I'm loving you...
深夜十二時。慣れない状況に落ち着けず、ラジオをつけたり、テレビをつけたり、お茶を飲んだり、
うろうろしてしまう。・・・何時も側に居る存在が、欠けてしまうのがこんなに辛いとは。
福田に電話しようか、迷い続けている。確か・・・今日は他の芸人と呑みに行くと言っていた。
この前、呑んでいる途中とは知らず電話をしてしまい、怒られてしまったから、なかなか電話を
かける勇気が出ない。・・・格好悪いなぁ、俺。キンコンの西野を抑えて吉本男前ランキング
一位に輝いた男とは思えんね、ほんまに。・・・福・・・電話したい・・・というか会いたい。
「ん―――・・・」
声を聞くだけでいい、福が何時もの様に話してくれればそれでいい。そうすれば、ぐっすり
寝られるはずだ。・・・何て言うのは奇麗事。多分、声なんて聞いたら我慢できなくなる。
何とかして福の元へ行くだろう。行きたいんじゃない、行くんだ。会って、抱きしめたい。
『・・・徳井君っ・・・!』
畜生。やってる時は、俺が好きだとしか言わないくせに。あんなに俺を求めるくせに。あれは
フェイクか?・・・ほんまは、俺なんていらないんか?・・・利用されてるんか、俺?・・・・・・うわ、
めっちゃ惨めやん、俺?俺は会えないだけでこんな風になる程、福が好きやのに。
「・・・・・・よし!」
自分を必死に肯定し、俺の意気地なしが何とか納得してくれたらしい。子機へと歩いていく。
何て言うかな・・・声が聞きたかった、なんて臭い台詞だけはパスだ。・・・あー、今更悩むわー。
・・・と、電話の着信音。相手が福である事を心の底から祈りながら、子機を取った。
『・・・あ、徳井君?』
・・・福だ。
「・・・あ、ああ、・・・どしたん?」
心臓、ばくばく言ってる。・・・何とか声を落ち着かせるが、気を抜いたら噛んでしまいそう。
『・・・寂しいやろー?・・・何時も隣におる、俺がいーへんから』
図星だ。・・・が、変に高いプライドが俺の言葉を勝手に操作する。
「お前はどうなん?・・・お前は寂しいやろなぁ、俺、男前やからなぁ」
阿呆か俺は。
『・・・・・・寂しいよ』
・・・え?
『・・・正直、めっちゃ自分がキモい。・・・でも、めっちゃ寂しい・・・』
福・・・
『・・・自分がこんなんになるなんて、思わんかった。・・・ごめんな、キモくて。それじゃ・・・』
「待って!!」
『・・・徳井?』
キモくなんかない。キモいなんて言われへんし、・・・逆に、めっちゃ嬉しい。福、可愛すぎ!
「・・・あの・・・キモくないで!・・・嬉しい。・・・だから・・・まだ、切らんといて?」
『・・・うん・・・』
可愛い―――!!・・・でもなぁ、切らんといて・・・言うても、何も用無いし・・・。
「・・・なぁ・・・福」
もう何言われてもいい!・・・めっちゃ恥ずかしいけど、ええわ!
『・・・うん?』
「・・・今から・・・そっち行っていい?・・・お前に・・・会いたくて」
『・・・・・・うん。・・・というか・・・今、家の前・・・やねん』
子機を持ったまま、ダッシュでドアに走っていく。ドアを開ける。携帯を持った、少し赤い顔
をした福。思わず抱きしめる。・・・あー、可愛いー!!・・・この身体の感触、やっぱ最高や。
「・・・徳井君・・・」
流れるようにキス。
「・・・中、入って?・・・外に、ずっとおるんも何やし」
福の手を握り、一緒に家の中に入る。普段ならキス以上の事もしているけど、今日はする
気にならない。福を抱きしめながら、ずっと話をする。・・・TVはつけていたが、福が寝て
しまった今も、内容をほとんど覚えていない始末。・・・福が好きや、もう迷いはない。
「・・・徳井君・・・」
寝言だろうが、俺にとっては何よりも嬉しい。・・・格好悪いけど、それでも福が大好きだ。
END