第五話→風呂。
あれから、一ヶ月くらいがたった。友達以上、・・・恋人未満。有野との関係は、こんな感じ。仕
事の合間にキスをしたり、一週間に少なくとも2、3回は二人でセックスをしてる。距離が、
ぐんと近くなった。今までも近かったけど、あれからはもっと、有野が側に来たと思う。
「・・・んっ、んん・・・有野・・・」
トイレで、キスをする。
「・・・お前、まだ癖が直らんのな。キスすると、めっちゃ眼ぇ瞑んの」
洗面所の台に座らされ、掬い上げるようにキスをされる。貪るようなキス、唾液が飲まれる。
腰の力が、無意識に抜け、がくっと倒れこむ。有野は意地が悪く、笑いながら瞼にキスした。
「・・・性格悪」
今から思うと、初体験の状態で三回もした俺等は、何て淫乱なのか?・・・しかも、バックもし
た。あの時は恥ずかしいとも思っていなかったけど、今更恥ずかしくなる。この前も、するの
かと思ったら、足を広げたまま、淫口の周りを舌で舐められた。思いっきり蹴ってやった。
「・・・な。今晩・・・空いてるやんな?Hしよ?」
最近やったのは、三日前、くらいだった。プレイもまだ、覚えている。
「・・・空いてない、言うてもするんやろ?」
「・・・八時。来てな♪」
有野は、嫌な奴じゃない。迷惑をかけても怒りに身をまかせたりしないし、無理にセックス
をしても、本当に「痛い」と言えばすぐ止めてくれる。セックスをした後も、ティッシュで精
液を拭いてくれたり、キスも優しい。・・・サドの性で、時々たかが外れてしまう事以外は。
八時。何時もより時間が早い事に、違和感を覚えていた。何時もは十時くらいに有野の家に
行き、・・・少し談話をした後、Hに移る。家に入った後、すぐ犯された事もあった。あれは酷かった。
「・・・おお、待ってたで。入りぃ」
ブルーのTシャツを着た相方に、一言も話す間もなく、家に迎え入れられた。
「・・・ビールでも呑む?冷えてんのあるけど」
テレビの中で、岡ちゃんと矢部がくっちゃべっている。・・・この二人も、ホモやねんなぁ。
「・・・ん〜美味っ。・・・・・・濱口?どしたん、何かあった?」
有野は、左手にサキイカ、右手にビールを持っている。第三者から見れば、ただのお笑いコン
ビ。でも、ベットの上では、コンビの差を越えて、セックスをする。何度も、重ねられてきた。
「何で今日・・・早いん?可笑しいやん、何時ももう少し遅いやん」
有野が、苦笑した。
「バレたか。・・・なぁ、一緒に風呂、入らへん?」
相方の考えている事が、大体分かった。・・・前の俺やったら、この時点で有野の頬を叩いて、
逃げていただろう。でも、今は違う。もう何度もやった。恥ずかしい格好なんて、何度したか
分からない。感覚が麻痺してる、・・・多分そうだろう。俺は、相当麻痺している、間違いない。
「・・・お前、何か痩せたなぁ。2キロは減ってんで〜」
そりゃそうや、あんだけ腰振ったら、痩せるっちゅーねん。
「・・・入浴剤でも入れる?色々あるけど」
有野と、洗面所の床に座り込んだ。俺は名湯のセットから、一つ取り出して、有野に渡した。
浴槽に粉を入れる、・・・緑色に変わる。軽く身体を流そう、そう思ってシャワーを握って。
「・・・濱口」
有野が、急に抱きついてきた。
「・・・有、んんっっ・・・ぁんっ、ん・・・有野ぉ・・・?」
有野が、謝りながら俺の両手首をまとめた。嫌な予感がした。
「お願いがあんねんけど・・・・・・毛ぇ、剃らせて?」
この前、淫口を舐められた時、何時かこういうプレイを求められる事を、感じていたのは確
かだった。・・・有野に、陰毛を剃られる。可笑しいかもしれない、でも、こういう時に限って、
俺のマゾヒズムが頭を出してしまう。きっと、このまま逃げても、悔いが残るだけだから。
「・・・ええよ」
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