第一話『浮気と恋愛』

 「あっ、あぁ、矢部さん、矢部さんっっ・・・!」
午前二時。俺は見慣れない部屋のベッドの上で、見慣れない後輩芸人と一体になっている。
 「・・・そんな、駄目ですっ、・・・ぁ、あぁ、駄目、駄目っっ・・・!」
 「・・・駄目ちゃうやろ、・・・全部入れるよ」
最近、ずっとこんな感じ。・・・ほんまは、もっとやりたい人がおるんやけどなぁ。あの人への
距離は、あまりにも近い。言うても、気持ち悪いって言われてあっさり振られるのがオチだ。
 「はぁ、あぁ、・・・あうぅっ、・・・逝く、逝っちゃう、逝っちゃううぅっ・・・!」
あーあ。先に射精された。
 「・・・あかんなぁ、・・・おしおきや」
逆立ち状態にした格好のまま、真っ直ぐ後輩の顔に射精した。
 「・・・・・・んっ・・・」
身体を楽にしてやり、ティッシュを一枚取り、顔を拭いてやる。
 「・・・ティッシュ、咥えとき。気持ち悪いやろ」
ぼうっと明後日の方向を向いている顔。可哀想に思い、ちゅっとキスしてやる。
 「・・・シャワー浴びてくるわ。・・・ええよな?」
こくっと、顔を縦に振る後輩。・・・ごめんな、嫌な先輩で。
 「ふうっ・・・」
ざーっと身体へ伝っていくシャワー。・・・あの子、ライセンスとか言うてたかな。さっきまで
Hしてた相手の名前を忘れるなんて、俺も歳取ったなぁ。藤本さんにたまには遊びに来いっ
て言われて、ルミネに行って。何人かに挨拶されたけど、一番可愛えなぁって思ったんが、ラ
イセンスの井本君やった。何や相方と最近くっついて、悩みを聞いて欲しいって言うたから、
一緒に呑みに行って話聞いて、酔っ払わせて家に入り込んで、無理やり押し倒したった。
 「・・・・・・岡村さん・・・」
さっき果てたはずのペニスが、また勃起してきた。岡村さんの顔を想像しただけで、勃起し
てしまう。俺は異常や。そんなんは分かってる。・・・でも、あの人を好きになってしまった。
 「・・・・・・」
風呂場を出る。
 「・・・井本君」
可哀想に、俺に騙されて。
 「・・・こっちおいで。・・・大丈夫、もう変な事、せえへんから」
俺に抱えられながら、震える身体。二、三ヶ月くらい前に、相方の藤原君に告られてしまった
らしい。元々井本君も藤原君が好きだったので、相思相愛で二人はくっついた。が、どうして
も相方とHをするという事への恐怖心と心配を越えられず、まだやれてないらしい。
 「・・・矢部さん」
風呂場で綺麗に洗い流してやり、俺も自分の身体を洗い、井本君の家を出ようとした時。
 「・・・何?」
井本君に、呼び止められた。
 「・・・何でも無いです」

何時もの通り『めちゃイケ』の収録に行くと、藤本さんに捕まった。昨日の事やろう。岡村さ
んに見つかったら、なんていう可愛い後輩の思いを少しも考えず、楽屋へと連れて行った。
 「・・・昨日、井本とやったやろ」
嗚呼、尋問みたい。
 「・・・はい。美味しく頂きました」
可愛かった。初もののアナルって、あんなにええもんなんやなぁ。まぁ井本君の場合、元が可
愛いから、初もんやなくてもええんやろうけど。・・・もう、藤原君とやっても怖ないやろ。
 「お前なぁ・・・!!初めてやねんぞ、向こうは!悩み聞いて欲しいって言うて、・・・
 「すいません、変態で」
はいはい悪かったですよ、魔が差したとはいえ、後輩のヴァージンを奪ったんはね。
 「・・・もうええわ」
ありがとうございます、先輩。一生着いていきます♪(笑)
 「・・・お前もお前やけど、相手も相手やな。お前も早よ言えや、岡村に、好きやって」
 「・・・言えません。怖いですもん、振られんの」
好きなんてもんやない。セックスしたい、愛してる。岡村さんがOKを出すなら、いやもしか
したら出さなくても、俺は彼を軟禁するだろう。他の奴なんかに、岡村さんに触れさせない。
 「怖いって・・・後輩はええんか?・・・お前に犯されて、泣いてるかも・・・」
 「油断したんが悪いんですよ。僕なんかを、信用したんが運のツキなんです」
大体、先輩の俺を差し置いて相方とくっついてるくせに、その悩みを俺なんかに相談すんな。
腹経つねん、正直。ほんまに悩んでるんかしらんけど、俺から見たらただののろけやねん。
 「・・・ええ加減にしとけよ、矢部」
・・・大丈夫ですよ、藤本さんに迷惑はかけませんから。
 「・・・はい」
岡村さん。今頃テレビ局に着いただろうか。・・・可愛い岡村さん。例え汚れていると言われて
も、俺の目には彼は純粋で、可愛いくにしか見えない。何時か、俺だけのものにしたい。若手
や他の芸人、女なんかに渡してたまるか。携帯番号なんか交換でもしたら、お前の相方をめ
ちゃくちゃに犯してやるよ。・・・嗚呼、岡村さん。僕はきっと可笑しいですよね。狂ってます
ね。可笑しくなるぐらい、貴方が好きなんです。貴方とセックスがしたい。貴方に好きだと言
われたい。貴方の事をずっと抱きしめていたい。貴方と一緒に暮らしたい。・・・愛してます。






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