プロローグ

 その部屋には、一人の青年と老人がいた。
 部屋は暗く、テーブルが一つだけしかおいていない。
 青年は座り、老人がその正面に立つ。
「奴は、俺の即位に邪魔だ。俺の方が正当な血族だ。あのような、妾腹の男が同じ王子など・・・腹立たしいわ!!」
「しかし、そのことは国王が穏便に処理されております。妾腹でありながら自分の息子として扱うと、高々に宣言されております」
「それがどうした?だからといって、俺は第一王子だ。先に即位するのは当然であろう?」
 青年は声を荒く叫ぶ。
「まさか、国王が自ら後継者を発表するとおっしゃるとは、この爺にも想像はつきませんでした」
「しかし、その国王も今は病の床にある。そのまま死んでくれれば、後腐れなく奴を殺せるのだがな」
 この言葉に、老人があわてた。
「めったなこと言うものではありません。誰が聞いているかもしれないのですぞ!」
「ふん!!聞かせればいい。そんなこそこそとした奴が、俺に対峙するなど考えられん!」
 老人は心配した。この強気な性格が、自ら破滅へと導くことを・・・。
「しかし、何とかして奴を殺したい。それも、合法的にな」
「む?解りました。考えてみましょう」
 老人が真剣な顔で、また気が進まない顔で答える。
「ふふふ・・・、奴さえいなければ・・・」
 青年は、勝ち誇った様子で話を打ち切った。