54. 羨望

今のボクがあなたに誇れることはないから。

目を閉じて、側に感じるのは
あなたの鼓動より、街の喧騒
崩れかけたアパートの前の
錆びた鉄の橋を渡る 音

クイーンのカードはベッドに置いて行くよ
もうボクには必要の無いカードだから
あなたはいつまでも そこに君臨するけど
ボクが握り締めるのは スペードの9

セピアに見えた部屋の隅
今は確かな色に見えるけど
腕に抱いた、シルクのショールは
音もなくすり抜けるから ボクは胸を痛める

今のボクがあなたに誇れることはないから。
ボクは今のままで 部屋を出るよ
金網を越えた世界には ジャックとキング
あなたに相応しいカードがあるけど
この街と部屋には ボクとただのトランプがあるだけ

ボクは今のままで 部屋を出るよ
錆びた鉄の橋を渡る あなたの足音
部屋の隅は色を無くして シルクは床に
ボクはいつまでもスペードの9で
外の世界にはキングとクイーン