戦場リポート Vol.4 彗星墜つ 


舞台は1970年代、南米。軍事政権下の某国。

 民主化運動の思想的支柱として、民衆の声望を集める男ルベルト・エスキベルは、軍事政権にとって、口の中のできもののようにわずらわしい存在だった。
  収容施設にて今日もルベルトが対峙する男は、国家保安局次長バビエル。多数の非戦闘員の市民の死と失踪に、直接関わってきた残忍な司令官だった。
  米欧リベラルマスコミの動静を懸念するバビエルは、ルベルトを憎悪する将軍バルデスの意向を抑え、ルベルトの処刑を回避しながら、八方手を尽くして彼の活動を制限してきた。

 だがこの日は違った。奸智の男バビエルが勝負のカードを切る。
  マジックミラーの向こうの尋問室に現れたのは、屈強の警吏に牽かれた幼い白人の少年、他ならぬルベルトの一人息子、十二歳のアンヘルだったのだ。

 鏡一枚を隔てた部屋で、苛烈な拷問に耐える一人息子の、傷ついてく裸体と、スピーカーから聞こえる悲痛な苦悶の声。ルベルトは怒り狂い、悶え苦しむ。
  少年としては非常に気丈なアンヘルも、次第に気力も体力も失っていくようだった。

 だがバビエルの悪魔の意図は、この時点ではまだ少しも明らかにされていなかったのである。

 

そうだ、私は知っていた

 

大衆の熱狂と権力者達のエゴが、天使の羽根をむしり取る

 

 ネタとしては父子相姦。前半の拷問シーンと、後半の父子相姦エロシーンと、濡れ場が二段構えになっています。物語としては、曲線の男バビエルと、民衆のカリスマの看板のわりに、実は……のルベルト、そのルベルトと息子アンヘル、ルベルトとアンヘルの亡母マリア、という三本ラインの人間関係と心理を、短編のわりには込み入った構成で描写しています。アンヘルは12歳、(わりと)美形寄り、金髪碧眼、と、うちの作品としては、けっこう異色。父子相姦ネタということもあり、耽美的色彩の強い作風です。

 

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