30. 爪

謳った夢は 高尚なものじゃなくて

紡いだ声は 響くものじゃなくて

まるで夜に飲み込まれる 自分のようだと
薄紅色の星を指差す キミの指
仄かの光を弾く

まるで朝に怯える 影のようだと
曇り色の街を睨む キミの視線
仄かの香りを吸い込む

腕に残る キミの爪痕
飲み込んで砕けた 氷の軋み

謳った夢は 高尚なものじゃなくて

紡いだ光は 輝くものじゃなくて

キミの光る爪が 空をなぞるのを見ている