“空が青いのは そこが海だから”
徐に飛び出た言葉は、意外なほどしっくりとボクの中に落ちた。
見上げた空の端っこが、いつか風の強い日に見た海の碧で。
だから急にそんな風に思ったのかもしれないし、違うのかもしれない。
宇宙で息が出来ないのは、そこが水中だから。
体が浮くのは塩分濃度が高いから。
雨はきっと、地球を覆った薄い防水シートから零れてくるのだ。
その水の中にはたくさんの生物がいる。
微細な生物。
巨大すぎて目に留まらない生物。
もしかしたら、ボクらが生きているこの世界も、何かの生き物の体の中かもしれない。
丸呑みにされた腹の中で文明を築き上げたニンゲン。
なんだか酷く健気で、滑稽で、愛しくなった。
ジリジリと消化され行く世界は、きっといつかその生き物の一部と化すのだろう。
いくら騒いでも、いくら嘆いても。
そしてまた、いつまでもその生き物として生きていくのだろう。
長い間。一瞬の間。
他愛も無い考えは、夕暮れに空の色が変わって途切れた。
赤くなった空の意味。
ボクは答えを見出せない。
だから歩いていく。
どこまでも。
長い間。そして、一瞬の間だけ。