恋愛話。T


岡村さんを好きになり始めたのは、一体何時からなのか。
今、ベットの上に、素っ裸の岡村さんが居ても、その疑問は俺の中から消える事が無い。
本当に何時から、この人を好きになり始めたのか?
最初は、そう、最初は、「可愛い」と思い始めていただけ。
それが、だんだん大きくなっていき・・・・・けど、そんな「可愛い」なんていう安直な感情が、
・・・恋愛へ変わるのか?
 「ん・・・矢部・・・」
岡村さんは、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ふと起き上がった。その瞼は重い。
 「トイレ・・・何処・・・やっけ・・・?」
岡村さんの言葉で、緊迫感は、跡形もなく消えてしまった。
何とか説明しようとするが、岡村さんはまだ寝ぼけていて、反応が薄い。
俺はしょうがなく、岡村さんに俺のシャツを着させ、ベットの横に放り出された
岡村さんのか俺のかも分からないパンツを着させ、体を持ち上げ、歩き始めた。
岡村さんの腕が、俺の首に絡みつく。
改めて、岡村さんの軽さと細さを感じる。
その可愛い身体は、とろーんとした眼で俺を見つめる。嗚呼、畜生、可愛い・・・畜生・・・
 「んっ、んんっ、矢・・・部ぇぇ・・・」
思わず、キスしてしまう。その口から出る言葉は、まだ夢の中に居る様だ。
理性が、正常に起動してくれたらしい。
俺はそのキスをしてからは何もせず、ただ岡村さんを持ち上げては移動する事しかできなかった。
もし俺に理性が少なかったら、あのまま、岡村さんを抱いてしまっていただろう。
・・・岡村さん、すいません。俺、嫌な奴です。こんなに貴方を、好きなのに。
 「・・・矢部、好きや・・・」
たまらなくこの人を好きなんだと、俺は改めて実感した。

俺が起きると、もう、太陽は完璧に俺の部屋を照らしていた。暖かい。
岡村さんが、ジーンズとエプロンを着て、ベットに寝ている俺を覗き込む。
昨日、二時くらいに起きた事を、岡村さんは覚えていなかったらしい。
「何で寝不足なん?」
・・・あんたの所為やっちゅーねん。
俺はそう文句を言おうとしたが、止めた。
岡村さんは、ただ何もせずぼーっとしている俺をつまらなく思ったのか、そのままの格好で、
俺の腹の上にまたがった。岡村さんの唇が、触れた。
 「あ〜、エロい眼で見とる〜っっ」
そう、その格好は、いわゆる「騎乗位」というやつだった。
しかも、岡村さんは上に何も着ておらず、ジーンズを脱がせてしまえば、
裸エプロンなんていう淫猥な衣装に変わってしまう。
 「・・・しょうがないでしょう、・・・素っ裸なんですから・・・」
俺は顔を赤く染めて、文句を言う。
 「・・・しゃぶって欲しい?そのでっかい笛」
まるでAV女優の台詞の様だと、身体は反応した。岡村さんは意地悪く笑う。
嗚呼、俺はこの人に見透かされているのだと、思った。
まるで子供のようにあやかされている俺は、惨めだった。
サディストな俺は、けなされた悔しさに、涙が出てしまう。岡村さんは謝りながら、キスをした。
 「・・・ごめんな。矢部、いっつも馬鹿にするやろ?お返しや、これは」
岡村さんは半分謝って、半分嫌みを言った。
岡村さんは俺とセックスをした後、必ず俺の身体を抱き締める。
俺は岡村さんの柔らかな胸に顔を埋めたまま、眠る。
その暖かな体温は、小さい頃に味わったお袋の体温と同じで、めっちゃ安心する。
こんな事言ったら、怒るけどな。
岡村さんが、エプロンを解いて、そっとベットに入り込み、また同じように俺を抱き締めた。
太陽の光と、岡村さんの体温で、俺の身体が温められる。嗚呼、情けないけど、何かいい。
俺は起き上がって、岡村さんを腰に乗せて、キスをした。岡村さんはわざと、俺を押し倒した。
 「・・・ジーンズにかったいもんが触れてるんやけど?矢部」
全く、先刻機能していた理性は、一体何処へ行ってしまったのか?
 「あっ、はぁっ、矢あっ、ああ・・・!」
その喘ぎ声は、多分嫌がって出しているんだろうが、俺には、
俺の身体を欲しがっているとしか聴こえなくて。
相方の身体を持ち上げ、足を持ってやり、そのまま上から挿入していく。
 「矢っ、部ぇっ、あぁっ、もうっ、全部っ、ぁあっ・・・!」
 「ん・・・全部挿れるで、岡村」
 『あっ、嫌ぁっ、矢部ぇぇっ、あああああ――――――――・・・っ!!』
いつもとは違うセックスに、岡村さんはいつもより早く逝ってしまった。
そう、いつもはエイズが怖いので、コンドームをつけてやっている。
先刻みたいに生でやるのは、初めて岡村さんとやった時以来だった。
岡村さんはベットの隣りの煙草を咥えた後、ふと呟いた。
 「・・・・・あ、味噌汁」






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