dolphin...
 ゴメンねって。
 突然、落ちた言葉にボクは振り返った。
 だけどそこには、何もなくて。
 ただ波打つ海と、オレンジの夕日と気の早い星だけがあるだけ。




 だから「何が?」って尋ねたんだ。
 だってボクには何もわからなかったから。
 だけど答えは、何もなくて。
 ただ煌く波頭と、紫の空の端に細い細い月があるだけ。




「誰がボクに声をかけたの?」
 不安定な防波堤の上。
 行く先もやることもないボクは、返らない答えを真剣に求める。
 だってこのままじゃ、何もわからないから。



 だけどやっぱり答えは、何もなくて。
 ただ遠くで飛ぶイルカが二頭いるだけ。





 夕日は逃げて、月が追いかけて。
 うるさいぐらいの星が空を支配する。
 イルカはまだ、雲に向かって跳ね上がり。
 ボクはまだ、ここに座っている。





「あぁ、そうか。キミだったんだね」
 強がりでもなく、唐突に答えを見つけて。
 ボクはようやくニッコリ微笑んだ。


 そうだよって。
 キミが優しく返してくれるから。
 ボクは益々嬉しくなった。





 短い小さな言葉は、波に紛れて遠くに運ばれる。
 絶え間ない音は、世界共通のコトバ。


「キミは、そこにいたんだね」って。
 いつも誰かが絶え間なく声をかけて。
 いつも誰かが絶え間なく声を聞いて。


 この地球が丸い意味。
 どこかで、何かとつながってる、意味。


 だからボクは今日も言うんだ。
 おはよう、ありがとう、またね。
 おやすみ、いい夢を、また明日。
 また明日。
 また明日。
 また、この丸い地球の上で。