恋は盲目
最近よく思う。本当に恋は盲目だと。
「ユウキ」
「うん?」
ライブの後。ルミネの自動販売機の近くでコーヒーを飲んでいると、大上に声をかけられた。
「今日お前ん家・・・行っていい?」
俺の心を乱し続ける張本人。大上は知っているんやろうか、俺が盲目的に好きだという事を。
「・・・やって・・・お前の家族は?」
「今日は打ち上げで帰れんかもって言ってある。・・・な?」
・・・断るわけが無いのに。何て卑怯な。・・・そんな所も好きだと思ってしまうのは、変なんだろう。
スタッフは気付いてないようで、仕事を終えると、それぞれに俺と大上に挨拶をしていく。
「・・・いいよ」
そんなに嬉しそうにしないで。俺を一番に、愛してなんていないくせに。願ってはいけない事を、
願ってしまいそうになる。お前にとって俺は、『二番目』なんやろう?・・・卑怯やそんなん。
大上が、子供ができたと言った時。嗚呼終わりなんだ、と思った。
子供ができれば、子供の世話や何やかんやで、大上の家での仕事は否応なしに増える事になる。
本当は結婚の時に別れるんだと思っていた。でも、大上に『子供ができるまで』と説得され、
俺は傷心ながらもそれを受け入れた。そして子供ができた。しかし大上の口から出たのは、
関係を終えたくないという言葉だった。・・・嫌やとは言った。でも、しゅんと落ち込んだ大上の
顔を見た瞬間、・・・好きだという気持ちが爆発した。セックスをした。・・・止められなかった。
「・・・ユウキ」
大上とキスをする。この唇は、大上の奥さんと子供にも沢山触れているんだろう。
この前、某裁判番組でぞっとする様な事例を見た。訴えたのは女性で、彼女には夫がいた。
彼はとてもいい夫だった。・・・しかし、最近明らかに様子が可笑しい。彼女は夫の会社の後輩に
話を聞いたが、浮気はないと言われた。彼女は夫の携帯のメールをチェックした。そこには、
浮気相手と思われる人物と待ち合わせをしているメールを発見した。それは翌日の事だった。
・・・その待ち合わせの相手は、前に話を聞いた会社の後輩だった。・・・結局その後輩が浮気相手で、
彼女は別れる事を希望したが夫は拒否、法律からしても、同性同士の浮気は罪にはならないとの事。
・・・同じ事なんやな。・・・俺と大上も。
「・・・好きやで」
奥さんには、愛している。俺には好きだ。その区別を、大上は無意識にしているんだろう。
「・・・好きじゃ嫌や」
キスをする。・・・独り占めにしたいのは、お前だけとちゃうんよ?
「・・・愛してるって言って」
大上の口からその言葉が聞ければ、俺はきっと満足する。嘘でもいい、その五文字が聞きたい。
「・・・愛しているよ」
・・・大上は酷くうろたえている。そりゃそうだ、俺は今までそんな事、要求した事なんてなかった。
「・・・変?俺」
今まで隠していた要求を、俺は望んだだけなのに。
「・・・変やないよ、・・・可愛いよ、ユウキ」
大上はそう言って、すっと俺をベットに押し倒した。
「んっ・・・ふ・・・」
するするとシャツを脱がされていく。俺もキスをされながら大上の服を脱がしていく。
真っ白な天井。大上は此処で自分の妻とセックスをし、子供を作ったのか・・・。思わず笑ってしまう。
愛人なんて事は分かってる。俺は大上と、いけない関係を持っている。でもその行為は、・・・たまら
なく甘美だ。大上に抱かれる事。それは俺の生活の一部であり、無二の快感を伴う行為だ。
「あっ、ぁ・・・大、上ぇぇっ・・・」
大上とのセックスは、いい。上手くはない。けど、相性がいい。
「・・・可愛い、ユウキ・・・」
はぁはぁはぁはぁ、汗をたらし、荒い息を吐きながら、抱き合う。シャワーを浴びていないからだろう、
大上の身体は少し乳臭い。奥さんの匂い、子供の匂い?・・・むかつく。俺の方がずっと長くいるのに。
「・・・あ、あぁっ、逝くっ、逝くぅうっ・・・!」
一回目の射精。まだこれからだ。大上の目は爛々としているし、大上はまだ射精していない。
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