片思いが桃色なら、両思いは何色なんでせう?
好きな貴方とのデートの為に、服装を選んでいる、彼がどんな服装が好きなのか分からない、
全ては私が貴方を大好きだから・・・・・・なんて曲を歌っていたのは、確か松浦あやだったと
思う。今まさにそれ。・・・昨日、石田と呑んでいて。急に明後日、一緒に買いもん行こうって。
「・・・・・・はぁ」
分からん。あいつの事なら大抵分かっている、と思っていた。・・・大きな勘違い。
「・・・石田・・・」
あんまり変な服を着ていっても引かれるやろうし、でも、『変』とか『普通』とか判断する
のは向こうで、困った事に、あいつの判断基準がイマイチ分からない。俺がこうやろうと判断しても、
間違ってるかもしれんし。引かれるのは絶対に嫌だ。・・・タンスからまた、新しい服を出す。
「・・・・・・」
ずっと慎重に考えていると、時々うわぁっとどうでもいい、と考えてしまう事がある。今ま
さにそう。・・・でも、また慎重に考えてしまう。それもまた常。『桃色片思い』、『旅行は準備
している時の方が楽しい』。確かに。・・・でも、通例があれば異例だってある。現状は異例。デ
ートという小旅行(旅行中、楽しいから早く過ぎてしまうように感じる。同じ様なもんやと思
う)の為に『準備をしている』のに、辛い。泣きそう・・・なんて言うのはかなり大げさやけど、
辛い。現在の時刻、PM11:00。石田に電話するのは恥ずかしくてたまらないしどう聞い
たらいいか分からないし、こういう事を打ち明けられる川島さんや津田なんかに言うのも、彼氏
(なんて言うのもおかしいか?)といちゃいちゃなんてされていたらたまらないし、恥ずかし
いし。・・・ああもう!!・・・・・・まただ。爆発して、鎮まる。・・・明日、風邪でも引いていたら。
『・・・井上、好きや』
風邪でも引いていたら、どんなにか幸せだろう。天変地異でも何でも起きて、明日、誰も外に
出れない状況にして下さい、神様仏様アラーの神様。・・・どうして何回も、何処でも言われた
一言が、心をこんなにくすぐるんやろう。告るまでは大変やったけど、告ってお互いの気持
ちを認めてしまえば、後は楽やった。キスをするのは好きだったから苦ではなかったし、セ
ックスの相性も悪くは無かったし、一緒に出かける事だって、全く抵抗はないはずなのに。
『・・・俺も、好き』
服装が決まらないというだけで、こんなに辛いなんて詐欺だ。本当に、自分が情けなくて涙
が出る。・・・石田は今頃、何してるんやろう。明日の服装も何処へ行くのもとっくに決まって、
風呂でもゆっくり入っているんだろうか。・・・どうしようもないのに腹立たしく思えてくる。
俺がこんなに悩んでいるのに。そう石田に言った所で、石田は訳が分からないだろう。俺だ
って分からんわ、アホっ。楽だ楽だと思っていたのに、急にとてつもない落とし穴に落とさ
れた。・・・ここから出る方法は浮かんでくるのに、出たいとは思うのに、何もできない。
『んっ、あっ、・・・石田、石田っ・・・!』
セックスする事は簡単だったのに、どうしてこういう事に限って?
『・・・井上っ・・・!』
携帯が鳴る。・・・出たくない。
「・・・・・・」
鳴り続ける電話。・・・・・・出てみるだけ、出るか。
『・・・もしもし、井上?』
表示された名前はノブなのに、出たのは大悟。・・・ああむかつく。
「・・・何よ」
・・・人が悩んでる時に、いちゃつきやがって。
『・・・まぁええわ、・・・お前まさか、・・・石田とのデートの服装なんて、悩んでないよな?』
・・・・・・何で・・・!
『・・・図星か。・・・はぁ、お前等なぁ、・・・コンビでアホな事で悩むな』
・・・え?
「ちょっと待って、それって・・・」
『言わんでも分かるやろ、それぐらい』
・・・石田・・・
『・・・言っとくけど!・・・石田は、ありのままの井上の事、好きになったんやろ?』
・・・・・・。
『やったらどうでもええやん、服なんか。何でも着てき』
「・・・・・・うん」
『・・・ん?・・・うん、すぐ切るから待ってて、・・・んっ、ふ・・・』
・・・いや、想像できるけど。
『・・・じゃあ、またな』
「・・・うん、・・・あ、大悟」
『んっ・・・んぅうっ、ん・・・ちょっと待って、まだっ、・・・うん、ごめん・・・』
・・・畜生。
「・・・ありがと」
『・・・遅いわ』
ぶちっと切られる。きっと今頃二人はぐんずほぐれつ、仲良くやってるやろう。・・・ええなぁ。
俺もHしたい。明日するやろうけど、したいなぁ。・・・でも、安心した。そうやな、気にする事
ないよな。ほんまにありがとう、大悟。たまにはええ事言うな、お前。たまには余計か?
「・・・・・・」
あー、明日が楽しみや。何処行こうかな・・・
「・・・・・・あ」
・・・俺、アホや。また性懲りも無く、新しい悩みを思いついてしまった。何処へ行ったらいい
のか。・・・答えはきっと分かってるけど、それが本当にいい答えなのか、分からない。石田、お
前の所為やで。俺がこんなに悩むの。そんな笑わんといてよ、拗ねて逃げるよ?嘘やけど。
END