six×コーヒー×black



宇治原と西野の討論が、終わった。宇治原は俺の炒れたコーヒーを、さっきからずっと飲んでる。
 「・・・疲れたー・・・」
西野と梶原は、俺が帰らせた。先輩達の幸せな時間を、あれ以上ぶち壊されたらたまらない。宇治
原は相当疲れたようで、さっきから俺の身体に、自分の身体をくっつけている。・・・宇治原。
 「・・・でも、よかった。仲直りできて」
西野は最初、宇治原に何とか謝って欲しいと頼んだ。謝ってくれれば、許せるからと。宇治原は何
も言わず、謝った。しかし俺は納得が行かなくて、西野に散々文句を言って、宇治原に謝らせた。梶
原はただただ俺達のやりとりを見ていただけだった。普通なら、しょうがないと思うだろう。梶原
は関係なかったんやから、と言うだろう。だが。自分の相方があんな事をして、何も出来ないとい
うのは可笑しくないか?自分の相方じゃないか。「うん」とか「すん」とか、何か一言でも言えや。
 「・・・宇治ちゃーん」
こう言うのは、久しぶり。
 「・・・すーがちゃん」
宇治原が笑う。
 「・・・うーじちゃん」
見詰め合う。・・・したい事は同じ。
 『・・・んーvv』
二人で、チューをする。『キス』じゃなくて、『チュー』って感じの口付け。中学生の、子供みたい
な口付け。新婚さんみたい。・・・宇治原が夫?・・・ええなぁ、俺、『宇治原広文』になりたいなぁ。
 「・・・菅ちゃんと結婚したい」
宇治原のキスは、ブラックコーヒーの、ちょっと苦い味。
 「・・・俺もしたい」
ギュッて抱きしめられる。宇治原の嬉しそうな顔。俺も思わず、笑顔になる。結婚したい。
 「・・・内輪だけがええなぁ。両親とー、西野、梶原、たーちん、高井さん・・・
 「・・・や」
不思議そうな顔をした、宇治原。
 「・・・二人だけ。他はいらんもん」
宇治原が、俺の身体に覆いかぶさる。
 「やっ」
 「・・・そーやんなぁ、二人だけよなぁ。白かピンクの、めっちゃ可愛いドレス、買ったるからなー」
ミニの、フリルがいっぱいの奴な。・・・宇治原が嬉しそうに、笑う。フリルはちょっと恥ずかしいけ
ど、宇治原が喜んでくれるなら、何でも着れる。俺が白かピンクのドレスなら、宇治原は白のタキ
シード。きっと細身の、このスタイルの格好のいい宇治原なら、すらりと着こなしてくれるだろう。
新婚旅行はオーストラリア、マンションも家具も、全部新しく買ってしまおう。・・・本当は結婚な
んてできないけど、こうやって考えるだけで、凄く幸せな気分になれる。さっき、どうして宇治原
が、西野の片思いを暴露する事になったのかという理由を聞いたけど、何か、少し寂しかった。今
の俺にとって、宇治原は最高に優しくて格好のいい『彼氏』で、ずっと離れないと思っているのに、
宇治原があんな事、思っていたなんて・・・でもいい。何か、全部俺の仲から吹っ飛んでしまった。
 「・・・俺、宇治原広文になりたい」
お嫁さんにして。
 「・・・菅ちゃん」
宇治原に抱き寄せられ、またキス。・・・俺も、不安になる。何か、梶原とか高井さんとか、福ちゃんと
かスッチー、俺から見ても可愛いと思える人と宇治原が、楽しそうに話してると、苦しくなる。ほ
んまに宇治原は一緒に居てくれるんかな、って思う。・・・宇治原は、嫌になるくらい優しいから。
 「・・・男の子と女の子を一人ずつ産んで、それぞれに、俺と宇治ちゃんから取った名前、つけて」
広子と、貴規なんてどうだろう?
 「・・・好きだよ」
愛しているなんて、うそ臭い言葉は交わさない。
 「・・・俺も、好き」
宇治原となら、ずっと居られる気がする。俺が女だったらなぁ、と思う。俺が女だったら、宇治原と
逢って、恋人になれたら、すぐ結婚したい。毎日毎日、二人で居られたら、どんなに幸せだろう。






7へ