男友達
何時からだろう。西野を恋愛感情なんていうフィルターをかけて見始めたのは。
「・・・菅ちゃん?」
今。西野とコンビ二に買出し中。・・・梅田花月の楽屋、たーちんの提案で、ケンカに負けた奴が
パシリとなり、皆の飲み物を買ってくることになり。見事に一発負けしたのが俺と西野。
皆調子に乗って、コンドームやらエロ本やらを買って来いと言い出した。止めたけど。
「・・・・・・西野」
やっぱ・・・格好ええなぁ、こいつ。
「・・・はい?」
この顔を、梶は何時も間近で見ているんだろうか。
「・・・梶には・・・まだ、言うてへんの?」
「・・・・・・・・・はい」
そう。西野は、前から梶が好きなのだ。相方としてもそうなのだが、その感情が恋愛感情に変わって
しまったのだ。・・・西野はそれがなかなか言い出せず、俺にうだうだ相談してくる。・・・毎回思うんだが、
俺にどうして欲しいんやろ?・・・自分の代わりに、梶に言うて欲しい?・・・・・・これは案外
いい線をいっているだろうが、そんなのって無い。俺だって、西野が好きなのに。西野は、梶の事を話す時、
めちゃくちゃ嬉しそうな顔をする。顔をくしゃくしゃにして、頻繁に『可愛い』『可愛い』と言う。
・・・・・・梶の阿呆。こんだけ西野に愛されているのに、何で気付かへんねん。
俺がお前の立場やったら、絶対お前みたいな事せえへんのに。
「・・・何か・・・・・・怖いんです。梶に、断られんの」
畜生。『梶』を、『菅』に変えてやろうか。
「・・・そっか」
・・・俺だって、何度か西野に告ろうと思った。・・・でも、無理だった。尽く無理だった。好きだからだろう、
西野は梶の側をなかなか離れようとしないのだ。梶も、鈍感ながら西野に嬉しそうに寄り添う。
・・・引き裂いてやりたい。・・・何で西野、梶なんかが好きなんよ〜・・・!!
「・・・・・・なぁ、西野」
梶は、・・・確かに可愛いよ。男前度は俺より下やけど、可愛さやと梶に負けるって思うもん。
半端じゃない程バカやけど、男はそういう奴に弱いし。目はくりくりやし、背ぇ低いし、確かに
たまらないかもしれないけど!!・・・けど、俺も好きなんやもん、・・・今更、諦めたくない。
「・・・梶と・・・Hしたい?」
西野は、軽くずっこけた。
「・・・す、菅さん!?」
「・・・・・・・・・真面目に答えて。・・・なぁ、どうなん?・・・H、したいとか思うん!?」
俺、正直梶よりはH上手いで。西野がしたいって言うならどんな体位になってもええし、フェラも
してって言われたらするで。・・・SMも・・・・・・場合によってはできるし。・・・なぁ西野、
それでも梶の方がええん?・・・それでも、梶とやりたいん?・・・・・・梶しか、あかんの・・・?
「・・・・・・はい」
・・・何で。
「・・・何処がええの?・・・可愛さやったら、他にもいくらでもおるやん!」
例えば、俺とか。
「・・・・・・僕は。梶が可愛いから、梶を好きになったんとちゃいます」
西野の、嫌に真面目な顔が、たまらなく苛ついた。
「・・・ほんなら何でよ!」
「・・・・・・理由なんか、無いです。理由を幾らつけても、この気持ちは説明できません」
西野の顔を、睨みつけた。・・・これが、吉本いい男ランキング二位の顔だろうか。何がいい男だ。
相方の梶に夢中になっているくせに、ぐじぐじして告られへんくせに。だらしない顔。相方が
好きで好きでたまらないです、とでも書いてある様。・・・俺の気持ちも、知らないで。
「・・・・・・そんなん・・・反則や・・・!!」
こんなに、好きなのに。
「・・・・・・菅さん、すいません。・・・菅さんの気持ち、めっちゃ嬉しいです」
どうして、好きになんかなったんだろう。
「・・・でも。僕、梶以外に考えられないんです、こういう対象。めっちゃ好きなんです」
浮気相手でもいい。愛して欲しい。
「・・・僕、前、梶で抜きました。めっちゃ気持ちよかったです。・・・・・・もう、梶以外好きになれない」
馬鹿野郎。男なら、嘘でも「じゃあ、浮気相手で」とか言えよ。ビビリ。意気地なし。単細胞。
「・・・・・・・・・すいません、・・・ほんまにすいません」
頭なんか下げやがって。こっちの気持ちも考えろ。
「・・・阿呆か!!・・・俺が、お前なんか好きな訳ないやろ!」
「あの・・・菅・・・さん・・・?」
「大体なぁ、うじうじうじうじ気持ち悪いんじゃ!!・・・もう知らん!・・・帰る!!」
・・・ああ、俺ださすぎ。何が『もう知らん』や、何が『帰る』や。今時ベタな悪者でも吐かへんぞ、
こんな台詞。・・・西野、追ってきてへんやろな。梶・・・ええなぁ・・・俺が、どんなにアピール
しても振り向かなかった相手、西野にずっと想われてるもん。・・・畜生、・・・西野のアホッッ。
END