君への距離
キスできる距離に居るのに、キスできない。好きなのに、好きだと言えない。手を繋げる距離
に居るのに、手を繋げない。・・・原因は、自分の中にある。そんな単純な事、分かってる。
「・・・・・・ん・・・」
ベッドの上。転がってる衣服とコンドーム、白い灰皿。・・・パソコンを弄ってる、西澤の背中。
「・・・起きた?」
テーブルの上に並べられた、簡単な朝飯。
「・・・うん」
Hはする。あまりキスはしないけど。
「・・・今日・・・舞台、夕方からやんな?」
朝八時半。
「うん。・・・西澤?どーしたん?」
「コーヒー、飲もうと思って。お前もいる?」
「・・・うん。お願いします」
大悟、川島、井上、・・・多分西田さんも。皆そやけど、なかなか上手にやってると思う、西田さ
んを除いて。まぁあの人は、何だかんだでやってるけど。俺は・・・上手く行かん。悔しいけど。
「ミルクいる?」
「うん」
近いはずなのに、どうして踏み出せないのか。歯痒い、近くて遠い距離。それは多分、友人と
して、仕事のパートナーとして付き合ってきて、もうお互いに全て理解してしまうから。
「・・・美味しいなぁ」
「そう?」
・・・もっと一線を越えた関係が長い時にこんな状態なら、ええんやろう。でも、世の中はそう
上手くは言ってくれない。思い通りに行かない事の方が多い、なんてよく言ったもんだ。プ
ラマイゼロ?・・・なったらええんやけどね。やったら、これから先はプラスばっかやろうし。
「・・・メール来てた?」
パソコンの。
「ん・・・いや、何も来てへんかった」
「・・・そっか」
これですよ?カップルの会話が。ありえんでしょ?普通、小学生の軽いカップルでも、こう
は行かへん。仲が悪い訳やない。むしろ、仲が良すぎて困る。・・・もっと素直に、会話したい。
「・・・西澤ぁ」
顔・・・なら、川島や大悟の方がマシかもしれん。けど、めっちゃブサイクって訳でもないと思
う。・・・好きやねんけどなぁ。Hしたし、キスしたし、買いもん行くし、・・・何が足らんのやろ?
不安なんかなぁ、一体どれだけ一緒に居られるんか、西澤がどれだけ俺の事を好きでいてく
れるのか。・・・不安なんかもなぁ。ずっと一緒におったから、余計にそう思ってまうんかも。
「・・・キスしよ」
これぐらい、は甘えられる。
「んっ・・・」
相性はいい。これはラッキーだったと自分でも思う。
「・・・津田、何か可愛い」
・・・お?
「・・・ありがと」
抱きしめられてます。・・・上手くいってる?・・・嬉しい、めっちゃ嬉しい。幸せー。
「・・・あ」
西澤が、ぽっとそう言った。
「・・・うん?」
「俺な、なんか、ずーっと寂しいなぁ、思ってたんよ」
「うん」
「・・・・・・ずっと、こうして津田の事、抱きしめたかったんやなぁって」
・・・西澤・・・。
「・・・落ち着くもん、めっちゃ。なーんか、乾いてた肌が潤ってくみたいな・・・
「ダ●のCM文句やん」
笑う。西澤も笑う。
「・・・セックスやない、キスやなかったんや。・・・こうしてハグすれば、よかったんや」
何か・・・西澤、可愛い。
「・・・俺もな」
抱きつく。しっかりくっつく。
「・・・こうして、抱きしめて欲しかってん」
素直になる。きっとこれは偶然の一致で、まだ西澤と俺は、他の奴等に比べたら素直にはな
れない。けど、少しずつでいい。考えてみれば、他の奴等と俺等の仲は、格が違う訳だ。そら大
悟とノブ、井上と石田も仲ええけど、甘い甘い、同じにされたら困る。それを生かせばいい。
「あ――――・・・仕事行きたくないかもしれん」
・・・また、そういう可愛い事、言うんやもん。
「・・・・・・行かなあかんよぉ」
司会をする事も、結構多い。
「・・・じゃあ、・・・また今晩、Hさせてくれる?」
・・・・・・今日、・・・仕事が仕事にならんかも。
「・・・もちろん」
今日一緒なのは、千鳥、麒麟、ブロンクス・・・・・・ずっとにやけてたら、ごめん。やけど許して
な、お前等が楽屋でいちゃいちゃしてる時、俺は目ぇ瞑ってるやろ?大目に見てや、な?
END