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葬式が行われている。赤木しげるの葬式である。
和尚のお経の声が悲しげに響き渡る。
参列している原田はまだその事実を受け入れることが出来なかった。

原田「(嘘や‥赤木しげるが死んだなんて‥。死に顔見ても信じる事が出来へん‥。あの顔‥まるで眠っとるようや‥。まるでまだ生きてるようや‥。赤木‥)」

自分でも説明のつかない苦悩が頭をもたげ、原田は赤木から目を離そうとした。
‥が、その瞬間、赤木の目が開いた。


原田「‥!あ、あか‥!!」
金光「?」

思わず声を出しそうになった原田に会場の皆の視線が集まる。

金光「‥どうかしましたか?原田さん?」
原田「え‥いや‥」

原田は混乱した。赤木の目はまだ開いていて原田のほうを見ている。しかもニヤニヤ笑っている。
場所の関係上どうやら気づいているのは自分だけのようだ。

原田「‥すまん、何でもあらへん‥」

またお経が再開される。

原田は小声で話しかけてみた。

原田「(‥何してんねやお前)」
赤木「(ククク‥。久しぶりだな、原田‥)」
原田「(何が久しぶりや‥!お前死んだんちゃうんか。何で目開いてんねや。何で喋ってんねや!)」
赤木「(‥退屈‥)」
原田「(‥あぁ!?)」
赤木「(退屈なんだよ、この中‥。まる一日入ってんだぜ‥。どうにかしてくれよ)」
原田「(俺が知るかい‥!!自分で勝手に入ったんちゃうんか。大人しくしとけや)」
赤木「(なあ遊ぼうぜ〜)」
原田「(何言うてんねん。葬式中やがな)」
赤木「(遊んでくれよ〜。)」
原田「(だったら死んだフリなんかせえへんかったらええやんけ!)」
赤木「(色々と必要なプロセスなんだよ)」
原田「(じゃあ大人しくしとけや‥)」
赤木「(でも退屈なんだよ‥)」
原田「(知ったことかい!!)」

ポクポクと鳴り響く木魚の音と和尚のお経の声。二人の会話には誰も気づいていない。

赤木「(なあ、和尚にハゲ!って言って)」
原田「(俺がか。何でやねん。無理やっちゅーに。葬式中やで)」
赤木「(おもしれえじゃねえか‥。なあ‥。ハゲ!って言って)」
原田「(無理!無理!)」
赤木「(ハゲ!って)」
原田「(出来へんって)」

赤木「ハゲェ!!!」
原田「ハゲェ!!!」


原田は立ち上がった。

原田「このハゲがぁ!!お前ハゲとるぞ!!!」
金光「ど‥どうしたんですか原田さん!?」
原田「ハゲや!!お前はハゲや!!!」
黒服「組長!?どうしたんですか!!?」
黒服「組長!葬式中ですよ!!」

赤木はまた目を閉じて死んだフリをしている。

原田「ハァハァ‥。す、すまん‥。ちょっと取り乱してしもうたみたいや‥」
金光「だ‥大丈夫ですか‥?」
原田「あ、ああ‥。すまん。もう大丈夫や‥」
黒服「組長しっかりして下さい‥!葬式中ですから‥!」
原田「ああ‥悪かった‥」



原田は正座し直した。またお経が再開される。
赤木は笑いをこらえていた。

赤木「(ククク‥!プハハハ)」
原田「(何笑ってんねや‥!!お前のせいでめちゃくちゃやないかい!!)」
赤木「(原田は面白えなあ‥)」
原田「(やかましいわ‥!覚えとけよ!!)」

赤木「(あー‥。蹴っ飛ばしてえな。人を。)」
原田「(あ?今度はなんや‥)」
赤木「(蹴っ飛ばしてえ。朝からずーっとこの態勢なんだぜ‥?足が疲れたよ‥)」
原田「(しゃあないやないか。終わるまでじっとしとけや‥)」
赤木「(若い頃は‥よく蹴ったものだよ。人を。)」
原田「(‥‥。足癖悪そうやもんなお前‥。ええから辛抱せえや‥)」
赤木「(和尚蹴って)」
原田「(は?)」
赤木「(和尚の背中蹴って。蹴りたい背中‥和尚の背中‥)」
原田「(何言うてんねん意味が分からんわ‥!)」
赤木「(なあ蹴って。)」
原田「(蹴れるかアホ‥!和尚には何も恨みあらへんがな‥!)」
赤木「(蹴ってくれよ原田)」
原田「(無理や!無理‥!いくらなんでも‥)」

赤木「背中がガラ空きだぜー!!」
原田「背中がガラ空きじゃー!!」


原田は金光を蹴っ飛ばした。

金光「あ痛っ!!」
原田「オラァー!!喰らえや!!俺の蹴り喰らえやあ!!!」
黒服「組長!!止めて下さい!!」
原田「お前なんかに負けるかー!!」

さらに四の字固めをくらわす原田。

黒服「組長!!一体どうしたんですかっ!!」
原田「克美は強いで!克美は喧嘩も関西一やでー!!」
黒服「組長!ええ加減にして下さい!」

黒服に取り押さえられる原田。

金光「ゲホッゲホッ‥!な‥何するんですか‥!」
黒服「組長‥一体どうしたんですか‥!」
原田「ハァ‥ハァ‥。す、すまん‥!」
金光「何なんですか!?もうワシは止めるよ、葬式‥!」
原田「悪かった‥!赤木が死んでちょっと俺混乱しとるみたいや‥。続けてくれや‥」
黒服「‥本当に大丈夫なんですか組長‥!?」
原田「ああ‥悪い‥もう大丈夫や‥」
赤木「どっこいボディがガラ空きだー!!!」
原田「どっこいボディがガラ空きじゃーい!!!スキだらけなんじゃお前なんか!!!」

金光「がはっ!!!」
原田「麻雀だけやないでー!克美は麻雀だけやないでー!!!」
黒服「組長‥!止めて下さい!!和尚さん逃げて下さいっ!!」
原田「ワハハハ!もうどうでもええわー!」


end.

元ネタはごっつの「しょうた!」からでした。