恋愛話。V
矢部と、キスをする。
それはいわゆるディープキスってやつで、舌を離すたび、二つの舌の間に唾液が引く。
キスをしていく中で、俺は矢部の腰に足を絡ませ、矢部は返すように抱いて。
「抱いて・・・いいんですよね?」
もう一度はっきりと確かめるように、矢部はそう言った。俺は縦に首を振る。
矢部はもう一度離した唇を強く俺の口に押し付け、・・・俺をベットに押し倒した。
矢部が、また荒い息を吐きながら俺のバスローブを弄る。
両方の袖が、だらんと垂れ下がるようになってしまう。
「んっ、ぁっ、はぁっ・・・!」
矢部は首筋からゆっくりと唇を移動させ、乳首を中心に舐めてきた。まるで首輪をつけるみたいに、
肌を歯の先で噛む。赤い点が、何個も何個も、上半身についていく。・・・厭らしい。
「変態・・・・・んっ・・・」
「僕が変態なら、貴方も変態でしょう?」
それは全くの真実で、俺は何を言い返そうにも言い返せなくなっていた。
何てサディスティックな眼なんやろうと、矢部の眼を見て思った。俺の身体は、その視線で縛られて
喜んでいるみたいやけど・・・俺は全っ然嬉しくない。こんな厭らしい事をして、一体何がいいのか?
「はぁあ、矢ぁ、部ぇっ・・・あかんよぉ、そんなんっ、汚いっ・・・ああ・・・!」
・・・どうやら俺も、やっぱり変態らしい。こんな汚い所を舐められて、喜んでいるなんて。
矢部はもう興奮しきってしまっている様で、バスローブを脱がすのも忘れ、俺の下半身に頭を
突っ込んで、・・・俺のあそこを舐めてる。気持ちええ。もう、恥ずかしい感情なんて飛んでて。
「・・・気持ちいいんでしょう?岡村さん」
俺はそれに答える様に、喘ぎ声を出してしまう。矢部は俺の足を思いっきり上げた。
俺は横に寝ている為か、俺の身体の一番可笑しくなっている、あそこが濡れているのがよく見えて。
自分でも驚いてしまった。・・・俺もどうやら、正真正銘のホモだったみたいだ。俺のあそこの先から、
白い液体が毀れ出ていた。それは正しく、精液だった。俺は恥ずかしくなって、ベットの上から
逃げようとする。矢部はそれを止めさせる。それでも暴れる。・・・変な感触が、身体中を伝った。
震えながら後ろを見た。あそこの穴に挿入されていたのは、矢部の指だった。
「あっ、嫌っ、そんなんっ、・・・あぁ、お願いっ、抜いてぇ・・・!」
本当は。そう、本当は嫌なんかじゃなかった。本当は気持ちよくって、指をもっと奥へ挿入して欲しい。
ああ、そんな奧・・・気持ちええ、矢部、もっと、もっとええこと、して・・・・・!!
「・・・気持ちいいんですか?」
其の言葉で、さっと心が変わった。何か、今まで興奮してたもんが全部、
まるでビー玉を床に落としたみたいに、粉々に割れた。嗚呼俺は、読まれてるんだと思った。何でやろ?
・・・めっちゃ悔しい。けど、相方からの愛撫はたまらなく気持ちええ。その快感が、悔しさを消して。
「岡村さん、・・・痛いですか?」
痛くは、なかった。最初は強烈な痛みしか発しなかった愛撫も、今ではもうその痛みでさえ、
新たな快感へと変わってしまう。矢部は、その時確かに、俺の全てを、全部を、支配していた。
「・・・こんな指だけじゃ、本当は我慢しきれなくなってきてるんでしょう?」
それは、図星だった。
「・・・うん・・・」
翌朝、一番最初に嗅いだ匂いは、矢部の愛用の煙草の匂い。ベットの横に、二個の使用済みコンドーム、の袋。
昨日はただただ矢部と逝くのに精一杯で、・・・いや本当に精一杯で、俺は一回しか逝けなかった。
一回だけだったはず。・・・矢部があの後、ヌイたんやろか?若いなぁ。
「岡村さん・・・」
矢部は裸のまま、俺に抱きついた。はしゃぐ矢部は、首筋にキスをした。こーいう所は、まだ子供やなって思う。
昨晩、ベットの上で、あんなに主導権を握っていた相方が、余りにも子供なので、何だか誇らしげな気持ちになる。
優越感、という奴に似ている。でもやっぱ、昨日の羞恥は消える事はない。・・・矢部が笑う。
朱色の固いカーテンと、薄い白いカーテンの間から、太陽の光が差していた。初体験、・・・なんやろう。一応。
別に、「愛している」なんて綺麗な感情は、欠片も無かった。ただあったのは、「お互いが欲しい」という感情のみ。
だって所詮、セックスなんて、元々はそんな感情からするものやろ?それに、恋愛なんて、そんな奇麗事じゃない。
「はぁぁ〜・・・もう何なんよ、朝っぱっからベタベタベタベタ・・・もう、きっしょいねん!」
俺がそーいうの、一番嫌いだって分かってるくせに。岡村さんの眼は、そう語っていた。
俺は少し苛立ちを感じて岡村さんを見る、・・・可愛い。畜生、好きや。・・・・・岡村さん、大好きや。
「んっ、はっ、・・・ふっ、・・・変態・・・」
「貴方も変態なんでしょう?岡村さん?」
そう、俺と矢部は変態、・・・まぁ更に言えばホモだ。嗚呼、俺はホモや。どーせホモや。
「岡村さん、・・・好きです」
ああ、もう。
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