恋愛話。U
初めて、あいつとやった夜。あの時は確か、「めちゃイケ」の収録の後・・・
「居酒屋?」
楽屋。「ナインティナイン様」と書かれた楽屋には、矢部と俺の二人しかおらず。
衣装を着替えようと脱いだ時、矢部に「居酒屋に行かないか」と聞かれて。何か其の日は、様子が変で。
俺が他のメンバーを誘おうとすると、他のメンバーは来て欲しくないとの事。
それに、矢部は酒が苦手で、矢部から呑みに行こうと聞いた事は、滅多に無かったから。
・・・何かあるん?
「なぁ・・・矢部」
居酒屋。此処は個室個室に別れており、テーブルの上の電話で店員を呼ばない限りは、
この部屋には、俺と矢部の二人っきり。矢部は赤い顔をしながら、白いとっくりで日本酒を注ぐ。
「・・・・・何?」
酒を呑んだら酷くなる、矢部のサディスティックな視線。マゾの俺は、思わずたじろいでしまう。
矢部は俺が何も言えないと分かると、また、日本酒を呑んだ。
矢部は回らない舌を器用に動かそうとしながら、俺に日本酒を呑まないかと誘う。
俺は「ああ」なんて言って、呑んだ。
「んっ、はっ、矢っ、部ぇぇ・・・?」
陶器の器が、畳張りの床に転がっていく。俺はいきなり倒れてきた矢部に抱きかかえられ、
二人とも酒が入ってるまま、キスを重ねられる。それは全て、矢部からの求めのキスだった。
俺はただ、何とか矢部を止めようとするが、・・・あまりにも気持ちよすぎる。
白い日本酒が、矢部の口内から、俺の頬へと流れていく。
俺は薄い横目で眺めながら、精液みたいと思った。
「はっ、はっ、・・・矢部・・・」
矢部は、糸を引くくらい激しいキスを止め、ぱっと口を離した。俺を愛でるような、眼。
・・・あの時は、可笑しかったんだ。だってそうやろ?
俺と矢部はもうすでにできあがって、嗚呼、そんな事を言っても言い訳にしかならんよな。
そう、俺は、気がついた時には、矢部ん家に。
『・・・俺の馬鹿』
俺は、そんな言葉を呟きながら、髪を下から上へ持ち上げる。
矢部は、・・・酔っ払っているから記憶は定かでは無いが、こう、言っていた様な気がする。
―――・・・『俺、ずっと岡村さんが好きでした。これ、きっと、間違ってます。でも、好きです。
今夜、岡村さんが良ければ、・・・しましょう』と。
俺は、確か・・・―――・・・『一晩だけなら、ええで』と答えた様な気がする。畜生。
「・・・岡村さんっ」
矢部に、いきなり抱きつかれ、矢部の方へ身体を向けられると同時に、押し倒された。
矢部は上にも下にも何も着ず、ただ白いバスローブを羽織っているだけだった。・・・厭らしいなぁ。
「矢部、・・・俺も風呂、入りたい」
岡村さんはそう言って、ベットの上から出ようとする。俺はキツク抱き締める。・・・腕を緩める。
俺は荒い息を吐きながら、わざと跡が残るように強く、長く岡村さんの首筋にキスをした。
そして、腕を解いた。岡村さんは少し戸惑いながら、浴室へと、歩いていった。
「・・・まだ、消えへん・・・」
先刻の、矢部のキスでできたキスマーク。別にあいつが嫌いなんじゃなかった、
・・・ただ、何か恥ずかしくって。俺は、石鹸でキスマークを消すのを諦め、頭を洗う事にした。
シャワーの音が、とめどなく身体を打つ。あいつは前から、俺を抱きたいと思っていたんやろか?
「めちゃイケ」の収録も、「ぐるナイ」の収録も、あいつは俺の事を厭らしい眼で見てたんやろか?
ホモ。変態。あいつをけなす言葉は、幾らでもあった。ただ、俺もあいつが好きだから無理。
「岡村さん・・・っっ!」
シャワーが、俺の身体に当たらなくなった。その代わりに、俺の身体は相方に抱きつかれて。
どうして性欲が強くなった男というのは、こんなに野獣みたいなんやろ?矢部の息は荒い。
やっぱり、人間って元々は動物なんやなぁと思う。・・・どうしてこんなに、身体が欲しい?
「んっ、ふぅっ、あっ、あかっ、ん、はぁ・・・・・」
矢部は、キスをしながら腰に乗せる。ああ、気持ちええ。・・・可笑しい。
何で相方とのキスが、こんなにも気持ちええんやろ?きっと俺は、変な奴だ。
矢部がホモなら、俺もホモやろう。
身体が火照って、相方を求めてる。矢部の舌が俺の口内へ入ってくる、・・・・・気持ちええ・・・・・。
「岡村さん、・・・ベット、行きましょうか」
矢部はそう言うと、素っ裸のままの俺を持ち上げ、首に腕を掛けさせ、俺をだっこしたまま、
浴室を後にした。そのすぐ隣りには、黒いシーツのベットがあって。矢部はまだ、息が荒かった。
あんまり相方のそーいう姿は見た事無いから、・・・何か引いてまう。矢部、・・・・・・好きや。
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