25歳のフリーター青年W氏の経験 その2


 さて、朝身体のチェックが終わると、次は座禅の時間になる。園舎がお寺のようだと言ったが、もしかすると、やはり仏教系の保育園だったのかもしれないな。
 その座禅も、もちろんただの座禅じゃない。まず、座るのは庭。夏と冬とでやりかたがまるで違う。夏は園児達が座った周りに焚き火をつける。ただでさえ直射日光が全身を照らしているのに、焚き火の熱も加わって額から汗が滴り、さらに酷いとえてくる汗がすぐに蒸発して塩だけが頬についていたりした。
 だが、冬はもっと辛かった。冷水のシャワーを浴びながら行うんだ。猛吹雪の中で冷水を浴びせられた時は気を失った子供もいたな。何を隠そう、俺だって何度か気絶した。だが気を失っても許してはもらえない。むしろ、座禅の最中に倒れた罰と称して保父さん達から蹴られ無理やりたたき起こされたな。
 ちなみにこの座禅が30分ちかく続く。朝のチェックで浣腸液をいれられた園児はたいていここで漏らしていたな。正座をして冷水シャワーをあびながら黙想している子供ケツから水みたいな茶色いウンコがドクドクと流れ出る姿、あんたにも見せてやりたいな。当時は辛かったが、今思えばおいしすぎるぜ。

 座禅のあとは朝食。完全な菜食で肉・魚類は一切なし。おかずは人参や茄子とかの野菜が丸ごと火も通さずおかれていた。ご飯は玄米だった。今思えば酷い飯だったが、それでも朝食は一応、人間の食べ物だったな。
 え? 昼や夜は違っていたのかって? まあ、そんなにあせるなよ。順番に話してやるからさ。

 そのあと午前中は勉強。かなり本格的で、子供たちは皆、保育園を卒業するまでには九九をそらんじられるようになった。もっとも、教え方が巧かったというよりは、罰が恐くてみんな一心不乱だったからだが。
 毎日勉強が終わるとテストがある。全部で100問、一問間違うごとに鞭一発。中に必ず中学レベルの問題とかがあって、絶対に全問正解は無理なようにつくられていた。俺は結構勉強できた方だったが、それでも毎日15発以上はくらっていたな。

 で、勉強が終わると昼食だ。皆この時間がくるのを恐れていた。
 何故か、だって? まあ、聞きなよ。
 まず、テストが終わって昼食の時間になると、保父さんが子供たちを後ろ手に縛る。そして子供たちの前にあるものを置いて言う。
『さあ、お昼の時間ですよ。みんな食べなさい』と。
 一体なんだとおもう?
 糞だよ。保育園で飼っていた――菜食主義のくせしてな――牛の糞。
 目の前に置かれた物体のあまりの臭いにおもわず鼻を摘みたくなるが、手を縛られているのでそれもできない。これは本当に何日経っても我慢できなくてな、皆なかなか食べようとしない。そうすると保父さんたちが言う。
『何をしているんだ。早く食べないか!』
 これ以上ねばっても殴られるだけだと園児達も知っているから、おずおずと目の前に置かれた牛の糞に口を近づける。ホントは泣きたいが、泣いたらそれだけで罰なんでぐっとこらえつつ、少しだけ口にいれる。もちろん、それだけじゃ許してもらえない。
『もっと一気に食え、このガキども!!』
 そう叫んで園児の口を無理やり開かせた保父さんの血走った目を、俺は一生忘れられない。俺達はそうやって毎日昼食のたびにむりやり牛の糞を食べさせられて育ったんだよ。