恋愛話。Y
『・・・ふ〜・・・』。
ラジオのスタジオ、岡村さんの溜息が、スタジオの床に吸いこまれてく。マネージャーは外に、
俺等の為に珈琲を買いにいっている。今スタジオには、俺と岡村さんのみ。岡村さんは腕を伸ばし、同時に息を
深く吐いていく。・・・おっさんやなぁ。俺が突っ込む。・・・うっさいわ、ぼけぇ。岡村さんが笑う。
嗚呼、愛しい。岡村さんの方へ歩いていき、そっと腰に乗せる。岡村さんは、また子ども扱いされたと思ったんやろう、
拗ねて俺の頬を引っ張る。俺はそんな仕草をも可愛く思ってしまい、そっとテーブルに押し倒す。
・・・畜生、可愛い。岡村さんは、また不服そうな顔で睨んでくる。
「も〜、そんな拗ねんといてや。愛情表現や、愛情ひょ・う・げ・ん・!」
矢部がからかう、ゲラゲラ笑いながら。むかつく、むかついてんのに何か嬉しい。可笑しい。
「・・・たく、もっと上手い愛情表現ぐらいあるやろ?こんなん、悔しすぎや」
「悔しい?」
岡村さんが、顔を縦に振る。デコにキスをする、マネージャーの声が聞こえる。
・・・これが芸能人である故の悲劇なんだろうが、俺はいっつも、マネージャーやスタッフに邪魔される。
俺はきっと、岡村さんを束縛したいと思ってるんやろうな。・・・ただ一人の相方を、独占したい、と。
「・・・どーかした?矢部、何か変やで?」
ずっと、俺だけのものに。
「・・・いや?」
セックス。岡村さんは可愛い声で喘いで、ベットの上で、俺のものになる。可愛い人。
腕で抱き締めれば抱き締めるほど、強く感じる細さ。俺もガリガリやから、人の事言えないんやろなぁ。
「・・・矢部?」
岡村さんに抱きついた。柔らかい身体、岡村さんは戸惑う手で俺を抱き締める。・・・暖かい。
「・・・岡村さん」
「あ〜、またさん付けや。俺嫌やって言うたのに〜」
岡村さんが甘えた声で、怒る。
「すんませんすんません、・・・お願いします。今夜だけは、さん付けさせて下さい」
矢部の顔が妙に真面目だったから、俺はOKを出した。何や、珍しいなぁ。
「何か・・・嫌な事あった?」
「岡村さん、彼女・・・欲しいですよね」
「あ、ああ・・・欲しいけど」
矢部が、溜息をつく。
「・・・岡村さんっ」
どうして、こんなにも岡村さんが愛しいんやろう。ほんの前までは、ただの相方としか
想っていなかったはずなのに。こんな事、笑い飛ばせたはずなのに。どうしてこんなに、痛い?
「・・・矢部?」
嗚呼。
強くなっていく独占欲と、性欲が命令する通りに、俺は岡村さんを抱いた。岡村さんは、最初少し反抗し、
すぐ、俺の言うがままに動いてくれるようになった。そう、まるで俺をあやすみたいに、
岡村さんは俺を受け入れる。そうでもしないと、きっと俺は止まらないやろうから。
「・・・岡村さん・・・」
岡村さんの胸に、顔を埋める。温い体温が、顔には少し冷たくて。指の腹で、そっと岡村さんの乳首を撫でた、
岡村さんが喘ぐ。嗚呼、愛しているんだ。きっと生涯たった一人あろう、この大事なパートナーを。心から、求めている。
岡村さんが、自分より大きい俺を、精一杯腕を伸ばして、抱き締める。温かい。俺は岡村さんに、抱き締められるがまま抱き締められた。
「・・・俺、貴方に想ったらあかん事を想い始めてるんです」
やはり両手では疲れたのだろう、岡村さんが片手で支えるようになる。ベットの上の岡村さんの手。
俺は、その可愛くて、頼りなさ気な岡村さんの指に、自分の指を絡ませた。岡村さんが、それに答える様に絡ませてくる。
年の功という奴だろうか?岡村さんは落ち着いて、
「何それ?」
俺は、岡村さんの暖かい腕の中から抜け出し、岡村さんにキスをした。軽くキスをした後、
デコと鼻をくっつけ、そっと見つめ合う。何だか本物のカップルのようで、笑いがこみ上げる。
「貴方を、独り占めしたいんです」
温い体温が、深く触れる身体を通じて通い合うのが、よく分かった。
「・・・あきませんよね、岡村さん、拗ねちゃいますよね。彼女も見つけたいのに、俺なんか」
「ああ、拗ねるな〜」
わざとだろう、岡村さんが意地悪そうに笑う。ああ、こんな所でさえ、愛しい。
「別に、ええよ」
岡村さんの言葉は、あまりにも意外で。
「ええって・・・!!」
「俺、矢部が好き。きっとな、これ、俺に彼女ができても、変わらへんねん。今お前、彼女おるやろ?
だったらおあいこやん、・・・何か嬉しいな、・・・そこまで好きなんやね、俺の事・・・」
俺は恥ずかしくて、抱きつこうとする岡村さんの手を振り払い、煙草に火を点けた。上目使いで俺を見る、
岡村さん。・・・嗚呼、もう・・・駄目ですよ、俺が好きやって、分かってるんでしょ?
だからそんな、可愛い仕草で、俺の心をぐちゃぐちゃにかき乱したいと思うんでしょ?
「・・・んっ・・・」
岡村さん、貴方の事、まじで好きです。
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