Honey Time
「・・・あっ、あぁっ、石田っ、石田あぁっ・・・!」
ズブズブ、音がする。さっき、する前は十一時半だった。一時間は経っているだろう。・・・今、
何時やろうか?座位でやってます。石田の首に腕をかけながら、尻の部分をくっつけて。
「井上、井上っっ・・・!」
気持ちいい。セックスしている時、男同士でよかったと思う。確かに俺は受身やったから最
初はものすっごい痛かったし、普通の人からは嫌悪される。・・・が、男女では当たり外れがあ
る一方で、大体同性同士でやると、何処を愛撫されたら気持ちいいかを知っているため、
気持ちいいセックスを味わえる可能性が高くなる。妊娠を心配せずに済む事もあるし。
「石田ぁ、石田ぁ、奥っ、もっと奥、来てぇぇっ・・・!」
確実に快楽を与えてくれる性器を求めて、奥へ奥へと締め付ける淫部。漏れ出るザーメンは
さらにその締め付けを滑らかにするローションとなり、その量は刺激に反応し多くなる。
「・・・あぁ、いい、いいっっ・・・!・・・全部、全部中で出してぇぇっ・・・!!」
ほぼ同時に、射精する。石田の身体に寄りかかる。抱きしめられる。
「・・・抜くよ」
「・・・うん」
ペニスが、身体の中から抜かれる。
「あっ・・・」
さっき挿入した時とは違って、しなしなと元気を無くしてしまったペニス。・・・コンドーム
を取ってやる。口の方をまとめて持ち、じっと底に溜まった石田のザーメンを見てみる。
「・・・結構薄いね」
・・・やりすぎただろうか。溜まった丸い所に、エロく舌を当てる。
「・・・エロい?」
「・・・アホ言うな」
そう言いながら、何で生唾飲んでんねん。
「・・・なぁ石田ぁ」
石田はそのガリガリの腰にタオルを巻いて、冷蔵庫からお茶を取り出して二つのコップに
あけて、一方を自分が持ったまま、もう一方を俺にくれた。・・・冷たくてなかなか美味しい。
「・・・うん?」
ベッドの上に座ってる俺の側に座り、そっと俺を抱き寄せた。俺も寄り添う。
「・・・今頃なぁ」
石田の顔を下から見上げる。・・・キスする。
「・・・うん」
キスを返される。
「・・・大悟とか川島も、相方とやってるんかなぁ?」
同時にキスをする。だらしないキス。・・・蜂蜜みたいに甘い。
「・・・やろなぁ」
セックスが終われば、たくさんたくさん、キスをする。それは男女間でも同性間でも一緒や
ろうけど、俺と石田もそう。『好きだ』とも言うし、抱き合ったりもするけど、キスが好き。
「・・・変な感じやなぁ。さっきまで舞台の上で一緒におったんが、・・・なんて」
キスをして、セックスをして、またキスをして、『好きだ』と言い合って、抱き合う。
「・・・それは俺等も思われとるし、何時もの事やん」
・・・そうやけど。
「・・・うん、・・・そうなんやけど・・・」
石田に抱きついた。抱きしめられる。ガリガリの身体をしてるくせに、何か温かい。
「・・・好きなんやから、セックスすんねんな。それは、分かんねん、けど・・・」
頭を擦り付ける。セックスをする前から流れていた音楽が、終わっている事に気付く。
「・・・俺も分かるよ、そういうん。・・・俺も時々、変やなって思う」
さっきまで酷く熱を帯びていた身体が、すっと冷めていくのを感じる。石田の首とその近く、
ぽつぽつと残ったキスマーク。俺が残したキスマーク。・・・一昨日と、昨日のやと思う。
「・・・川島の喘ぎ声、低そう」
・・・ふっと笑う。石田も笑う。
「まー、漫才ん時もあんだけ低いからなぁ。田村、めっちゃ夢中になっとるけど」
想像しただけで、沸々と笑いがこみ上げてくる。
「後、あれも一見可笑しいよなぁ。・・・大悟が受身で、ノブに抱かれてんの」
また笑う。自分達も多分想像されて、川島や大悟に笑われているやろう。でも、可笑しい
もんは可笑しいねんもん。・・・あ、また。何時もそう。舞台で一緒に仕事している芸人仲間が
セックスしているんだろうという事を考えると、途端に羨ましいなぁと思ってしまう。自分
達もさっきまでセックスしていたし、別に不満はないはず。・・・やけど、何か羨ましくなる。
「井上?・・・どうしてん、何か・・・変な顔しとるよ?」
今頃一杯愛されてるかと思うと、それを壊してしまいたくなる。・・・わがままな願望。他人の
不幸は蜜の味、というが、全くその通り。他人の不幸は面白い、が、他人の幸せは憎らしい。
「・・・ううん、何でもないよ」
「・・・そうなん?」
・・・こんな事、言ったら変に思われるだろう。
「・・・コップ、持ってくな」
空の、ガラスのコップ。ちょっと薄い茶色をした、底に溜まった烏龍茶。
「・・・ありがと」
ぷちゅっと、唇にキスをした。
「・・・変な奴」
・・・ええやん、これくらい。好きな奴に甘えられて、お前も嬉しいやろう?
END