南様 387Hitありがとうござました!!
「シャガルでエロ」
設定完全切り離し・TV版準拠でお送りします。

「地球に降りて早々に悪いんだが、明日の夜、付き合ってくれないか?」
「構わないが……何だ?」
「市長主催の晩餐会があるんだ。君がいてくれると心強い」
「ああ。……構わないよ」
「君に紹介したい人もいるんだ」
「へぇ…………女か」
「分かるのか?」
「分かるとも。君の顔を見ればな」
 首を竦める。
 苛々とした想いは、押し殺したまま。

 木馬を追い込み北米へと降下して、そのままガルマの指揮下に入った。
 共闘するのは久々だ。教導隊時代の暁の蜂起以来になる。もう、随分と昔の様な気がした。
 勧められた酒を断り、ガルマに寄り添う様に凭れる。
 手を太腿に置いてやると、それだけで身体が硬直するのが分かる。
 何も変わっていない。とんだお坊っちゃまだった。
「……君も一人前の男になったものだ」
「君がいたからだ。君を追って、私も成長したと思う」
 傲慢な微笑みもそのまま。
 シャアの眉が一瞬微かに顰められた事にも気がつかない。
 口の中でだけ舌打ちをして、シャアは表面上穏やかな友人として振る舞う。
 よくもまあ、女を手に入れる気になったものだ。口ぶりからすれば、それなりの家の娘なのだろう。ガルマが選び、シャアに紹介するともなれば美しく家柄の良い、自慢できる女である事は想像に難くない。
「楽しみにしていよう。君がどんな女を選んだのか」
「ああ。とても魅力的な人だ。……君の方はどうなんだ?」
「追撃戦の最中に、そんな暇があると思うか? ああ…………いや、言うなれば、木馬に乗っている白いヤツには、それなりに心惹かれているが」
「報告書は見た。なかなかのモノらしいな。君が手こずるなんて」
「だから、君の力を借りたいのだよ」
「任せてくれ。……ここへ追い込んでくれたのは、私に華を持たせようと言うのだろう? 君には感謝している」
「そういうつもりもなかったのだけどね。君がこんな酷い男だと知っていれば」
「酷い? 私が?」
 置いた手を内腿の方へ滑らせてやる。女が媚びる様に。
 面白い様に震える。この様子では、その自慢したい女とやらにも手出しなどしていないのだろう。
「…………酷い、だろう? 私に女の自慢をしようとする」
「君とは、別だ。彼女は……女性だから」
「………………そう。女だ。腹立たしい事に」
「……焼き餅を焼いているのか? それは……すまない。だが、分かっている事だろう? 私はザビ家の人間だ」
「ああ。分かっている。だが、感情とはそう容易く処理できるものではない様だ」
 兜とバイザーを外す。
 ガルマがこの顔を好んでいる事は知っている。見詰めると、それだけで動きを封じられる。か弱いものだ。
「ガルマ、私に、君をくれ。今宵一夜……それだけでいい」
「………………ああ…………」
 その昔の、シャアを抱いた記憶が蘇る。誘う声音に、内腿に触れる指に、身体の芯に眠る雄が疼いた。

「んな、っ……何の真似だ、シャア!?」
 耳障りな金属の触れ合う音が響く。
 ガルマの命で、一晩部屋へは誰も近付かない様になっていた。助けは来ない。
 ベッドに繋ぎ止められたガルマを見下ろし、シャアは酷薄な笑みを浮かべる。
「承諾したじゃないか。君も」
「こんな……何故っ」
「逃げられては困る」
「何をする気だ、一体!?」
「それくらいの危機感は持てたか、君にも。……いい顔をするな、君は」
 手袋を脱いだ手で頬をざらりと撫でられる。
 冷たい瞳に、ガルマは身を竦ませる。怒っている。しかし、思い当たる節がない。
「シャア、どうしてこんな」
「君を貰う。そう言った」
「ああ。しかし、こんな事をしなくても」
「君は逃げようとするだろうからな。大人しくしていれば、怖くはないよ。少し痛いかも知れないが」
「どうして。……私が君を好きでいる事に代わりはない」
「それは、信じている」
 取り出したナイフを器用に使い、ガルマから衣類を取り払っていく。
 肌紙一重の所を滑る刃に、ガルマはただ萎縮する。
「シャア……どうして…………言えば、脱ぐのに」
「気分が出る」
「気分? っ!?」
 いきなり髪を掴まれる。
 常にない様子にガルマは困惑と混乱を隠せなかった。
「何……何だ、シャア……」
「……君と肌を合わせるのは、最期になるだろうな」
「…………済まない。しかし」
 女のことを謝られても不愉快なだけだ。
 その不快感が何に根付いているのかは、シャア自身よく分かっていなかった。シャアの抱えた闇も知らず一人幸福そうな顔をしているガルマへの苛立ち、そういうことではあるが、その苛立ちも何に対して苛立つのか分からなかった。
 ただ、ガルマが憎い。
「分かっている。気にするな。だが……私を男にして欲しいな」
 筋肉の隆起も薄い胸に掌を押しつけ、ざらりと撫でる。
 同じだけの訓練は受けてきた筈なのに、ガルマの身体は何処か肉付きが薄い。滑らかな手触りが不愉快さに拍車を掛ける。
 形よく切り揃えた爪を立て、強く引っ掻いた。赤く筋が浮かび、微かに盛り上がるが切れてはいない。
「っ、くぅ……シャア!?」
「つまらないな」
「ひっ……」
 視界の端にぎらりとした光を見て、ガルマは一層身を竦ませる。
「っっ!……っ……し……シャ……ァ……」
 がちがちと歯が鳴る。ちりちりとした痛みが胸元に走る。
 ぷつりと玉となって血が浮かんだ。
「いた……ぃ……」
「直ぐに治るさ。加減はしてやっている」
「ど……して……? シャア……」
 眦に涙が浮かんでいる。しかし必死でそれを押し止めていた。
 腹立たしい。今ここで刃を胸に突き立ててやれたら、どれ程すっきりすることだろう。
 しかし、そうできない。今この手を穢したら、デギンまでは辿り着けない。
 このまま持っていては理性を失くしてしまいそうで、シャアはナイフを床へ投げた。

「君は色が白いから、赤が良く映える」
 身を屈め、口付ける。
「っ……」
 舌の感触に肌が粟立つ。藻掻くと手錠で手首が傷ついていった。
「跡が残って困るのは君だ。大人しくしていることだな」
 滲んだ血を舌先で掬い取る。敵の血など苦々しいだけ……そう思うのに、ガルマの血は本人に似て何処か甘かった。
 軽く歯を立て、もう少しを味わう。大した傷ではなく血はすぐに止まる。
 肌を吸われ、ガルマの身体が引き攣る様に震えるのが分かる。怯えぶりがおかしい。
「ザビ家の男がそうまで怯えるものではない。君は、男だろう? それともか弱き姫君か」
「馬鹿な!」
 ガルマの目に怒りが浮かぶ。シャアは、背筋に震えが走るのを感じた。
 捕らえられ醜態を晒して尚折れることのないその自尊心が憎い。
 思わず、跡が残る程に歯を立てる。
「っく、ぅ」
「君はその名に相応しい男だよ」
 腹立たしい。ザビの名が誇りを抱くのに相応しいと思っているガルマが、どうしようもなく憎い。
 憎い。

「君を殺してやれたら、私はどれ程楽になれるだろうな」
「君は……」
 時が来ない事が、焦れったい。
 シャアは意識して口角を上げた。笑みの形を作るのは最も慣れたものだ。
「女に君を渡すのは、惜しい。今殺してしまえば、君は永遠に私のものだろう?」
 行為は同じでも、口を突くのは出任せだ。
 自分の冷静さすら、厭わしい。
「私は、君に……謝罪しかできない」
「構わない。君のことは、よく分かっているつもりだ。だから……せめて、男にしてくれと言っているだろう?」
「男……とは…………っく」
 ささやかな筋肉を指先が辿り、柔らかく茎やその下の袋を弄う。そして、軽く足を開かせるとその奥まで手を潜り込ませた。驚いたのか腰が浮き、一層シャアの手を自由にする。
 指先が蕾に掛かった。
 ガルマの顔が青褪める。漸く、シャアの求めを理解した様子だった。
 考えたこともない。この身が女の様に抱かれるなどと。
「下手に抗うと後が辛いぞ」
「ひっ…………」
 冷感を覚えて身を竦ませる。
 温められる事もなく、粘性のある液体が瓶から直接蕾へと流された。
 指先でそれを掬い、容赦のない指が差し入れられる。
「っく…………ぁ…………」
 滑りを伴った指はさしたる難もなくガルマの内側へと入り込む。
 シャアの指も粘液も冷たく、ガルマは逃れる様に腰を浮かせたがさしたる意味もなかった。
「い……ぃや……だ……っ……」
 何をされるのかは、もう十分に分かった。だがその理解には感覚が伴わない。
「や、っシャ、ぁ……っ」
「ここは、まだ誰にも許していないだろうな?」
 問いの意味も理解できない。
「もう既に誰かの物なのか、君は。それは、悔しい物だな」
「いっ、ぁ……いた、痛いっ……シャアっ」
 容赦なく内壁を抉られ、悲鳴が上がる。
「そんな情けない声で私を呼んでくれるな。切れてなどいない。直ぐに慣れる」

「ぅ……うっぅ……ぁ……」
 襞を押し開かれ、暫く弄られているうちにガルマを脆くする場所は全て見つけ出されてしまう。
 散々に噛み締めた唇は血が滲んでいた。
「ぁ、く……ぅ…………」
「強情だな、君は。いいならいいと言えばいい」
「はっ、ぁ……っあ」
 耳を甘噛みされ、頼りなく背が震える。指を食んだ蕾が収縮すると、ますます何をされているのか思い知らされ、ガルマは目眩を覚えた。
「いい、だ。簡単だろう?」
 声音は甘く聞こえる。息が掛かり、耳穴を舐られているのが分かる。
「ぁ、っあ、ひ……っ……」
「言ってくれ。どうだ……?」
「ふぁ…………あ……っん……」
 手付きが不意に優しくなる。ガルマは視界の端にシャアの髪を見詰めながら、唇を熱い息に解く。
「い……いい……………………あ、っぁふ……」
 ひくりと腰が震える。
 シャアの指が、舌が、ガルマを優しく煽っていた。
 その優しさだけで、ガルマはシャアのこの行為を許せる気になる。
 先にシャアへひどい仕打ちをしたのは、自分なのだ。身体の繋がりを持ちながら、女と将来を誓ってしまった自分の配慮のなさがシャアを傷つけ、こんな暴挙に至らせている。
 そう考えれば堪えられると思えた。
「……すまない、シャア…………」
「謝罪は、態度で示して貰いたいな」
「…………あ……ぁ……君の…………好きに…………」
 ただ、せめてもの口付けが欲しい。
 耳からシャアが離れたのを感じて、縋る様に視線を送る。
 一瞬シャアの目にひどく強い光が走る。身を竦ませながらも視線を外せないでいると、その光は掻き消えて代わりに苦渋に満ちた様子が浮かんだ。
 触れたい。
 シャアの頬に口付けたかった。
「シャア…………口付けさせて……」
「何故君が」
「いいから…………君に、触れたい……」
 涙を湛えた目はそれでもまだ、真っ直ぐにシャアを見る。
 シャアは、奥歯を噛み締めた。

「仰せの通りに、王子様」
 額を合わせる様に顔を寄せる。
 ガルマは舌を伸ばし、怖ず怖ずとシャアの唇に触れる。
「シャア……君が私を許す気になるまで……好きにしてくれて構わない…………君には、申し訳ないと思っている……」
 シャアの顔を曇らせているのは自分なのだ。申し訳なく思う。命で贖うわけでないなら、シャアの気が晴れる様にしてやりたかった。
 表情を和らげて覚悟を決めたガルマに対し、シャアは唇を戦慄かせる。
 引き裂いてしまいたい。ザビ家の男など。
 引き裂いて、血肉を食らって、跡形もなく…………。
 食らってしまいたいその衝動が何に起因しているのか、シャアには分からなかった。
 ただ、突き動かされる衝動のまま、ガルマの中から指を引き抜く。
「あっ……っ……」
「傷つきたくなければ、力を抜いている事だ」
 足を割り開き、腰を抱える。
 反射的に身体を竦ませるガルマに対して、シャアは一瞬の躊躇いの後、一気に腰を進めた。

「あっ、ぁぁあ、くっぅ……ぅう……っ……」
 圧し開かれる。引き裂かれる。ガルマは視界が赤く染まった気がして頭を打ち振るった。
 よく慣らされ滑りを伴っていたお陰で実際に傷は付いていない。
「ぅく……ぅ……ん……」
 歯を食い縛り痛みと圧力に耐える。歪む顔を見下ろし、シャアは益々不愉快になる自分を感じていた。
 慣れていない花蕾は狭く締め付けも強い。男を抱くのも誰かの尻を犯すのも初めてだったが、その感覚は凄まじい。女の蜜壷とはまるきり異なる様子に、シャアは顔を顰めた。
 ガルマを落としきる前に、自分が達したくはない。
「くっ……ガルマ……」
 じたばたと足を動かそうとするが、僅かな動きも響いて辛い。そのうちに大人しくただ肩や胸を喘がせ始める。
 必死で堪えているが、目の縁が濡れていた。
 何故か引き寄せられ、そっとその雫を吸う。
 苦い。
 泣かせて、許しを請わせてやりたかったというのに、何もかもが意志に反している。

 襞が馴染むのを待って律動を始める。
 その度に上がる苦痛に満ちた悲鳴を聞いていられず、唇を塞ぐ。
 縋る様に直ぐさま伸ばされた舌が不愉快だったが、そのまま受け入れる。
 息も出来ないくらいに貪れば、窒息でもさせてやれるだろうか。こんなに、繋がったまま。
 機はもうじき熟す。
 自分は手を下せるのだろうか。考えたくない。
「ん……ぅ……」
 軽く舌へと歯を立ててやると、さらさらとした髪が音を立てて振られる。
 ガルマより先に達する事だけは避けたい。下肢に手を伸ばし、茎を掌で包む。
「ぅ、んんっ!」
 先に噛み締め続けていたガルマの唇からは血の香りがしていた。
 ガルマの体液はどれも、微かな苦みを感じる。
「ぁ……は……っ! っあ……」
 がちゃがちゃと手錠がうるさい音を立てていた。
 片手で茎を弄いながら、もう片方の手でガルマの手首を押さえる。ガルマの何処か華奢な指が、シャアを求める様に宙を掻いた。
 遠慮なくガルマを煽る。激しく突き上げ、拍子を合わせて手を動かす。先端から溢れた蜜がシャアの手をしとどに濡らし、動きを助けた。
「堪えるな。いけ」
 ガルマが感じれば感じる程に、シャアに余裕もなくなってくる。息をする様に緩急を付けて蕾が蠢いて、シャア自身を刺激していた。
「ガルマ…………私は……君を、」
 口の中が苦い。ガルマの唾液を吸ったからだ。
 涙も。
 血も。

「……………………赦す」

 許せる筈などない。
「っ……」
 口を突いた言葉にシャアの方が狼狽する。
 苦みの利いた言葉を耳殻へ注ぎ込まれ、ガルマは強く背を撓らせた。
「あっ、ぁ!……ぁは、ん……っ……」
「くっ……ぅ…………ぁ……」
 手の中に温い物が迸るのを感じた。
 蕾が強く収縮し、その瞬間に腰を引こうとしていたシャアは熱い襞に強く絞られた。
「ぅ……」
 ガルマが先に達したのを感じて、シャアは深く突き入れた。
 奥へと自身を解放する。
「ぁ……ふっ……はぁ…………」
 ガルマは解放の余韻と奥底を満たす熱い感覚に、深く艶めいた息を零した。

 ぐったりとしたガルマの身体を清め、手錠を外してやる。
 直ぐさま腕が絡み、縋る。
「……ガルマ……」
「…………手錠なんて、要らなかった…………」
「ああ…………君に拒まれるのが、怖かったんだ。じっとしていてくれ。手当をするから」
「要らない。大した傷じゃない。…………どうして、君を抱き締めさせてくれなかった。私から……口付けさせてくれなかった」
 睨む瞳は不安に揺れている。
 身体が痛むだろうに、ガルマはやはり真っ直ぐに、曇りのない目でシャアを見た。
 シャアは薬を取りに行く事に託けて、ガルマに背を向ける。
「…………君の腕も、唇も、私のものではないだろう?」
「でも、っあ、シャア!」
 早く時が来ればいい。
 声を上げ続け枯れていても尚品のいい声を聞いているのが厭だった。
 シャアは足早にその場を去った。
 ガルマは後を追おうとしたが、痛みが走り下肢にも力が入らず、ただシャアの背を眺める事しかできなかった。


作  蒼下 綸

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