相手は、堤下。西野は少しつまらなそうな顔をして、ジーンズのチャックを閉める。
「・・・何?」
口ん中、変な味がする。
『んだよ、冷たいなぁ。今コーヒー買おうとしてんだけど、お前もいる?』
西野がまたすっと、近寄ってくる。床に跪く。・・・いいんだけどなぁ、奉仕されなくても。俺、
奉仕しろって言われて奉仕する方が好きだし。マゾって事もあるけど、相手の顔が好き。
「・・・ふっ、ん・・・・・・うん、・・・買って、・・・来て・・・」
西野、上手いなぁ・・・
『・・・板倉?・・・お前・・・何してんだ?』
・・・バレてる、かな・・・。・・・バレても、どうでもいいんだけど・・・。
「・・・変、な事は、・・・してない・・・・・・、安心、して・・・」
ごめんね。ほんとはしてる。
『・・・・・・そうか・・・?・・・まあいいや、後十分くらい、待ってて』
「・・・うん、わかっ、・・・た・・・」
どんどんやらしくなる、西野の舌。・・・はぁ、気持ちいい・・・。電源が切れる。西野の頭を抑え
つける。西野ものってきているのか、更に愛撫を強くする。・・・我慢できない、射精しそう。
「・・・西野っ、もっ、出るっ・・・!」
離そうとするが、西野は更に咥え込んで、俺の精液を飲んだ。
「・・・ご馳走様でした」
・・・口から精液出ても、いい男だよなぁ。本当に、綺麗な顔。
「・・・気持ち悪いでしょ?・・・はい、あげる」
適当にティッシュを何枚か取り、西野に渡す。
「・・・どうも。・・・何か・・・準備いいんですね、ティッシュなんて持ってて」
そう言って、西野は口の周りと、中を念入りに拭く。
「休憩中とかに、言われるから。咥えろ、って」
苦笑する。西野も戸惑いながら、苦笑し返す。・・・ほんとにさぁ、変態だよなぁ。楽屋ですんの
も、つい最近までばんばんして、気にしてなかった。堤下が『欲しい』とか、『咥えろ』とか
言うと、してもいいかなぁ、って思う。堤下は好きだし、俺が大人しく従うと喜んでるし。
「・・・何か、めっちゃ罪悪感に包まれてますわ、今」
罪悪感。最近聞かないな。
「・・・何でぇ?」
・・・真面目だなぁ、西野。真面目か。俺に一番足りないもの。
「・・・だって、板倉さんは大人しくしてくれたけど・・・。やっぱり、
「堤下のものだから?怖いの?」
気にする事、ないのに。ていうか、俺が自ら咥えたんだよ?あのままじゃ、多分股も開いてた。
欲しかったから。誰でもいいから。ぺニスがついてるなら、女でもよかったかもしんないし。
「・・・正直、そうです」
可愛いなぁ。
「いいよ、ほんとに気にしないで。俺、嫌じゃなかったから」
ジーンズを履く。シャツを着る。・・・身体中についた、キスマーク。俺の身体を、拘束する。
「・・・嫌だったら、とっくに逃げてるから」
やらしい頭だと、堤下に言われる。欲しくなれば、誰にでも股を開くんだろうと。失礼な。確
かに欲しくなれば、誰にでも抱いて欲しい、とは思う。でも俺だって、自分に好意を持ってい
ない奴とやりたくなんかない。顔も選ぶ。・・・間違っても嫌いなタイプとは、やりたくない。
「梶原に後ろめたい?」
堤下は、怒るけど、一応怒ってるって感じ。元々お互いは寂しい時の保険みたいなもんだか
ら、別に構わないんだと思う。俺はそう。きっと最初は寂しいだろうけど、すぐに消える。
「・・・それもあります」
梶原は、どうなるんだろう。
『板倉さんなんか嫌いや、顔も見たくない。西野も嫌い。もう、こんな関係、止めたい』
・・・だろうか。だろうな。きーきー猿みたいに、わめくんだろうな。
「・・・すぐに、忘れよ。忘れた方が、すっとするよ」
そう。嫌なものなんて、全て忘れてしまえばいい。忘却は、最高の手段だ。
「・・・・・・はい」
最低だろうか。どうしようもないだろう、酷く飢えてしまうんだから。飢えて、欲しくなって、
誘ってみると、相手は簡単にのってくれるんだから。欲しくなる。・・・何時もと違う、身体が。
END