君と要る時間
・・・時々、いやしょっちゅう思う。・・・俺とノブは、おかしいんか?
「・・・大悟?・・・どうしたん?」
baseよしもとに近い居酒屋。中ジョッキに半分くらい残ったビールと、食べかけの、焼き鳥。
「・・・わし等って、変なんかなぁ?」
「・・・ん?」
つくねを半分に割って、口に入れる。
「・・・この前なぁ、雑誌見てて」
「・・・うん」
ノブが、ビールを一口呑んだ。
「・・・若手のプロフィールと、インタビュー載ってて。見てたんやけどね」
「・・・うん」
こういう時、しっかり俺の話を聞いている、ノブの横顔が好きだ。・・・理由は特にないけど。
何か、くいっと顔を自分の方に向けさせて、キスをしたくなる。できないけど、ここでは。
「・・・皆、プライベートで一緒にいる時間はゼロ、・・・言ってるんよ」
寄りかかってみる。・・・酔っ払ってるっていう状態は便利だ。寄りかかっても、酔っ払ってい
るからだという理由が通じるから。ぴたっとくっつくと、ノブの体温を近くに感じる。この
状態が、大好きだ。手を繋ぐより腕を組むより、寄りかかったりセックスをする方が好き。
「・・・わし等、結構おるやん。インタビューでも、結構おるって言うとるし。・・・変やろか?」
・・・やらしいかもしれんけど、しゃあないやん。確実にそっちの方が、ええに決まっとるし。
「・・・んー・・・」
西田さんや哲夫さん、井上とかに言うより、俺が納得するような答えをくれそうやから、ノ
ブ。そう思えなくても、ノブに言わんと、嫌や。ノブが忙しそうにしてても、無理やり聞かせ
る。聞いてくれへんと、答えくれへんとあかんもん。拒否されたら、舌噛んで死んでやる。
「・・・ゼロって言うのは、嘘やろ」
・・・赤い顔。・・・キスしたい。
「・・・できとる奴もおるし。・・・変に長いと、疑われるって思ってるんやない?」
・・・四時間とか言うよりも、ゼロの方が安心?
「・・・よう分からん」
・・・ゼロの方が、怪しくないか?
「・・・俺も分からん」
・・・頭を机に倒す。ノブが笑って、俺の頬を撫でた。
「・・・あ。・・・あかんあかん、バレるわ」
棒読みの台詞。
「ほんまやー」
・・・また棒読み。二人で笑う。・・・ノブがそっと、キスをした。
「・・・ええの?」
「・・・個室やもん」
・・・・・・また笑う。・・・ノブが、親指の腹で俺の唇を撫でる。
「・・・もっかいしたいなー」
・・・右から左へ、左から右へ。親指が、俺の口の中に入ってくる。舌で嘗め回す。
「・・・やらしい?」
「・・・・・・うん」
ここまでリラックスできるのは、多分ノブの前だけ。
「・・・ここが、ほんまに誰もこーへん個室やったら?」
「・・・Hしてるなぁ・・・」
・・・可愛い。ほんまに可愛い。ノブも、俺の前だけでリラックスしてくれてたらええのに。
「・・・ずっと、こーしてたいなぁ」
現実は、そうもいかないけど。
「・・・ずっとは無理やなぁ。・・・仕事もあるし」
前、ノブがまだ哲夫さんと一緒に暮らしとった時。一人でいると、ずっとイライラしていた。
ノブが哲夫さんの前で、俺には絶対見せない顔をしているんだと思うと、腹立たしくて。
「・・・タバコ、吸ってええ?」
「・・・うん」
ノブが、俺の顔から指を離した。顔を上げて、タバコを口に咥える。ノブが、火を点ける。
「・・・好きや」
最近、恥ずかしいと考えずにこう言えるようになった。
「・・・俺も好きや」
・・・笑顔。たまらなく好きだと思う。
「・・・ノブ」
「ん?」
・・・お互いの事を好きだと言い合うことが、こんなに楽しいとは。
「・・・ずっと、一緒におろな」
「・・・おん」
ずっと一緒に居て、ずっとキスして、ずっと好きだと言っていたい。
「んっ・・・」
目が合う。また、キスをする。
「・・・ノブ―・・・」
抱きつく。しっかりと抱きしめられ、頭を撫でられる。それが意外と気持ちよく、思わず、顔
がにやける。ノブもそれを見て、嬉しそうに微笑んでくる。・・・ああ、帰りたくないなぁ。
END