「五歳の空」〜20代の青年の回想


あ、そうですね。・・・では暖かいものをいただけますか?
はは、すいません。緊張しちゃって。皆さん年輩の方も多いので・・・。
ほら、震えてるでしょ?怖いんですよ。
はい、大丈夫です。今回は話を聞いて欲しくて・・・
誰にも話せなくて、・・・ずっと苦しかったんです。
ありがとうございます。
そうですね。・・・あれは僕が5歳になったばかりの頃でした。
正確にはまだ姉が小学の夏休み入る前でしたね。

「へぇ、ここがお兄ちゃんの部屋なんだ。」
「隣にも人がいるから静かにしようね。」
このお兄ちゃんは私の家の店で働いている人で25歳くらい。
よく遊んでくれたんです。
僕の家は嫁姑の仲が悪く、しかも前の嫁がそれで逃げてすぐの
出来ちゃった結婚でまわりからの目に耐え切れずお互いが一杯一杯でした。
たまに全力で遊んでくれるんですが、それがなおさらキツいんですよね。
僕にはだれも相手にしてくれない、って。
幼心に近所の人から必死に漢字を覚えたり、怪我をしてみたり
なんとかして親の目をこっちに向けたかったんだと思います。
でもどうやっても親は「うるさい!」か「バカが!」って殴るだけなんですが。
それでもこっちに向いて欲しかったのかも。
いつか優しいパパとママになるって。
4っつぐらいの頃かな。お兄ちゃんが来たのは。
保育園の迎えとかに良く来てくれたんだ。
すんごく優しいの!
僕の話を聞いてくれるし。相手してくれるし。笑ってくれるし。
店が暇なときは膝の上に抱いてくれるんだ。
自分から言うとパパに怒られちゃうから言えないんだけど
じっと見てるとね、呼んで抱きしめてから乗せてくれるの。
その時はね「僕の席」って感じで、すごーくホッとするんだ。
お兄ちゃんはね
「Sちゃん、えらいなぁ、漢字で自分の字かけるんだ?」
「またケガしたの。水で洗おうね」
って言ってくれるの。頭もなでてくれるんだよ。
でもパパに見付かると怒られちゃうの。
僕が殴られるのは慣れてるし泣けば止めてくれるけど、お兄ちゃんが叩かれる時があって
なんだろう?なんかね胸の辺りにねカミナリが落ちた感じ。
よく解んないけど泣きたくなっちゃうの。
泣いたら殴られるのに涙が止まらないの。
あとで必ずお兄ちゃんが「ごめんね」って言うんだけど
うなずくけど涙が止まらないんだ。

っとすいません。僕、敬語使ってないですね。
・・・はぁ、宜しいですか?ではこのままで失礼します。
それからも親は忙しいのでその人に僕の世話がよく回ってきました。
お兄ちゃんは公園に行ってくれたりいつも通り優しかったですね。
プールとかにも連れて行ってもらいました。
・・・しかしいつものお迎え、ここである事件が起きました。

「お兄ちゃん、今日も公園行っていい?」
「ダメだよ。今日はお店忙しいんだから。」
「ねぇ、ちょっとだけだよ。ちょっとだけ」
「うーん、じゃ終わったら急いで帰ろうね。」
「うん!」
自転車の後ろでそんな会話をしながら、「またお兄ちゃんと公園だ」ってすごい
嬉しかったですねぇ。
で「さぁ帰ろう。飛ばすよ!」
って後ろに乗っかり自転車は動き出す。
「キャー!!」嬉しくってたまらない。
ジェットコースター大好きなんでしっかりしがみついてた。
回りの家がすごいスピードで迫ってくる。
面白ぉい。お兄ちゃんも僕が「これ」好きなの知ってるんだ。
と、そこにいつも気になってる「来々軒」の赤い家が見えた。
うわぁ、って横見てたらバランスが崩れて世界が回ったんだ。
・・・気が付いたら病院の診察台だった。
頭に変なもの被せられて、・・・お兄ちゃんがいない。
「お兄ちゃんは?」
「今おうちの人に電話してるよ」と看護婦さん。
じゃ、歩いていこうとするとなんか足が片方白いもので固まってる。
で足を地面に付けると痛い。
どうやら足が後輪に引っかかってそのまま地面に頭から落ちたらしい。
お兄ちゃんはおぶって帰ってくれた。
家に帰ったらやっぱりパパに殴られた。
頭打ってたからママは庇ってくれたけどね。
お兄ちゃんは「ごめんなさい」って謝ってた。
パパは「どうせコイツが勝手に落ちたんじゃろうが。迷惑しかかけん奴が!」
その通りだと僕も思った。
で3日保育園を休んだ。
でね2日目なんだけどお兄ちゃんが家にこっそり来てくれたんだ。
うん、家が店と近いの。
お兄ちゃんお見舞いに来てくれたんだって。
僕お見舞いされたの初めてだったから嬉しくて。
目が赤くなったらお兄ちゃん「ごめんね」って。
僕が悪いのに・・・。
「ここにずっといたら暇だろう?散歩に行こう」
ってお兄ちゃんが言ったけど、嬉しいけど僕歩けないし・・・
って思ってたらお兄ちゃん、僕をヒョイって持ち上げてね
肩車してくれたんだ。
周りの景色が全然違う!
なんていうか「空が近づいた」感じ。
僕嬉しくてお兄ちゃんの目を目隠ししたりして、お兄ちゃんもわざとよろけたりして
仕事に戻るまでの十何分か。すんごく長かった気がする。
楽しい時間なのにすごく嬉しくて長かったんだ。
でも、その日からお兄ちゃんはお迎えに来なくなったんだ。

あれからお兄ちゃんとあまり遊べなくなった。
どういうのか解んないけど、お兄ちゃん目をそらす事が多くなったの。
僕も余り人に気にされないの慣れてたけど、慣れてたはずなんだけど・・・
一人でよくあぜ道のところまで行って泣いてた。
うん?だってお兄ちゃんが泣いてるの見ると困った顔するもん。
それに店だとパパがまた怒るし。
そうしてたらね。
いつか、パパがいつもの友達と遊びに行ったんだ。
普通は家でまあじゃんするのに。
でもそれが嬉しくてすぐ店に、お兄ちゃんのところに行ったんだ。
でね。お兄ちゃんに
「パパ、行ったよ」って言ったの。
これでまた遊んでくれるよね?って。飛び跳ねそうなくらい嬉しくて。
「ふーん。」
とお兄ちゃんは向こうをむいてた。
・・・?お兄ちゃん?いっつもパパがいないとき遊んでくれたよね?
  僕の事キライになったの?僕わるい子?
あ、泣いちゃう。
僕はいつものあぜ道に行くうとしたの。
したらね、お兄ちゃんが
「・・・ふぅ、来なよ」
って言ったんだ。
良かった。なにか考え事してたんだね。ママがいっつもしてるもん。
ジャマしちゃったな。あれ?涙が出てきちゃった。お兄ちゃんが遊んでくれるのに。
なぜだろ?ゴメンね、お兄ちゃん。
うふ、久しぶりにお兄ちゃんのお膝。嬉しいな。いつもパパがいなければいいのに。
そしたらね、お兄ちゃんが胸のポッケからなにか取り出したの。
あ、タバコだ。
パパ達はいっぱい吸ってたけどお兄ちゃんが吸うの初めて見た。
いつもは煙たくてキライだけど・・・お兄ちゃん、なんか大人っぽい。
「吸うか?」
お兄ちゃんが口に持ってくる。
ここにお兄ちゃんの口が当たったんだ・・・
「しっかり息吸えよ。」
うん、思いっきり吸った。
ゴホゴホ・・・頭がくらくらする。
初めてのタバコ。
全然ちからが入んない。頭もボーッとする。
「ハハハ・・・かわいいなぁ」
あ、お兄ちゃんの声だ。なんかこう言ってる気がする。
とお兄ちゃんは(多分)僕をくるりと回転させた。
お兄ちゃんは頭をなでてくれてね。
僕はまだ目がチカチカするけど、急に近くにお兄ちゃんが見えて
嬉しくて抱きついたんだ。
それから体中をなでなでしてくれたんだ。すごく気持ちよくて
頭もクラクラしてて、それから寝ちゃったみたい。
パパが帰るときはおきてたんだけど。

数ヶ月後
・・・この最近はお兄ちゃんお店がヒマなときとかお店にいない事が多いんだ。
ママに聞いたら一回だけ
「うるさいねぇ。お兄ちゃんは彼女が出来たんよ。あんたなんかにかまってられんの!」
って言われた。
彼女って好きな人の事だよね?
お姉ちゃんがそう言ってたもん、聞いてたよ。
お兄ちゃんの一番は僕じゃないんだ。
だから遊んでくれないのかなぁ。

あれ?今日はお兄ちゃんいるんだ。
「お兄ちゃん♪」
「おぅ・・・」
「今日お休みだよ。」
「ちょっとね・・・」
「・・・お兄ちゃん、どうかした?おなか痛いの?」
「ん?」
「お兄ちゃん・・・泣きそうだよ?」
「・・・それはSちゃんだろ。」
あ、やっと笑ってくれた。
「え、とね?・・・今日は遊びに行かないの?」
「行かんけど。どうして?」
「だってママがもうおまえなんか相手にせんって・・・」
「そんな訳ないやろ!Sちゃん可愛いし」
「だって、彼女がいるんでしょ?」
「・・あ、」
「僕の『彼女』はお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんはもっと一番の人がいるんでしょ?」
「Sちゃん、彼女って?」
「一番好きな人の事だよ・・・だから行っても良いよ。困らせてごめんね。」
お兄ちゃんが袖で涙を拭いてくれた。
僕、いつのまにか泣いてたんだ・・・お兄ちゃんの前なのに。
「・・俺ん家、来る?」
「・・・」
「大丈夫だから。Sちゃん、解ったから。」
僕は泣いてるのがばれないようにお兄ちゃんにしがみついて
一生懸命首を縦に振ってた。

「へぇ、ここがお兄ちゃんの部屋なんだ。」
「隣にも人がいるから静かにしようね。」
カーテンが引かれてて薄暗い部屋には布団がそのままにしてあって
近くには雑誌が散らばってた。
なんかスゴクじめじめする〜。
部屋の前にはゴミ袋が2つ。
部屋の角にはギターが置いてあった。
「ねぇ、お兄ちゃんギタ・・・」
突然お兄ちゃんは僕にのしかかってきて僕を布団の上に押さえつけた。
そしてキス。
口がすごく痛―い。ゆうちゃんとキスした時はなんか楽しかったのに・・・
涙が出そうだけど我慢したの。なんかいっぱい時間がたったみたい。
そしたらね、お兄ちゃん僕の服を脱がそうとするの。
恥ずかしいから嫌がったら、お兄ちゃん怖い目をしたの。
うん・・・パパが殴るときの目。
ちょっと怖かったけどお兄ちゃんだから、僕、嫌がらないで脱がされたんだ。
そしたらお兄ちゃんね、身体をなでまわしてくるの。
この前のタバコのときみたいでドキドキはするけどちょっと違う感じ。
すごく怖いの。
でお兄ちゃん僕のオチンチン触ってきたの。
僕、両手で隠してたんだけどもう片方の手で押さえつけられちゃって。
すごく恥ずかしくって、たまに先っちょの方が痛くて。
なによりたまに覗くとお兄ちゃんがなんかいつもと違う「にやにや」って笑ってて。
たまらなくて目をギュッとつむってた.
「へぇ、こんなんでもたつんだ。さすがあの親父の子だな。」
って言われたけど何の事かわからなくて、只パパと同じと言われて泣きそうだった。
ずっといじられててオシッコガしたくなったんだけど、布団の上でしたら怒られるから
「お兄ちゃん!オシッコ、オシッコ!」
って言ったんだけど止めてもらえなくて、ずっと我慢したんだ。
・・・しばらくたって手が離されたけど、僕ビックリしてたし疲れてたし
なんか身体が重くて動けなかったの。
そしたらね、お兄ちゃんが僕の足を持ち上げたの。
そのときはもう何されてもどうでもいいと思ってたんだけど、
そのあと僕のお尻になんかあったかいモノが当たったんだ。
ビックリして見てみるとお兄ちゃんが大きいオチンチンを僕のお尻に引っ付けてるの。
で、なんか「おしくらまんじゅう」みたいにしてるんだけど
うん?で、お兄ちゃんすごくイライラしてる。
と、いきなりお兄ちゃんは僕を裏っ返しにして
僕のお尻の穴に指を突っ込んだんだ。
「あぁぁー!」
そう叫んだんだと思う。さらにもう1本の人差し指も入れてきた。
痛くて、しゃっくりしたみたいに声が出ないの。
ピリッていって血がでてきたのに構わずに指をかきまわすお兄ちゃん。
そのとき急に僕は何をされるのか解った。
痛みと恐怖で最後の力を振り絞って
「キャ――――!!」
と叫んだんだ。
「うるせぇ!てめぇ!」
お兄ちゃんは初めて僕を殴った。
2回・3回・・・何回殴られただろう。
僕はお兄ちゃんに殴られてもうなにも抵抗する気がおきなかった。
涙と一緒にオシッコも出てきた。
「汚ねっ!」
ゴスッ!おなかに蹴りがとんだ。
僕は吹っ飛ばされて扉の向こうの土間で残りを出した。
僕の飛ばされた先には血が点々と付いてきていた。
「おい、来いぃや。」
そういって抱えあげられさっきの布団に戻され
今度はお兄ちゃんのオチンチンは僕のお尻にどんどん入って来た。
入った瞬間叫びそうな痛みがきた、でも殴られるから口をしっかり押さえてた。
さっき指でかき回された痛みもあるけど、それとは違う痛みが強い。
なんかお腹が押し潰されそうな感じがする。
お兄ちゃんはもの凄い勢いで動くので、お腹が破れそう。
たまに外れるんだけど、その度に僕を殴りながら同じ行為は続く。
怖いけどそこにいるのはお兄ちゃんで僕は助けを呼ぼうとして
「お兄ちゃん・・・タス」かぼそい声だった。
「お前なんか嫌いだよ!」
その瞬間、僕は気付いた。
あぁ、僕は悪い子だったんだ。
パパが殴るのも、ママが無視するのも、お兄ちゃんが・・・ひどい事するのも
みんな僕が悪いからだ。
どんなにひどい事をされても、どんなに痛くても、僕が我慢してれば
みんな文句は言わないし怒らないんだ。
そう、オトナシクシテレバイインダ。
ウルサクシチャダメナンダ。
涙だけがポロポロ出てくる。
でもなんかこの身体は僕のじゃないみたいで痛い以外は何も感じなかった。
ギターの弦はなぜか5本だった。

追い出され外に出たのはいつだっただろう。
もう星がいくつか出ていた。
あのとき届きそうだった「空」は余りにも高く
もう僕なんかの手じゃ届きそうになかった。
星はいつも優しい光だけど、僕の周りには降ってこなくて
・・・帰り道って遠いんだ。

家に帰ったらやっぱり怒られた。
パパがいつものように僕を殴る。
僕は悪い子なんだから仕方ないよね。
イケナイ事をされたのは解っていた。
でも僕が悪い子なんだし、きっと気にしてはくれないし黙っていた。
僕がオトナシクスレバイインダ。
・・・いつのまにか僕はベッドにいた。
パパとママがケンカしてる。
どうやら僕が殴る途中で気を失ったみたい。
また迷惑をかけて、ごめんなさい
次の日は幼稚園を休んだ。
熱が出たかららしい。身体中がすごく痛くて動けない。
僕はベッドの中で、やっぱり家に一人。
そんな中、やっぱりお兄ちゃんを待ってるの。
あんなにひどい事されたのに。
僕が良い子になればもしかしたら
また肩車をしてくれるんじゃないかって。
またあの「空」を見れるんじゃないかって。
「お前なんか嫌いだよ!」
まだ耳に残るその言葉に
涙を流しながら
でも僕はお兄ちゃんを待ってしまうの。

以上です。いかがだったでしょうか?
あ、それからですか。
そのあと1回だけ。
えぇ、そのあと親の都合で本家の方に家を移す事になっていて
休みの間に実家に預けられてるうちに引越しが終わってましたので。
それからの私ですか?
大人にはとても大人しく、でも下の子に対しては
弱いから何されても文句は言えないんだなんて思ってましたね。
ここに来てるのもそんな感じからです。
・・・え?はい。やっぱり狙われてましたよ。
知らないおじさんの家に連れて行かれたこともありましたし。
あ、大丈夫でしたよ。やはり知ってるだけあるから、写真撮られた位ですみました。
「おじちゃん優しいもんね。迷子になったら困るからあとで家まで送ってね」
なんて言えばいいんですよ。
小学生時は同級生に狙われた事もありますけどね。
それに中学時代は良い友達(小学校の時チカンから守ってくれた)がいましたし。
しかし中2のときでしたか、その「お兄ちゃん」の彼女を私の父親が
寝取っていた事を母の口から解りまして。(移転の理由でした)
そう「お兄ちゃん」は私も憎んでたんでしょうね。
だから恨みをはらす「道具」にしてたのでしょう。
でもそれを聞かされたとき、自分の価値観が根底から覆されまして。
いわゆる今までの罪悪感に苛まされる様になってしまいました。
知らなければもっとひどい事も出来ただろうに。
イヤ、あのときの炎はもっとひどい事を求めているのに。
なにかひどい事をしようとすると後で吐いてしまうんです。
私は理由があって「道具」にされたのであって、
私みたいに「道具」にしたくてひどい事をするんではないって。
こんなもどかしい気持ちも皆様にお伝えする事でなにか変わることが
出来ればと思ってこの席に座った次第です。