君の隣から愛を込めて
舞台前。・・・皆、それぞれのネタの打ち合わせをしてる。俺は一人。・・・何もする事がない。
「・・・・・・」
麒麟、笑い飯、ダイアン、千鳥、NON STYLE・・・。まぁよくも、集められたもんだ。ある
なしクイズなんてもんがあったけど、この五組は『ある』やなぁ。ストリーク。・・・『ある』。
南海キャンディーズ。・・・多分『なし』。とろサーモン。・・・これも多分『なし』。・・・きっと、
一般的には『なし』のが普通で、『ある』のは異常なんやろう。俺は、そうは思わないけど。
「川島?何してるん?」
「・・・・・・あるなしクイズ」
「は?」
「・・・いや、何でもない」
俺も前までは『なし』だった。言いはしないものの、『ある』だった。認めたくなかった。自
分が『ある』の方にいる事。やけど、相手から告られて、自分が『ある』の方にいる事を認め
た。楽になった。先輩にも『ある』はゴロゴロおる。皆結構同じやねんなぁ。そう思った。
「・・・舞台終わったら、呑みに行かへん?」
田村が、横に座った。
「・・・・・・うん、ええよ」
この前、井上にちょっと言うてみたら、かなり驚かれた。・・・ちょっとショックやった。俺も
同じやのに。ちょっと拗ねた。田村はすぐ気付いて、宥めてくれたけど。・・・何か嫌やった。
「・・・二人だけやねんけど・・・・・・ええかな?」
・・・お。進展ですか?
「・・・・・・うん」
進展するのは、嫌とちゃうんよ。むしろ、早よ前に行きたいくらい。
「・・・そうか。・・・・・・はぁー」
「・・・田村?」
「ん・・・いや、たいした事ないねんけど、・・・何か、緊張すんなぁって」
「・・・・・・舞台が?」
「ちゃうよ。・・・お前を、こーいう風に誘うんが」
・・・ああ、よかった。いやもちろん、結構舞台に立ってんのに緊張するって言うんもどやねん
って言うのもあるけど、大きくはちゃう。俺、軽く思われんのは嫌やったから。やからよかっ
た。男同士で?なんて思う奴がおるかもしれんけど、いやいや、あんま馬鹿にせんといて?
男同士やって、結構同じよ。尻軽なんて思われたら、どんな仲でも、やってけんもんよ。
「・・・田村ぁ」
甘えたいし、甘えられたい。ワガママを言いたいし、言ってもらいたい。必要としてるし、必
要とされたい。キスをしたいし、キスをされたい。セックスしたいし、したいと思われたい。
「・・・お前ん家、泊まってっていい?」
・・・好きだし、好きだと言われたい、思われたい。
「・・・んー・・・」
女の子はええよな、『私酔っちゃった・・・』なんて言い訳すればええもんなぁ。
「・・・ええよ」
俺は、ちょっとまだ変なプライドが残ってて、上手く甘えられない。大悟や井上なんか、上手
やなぁと思う。嫌な時は嫌やって言うし、いい時はいいって言う。簡単な事やねんけど、相手
が相手だと、状況が状況だと、難しくなる。俺も早よ、あんな風に素直に、甘えてみたい。
「・・・・・・はぁ」
「ん?」
「俺も、緊張する。・・・こーいう事、言うん」
二人して笑う。
『ノブー、買ってきたよー』
『おー、ありがとーvv』
・・・・・・ええなぁ。
「・・・・・・ええなぁ」
「・・・・・・うん」
自然に、あんな風になれるやろう。そうは思っていても、やっぱり不安になる。
「・・・川島」
「・・・ん?」
「・・・焦らんと、行こうな?」
・・・・・・田村。
「・・・焦って進んでも、おもしろないやん?」
・・・まったく。たまにこういう事を言うんやから、・・・ほんまに。
「・・・・・・・・・うん」
・・・普段はアホのくせに。
「・・・・・・なぁ」
・・・やから好きになる。
「・・・もっと、ワガママ、言うてええからな」
・・・・・・ああもう、たまらんわ。
「・・・・・・うん」
・・・好きや、好きや、好きや。
「・・・さ、行こか!」
「・・・・・・うん」
変にかっこつけなくても、いい。自然に、すっとワガママを言ったり、好きだと言えるように
なれたら、それでいい。お互いが、お互いの事をずっと好きだと思って、それを言えれば。
END