25歳のフリーター青年W氏の経験 その1

 
 何? 俺の経験談が聞きたいだと?
 ふっ、いいぜ。聞かせてやる。もっとも、ここにいるやつらを本当に喜ばせられるほど話が巧いかどうかは分からんがな。どうも、他人と話すのは苦手だ。もっとも俺の経験談そのものはここにいる誰にも負けないと思うぜ。なにせ、俺自身が子供のころ実際にやられた事だからな。
 どんな体験だって? そうせかすなよ。ゆっくり話してやるからさ。その前に水割りを一杯くれ。ああ、そうだ。氷を多めに入れてくれよ。

 あれはそう、いまから20年近く前のことだ。だから、子供というよりも幼児のころの体験だな。この店は幼児の話でもいいのか? ダメならやめるが……その目は興味津々といった様子だな。
 俺の体験っていうのはな、保育園での事だよ。今思えば、はっきりいって、この店のやつらと同じ趣味の人間が経営していたんじゃないかと思えるくらいだ。
 なんで過去形かだと? つぶれたんだよ。表向きは経営難ってことになっていたが、まあアレは問題になるまえに園長達が逃げ出したというのが正解だろうな。なんせ、あんな教育方針、マスコミに知られたらたたかれるに決まっているからな。
 ああ、分かってるよ、とっとと本題に入れっていうんだろ。

 あの保育園のまず第1の特徴は『はだか教育』だ。
 うん? なんだ、ずいぶん拍子抜けしたような顔をしているな? わかっている、はだか教育を実践している保育園なんて、特に珍しくもないっていうんだろ? Yahooで検索してもずいぶんヒットするもんな。中にははだかで雪合戦させる、なんてトコもあるみたいだしな。
 だがな、あの保育園の『はだか教育』はただの『はだか教育』じゃないんだ。
 どんなのかって? 『完全なはだか教育』さ。さすがにわかったか? そう、園児達は一年中すっぱだか。上半身だけじゃなく、下半身もだ。ズボンはもちろん、パンツや靴下、靴なんかの身体につけるものは全部ダメ。朝から晩までずっとだ。勉強時間以外は眼鏡すらいけなかった。さらに頭は丸坊主って規定もあったな。今、思いかえしてみると丸坊主のすっぱだかの男の子がいっぱい集まっている状況は、結構マヌケなものがあったかもしれないな。

 え? 女の子はいなかったのかって? いなかったぜ。保育園のくせに男子しか受け入れてなかったんだ。保母さんなんてのもいなかったな。保父さんだけだった。
 『健全なる男子の育成の為には、幼い間女性とは隔離して暮すことが有効だ』っていうのが基本方針だったみたいだな。まあ、おかげでチンコを女の子に見られる事はなかったな。もっとも、当時はまだ『裸を見られて恥ずかしい』なんてあんまり思わなかったが。

 はだかで辛かったのは寒さだな。園舎……というか、山奥の寺の一角を改造したみたいなところだったが、そこは暖房器具なんてなかった。もちろん、冷房もだ。まあ、冷房は20年前だと普通幼稚園や保育園でも珍しい物だったかもしれないが。おまけに窓にはガラスはない。園児が逃げ出さないように鉄格子がはまっているだけ。風や、ひどい時は雨や霙《みぞれ》や雪がふきこんできた。
 とにかく座っているだけで皆、身体中がガタガタ震わしていたよ。チンコはちじこまってたっけな。
 寝る時も板ばりの床の上に布団やタオルを敷くことすらゆるされない。冬はみんな寒くて満足に眠れない。しかたがないから肌を寄せ合って暖をとろうとするんだが、それを保父さんにみつかると厳罰をくらった。結局、ひとりひとり離れて震えてるしかなかった。

 うん? なんだその顔は。え? お泊まり保育? ああ、そうか、あの幼稚園はな、3歳〜小学校入学まで、家に帰さず共同生活をさせるんだよ。そう、少なくとも俺はただの1回も家には帰してもらえなかったな。それどころか、親との面会もダメ。手紙や電話も厳禁。そもそもポストも電話線もあの山にはなかった。山の上だから子供の足じゃ絶対に逃げられない。結局いいなりになるしかないんだ。

 ふふふ、さっきから『厳罰』とか『いいなり』とか色々と『そっち系』の単語がでてきているだろ? じらさずに話せ? そうだな。あんたの考えているとおりだ。あの保育園の厳しさ、辛さは、単にはだかで寒いとかそんな次元じゃなかったんだよ。ふふふ、まあ待てよ。一つづつ話してやるからさ。

 どこから話すか。そうだな、まずはあの保育園での1日の生活からにするか。
 まず、朝の5時に起床。すぐに代表者が点呼をとって――といったって、扉は外からカギがかけられているし、逃げられるわけがないんだけどな、保父さん達がくるのを待つ。保父さん達がくるまでに全員が起きて正座をしていなければならない。一人でも眠っているヤツがいたら全員が罰だ。
 え? 罰の内容? ふ、それは後のお楽しみだ。そうだな、少なくとも幼児に与えるとは思えないほど重いモノだとだけ言っておくか。保父さんが部屋に入ってくると、全員で『おはようございます』と言ってお辞儀をする。お辞儀というよりも、土下座に近い格好だな。ここまで終わると――実際にかなり確立で誰かが『ねぼけていた』『声が小さい』とかいう理由で罰をくらっていたが――そのあと部屋の中と全員の身体のチェックが始まる。

 チェックの内容? まず第1にションベンやウンコをもらしたヤツがいないかだな。言っただろ。部屋にはカギがかけられていると。部屋の中にはトイレはない。つまり、就寝時間から起床時間まで、子供たちはトイレに行けない。特に冬場になると寒さも手伝って寝ションベンしちまうヤツがいる。3歳児なんて普通にトイレがあったって寝ションベン垂れちまうもんだろ?

 身体のチェックはそれだけじゃ終わらない。何をされるかって? まず、一人一人、検査係の保父さんにケツを突き出す。そう、四つんばいになってだ。で、保父さんは持っていた布を巻いた木の棒――年齢が上がるにつれて太い棒が使われていた――を園児のケツに突き刺す。もちろん、むちゃくちゃ痛い。だが、この時悲鳴を上げたり、涙を見せたりしたらやっぱり罰なんだ。俺なんかは毎日その棒に血がついていた。これでも繊細なケツをしていたんだよ。いまでも痔に苦しむ時があるんだぜ。
 だけど血がついているぶんにはまだいい。もしウンコがついていたら罰として――この罰は今言っちまうな――その場で注射器の針をとったような容器を使って浣腸液を入れられる。量はよくわからないが、30ccくらいはあったんじゃないかな。で、30分間我慢させられる。我慢できずにもらしてしまったら、さらに罰として朝食抜きだ。まあ、たいていは我慢できない。

 次に園児自身の手でチンコの皮を剥かせる。そう、3歳児もだ。自分で向けなかったら保父さんがむりやり剥く。もちろん、ここでも泣いたり悲鳴を上げたりすることはゆるされない。
 そのあと、今度は年長――といっても6歳だが――の子供が毎日ひとりずつえらばれ、皆の前に出る。園児は全部で30人くらいで、各学年が10人ずつだから10日に1回番がまわってくる。で、何をさせるかというと――当時は名前を知らなかったが――つまりはオナニーだ。チンコを自分で扱《しご》くように命じられ、それを他の子供たちに観察させる。
 チンコだけでなく、アナルオナニーとかもさせられたな。ケツに棒を突っ込まれたあとだから余計痛かった。なんでも『健康な男児の育成には男性器の発達を促す必要がある』んだそうだ。
 幼児だからもちろん精液はでないが、勃起はしないと許してもらえない。勃起をすると、その子を寝かせ、他の子供たちに保父さんがこういう。
『よし、全員でなめろ』と。
 この言葉で他の子供たち全員でオナニーをした子どもの身体中を嘗め回す。額、頬、喉、乳首、ヘソ、指先、脹脛……そしてももちろんチンコもだ。そして、オナニーをした子供の全身が唾だらけになったところで、ようやく『よし、終了』と保父さんが言う。園児たちは全員で『チェック、ありがとうございました』といってまた土下座だ。

 こんなふうにして、あの保育園での1日は始まるわけだ。