さっきから似たような数字しか表さない、機械。
「・・・・・・駄目です。どうしても、脈が戻りません」
・・・絶望的な言葉。敦と、別れてから。トイレから戻ると、白目を向いて泡を吹いて倒れてい
る、敦を見つけた。かけよると、更に俺はショックを受けた。・・・敦は、息をしていなかった。
「そんな・・・」
「・・・敦さぁん・・・」
泣き出すスタッフ。さっきから、マネージャーが事務所や家族に必死に電話をかけている。
俺はただ何もできずに、敦の側でじっと立っている。・・・医者も言っているんだが、俺にはど
うも理解できない。確かに突然死という事は、現実として珍しくはあるが、無い事はない。そ
の相手が高齢や、幼児なら理解できる。・・・が、つい十分前までずっと一緒に話していた敦が、
急に死ぬなんて事、・・・ありえない。それに、医者が言うには、息をしていない割には妙に身
体が温かく、身体の臓器にも全くといって問題もなく異変があった痕跡もない。敦は生きて
いる。脈だけを、蛍光灯をスイッチだけ消すみたいに、消しただけで、・・・確実に生きている。
「・・・亮さん。貴方がどう考えているか分かりませんが、敦さんは死んでません」
・・・医者が言う。
「・・・僕も、そう思ってますよ」
・・・死んでへんよな、敦?・・・生きてるよな?
「・・・そうですか」
敦、そんなぐっすり寝てんと、早よ起きてぇや。・・・皆泣かすんが、そんなに面白いか?・・・な
ぁ、早よ起きてよ。皆待ってんのよ、お前が起きてくんの。・・・俺?・・・俺やって、待ってるよ。
「・・・嫌っ、嫌ぁぁっ、駄目っ、・・・もう、止めてぇぇっ・・・!」
・・・もう、何時間ぐらい経ったか分からない。何回もペニスを挿入され、何回も射精され。手
は動かず、股もM字型に開かれたまま動く事を許されず。・・・さっき抵抗しようとした為、
『おしおき』と、身体中の神経を抜くみたいに、身体を動かす事ができなくなった。下半身を
持ち上げられ、一つになる事を強制されている。・・・今頃、亮達はどうしているだろう。
「あうぅぅっ、逝くっ、逝くっっ、あっ、ああぁっ・・・!!」
また、射精してしまう。
『・・・可愛い声だ。・・・あの男にも、そんな声を聞かせているのか?』
「・・・・・・」
・・・むかつく。
『・・・このまま、殺してしまいたいよ』
「・・・・・・!!」
『そう構えるな、冗談だよ、敦。・・・しかし、よく覚えている事だ。俺は何時でも、
・・・嫌な目だ。
・・・お前を殺せる。今のお前は魂だけだから、痛みも何もないだろう』
そう。俺は、何時でも簡単に殺される状態に居る。
『・・・俺には全く関係がないが、・・・お前の相方は、哀しむだろうな』
・・・笑顔で言うから、・・・思わず殴りかかろうとするが、身体が動かない。
『悔しいか?敦。・・・そう泣くな、虚しくなるだけだ。その方が面白いから、構わないがな』
・・・今すぐ、舌噛んで死にたい。
『・・・さ、つまらない話は止めよう。・・・大分乱れてきたが、・・・まだ面白くないな』
・・・亮君・・・
「んぐっ・・・」
顔を持たれ、キスされる。四つん這いにされる。
『・・・そこで待っていなさい、敦』
・・・誰でもいいから、ここから助け出して。
「・・・・・・!」
『・・・綺麗な刀だろう?私の愛刀、濡桜だよ』
よく切れそうな、日本刀。・・・嫌な予感がする。
『・・・敦、・・・咥えなさい』
大きなペニス。口をつぐむ。
『・・・そんなに殺されたいのか、敦?』
「んんっ・・・!!」
『・・・いい子だ』
たまらない羞恥心に、思わず泣き出してしまう。足を開かれ、すっと淫口に手を伸ばされる。
「んぅうっ・・・!・・・んっ、んぐぅっ、ん、・・・んっっ・・・!」
『大人しくしていなさい、敦』
奥へと入ってくる、指の感触。
『そうそう、・・・何も怖がらなくていいよ、変なことはしないから』
指の感触が抜けたと思うと、今まで感じたことのない、異物の感触が走る。
「んぐうぅぅっ・・・・・・!!?・・・んっ、んぅうっ、ううっ・・・」
『歯を立てるんじゃないよ、敦。・・・痛いか?』
頷く。アナルがはちきれそう。血が、腸の方から出て行くのが分かる。死ぬ、死ぬっ・・・!
『厭らしい。そんなに泣きながら、・・・淫唇がまた、濡れてきている』
異物が抜き差しされ、嫌になるほど素直なアナルは、また喜んで異物を飲み込んでいってし
まう。量はわずかだが、出血は止まらない。『死にたい』。確実に大きくなっていく感情。でも、
そう思う度に、亮君の顔が浮かぶ。・・・まだ死にたくない。これが終わったら、元に戻るんだ。
『何を入れられているのか、分かるか?』
・・・・・・
『・・・分からないだろうな。・・・今、お前の身体には、私の愛刀が入れられているんだよ』
・・・・・・!!
「んううぅぅっっ、んううっ、んんっ、んっ、うっ、んっっ・・・!!」
『そう暴れるな、・・・今すぐ刀を抜いて、お前をここで殺してもいいんだよ?』
くそっ・・・。
「んっ、んんっ・・・」
『・・・そう、大人しくしていれば、無事に帰してやるから・・・』
・・・無事に、帰る。きっと亮君は何も知らない、・・・いや、絶対に知らないでいて。
「んぐぅうっ、んんっっ、んーっ、んんーっ・・・!!!」
抜き差しされていく。血がドクドク流れ出して、鋭かった痛みが、鈍く熱くなっていく。涙が
次々に出て行く。素直に喜んでしまう下半身。咥えているペニスから、精液が漏れていく。
『・・・厭らしいな、全く。・・・俺は何時もじっと見ていたよ、お前があの男に犯されるのを』
・・・・・・亮君・・・
『・・・腹立たしかった。悔しかった』
・・・朦朧としている、頭。思い出すのは亮君の事ばっかり。
『・・・お前は俺が愛していた敦じゃない。そう言い聞かせても、無理だった』
・・・ずっと刀が抜かれ、深く差し込まれる。また激しくなっていく刀の動き。血の勢いが、更
に強くなる。・・・目の前の亮君そっくりの男が、だらだら涙を流している。・・・どうして・・・?
「んっ、んぅううっ、んんっ、んんっっっ・・・!!」
・・・ついに射精してしまう。と、刀が抜かれ、口からペニスが抜かれる。
『・・・・・・』
血走った目。・・・まさか・・・!!
「何・・・する気だっ・・・」
『・・・気が変わった。今すぐ、お前をこの手で、・・・・・・殺す』
・・・身体が動かない。・・・刀に巻かれていた赤い紐が解かれ、ついさっき見せられた刀の刃が、
あらわになる。・・・殺される。このまま逃げなかったら、絶対殺される・・・死ぬ・・・亮君っ・・・
『・・・これで終わりだ、・・・敦』
・・・助けて・・・!!!
「・・・・・・・・・」
『・・・目を開けていいよ、敦』
・・・え?
『・・・お前を殺せる訳がない。・・・一番分かっていたつもりだった、・・・そう泣くな、敦』
・・・俺、死んでない。まだ、生きてる。・・・亮君の所に、帰れる。
『・・・あの男の所へ帰してやるから、泣かないでくれ』
・・・やっている時と全然違う、優しい顔。これが、本当の顔。・・・皮肉だ、亮君にそっくり。
『・・・何とか向こうに行けそうだ』
「・・・そりゃよかった」
俺が目を瞑って、その間に向こうに帰してやる。・・・そう言われた。
『・・・あの男がお前を泣かせたりしたら、すぐ言えよ。・・・仕返ししてやるから』
「・・・うん」
『ああ、本当に。・・・あの男が羨ましいよ。・・・さようなら、敦』
「・・・バイバイ」
大好きな人に、そっくりだった人。
目を開けると、俺はベットの上にいた。病院だった。・・・隣に、亮君が寝ている。くまができて
る。きっと心配して、寝ないで俺が戻ってくるのを待っててくれたんだろう。・・・亮君・・・。
「・・・ただいま、亮君」
・・・ここがきっと、俺の居場所。
「敦・・・さん・・・!?・・・だだだっ、大丈夫ですか!?その、変な所はっ・・・」
スタスタ歩いていた看護婦さんが起き上がった俺に気付いたのか、慌てて駆け寄ってきた。
亮君が、その騒がしさに目が覚めたのか、ぱちぱち目を開け閉めして、・・・ふと俺を見た。
「敦っ・・・敦やんな!?」
「・・・うん」
「やったー!起きたー・・・敦ぃぃっvv・・・心配してんぞ、俺っ!!」
・・・分かるよ、それくらい。くまできてるし、・・・大事な俺の相方よ?・・・分かんない訳ないじゃ
ん、もう・・・。でも、ちっとも嫌じゃない。すっごく嬉しい。亮君、・・・俺の大事な亮君。
「ああ看護婦さん、身体は異常ないですよ、多分。・・・ほら、何ともないでしょ?」
亮君に抱きつかれながら、慌ててパニくってる看護婦さんを宥める。
「そうですね。一応血液検査とかはやりますんで、しばらく、安静にして待ってて下さい」
「・・・はーい」
看護婦さんが出て行く。個室だったみたいで、俺一人用のベットしかない。
「大げさだね、・・・俺、何ともないのに」
「何ともなくない!!」
・・・亮君。
「・・・お前が息せんくて、スタッフもマネージャーもお前の親やって、皆泣いて・・・」
・・・そんなにボロボロ、泣かないでよ、もう・・・。俺、亮君の涙に、人一番弱いのに・・・
「・・・亮君・・・」
「もう」
・・・だから、そんな真剣な目で、見ないでよ・・・
「・・・もう、一人ぼっちにはせんから、やから・・・」
・・・可愛いんだから。
「・・・うん、うん・・・分かってるよ・・・」
本当に、時々すっと格好いい所を見せたと思ったら、急に可愛くなるんだから。本当に、可愛
い。大型犬みたい。・・・ずっと、側に居てね。俺も側に居るから。離れたりなんか、しないから。
END