻に伸びる。揉まれる。痛みが走る。
 「痛っ!!・・・・・・あ〜、痛ぁ・・・」
石田は申し訳ない、という顔をしながら、少しつまらなそう。俺もつまらない。他にやる事な
いんか!と言われそうだが、セックスというのは楽しい。せっかく、休みになったんやし。
 「・・・あー、Hしたい」
俺も。
 「・・・しゃーない・・・」
こうなったら、これだ。石田のペニスを、ぎゅっと握る。
 「・・・手コキで、しよ」
石田の手が、俺のペニスに伸びる。擦りあげられる。思わず声が出る。俺も、擦ってやる。
 「・・・は、ぁ・・・・・・俺等、エロいんやろなぁ・・・」
確かに、エロいかもしれない。昨日も会社にいけなくなるほど腰を痛めといて、今もこんな
事、してるし。自分でも、自堕落な生活だと思う。一度この気持ちよさを知ってしまうと、止
まらない。指が、ゆっくり、速く俺の身体を刺激する。口が半開きになる。声が、自然に出る。
 「はぁ、はぁ、・・・ん、ぁっ・・・」
石田も、何だかんだ言って、結構気持ちよさそうだ。
 「皆今頃、仕事しとるんやろなぁ・・・」
くちくちくちくち、お互いの身体を愛撫しながら、溜息混じりの声を出す。
 「・・・まぁなぁ。・・・西田さんと社長は、どうか分からんけど・・・」
はぁ、気持ちええ・・・。腰はずきずきするけど、こんなんやったら、たまには痛くなってもえ
えかも・・・。毎回やる度にこんなんなったら、困るけど。お互いに、気持ちよくなるなら・・・。
 「・・・俺、身体鍛えようかな・・・」
 「・・・・・・何で・・・?」
昨日は確かにやりすぎたけど、普段は二回ぐらいで満足する。でも時々、二回でも辛い時が
ある。運動不足だと思う。最近、身体動かす言うたら、歩くか、セックスするかしかないし。
 「・・・セックスしすぎて、腰痛くなるん、嫌やもん」
気持ちよくなりたくてセックスをするのに、それで身体を動かせなくなるのは嫌だ。
 「・・・何か可愛い、井上」
褒め言葉、やんな?褒められんのは嫌いやない。
 「・・・あっ、
 「ここ、気持ちええんやろ?・・・褒めてくれたお返し」

昼になって、腰が大分マシになってきた。家に置いてあった湿布を貼って、そのままのろの
ろ動き回る。一人で動くのは辛いから、二人で動く。最初から、家事はまともにする気ない。
 「んっ・・・ふ、ぁんっ・・・」
身体が少し元気になったと思ったら、これだ。よく、同性愛者は表現がストレートでいい、と
か言うけど、確かにそうかもしれん。でも、そんなもん、努力すれば普通の人間だってできる
と思うんだが。異性と同性の違いだけで、他の所は特に変わらへんもん。恥ずかしがる必要
がないから、というのは強みかもしれないが。後、大体の愛撫、めっちゃ気持ちええもんな。
 「腹減ったなぁ」
そういえば、今日、何も食ってへん。
 「マックでも行く?」
もっとしっかり食うべきなんだろうが、ジャンクフードの方が腹に入りやすいから。
 「おん。・・・あ、そうや、トイレットペーパー、切れてた」
石田とは、同棲はしていない。でも、365日ある中で、360日ぐらい石田は俺の家に居る
から、ほんまは同棲した方がええんやけど。通い夫が楽しい、んだそうだ。よう分からん。
 「・・・あ!あと、トランクス、こっち置いてんの全部ゴム伸びて。それも欲しい」
服も下着も洗面用具も、全部俺の家に置いてある方が多い。それだけお金かかるし、トイレ
ットペーパーとかシャンプーの減りも早いし、・・・同棲したいんやけどなぁ、俺としては。
 「シャンプーも切れそうやし、服欲しいし・・・。何や、デートみたいになりそうやな」
デートか。何週間ぶりやろ。一緒に飯食ったりはするけど、買いもんはせえへんなぁ。
 「デートか。ええやん、デート!何か、ええ服着てこ〜」
 「ええ服、って・・・。あんま変わらんって、お前は」
ずっと一緒におるのに、今更かっこつけてもしゃあないやろ。
 「何やねん、酷いなぁ。かっこつけさせてよ、少しは」
別に俺は、かっこつけんなとは言うてへんよ。拗ねてみせる石田。・・・のろけだろうか、ここ
で可愛いと思うのは。頭が、こうして一緒に居る事で、すっかり麻痺してしまっているのか。
 「はいはい。・・・・・・あ、こら!」
後ろから、ぎゅうっと抱きしめられる。
 「身動き、取れへんのやけど」
 「取れなくしとるもん。・・・構って」
俺、構ってないか?・・・ずっと、構ってるつもりなんやけど。まだ足りへんとか?
 「歯ぁ磨いて、顔洗いたいんやけど」
きゅうっ、と更に抱きしめられる。離すどころか、顔を擦り付けて、甘えてくる。しょうがな
いので、頭を撫でてやる。甘えてもいいと思ったらしく、首筋、背中にキスをしてくる。
 「・・・おーい。買いもん行くんちゃうの?」
ぴちゃぴちゃ、ゆっくり、下へと愛撫していく。
 「あかん!・・・そんな顔、せんの」
まだ腰治ってへんのに、できるか。ほんまに、求めて欲しい時には欲しがらないで、求めて欲
しくない時には欲しがんねんもん。それがまた、可愛くてしょうがなかったりするけど。
 「また、明日でもゆっくりしよ」
頭を、また撫でてやる。すると、ぱっと抱かかえられ、
 「・・・んっ」
キス。・・・・・・おーい、何時まですんの?・・・息、苦しいんやけど。
 「・・・はっ、はぁ、はぁ・・・」
やっと、楽になる。
 「・・・何なんよ、もう・・・」
 「指きりげんまんの代わり。嘘ついた、あかんよ」
・・・はいはい。






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